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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1182397 |
審判番号 | 不服2004-13208 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-25 |
確定日 | 2008-08-06 |
事件の表示 | 特願2001-279777「電子ネットワーク・オークションにより生産能力を取り引きするシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月26日出願公開、特開2002-123706〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年9月14日(パリ条約による優先権主張2000年9月18日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成15年11月21日付けの拒絶理由通知に対して平成16年3月3日付けで手続補正がなされたが、同年5月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年7月26日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年7月26日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年7月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 2-1.補正の内容 平成16年7月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲は、次のとおりである。 「【請求項1】 コンピュータ・ネットワークに通信チャネルを介して接続された複数のコンピュータを用いて、製品の生産能力を対象としたオークションを行う方法であって、 売り手による製品の生産能力の入力を前記複数のコンピュータのうちの一つが受け付けて、複数の買い手側のコンピュータによる入札の受信の待機を開始するステップと、 前記入札の受信を行うコンピュータが前記通信チャネルを介して前記複数の買い手側のコンピュータのうちの一つによる第一の入札の受信を行い、この入札を入札セットの一部として記憶装置に記憶するステップと、 前記入札の受信を行うコンピュータが前記通信チャネルを介して前記複数の買い手側のコンピュータのうちの一つによる第二の入札の受信をさらに行うステップと、 前記第二の入札の受信をしたコンピュータは、当該入札を受諾すると判断した場合、切り替え時間と切り替えコストとを入力として、当該入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が、当該入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなる、という受諾基準に基づいて、前記第二の入札の受信前において前記入札セットを構成している入札の一部と、当該入札の入れ替えを行うステップと、を含む方法。 【請求項2】 前記オークションは複数ラウンド密封入札オークション、オープン・クライ・オークション及び掲示板オークションを含むグループから売り手による選択を前記コンピュータが行う請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記製品が商品、サービス、及びそれらの組み合わせを含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 生産能力を規定する生産工程を有する業界において、前記生産工程が、前記製品の生産に関わる少なくとも1段階と、生産の各段階での少なくとも1入力とを含み、ある段階での前記製品の範囲が、前記段階における入力の質と量、及び他の属性に依存する状況において、 前記少なくとも1入力が、原料、労働力、燃料、エネルギ、及び生産の前段階からの出力を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記生産工程が少なくとも2段階を含み、先行段階からの少なくとも1出力が、続く段階への入力として前記コンピュータにより提供される、請求項4に記載の方法。 【請求項6】 前記少なくとも1出力が、売り物としての、または前記続く処理段階への入力としての製品の範囲を含む、請求項5に記載の方法。 【請求項7】 前記少なくとも1出力が再利用可能廃棄物、再利用不能廃棄物、及びそれらの両者を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項5に記載の方法。 【請求項8】 ある段階での前記製品の範囲が、前記続く段階への入力としての、前記先行段階からの前記少なくとも1出力の品質または量に依存する、請求項5に記載の方法。 【請求項9】 入札対象の製品が、生産される製品の範囲内であれば、前記製品に対する入札が前記コンピュータにより前記生産工程の任意の段階に行われる、請求項4に記載の方法。 【請求項10】 前記製品の少なくとも1つの落札を前記入札セットから前記コンピュータが決定するステップをさらに含み、 前記少なくとも1つの落札が落札のセットから獲得され、前記落札が、試行錯誤法、専門知識、業界での経験、売り手の目的、及びこれらの組み合わせを含むグループから選択されるファクタにもとづき前記コンピュータにより決定される、請求項4に記載の方法。 【請求項11】 前記売り手の目的が、収益の最大化、ダウンタイムの最小化、損失の最小化、及び機械稼働率の最大化を含むグループの1つ以上の要素を含む、請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記オークションがオープン・クライであり、少なくとも1つの追加の入札に応じて、各段階での計画及び製造スケジュール、及び物流管理を改訂することにより、前記コンピュータが前記追加の入札の受諾を決定するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。 【請求項13】 各追加の入札の受信時に更新される、落札の動的セットを前記コンピュータが維持するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。 【請求項14】 前記オークションがバッチ機構を有しており、前記生産工程全体のスケジューリング及び物流管理に応じて、各入札ラウンドの後に、前記コンピュータが受諾可能な入札のセットを決定するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。 【請求項15】 周期的間隔で更新される落札の動的セットを前記コンピュータが維持するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。 【請求項16】 少なくとも1つの追加の入札を検討のために前記コンピュータが受信するステップをさらに含み、前記追加の入札が、以前に受信された入札の改訂入札である、請求項1に記載の方法。 【請求項17】 追加の入札が、前記受信された入札の少なくとも1つを、前記少なくとも1つの落札として含む、請求項14に記載の方法。 【請求項18】 前記落札の少なくとも1つを前記コンピュータが削除し、別の入札ラウンドを開始するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。 【請求項19】 前記決定するステップが、前記少なくとも1つの落札と、受信された追加の入札のセットとにもとづく、落札者決定方式を利用する、請求項10に記載の方法。 【請求項20】 コンピュータ・ネットワークに通信チャネルを介して接続された複数のコンピュータを用いて、製品の生産能力を対象としたオークションを行う装置であって、 売り手による製品の生産能力の入力を前記複数のコンピュータのうちの一つが受け付けて、複数の買い手側のコンピュータによる入札の受信の待機を開始する手段と、 前記入札の受信を行うコンピュータが前記通信チャネルを介して前記複数の買い手側のコンピュータのうちの一つによる第一の入札の受信を行い、この入札を入札セットの一部として記憶装置に記憶する手段と、 前記入札の受信を行うコンピュータが前記通信チャネルを介して前記複数の買い手側のコンピュータのうちの一つによる第二の入札の受信をさらに行う手段と、 前記第二の入札の受信をしたコンピュータは、当該入札を受諾すると判断した場合、切り替え時間と切り替えコストとを入力として、当該入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が、当該入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなる、という受諾基準に基づいて、前記第二の入札の受信前において前記入札セットを構成している入札の一部と、当該入札の入れ替えを行う手段と、を含む装置。 【請求項21】 前記オークションは複数ラウンド密封入札オークション、オープン・クライ・オークション及び掲示板オークションを含むグループから売り手による選択を前記コンピュータが行う請求項20に記載の装置。 【請求項22】 前記製品が商品、サービス、及びそれらの組み合わせを含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項20に記載の装置。 【請求項23】 生産能力を規定する生産工程を有する業界において、前記生産工程が、前記製品の生産に関わる少なくとも1段階と、生産の各段階での少なくとも1入力とを含み、ある段階での前記製品の範囲が、前記段階における入力の質及び量に依存する状況において、 前記少なくとも1入力が、原料、労働力、燃料、エネルギ、及び生産の前段階からの出力を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項20に記載の装置。 【請求項24】 前記生産工程が少なくとも2段階を含み、先行段階からの少なくとも1出力が、続く段階への入力として前記コンピュータにより提供される、請求項23に記載の装置。 【請求項25】 前記少なくとも1出力が、売り物としての、または前記続く処理段階への入力としての製品の範囲を含む、請求項24に記載の装置。 【請求項26】 前記少なくとも1出力が再利用可能廃棄物、再利用不能廃棄物、及びそれらの両者を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項24に記載の装置。 【請求項27】 ある段階での前記製品の範囲が、前記続く段階への入力としての、前記先行段階からの前記少なくとも1出力の品質または量に依存する、請求項24に記載の装置。 【請求項28】 入札対象の製品が、生産される製品の範囲内であれば、前記製品に対する入札が前記コンピュータにより前記生産工程の任意の段階に行われる、請求項23に記載の装置。 【請求項29】 前記製品の少なくとも1つの落札を前記コンピュータが決定する手段をさらに含み、 前記少なくとも1つの落札が前記入札セットから獲得され、前記落札が、試行錯誤法、専門知識、業界での経験、売り手の目的、及びこれらの組み合わせを含むグループから選択されるファクタにもとづき前記コンピュータにより決定される、請求項23に記載の装置。 【請求項30】 前記売り手の目的が、収益の最大化、ダウンタイムの最小化、損失の最小化、及び機械稼働率の最大化を含むグループの1つ以上の要素を含む、請求項29に記載の装置。 【請求項31】 前記オークションがオープン・クライであり、少なくとも1つの追加の入札に応じて、各段階での計画及び製造スケジュール、及び物流管理を改訂することにより、前記コンピュータが前記追加の入札の受諾を決定する手段をさらに含む、請求項29に記載の装置。 【請求項32】 各追加の入札の受信時に更新される、落札の動的セットを前記コンピュータが維持する手段をさらに含む、請求項31に記載の装置。 【請求項33】 前記オークションがバッチ機構を有しており、前記生産工程全体のスケジューリング及び物流管理に応じて、各入札ラウンドの後に、前記コンピュータが受諾可能な入札のセットを決定する手段をさらに含む、請求項29に記載の装置。 【請求項34】 周期的間隔で更新される落札の動的セットを前記コンピュータが維持する手段をさらに含む、請求項33に記載の装置。 【請求項35】 少なくとも1つの追加の入札を検討のために前記コンピュータが受信する手段をさらに含み、前記追加の入札が、以前に受信された入札の改訂入札である、請求項20に記載の装置。 【請求項36】 追加の入札が、前記受信された入札の少なくとも1つを、前記少なくとも1つの落札として含む、請求項33に記載の装置。 【請求項37】 前記落札の少なくとも1つを前記コンピュータが削除し、別の入札ラウンドを開始する手段をさらに含む、請求項29に記載の装置。 【請求項38】 前記決定する手段が、前記少なくとも1つの落札と、受信された追加の入札のセットとにもとづく、落札者決定方式を利用する、請求項29に記載の装置。 【請求項39】 コンピュータ・ネットワークに通信チャネルを介して接続された複数のコンピュータを用いて、製品の生産能力を対象としたオークションを行わせるプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体であって、 売り手による製品の生産能力の入力を前記複数のコンピュータのうちの一つに受け付けを行わせて、複数の買い手側のコンピュータによる入札の受信の待機を開始させるステップと、 前記入札の受信を行わせるコンピュータに前記通信チャネルを介して前記複数の買い手側のコンピュータのうちの一つによる第一の入札の受信を行わせ、この入札を入札セットの一部として記憶装置に記憶させるステップと、 前記入札の受信を行わせるコンピュータに前記通信チャネルを介して前記複数の買い手側のコンピュータのうちの一つによる第二の入札の受信をさらに行わせるステップと、 前記第二の入札の受信をしたコンピュータに、当該入札を受諾すると判断した場合、切り替え時間と切り替えコストとを入力として、当該入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が、当該入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなる、という受諾基準に基づいて、前記第二の入札の受信前において前記入札セットを構成している入札の一部と、当該入札の入れ替えを行わせるステップと、を含むことを特徴とするプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項40】 前記オークションは複数ラウンド密封入札オークション、オープン・クライ・オークション及び掲示板オークションを含むグループから売り手による選択を前記コンピュータに行わせる請求項39に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項41】 前記製品が商品、サービス、及びそれらの組み合わせを含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項39に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項42】 生産能力を規定する生産工程を有する業界において、前記生産工程が、前記製品の生産に関わる少なくとも1段階と、生産の各段階での少なくとも1入力とを含み、ある段階での前記製品の範囲が、前記段階における入力の質及び量に依存する状況において、 前記少なくとも1入力が、原料、労働力、燃料、エネルギ、及び生産の前段階からの出力を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項39に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項43】 前記生産工程が少なくとも2段階を含み、先行段階からの少なくとも1出力が、続く段階への入力として前記コンピュータにより提供される、請求項42に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項44】 前記少なくとも1出力が、売り物としての、または前記続く処理段階への入力としての製品の範囲を含む、請求項43に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項45】 前記少なくとも1出力が再利用可能廃棄物、再利用不能廃棄物、及びそれらの両者を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項43に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項46】 ある段階での前記製品の範囲が、前記続く段階への入力としての、前記先行段階からの前記少なくとも1出力の品質または量に依存する、請求項43に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項47】 入札対象の製品が、生産される製品の範囲内であれば、前記製品に対する入札が前記コンピュータにより前記生産工程の任意の段階に行われる、請求項42に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項48】 前記製品の少なくとも1つの落札を前記コンピュータが決定するステップをさらに含み、 前記少なくとも1つの落札が前記入札セットから獲得され、前記落札が、試行錯誤法、専門知識、業界での経験、売り手の目的、及びこれらの組み合わせを含むグループから選択されるファクタにもとづき前記コンピュータにより決定される、請求項42に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項49】 前記売り手の目的が、収益の最大化、ダウンタイムの最小化、損失の最小化、及び機械稼働率の最大化を含むグループの1つ以上の要素を含む、請求項48に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項50】 前記オークションが連続的に開かれており、少なくとも1つの追加の入札に応じて、各段階での計画及び製造スケジュール、及び物流管理を改訂することにより、前記コンピュータが前記追加の入札の受諾を決定するステップをさらに含む、請求項48に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項51】 各追加の入札の受信時に更新される、落札の動的セットを前記コンピュータが維持するステップをさらに含む、請求項50に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項52】 前記オークションがバッチ機構を有しており、前記生産工程全体のスケジューリング及び物流管理に応じて、各入札ラウンドの後に、前記コンピュータが受諾可能な入札のセットを決定するステップをさらに含む、請求項48に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項53】 周期的間隔で更新される落札の動的セットを前記コンピュータが維持するステップをさらに含む、請求項52に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項54】 少なくとも1つの追加の入札を検討のために前記コンピュータが受信するステップをさらに含み、前記追加の入札が、以前に受信された入札の改訂入札である、請求項39に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項55】 追加の入札が、前記受信された入札の少なくとも1つを、前記少なくとも1つの落札として含む、請求項52記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項56】 前記落札の少なくとも1つを前記コンピュータが削除し、別の入札ラウンドを開始するステップをさらに含む、請求項48に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項57】 前記決定するステップが、前記少なくとも1つの落札と、受信された追加の入札のセットとにもとづく、落札者決定方式を利用する、請求項48に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。」 2-2.当初明細書に記載された事項 本件出願の願書に最初に添付された明細書(以下、「当初明細書」という。また、願書に最初に添付された明細書及び図面を「当初明細書等」という。)中には、以下の記載が存在している。 「【0008】前述の例からわかるように、これらのシステムは、様々な形態の製造/サービス能力を売り物として提供する。(略)売り手は、収益の最大化、損失の最小化、機械稼働の最適化などの様々な基準にもとづき、受諾を決定する。」(第8段落) 「【0074】5)オープン・クライ能力オークション:オープン・クライ能力オークション・プロセス400の1実施例が、図4に関連して示される。ステップ401で、売り手はオークションにおいて使用可能な規則及び能力を表明することにより、オークションを開始する。オークション規則と一緒に売り手は、各段階において落札セットを決定するために使用するアルゴリズムまたは規則を指定する。各段階は各新たな入札の受信を参照するか、周期的間隔で参照する。オークション規則の1つは、売り手が指定最小額以下の入札を受諾しないことである。オークションが開始し、売り手が入札の到来を待機する(ステップ402)。 【0075】任意の段階において、売り手がその時点までに受諾すると決定した入札のセットがSにより表される。セットSは、各段階において変化し得る。またオークションの終わりに、セットSから落札者のセットが決定される。 【0076】新たな入札が到来すると、売り手はブロック403で、その入札が技術的に受諾可能か否かを、製造プラントの能力にもとづき決定する。実現可能性は、プラントがこの等級の品目を生産できるか否かを指し示す。入札が実現可能でない場合、入札者はステップ404で通知され、その後処理はステップ402に戻る。判断ブロック403が真(肯定)の場合、売り手は判断ブロック405で、この入札が、Sから計算される落札の現セットWと一緒に、受諾可能か否かを判断する。 【0077】判断ブロック405が真(肯定)を返却する場合、入札がSに追加され(ステップ406)、その後処理は判断ブロック408に進む。判断ブロック405が偽(否定)を返却する、すなわち、この入札が入札の特定のセット、すなわちWからのWiに取って代わることによってのみ受諾可能である場合、売り手はWから獲得できる収益と、セットW-W_(i) {B}から獲得できる収益とを比較する。ここでBは判断ブロック407における現入札である。比較が行われる実際の態様は分野に特有であり、売り手の目的に依存する。売り手が、W_(i)に取って代わる犠牲を払っても、この入札を受諾する方が有益と判断すると、入札を取って代わられる入札者に、そのことが通知される(ステップ404)。開始時に定義されたオークション規則に応じて、売り手は各入札者に、落札セットに加わるための再入札の金額を通知してもしなくても良い。判断ブロック407が真(肯定)を戻す場合、処理はステップ406に進む。 【0078】判断ブロック408では、オークションが終了したか否かが判断される。オークションは予め定義された閉鎖時刻に、または所定期間、新たな入札が受信されなかった場合に終了する。売り手により関連時刻が指定されてもよい。判断ブロック408が偽(否定)を戻す場合、処理はステップ402に継続する。それ以外では、落札がステップ409で公表される。」(第74?78段落) 「【0089】7)加工能力の特定例:加工能力を有し、(各リールがことによると異なる幅を有する)Nリールの紙を有する製紙メーカについて考えてみよう。ここでリール紙はより小さなリール紙に加工され得る。これは大きなリールをより小さなリールに、またはシートに加工することにより、注文に応じて、廃棄物を最小化することを意味する。この例は、より小さなリールへの加工に関する。紙加工業者の加工能力は、図4に示されるオープン・クライ・オークションの状況において競売される。紙加工業者は大きなリール紙を購入(または製造)し、来るオークションに関して顧客に通知を送信する。紙加工業者は最低競売価格を設定して、または設定せずに、オークションを実行する。オークションの終わりに、紙加工業者は落札者を宣言し、大きなリールを落札内で指定されるリールに加工する手筈を整える。 【0090】競売人はステップ401で、妥当な場合、加工のために使用可能なリールの数、及び切断されるサイズの制約を示すことにより、オークションを開始し、ステップ402で入札を待機する。オークション規則が、1トン当たりの開始価格を指定する。各入札は、要求されるリールの幅、トン数、及び価格を指定するように要求される。各入札が受信されると、競売者はステップ403で、指定の幅が制約内にあるか否かをチェックし、制約内にない場合入札者に通知する(ステップ404)。 【0091】指定入札が加工制約内にある場合、競売者はステップ405で、この入札が現落札セットと共に受諾可能か否かを計算する。受諾可能な場合、入札がステップ406で受諾される。受諾不能な場合、現落札セットから幾つかの入札が入れ替えられ、この入札が受諾される。Bを受諾し、既存の落札セットから幾つかの入札を入れ替えた後の合計収益が、現落札セットを受諾することにより得られる合計収益よりも大きい場合、入札Bは(判断ブロック407にもとづき、)最小増分iと共に受諾される。ここでiは0であってもよい。 【0092】指定閉鎖時刻に、または予め指定された時間、入札が受信されなかった場合(判断ブロック408)、オークションは終了し、現落札セット内の入札が落札セットを構成する(ステップ409)。入札が特定の段階で拒絶される場合、競売者は規則に応じて、入札者に対して落札セットに加わるために、再入札するための価格を通知するように決定してもよい。 【0093】8)コンピュータ実施例:図1乃至図5に関連して述べた本発明の実施例は、好適には、汎用コンピュータを用いて実現され、処理または機能は、コンピュータ上で実行されるソフトウェアまたはコンピュータ・プログラムとして実現される。電子ネットワークを用いて、生産能力を取り引きする方法またはプロセス・ステップは、コンピュータにより実行されるソフトウェア内の命令によりもたらされる。ソフトウェアは、プロセス・ステップを実現する1つ以上のモジュールとして実現される。モジュールは、特定の機能または関連機能を通常実行するコンピュータ・プログラムの一部である。また、前述したように、モジュールはまた、他のコンポーネントまたはモジュールと共に使用される機能的ハードウェア・ユニットであってもよい。 【0094】特にソフトウェアは、後述の記憶装置を含むコンピュータ可読媒体内に記憶される。ソフトウェアは好適には、コンピュータ可読媒体からコンピュータ内にロードされ、その後コンピュータにより実行される。」(第89?94段落) 「【0100】前述の説明及び図面から明らかなように、ウェブ上で生産能力を取り引きするための、異なる形態の能力オークションが可能である。この取り引きモードは買い手及び売り手の両方に対して、柔軟性を提供する。買い手は、カストマイズされた商品に対する彼らの要求を満たすために、能力に入札し、一方売り手は、資源及び収益をより好都合に割振ることができる。ところで、1)各段階において落札のセットを決定する、2)入れ替えられる入札のセットを決定する、或いは、3)既存の入札者が再提出しなければならない改訂入札額を計算する、などのために実際に使用されるアルゴリズムは、異なるサイトごとに異なり、特定の業界または分野、買い手と売り手の思惑、各オークションにおける買い手と売り手の目的、既存の市場状況、及び関連ファクタなどの、様々なファクタにもとづくものと思われる。』(第100段落) 2-3.特許法第17条の2第3項についての判断 当初明細書の第74?78段落及び第89?92段落並びに第4図の記載によれば、新たに到来した入札Bが技術的に受諾可能(ステップ403でYesに進む)であるが、現段階での入札セットWに前記入札Bを追加して受諾可能ではない(ステップ405でNoに進む)場合、前記入札セットWを構成する一部の入札W_(i)と前記入札Bとを入れ替えるべきかどうかをステップ407で判断するものであって、前記ステップ407では、前記入札セットWから売り手が獲得できる収益と、前記入札セットの一部の入札W_(i)と前記入札Bとを入れ替えたものから売り手が獲得できる収益とを比較した結果、後者の収益が大きい場合、すなわち、前記入札Bを受諾する方が有益であると判断されると、前記入札Bは前記入札W_(i)に取って代わって入札セットWに加わる(ステップ407でYesとなりステップ406に進む)とともに、前記入札W_(i)の入札者に対しては、前記入札W_(i)が前記入札Bに取って代わられることが通知される(ステップ407でNoとなりステップ404に進む)ことが理解でき、当初明細書の第93?94段落の記載をあわせて考慮すれば、この処理がコンピュータにより実現されることも理解できる。 また、当初明細書の第8段落及び第100段落の記載もあわせて考慮すれば、上述した、前記ステップ407の判断処理は、例えば収益の最大化などの売り手の目的に従って定められた基準(あるいはアルゴリズム)を使った判断を行うことによって、前記入札W_(i)の代わりに前記入札Bを受諾すると決定する処理を意味しているということができる。そうすると、前記基準とは、新たに到来した入札Bを受諾すべきか否かを決定するための拠りどころとなるべき判断基準のことであると理解できる。 以上のことから、当初明細書等には、前記入札Bが新たに到来した際に、前記コンピュータが、前記入札セットWを構成する一部の入札W_(i)と前記入札Bとを入れ替えるべきかどうかを判断する処理を前記基準に基づいて行い、その判断の結果として前記入札Bを受諾すると決定されたならば、前記入札W_(i)と前記入札Bとを入れ替える処理を行うことが記載されているということができる。 一方、前記「2-1.」において述べたとおり、本件補正後の請求項1の方法は、「前記第二の入札の受信をしたコンピュータは、当該入札を受諾すると判断した場合、切り替え時間と切り替えコストとを入力として、当該入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が、当該入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなる、という受諾基準に基づいて、前記第二の入札の受信前において前記入札セットを構成している入札の一部と、当該入札の入れ替えを行うステップ」を含む方法として記載されている。 そして、このステップでは、コンピュータは、受信した第二の入札を受諾する「と判断した場合」、すなわち、前記第二の入札を受諾することが決定されたならば、「受諾基準に基づいて、前記第二の入札の受信前において前記入札セットを構成している入札の一部と、当該入札の入れ替えを行う」のだから、前記受諾基準とは、判断処理を行うために使用する基準としてではなく、前記判断処理の後の段階において、入れ替え処理を行うために使用する基準として記載されているというしかない。 しかしながら、上述したように、当初明細書等では、判断基準を使用して判断処理を行い、その結果が決定された後に、入れ替え処理を行うことは記載されているといえるが、本件補正後の当該ステップのように、判断処理を行い、その結果が決定された後に、受諾基準を使用して入れ替え処理を行うことが記載されているということはできない。 そうすると、本件補正後の請求項1に記載された、当該入札を受諾する「と判断した場合」に受諾基準に基づいて入れ替えを行うことは、当初明細書等に開示された事項から導出されるものであるとはいえない。 したがって、補正後の請求項1に記載された「前記第二の入札の受信をしたコンピュータは、当該入札を受諾すると判断した場合、切り替え時間と切り替えコストとを入力として、当該入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が、当該入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなる、という受諾基準に基づいて、前記第二の入札の受信前において前記入札セットを構成している入札の一部と、当該入札の入れ替えを行うステップ」という発明特定事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲を超える内容を含んでいるものであるといえる。 また、本件補正後の請求項20に記載された「前記第二の入札の受信をしたコンピュータは、当該入札を受諾すると判断した場合、切り替え時間と切り替えコストとを入力として、当該入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が、当該入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなる、という受諾基準に基づいて、前記第二の入札の受信前において前記入札セットを構成している入札の一部と、当該入札の入れ替えを行う手段」及び、本件補正後の請求項39に記載された「前記第二の入札の受信をしたコンピュータに、当該入札を受諾すると判断した場合、切り替え時間と切り替えコストとを入力として、当該入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が、当該入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなる、という受諾基準に基づいて、前記第二の入札の受信前において前記入札セットを構成している入札の一部と、当該入札の入れ替えを行わせるステップ」という発明特定事項についても、本件補正後の請求項1について上述した理由と同様の理由により、当初明細書等に記載した事項の範囲を超える内容を含んでいるということができる。 以上のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1,20,39に記載された上述の発明特定事項が当初明細書等に記載した事項の範囲を超える内容を含んでいるから、その余の発明特定事項に係る補正について検討するまでもなく、請求項1,20,39に係る当該発明特定事項に係る補正を含む本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえない。 したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内にあるものであるということはできないから、特許法第17条の2第3項に規定された要件に違反するものである。 2-4.本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正の前の特許請求の範囲は、平成16年3月3日付け手続補正書によって補正された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 コンピュータ・ネットワークに通信チャネルを介して接続された複数のコンピュータを用いて製品の生産能力のオークションを行う方法であって、 売り手による製品の生産能力の入力を前記コンピュータが受け付けて入札の受信の待機を開始するステップと、 前記コンピュータが前記通信チャネルを介して受信する新たな入札を受諾するかどうか所定の受諾基準に基づいて判断するステップと、を含み、 前記受諾基準は前記新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が前記新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなることを含み、 前記コンピュータは切り替え時間と切り替えコストとを入力として前記収益の算出を行うことを特徴とする方法。 【請求項2】 前記オークションは複数ラウンド密封入札オークション、オープン・クライ・オークション及び掲示板オークションを含むグループから売り手による選択を前記コンピュータが受け付けを行う請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記製品が商品、サービス、及びそれらの組み合わせを含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 生産能力を規定する生産工程を有する業界において、前記生産工程が、前記製品の生産に関わる少なくとも1段階と、生産の各段階での少なくとも1入力とを含み、ある段階での前記製品の範囲が、前記段階における入力の質と量、及び他の属性に依存する状況において、 前記少なくとも1入力が、原料、労働力、燃料、エネルギ、及び生産の前段階からの出力を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記生産工程が少なくとも2段階を含み、先行段階からの少なくとも1出力が、続く段階への入力として前記コンピュータにより提供される、請求項4に記載の方法。 【請求項6】 前記少なくとも1出力が、売り物としての、または前記続く処理段階への入力としての製品の範囲を含む、請求項5に記載の方法。 【請求項7】 前記少なくとも1出力が再利用可能廃棄物、再利用不能廃棄物、及びそれらの両者を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項5に記載の方法。 【請求項8】 ある段階での前記製品の範囲が、前記続く段階への入力としての、前記先行段階からの前記少なくとも1出力の品質または量に依存する、請求項5に記載の方法。 【請求項9】 入札対象の製品が、生産される製品の範囲内であれば、前記製品に対する入札が前記コンピュータにより前記生産工程の任意の段階に行われる、請求項4に記載の方法。 【請求項10】 前記製品の少なくとも1つの落札を前記コンピュータが決定するステップをさらに含み、 前記少なくとも1つの落札が落札のセットから獲得され、前記落札が、試行錯誤法、専門知識、業界での経験、売り手の目的、及びこれらの組み合わせを含むグループから選択されるファクタにもとづき前記コンピュータにより決定される、請求項4に記載の方法。 【請求項11】 前記売り手の目的が、収益の最大化、ダウンタイムの最小化、損失の最小化、及び機械稼働率の最大化を含むグループの1つ以上の要素を含む、請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記オークションがオープン・クライであり、少なくとも1つの追加の入札に応じて、各段階での計画及び製造スケジュール、及び物流管理を改訂することにより、前記コンピュータが前記追加の入札の受諾を決定するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。 【請求項13】 各追加の入札の受信時に更新される、落札の動的セットを前記コンピュータが維持するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。 【請求項14】 前記オークションがバッチ機構を有しており、前記生産工程全体のスケジューリング及び物流管理に応じて、各入札ラウンドの後に、前記コンピュータが受諾可能な入札のセットを決定するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。 【請求項15】 周期的間隔で更新される落札の動的セットを前記コンピュータが維持するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。 【請求項16】 少なくとも1つの追加の入札を検討のために前記コンピュータが受信するステップをさらに含み、前記追加の入札が、以前に受信された入札の改訂入札である、請求項1に記載の方法。 【請求項17】 追加の入札が、前記受信された入札の少なくとも1つを、前記少なくとも1つの落札として含む、請求項14に記載の方法。 【請求項18】 前記落札の少なくとも1つを前記コンピュータが削除し、別の入札ラウンドを開始するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。 【請求項19】 前記決定するステップが、前記少なくとも1つの落札と、受信された追加の入札のセットとにもとづく、落札者決定方式を利用する、請求項10に記載の方法。 【請求項20】 コンピュータ・ネットワークに通信チャネルを介して接続された複数のコンピュータを用いて製品の生産能力のオークションを行う装置であって、 売り手による製品の生産能力の入力を前記コンピュータが受け付けて入札の受信の待機を開始する手段と、 前記コンピュータが前記通信チャネルを介して受信する新たな入札を受諾するかどうか所定の受諾基準に基づいて判断する手段と、を含み、 前記受諾基準は前記新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が前記新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなることを含み、 前記コンピュータは切り替え時間と切り替えコストとを入力として前記収益の算出を行うことを特徴とする装置。 【請求項21】 前記オークションは複数ラウンド密封入札オークション、オープン・クライ・オークション及び掲示板オークションを含むグループから売り手による選択を前記コンピュータが受け付けを行う請求項20に記載の装置。 【請求項22】 前記製品が商品、サービス、及びそれらの組み合わせを含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項20に記載の装置。 【請求項23】 生産能力を規定する生産工程を有する業界において、前記生産工程が、前記製品の生産に関わる少なくとも1段階と、生産の各段階での少なくとも1入力とを含み、ある段階での前記製品の範囲が、前記段階における入力の質及び量に依存する状況において、 前記少なくとも1入力が、原料、労働力、燃料、エネルギ、及び生産の前段階からの出力を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項20に記載の装置。 【請求項24】 前記生産工程が少なくとも2段階を含み、先行段階からの少なくとも1出力が、続く段階への入力として前記コンピュータにより提供される、請求項23に記載の装置。 【請求項25】 前記少なくとも1出力が、売り物としての、または前記続く処理段階への入力としての製品の範囲を含む、請求項24に記載の装置。 【請求項26】 前記少なくとも1出力が再利用可能廃棄物、再利用不能廃棄物、及びそれらの両者を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項24に記載の装置。 【請求項27】 ある段階での前記製品の範囲が、前記続く段階への入力としての、前記先行段階からの前記少なくとも1出力の品質または量に依存する、請求項24に記載の装置。 【請求項28】 入札対象の製品が、生産される製品の範囲内であれば、前記製品に対する入札が前記コンピュータにより前記生産工程の任意の段階に行われる、請求項23に記載の装置。 【請求項29】 前記製品の少なくとも1つの落札を前記コンピュータが決定する手段をさらに含み、 前記少なくとも1つの落札が落札のセットから獲得され、前記落札が、試行錯誤法、専門知識、業界での経験、売り手の目的、及びこれらの組み合わせを含むグループから選択されるファクタにもとづき前記コンピュータにより決定される、請求項23に記載の装置。 【請求項30】 前記売り手の目的が、収益の最大化、ダウンタイムの最小化、損失の最小化、及び機械稼働率の最大化を含むグループの1つ以上の要素を含む、請求項29に記載の装置。 【請求項31】 前記オークションがオープン・クライであり、少なくとも1つの追加の入札に応じて、各段階での計画及び製造スケジュール、及び物流管理を改訂することにより、前記コンピュータが前記追加の入札の受諾を決定する手段をさらに含む、請求項29に記載の装置。 【請求項32】 各追加の入札の受信時に更新される、落札の動的セットを前記コンピュータが維持する手段をさらに含む、請求項31に記載の装置。 【請求項33】 前記オークションがバッチ機構を有しており、前記生産工程全体のスケジューリング及び物流管理に応じて、各入札ラウンドの後に、前記コンピュータが受諾可能な入札のセットを決定する手段をさらに含む、請求項29に記載の装置。 【請求項34】 周期的間隔で更新される落札の動的セットを前記コンピュータが維持する手段をさらに含む、請求項33に記載の装置。 【請求項35】 少なくとも1つの追加の入札を検討のために前記コンピュータが受信する手段をさらに含み、前記追加の入札が、以前に受信された入札の改訂入札である、請求項20に記載の装置。 【請求項36】 追加の入札が、前記受信された入札の少なくとも1つを、前記少なくとも1つの落札として含む、請求項33に記載の装置。 【請求項37】 前記落札の少なくとも1つを前記コンピュータが削除し、別の入札ラウンドを開始する手段をさらに含む、請求項29に記載の装置。 【請求項38】 前記決定する手段が、前記少なくとも1つの落札と、受信された追加の入札のセットとにもとづく、落札者決定方式を利用する、請求項29に記載の装置。 【請求項39】 コンピュータ・ネットワークに通信チャネルを介して接続された複数のコンピュータを用いて製品の生産能力のオークションを行わせるプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体であって、 売り手による製品の生産能力の入力を前記コンピュータに受け付けを行わせて入札の受信の待機を開始させるステップと、 前記通信チャネルを介して受信する新たな入札を受諾するかどうか所定の受諾基準に基づいて前記コンピュータに判断を行わせるステップと、を含み、 前記受諾基準は前記新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が前記新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなることを含み、 切り替え時間と切り替えコストとを入力として前記コンピュータに前記収益の算出を行わせることを特徴とするプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項40】 前記オークションは複数ラウンド密封入札オークション、オープン・クライ・オークション及び掲示板オークションを含むグループから売り手による選択を前記コンピュータに受け付けを行わせる請求項39に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項41】 前記製品が商品、サービス、及びそれらの組み合わせを含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項39に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項42】 生産能力を規定する生産工程を有する業界において、前記生産工程が、前記製品の生産に関わる少なくとも1段階と、生産の各段階での少なくとも1入力とを含み、ある段階での前記製品の範囲が、前記段階における入力の質及び量に依存する状況において、 前記少なくとも1入力が、原料、労働力、燃料、エネルギ、及び生産の前段階からの出力を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項39に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項43】 前記生産工程が少なくとも2段階を含み、先行段階からの少なくとも1出力が、続く段階への入力として前記コンピュータにより提供される、請求項42に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項44】 前記少なくとも1出力が、売り物としての、または前記続く処理段階への入力としての製品の範囲を含む、請求項43に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項45】 前記少なくとも1出力が再利用可能廃棄物、再利用不能廃棄物、及びそれらの両者を含むグループから前記コンピュータにより選択される、請求項43に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項46】 ある段階での前記製品の範囲が、前記続く段階への入力としての、前記先行段階からの前記少なくとも1出力の品質または量に依存する、請求項43に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項47】 入札対象の製品が、生産される製品の範囲内であれば、前記製品に対する入札が前記コンピュータにより前記生産工程の任意の段階に行われる、請求項42に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項48】 前記製品の少なくとも1つの落札を前記コンピュータが決定するステップをさらに含み、 前記少なくとも1つの落札が落札のセットから獲得され、前記落札が、試行錯誤法、専門知識、業界での経験、売り手の目的、及びこれらの組み合わせを含むグループから選択されるファクタにもとづき前記コンピュータにより決定される、請求項42に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項49】 前記売り手の目的が、収益の最大化、ダウンタイムの最小化、損失の最小化、及び機械稼働率の最大化を含むグループの1つ以上の要素を含む、請求項48に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項50】 前記オークションが連続的に開かれており、少なくとも1つの追加の入札に応じて、各段階での計画及び製造スケジュール、及び物流管理を改訂することにより、前記コンピュータが前記追加の入札の受諾を決定するステップをさらに含む、請求項48に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項51】 各追加の入札の受信時に更新される、落札の動的セットを前記コンピュータが維持するステップをさらに含む、請求項50に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項52】 前記オークションがバッチ機構を有しており、前記生産工程全体のスケジューリング及び物流管理に応じて、各入札ラウンドの後に、前記コンピュータが受諾可能な入札のセットを決定するステップをさらに含む、請求項48に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項53】 周期的間隔で更新される落札の動的セットを前記コンピュータが維持するステップをさらに含む、請求項52に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項54】 少なくとも1つの追加の入札を検討のために前記コンピュータが受信するステップをさらに含み、前記追加の入札が、以前に受信された入札の改訂入札である、請求項39に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項55】 追加の入札が、前記受信された入札の少なくとも1つを、前記少なくとも1つの落札として含む、請求項52記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項56】 前記落札の少なくとも1つを前記コンピュータが削除し、別の入札ラウンドを開始するステップをさらに含む、請求項48に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。 【請求項57】 前記決定するステップが、前記少なくとも1つの落札と、受信された追加の入札のセットとにもとづく、落札者決定方式を利用する、請求項48に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。」 2-5.特許法第17条の2第4項についての判断 本件補正前後の各請求項の記載からみて、補正後の請求項1,20,39は補正前の請求項1,20,39にそれぞれ対応することは明らかであって、また、本件補正の目的が、特許法第17条の2第4項第1号及び同項第3号にそれぞれ掲げる「第三十6条第5項に規定する請求項の削除」及び「誤記の訂正」のいずれにもあたらないことも明らかである。 そこで次に、請求項1,20,39に係る本件補正の目的が、特許法第17条の2第4項第2号及び同項第4号にそれぞれ掲げる事項のいずれかにあたるといえるかどうかを検討する。 本件補正後の請求項1に係る補正は、以下の補正事項(i)ないし(iv)からなるものである。 (i)補正前の「複数のコンピュータを用いて製品の生産能力のオークションを行う」を「複数のコンピュータを用いて、製品の生産能力を対象としたオークションを行う」とする補正、 (ii)補正前の「売り手による製品の生産能力の入力を前記コンピュータが受け付けて入札の受信の待機を開始する」を「売り手による製品の生産能力の入力を前記複数のコンピュータのうちの一つが受け付けて、複数の買い手側のコンピュータによる入札の受信の待機を開始する」とする補正、 (iii)「前記入札の受信を行うコンピュータが前記通信チャネルを介して前記複数の買い手側のコンピュータのうちの一つによる第一の入札の受信を行い、この入札を入札セットの一部として記憶装置に記憶するステップ」を追加する補正、及び、 (iv)補正前の「前記コンピュータが前記通信チャネルを介して受信する新たな入札を受諾するかどうか所定の受諾基準に基づいて判断するステップと、を含み、 前記受諾基準は前記新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が前記新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなることを含み、 前記コンピュータは切り替え時間と切り替えコストとを入力として前記収益の算出を行うことを特徴とする」を「前記入札の受信を行うコンピュータが前記通信チャネルを介して前記複数の買い手側のコンピュータのうちの一つによる第二の入札の受信をさらに行うステップと、 前記第二の入札の受信をしたコンピュータは、当該入札を受諾すると判断した場合、切り替え時間と切り替えコストとを入力として、当該入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が、当該入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなる、という受諾基準に基づいて、前記第二の入札の受信前において前記入札セットを構成している入札の一部と、当該入札の入れ替えを行うステップと、を含む」とする補正。 ここで、前記(iii)の補正事項は、補正前発明に係る特許請求の範囲を限縮するために発明特定事項を直列的に付加する補正であるといえるが、本件補正の前では、「記憶装置に記憶」する処理段階は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項として記載されていなかったのだから、当該補正事項は、補正前発明の発明特定事項を限定したものではなく、補正前発明にない発明特定事項を新たに加えるものである。 また、前記(iv)の補正事項は、補正前の「判断」段階を、「受信」段階と「入れ替えを行う」段階とに変更する補正であるといえるが、補正後の前記「受信」段階は前記「判断」段階よりも前の段階であり、補正後の前記「入れ替えを行う」段階は前記「判断」段階よりも後の段階であるのだから、当該補正により補正前の「判断」段階は削除され、その代わりに、前記「判断」段階とは異なる段階である「受信」段階と「入れ替えを行う」段階とが新たに付加されたと理解される。そして、補正前の「受諾基準」は前記「判断」段階の処理の拠りどころとして使用されていた基準であったのに対して、補正後の「受諾基準」は前記「入れ替えを行う」段階の処理の拠りどころとして使用される基準に変更されたことや、コンピュータが(収益の)「算出を行う」という補正前の発明特定事項が削除されたことも踏まえると、結局、当該補正事項は、特許請求の範囲を限縮するものではなく、また、補正前発明の発明特定事項を限定したものでもないというしかない。 したがって、前記(iii)及び(iv)の補正事項を含む本件補正後の請求項1に係る補正の目的が、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」にあたるということはできない。 そして、前記(i)、前記(ii)及び前記(iv)の各補正事項における補正前の記載、及び、追って「4.」にて摘記する原査定の拒絶の理由からみて、原査定の拒絶の理由において前記補正前の記載が不明りょうであるとは指摘されていないことも踏まえれば、前記(i)ないし(iv)の補正事項すべてが、原査定の拒絶の理由として指摘された特定箇所の記載不備の拒絶理由を解消するための補正である、とはいえないことは明らかであるから、本件補正後の請求項1に係る補正の目的が、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」にあたるということはできない。 以上のことから、本件補正後の請求項1に係る補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項のいずれにもあたらないといえる。 また、本件補正後の請求項20,39に係る補正の目的も、本件補正後の請求項1について上述した理由と同様の理由により、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項のいずれにもあたらないということができる。 なお、請求人は、審判請求の理由において、「請求項1」、「請求項20」及び「請求項39(「請求項38」は誤記と認める。)」に係る補正について、「この補正は、特許法第29条柱書違反と指摘された事項に対して、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものです。」と主張している。 しかしながら、請求項1,20,39に係る補正の目的が特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項にあたらないことは上述したとおりであり、また、原査定の拒絶の理由における特許法第29条第1項柱書に係る拒絶の理由は、追って「4.」にて摘記するとおり、請求項に係る発明においてソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されていないことを指摘したものであるが、特許請求の範囲における記載箇所を特定して明りょうでないと指摘したものではないところ、請求人の上記主張は、当を得ていないものであって、上述の判断を覆すのに足りるものではない。 2-6.補正却下の決定についてのまとめ 以上のとおり、本件補正のうち、請求項1,20,39に係る補正は、特許法第17条の2第3項に規定された要件及び同条第4項に規定された要件に違反するものであるので、こうした補正を含む本件補正は、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成16年7月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1-57に係る各発明は、平成16年3月3日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1-57に記載された事項により特定される、前記「2-4.」にて述べたとおりのものである。 4.原査定の拒絶の理由 原審の拒絶理由通知及び拒絶査定の記載からみて、原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。 『この出願については、平成15年11月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由A、Cによって、拒絶をすべきものである。 A.この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 記 ・請求項1?19 ・備考 請求項1?19に係る発明は、方法の一部においてネットワークを道具として使用しているにすぎず、コンピュータがハードウェア資源を具体的に利用して当該方法を行うものではないから、これらの請求項に係る発明は自然法則を利用した技術的思想の創作である発明には該当しない。 ・請求項20?57 ・備考 請求項20?38には、装置について、外見上の動作により発明の特徴部である手段を特定するもの(概括的な機能のみを特定するブラックボックス)であって、そのように外見上動作するために、コンピュータの内部にどのような内容のデータをどのように関係付けて予め格納又は入力により記憶し、当該データをどのようなタイミング、アルゴリズムにより取り出し、加工し、出力するかについて特定するものではないから、当該装置の動作がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されたソフトウェアによる情報処理であると把握できる程度に具体的に記載されておらず、これらの請求項に係る発明は自然法則を利用した技術的思想の創作である発明には該当しない。 請求項39?57に記載のプログラムにより実現される装置について同様。 なお、意見書及び手続補正書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。 依然として、ソフトウェアによる具体的な情報処理を記載したものとなっていない。 C.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。(以下略)』 5.当審の判断 以下、原査定の拒絶の理由Aについて判断する。 5-1.請求項1について 請求項1に係る発明の構成を便宜上分説すると、請求項1に係る発明は、 (ア)コンピュータ・ネットワークに通信チャネルを介して接続された複数のコンピュータを用いて製品の生産能力のオークションを行う方法であって、 (イ)売り手による製品の生産能力の入力を前記コンピュータが受け付けて入札の受信の待機を開始するステップと、 (ウ)前記コンピュータが前記通信チャネルを介して受信する新たな入札を受諾するかどうか所定の受諾基準に基づいて判断するステップと、を含み、 (エ)前記受諾基準は前記新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が前記新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなることを含み、 (オ)前記コンピュータは切り替え時間と切り替えコストとを入力として前記収益の算出を行うことを特徴とする方法。 である。 ここで、前記方法に含まれる各ステップは、コンピュータのソフトウェアによって実行されるということができるから、請求項1に係る発明は、その発明の実施にソフトウェアを必要とするところの、いわゆるコンピュータ・ソフトウェア関連発明であるということができる。 そして、こうしたコンピュータ・ソフトウェア関連発明である請求項1に係る発明が、特許法第2条第1項で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、発明はそもそもが一定の技術的課題の解決手段になっていなければならないことから、請求項1に記載された事項に基づいて把握された発明において、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていること、つまり、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されていることが必要である。 そこで、請求項1に係る発明を構成する上記(ア)ないし(オ)の事項それぞれについて、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているかを、以下に詳細に検討する。 すると、前記(ア)に記載された「コンピュータ・ネットワークに通信チャネルを介して接続された複数のコンピュータを用いて製品の生産能力のオークションを行う」は、複数の「コンピュータ」が「通信チャネル」を介して「コンピュータ・ネットワーク」に接続されているというシステム構成の概要を特定しているとともに、「製品の生産能力のオークションを行う」という前記システムを構成する複数のコンピュータを用いて達成しようとする情報処理の概要を特定しているにすぎない。 また、前記(イ)に記載された「売り手による製品の生産能力の入力を前記コンピュータが受け付けて入札の受信の待機を開始するステップ」は、売り手による「製品の生産能力」の入力を「受け付け」て、「入札」の受信の「待機」を「開始する」という、前記「コンピュータ」による受付及び待機開始に係る処理段階を特定しているということができる。 しかしながら、前記(イ)では、前記「製品の生産能力」や前記「入札」という情報の具体的な内容は特定されておらず、また、前記「受け付け」る処理や前記受信の「待機」を「開始する」処理の具体的な内容も特定されていないところ、当該処理段階においてどのような情報をどのように処理するのかが具体的に特定されているとはいえない。 また、前記(ウ)の「前記コンピュータが前記通信チャネルを介して受信する新たな入札を受諾するかどうか所定の受諾基準に基づいて判断するステップ」との記載、前記(エ)の「前記受諾基準は前記新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が前記新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなることを含み、」との記載、及び、前記(オ)の「前記コンピュータは切り替え時間と切り替えコストとを入力として前記収益の算出を行う」という記載によれば、前記(ウ)ないし(オ)は、「切り替え時間」と「切り替えコスト」とを入力として「収益」の「算出を行」い、「新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益」が、「新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益」より大きくなるならば受諾するという基準に基づいて、通信チャネルを介して受信する前記新たな入札を受諾するかどうかを「判断する」という、前記「コンピュータ」による算出及び判断に係る処理段階を特定しているということができる。 しかしながら、当該処理段階において、「切り替え時間」と「切り替えコスト」という両入力から「新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益」と「新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益」という両出力を得るとは、コンピュータがどのような情報に対してどのような演算内容の計算を行ってどのような情報を得ることなのかが具体的に特定されているとはいえない。 以上のことを踏まえ、請求項1に係る発明の構成を全体としてみても、請求項1には、製品の生産能力のオークションにおいて受信した「新たな入札」を受諾するかどうかをコンピュータが判断するために、「製品の生産能力」の入力を受け付けた前記コンピュータが、「切り替え時間」と「切り替えコスト」を入力として、前記判断の拠りどころとして必要となる「新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益」及び「新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益」を求めることが抽象的な処理として示されているにすぎないため、そのような、所定の課題を解決するためにコンピュータを用いて達成しようとする情報処理が、どのような情報に対するどのような処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、請求項1に記載された事項に基づいて、具体的に特定することができない。 したがって、請求項1に係る発明において、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているということはできないから、請求項1に係る発明は、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しない。 5-2.請求項20について 請求項20に係る発明の構成を便宜上分説すると、請求項20に係る発明は、 (カ)コンピュータ・ネットワークに通信チャネルを介して接続された複数のコンピュータを用いて製品の生産能力のオークションを行う装置であって、 (キ)売り手による製品の生産能力の入力を前記コンピュータが受け付けて入札の受信の待機を開始する手段と、 (ク)前記コンピュータが前記通信チャネルを介して受信する新たな入札を受諾するかどうか所定の受諾基準に基づいて判断する手段と、を含み、 (ケ)前記受諾基準は前記新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が前記新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなることを含み、 (コ)前記コンピュータは切り替え時間と切り替えコストとを入力として前記収益の算出を行うことを特徴とする装置。 である。 ここで、前記装置に含まれる各手段の機能は、コンピュータのソフトウェアによって実現されるということができるから、請求項20に係る発明は、その発明の実施にソフトウェアを必要とするところの、いわゆるコンピュータ・ソフトウェア関連発明であるということができる。 そこで、請求項20に係る発明を構成する上記(カ)ないし(コ)の事項それぞれについて、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているかを、以下に詳細に検討する。 すると、前記(カ)に記載された「コンピュータ・ネットワークに通信チャネルを介して接続された複数のコンピュータを用いて製品の生産能力のオークションを行う」は、複数の「コンピュータ」が「通信チャネル」を介して「コンピュータ・ネットワーク」に接続されているというシステム構成の概要を特定しているとともに、「製品の生産能力のオークションを行う」という前記システムを構成する複数のコンピュータを用いて達成しようとする情報処理の概要を特定しているにすぎない。 また、前記(キ)に記載された「売り手による製品の生産能力の入力を前記コンピュータが受け付けて入札の受信の待機を開始する手段」は、売り手による「製品の生産能力」の入力を「受け付け」て、「入札」の受信の「待機」を「開始する」という、前記「コンピュータ」による受付及び待機開始に係る処理機能を特定しているということができる。 しかしながら、前記(キ)では、前記「製品の生産能力」や前記「入札」という情報の具体的な内容は特定されておらず、また、前記「受け付け」る処理や前記受信の「待機」を「開始する」処理の具体的な内容も特定されていないところ、当該処理機能においてどのような情報をどのように処理するのかが具体的に特定されているとはいえない。 また、前記(ク)の「前記コンピュータが前記通信チャネルを介して受信する新たな入札を受諾するかどうか所定の受諾基準に基づいて判断する手段」との記載、前記(ケ)の「前記受諾基準は前記新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益が前記新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益より大きくなることを含み、」との記載、及び、前記(コ)の「前記コンピュータは切り替え時間と切り替えコストとを入力として前記収益の算出を行う」という記載によれば、前記(ク)ないし(コ)は、「切り替え時間」と「切り替えコスト」とを入力として「収益」の「算出を行」い、「新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益」が、「新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益」より大きくなるならば受諾するという基準に基づいて、通信チャネルを介して受信する前記新たな入札を受諾するかどうかを「判断する」という、前記「コンピュータ」による算出及び判断に係る処理機能を特定しているということができる。 しかしながら、当該処理機能において、「切り替え時間」と「切り替えコスト」という両入力から「新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益」と「新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益」という両出力を得るとは、コンピュータがどのような情報に対してどのような演算内容の計算を行ってどのような情報を得ることなのかが具体的に特定されているとはいえない。 以上のことを踏まえ、請求項20に係る発明の構成を全体としてみても、請求項20には、製品の生産能力のオークションにおいて受信した「新たな入札」を受諾するかどうかをコンピュータが判断するために、「製品の生産能力」の入力を受け付けた前記コンピュータが、「切り替え時間」と「切り替えコスト」を入力として、前記判断の拠りどころとして必要となる「新たな入札を受諾した場合に売り手が獲得する収益」及び「新たな入札を受諾しない場合に売り手が獲得する収益」を求めることが抽象的な処理として示されているにすぎないため、そのような、所定の課題を解決するためにコンピュータを用いて達成しようとする情報処理が、どのような情報に対するどのような処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、請求項20に記載された事項に基づいて、具体的に特定することができない。 したがって、請求項20に係る発明において、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているということはできないから、請求項20に係る発明は、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しない。 5-3.請求項39について 請求項39に係る発明は、請求項1に係る発明について前記「5-1.」にて詳述した理由と同様の理由によって、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しないということができる。 6.むすび 以上のとおり、この出願の請求項1,20,39に係る発明は、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-02-20 |
結審通知日 | 2008-02-26 |
審決日 | 2008-03-24 |
出願番号 | 特願2001-279777(P2001-279777) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(G06Q)
P 1 8・ 561- Z (G06Q) P 1 8・ 1- Z (G06Q) P 1 8・ 574- Z (G06Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山下 達也 |
特許庁審判長 |
赤穂 隆雄 |
特許庁審判官 |
久保田 健 坂庭 剛史 |
発明の名称 | 電子ネットワーク・オークションにより生産能力を取り引きするシステム |
代理人 | 坂口 博 |
復代理人 | 正林 真之 |