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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08C
管理番号 1182406
審判番号 不服2006-3563  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-27 
確定日 2008-08-06 
事件の表示 特願2002-500356「計量器使用量チェックのための無線端末機と無線通信網を利用した計量器管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月6日国際公開、WO01/93224、平成16年4月8日国内公表、特表2004-511027〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件は、平成13年6月2日(パリ条約による優先権主張2000年6月2日、韓国)を国際出願日とする出願につき、平成17年11月24日付けで拒絶査定(同月30日発送)がされたところ、これに対し、平成18年2月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月29日付けで明細書を補正対象とする手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「平成18年3月29日付けの手続補正」又は「本件補正」という。)が提出されたものである。

2 平成18年3月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年3月29日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
平成18年3月29日付けの手続補正は、特許請求の範囲の記載を、補正前の
「【請求項7】無線通信網;検針命令を伝送しまた検針データを受信するための中心局システム;該中心局システムから検針データを受信して課金額を計算するための料金管理システム;及び、結合部材が形成され計量器に着脱自在な基部、及び前記基部に結合され前記計量器の上部をカバーするケースが構成されて前記結合部材によって計量器に着脱され、前記無線通信網を介して供給される検針命令に応答して計量器の使用量をイメージセンシングし、該イメージセンシングに従って検針データを生成し、該検針データを前記無線通信網を介し送信するように構成された無線端末機、を備えることを特徴とする無線通信網を利用した検針管理システム。」
から、補正後の
「【請求項6】無線通信網;検針命令を伝送しまた検針データを受信するための中心局システム;該中心局システムから検針データを受信して課金額を計算するための料金管理システム;及び、結合部材が形成され計量器に着脱自在な基部、及び前記基部に結合され前記計量器の上部をカバーするケースが構成されて前記結合部材によって計量器に着脱され、前記無線通信網を介して供給される検針命令に応答して計量器の使用量をイメージセンシングし、該イメージセンシングに従って検針データを生成し、該検針データを前記無線通信網を介し送信するように構成された無線端末機、を備え、前記イメージセンシング用のイメージセンサは、ピクセル毎に明暗状態を表わす1ビットのデータでイメージデータを形成するための1次圧縮と、不要な領域を除外してイメージデータの大きさを縮小するための2次圧縮と、イメージデータを10進数に対応するバイナリデータに変換するための3次圧縮を行うように構成されていることを特徴とする無線通信網を利用した検針管理システム。」
に補正する補正事項を含むものである。

本件補正は、補正前の請求項7の「検針管理システム」において、イメージセンシング用のイメージセンサについてさらに「前記イメージセンシング用のイメージセンサは、ピクセル毎に明暗状態を表わす1ビットのデータでイメージデータを形成するための1次圧縮と、不要な領域を除外してイメージデータの大きさを縮小するための2次圧縮と、イメージデータを10進数に対応するバイナリデータに変換するための3次圧縮を行うように構成されている」との限定を付加し、請求項の番号を繰り上げて新請求項6としたものであるから、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項6に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の昭和61年9月16日に頒布された刊行物である特開昭61-208600号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。

ア 「(1)計量装置の表示値を撮像する撮像装置と、この撮像装置からの画像情報を格納する第1の記憶装置と、…、上記第1の記憶装置に格納された画像情報をデータ処理する制御装置と、この制御装置でデータ処理された上記画像情報のデータを格納する第2の記憶装置と、外部からのデータを上記制御装置に伝達し、かつ上記第2の記憶装置に格納されたデータを外部に伝達する通信装置とを備えたことを特徴とする自動検針装置。」(特許請求の範囲請求項1)

イ 「[産業上の利用分野]この発明は自動検針装置に関するものであり、たとえば誘導形電力量計等に用いられる自動検針装置に関するものである。」(1頁右下欄19行?2頁左上欄2行)

ウ 「第1図において、(1)は撮像装置(2)によつて撮像される外部の計量装置、(2)はその第1の入出力端が制御装置(3)に、第2の出力端が第1の記憶装置(5)にそれぞれ接続された撮像装置、(3)は第1の入出力端が撮像装置(2)に、第2の入出力端がタイミング制御装置(4)に、第3の入出力端が第1の記憶装置(5)に、第4の入出力端が第2の記憶装置(6)に、第5の入出力端が表示装置(7)に、第6の入出力端が通信装置(8)にそれぞれ接続された制御装置、(8)は第1の入出力端が制御装置(3)に、第2および第3の入出力端が外部の親コンピユータ(9)に接続された通信装置である。(10)は上記撮像装置(2)、制御装置(3)、タイミング制御装置(4)、第1の記憶装置(5)、第2の記憶装置(6)、表示装置(7)および通信装置(8)を収納した筐体であつて、計量装置(1)に取付けられている。次に、上記構成の動作について説明する。親コンピユータ(9)より通信装置(8)に測定開始信号が伝えられると、制御装置(3)が起動される。制御装置(3)は撮像装置(2)を動作させ、計量装置(1)の表示値を順次読み取り、その画像情報を第1の記憶装置(5)に格納していく。この計量装置(1)の表示値読み取りが終了すると、撮像装置(2)は測定終了信号を制御装置(3)に送る。制御装置(3)はこの測定終了信号を受けて、第1の記憶装置(5)に格納された画像情報を解析して画像をすべて数字に変換した後、この数値信号を第2の記憶装置(8)に格納するとともに、この数値信号を表示装置(7)に表示させる。」(3頁左上欄4行?右上欄13行)

エ 「また、親コンピユータ(9)より計量値送信の信号を通信装置(8)が受信すると、制御装置(3)は撮像装置(2)を動作させて計量装置(1)の表示値を読み取り、その画像情報を第1の記憶装置(5)に格納した後、その画像情報を解析する。このとき、解析データが半読状態のものであると判明したら、制御装置(3)は通信装置(8)を介して半読状態であることを親コンピユータ(9)に伝え、第2の記憶装置(6)に蓄えられている完全な数値データを親コンピユータ(9)に伝送する。また、半読状態でないときは解析した画像情報(数値データ)を第2の記憶装置(6)に格納し、表示装置(7)に表示を行わせ、第2の記憶装置(6)に格納された数値データを親コンピユータ(9)に伝送する。」(3頁右下欄7行?4頁左上欄1行)

したがって、上記ア?エによれば、伝送するのであるから伝送経路が存在していることは明らかであることを考慮すると、引用例1には「伝送経路と、測定開始信号又は計量値送信の信号を伝えまた数値データが伝送される親コンピユータ(9)及び、筐体が構成されて計量装置(1)に取付けられ、前記伝送経路を介して測定開始信号又は計量値送信の信号が伝えられると計量装置(1)の表示値を読み取り、読み取った画像情報を解析して数値データを生成し、該数値データを前記伝送経路を介し親コンピユータ(9)に伝送する自動検針装置を備え、前記計量装置(1)の表示値を読み取るための撮像装置(2)が構成されているシステム」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成10年4月28日に頒布された刊行物である特開平10-111326号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

オ 「【0012】【発明の実施の形態】本発明のシステム及び装置の実施例を図面によって説明する。図1に示すように、本実施例のシステムは、各家庭等の電力消費側に設置される電力読み取り装置10と、電力供給側に設置される情報処理装置50とに大別される。電力読み取り装置10は、電子式電力量計で自動的に使用電力量を計測(自動的検針)し且つ記憶し、定期的に使用電力量を電力供給側の情報処理装置50に報告し、これを基にして電力供給側の管理センターは、課金等の業務を自動的に行う。」(段落【0012】)

カ 「【0014】電力線搬送モデム18は、高周波、FSK、スペクトル拡散などでデータを変調し、HPFなどにより電力線に変調信号を重量する。情報処理装置50は、例えば報告された使用電力量をコンピュータ等で自動的に受信し、所定のプログラムにより、使用電力量に見合った料金を自動的に請求するように金融機関40へ伝達する。従来の電力計は積算電力結果は表示しか行わなかったが、本実施例の電力読み取り装置10は、前述のように、その内部にマイコン、時計、TELモデムデバイス等の通信機能を持つことにより、あらかじめ決められたスケジュールにより使用電力量を検針し、情報処理装置50に報告するので、課金管理、料金請求が自動的にスムースに行われる。」(段落【0014】)

したがって、上記オ?カによれば、料金を請求するためには、料金を計算することが必要であることを考慮すると、引用例2には「検針した使用電力量を受信し、使用電力量に見合った料金を計算する情報処理装置50」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「伝送経路」は、本願補正発明の「無線通信網」と「伝送経路」である点で共通している。

引用発明1の「測定開始信号又は計量値送信の信号」、「数値データ」、「親コンピユータ(9)」、「筐体」、「計量装置(1)」、「表示値」、「読み取り」、「読み取った画像情報を解析して数値データを生成し」、「親コンピユータ(9)に伝送する」は、本願補正発明の「検針命令」、「検針データ」、「中心局システム」、「ケース」、「計量器」、「使用量」、「イメージセンシングし」、「イメージセンシングに従って検針データを生成し」、「送信する」にそれぞれ相当する。

引用発明1の「自動検針装置」は、本願補正発明の「無線端末機」と「端末機」である点で共通している。

引用発明1の「計量装置(1)の表示値を読み取るための撮像装置(2)」、「システム」は、本願補正発明の「イメージセンシング用のイメージセンサ」、「検針管理システム」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
[一致点]
「伝送経路と、検針命令を伝送しまた検針データを受信するための中心局システム及び、ケースが構成されて計量器に取付けられ、前記伝送経路を介して供給される検針命令に応答して計量器の使用量をイメージセンシングし、読み取った画像情報を解析して数値データを生成し、該数値データを前記伝送経路を介し送信する端末機を備え、前記イメージセンシング用のイメージセンサが構成されている検針管理システム」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
伝送経路及び自動検針装置が、本願補正発明では「無線通信網」及び「無線」端末機であるのに対して、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。

[相違点2]
検針管理システムが、本願補正発明では「中心局システムから検針データを受信して課金額を計算するための料金管理システム」を備えているのに対して、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。

[相違点3]
端末機が、本願補正発明では「結合部材が形成され計量器に着脱自在な基部、及び前記基部に結合され前記計量器の上部をカバーするケースが構成されて前記結合部材によって計量器に着脱され」ているのに対して、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。

[相違点4]
イメージセンシング用のイメージセンサが、本願補正発明では「ピクセル毎に明暗状態を表わす1ビットのデータでイメージデータを形成するための1次圧縮と、不要な領域を除外してイメージデータの大きさを縮小するための2次圧縮と、イメージデータを10進数に対応するバイナリデータに変換するための3次圧縮を行うように構成されている」を備えているのに対して、引用発明1では、読み取った画像情報を解析して数値データを生成する具体的構成が特定されていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

[相違点1]について
検針データを無線により伝送を行うことは周知の技術であるから(例えば、特開平10-70519号公報の「実施の形態1」等を参照)、かかる周知の技術を引用発明1に適用して、本願補正発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。

[相違点2]について
検針した使用電力量を受信することに加えて、使用電力量に見合った料金を計算する機能を備えた引用発明2を、検針に関する発明である引用発明1に適用して、本願補正発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。

[相違点3]について
自動検針装置を電力量計に着脱可能に取付けることは周知の技術であり(例えば、特開昭60-144899号公報3頁右上欄20行?左下欄2行等を参照)、着脱可能に取付けるための部材として結合部材を設けることは格別なものではないから、上記周知の技術を引用発明に適用して、本願補正発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。

[相違点4]について
読み取った画像データを2値化して、読み取った画像から数字を数値を表現するバイナリコードに変換する認識を行うことは、例えば、特開平3-164854号公報4頁左上欄11?20行等に記載されており、2値化することは本願補正発明の1次圧縮に相当し、バイナリコードに変換することは本願補正発明の3次圧縮に相当するものであり、いずれも周知の技術である。さらに上記特開平3-164854号公報5頁右上欄9?13行には、パターンを切り出す処理を行うことが記載されており、パターンを切り出すことは不要な領域を除外することに他ならないから、パターンを切り出すことは本願補正発明の2次圧縮に相当し、この点も周知の技術にすぎない。したがって、かかる周知の技術を引用発明1に適用して、本願補正発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の奏する効果も引用例1及び2の記載並びに周知の技術から当業者が容易に予測し得る範囲のものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び2並びに周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条
2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明
平成18年3月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?13に係る発明は、平成17年7月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「2(1)」の本件補正前の特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定されるとおりのものである。

4 引用例
引用例1及び2には、図面とともに上記「2」の「(2)」において摘記した事項が記載されており、引用例1及び2には、同「(2)」において認定したとおりの引用発明1及び2が記載されているものと認められる。

5 対比・判断
本願発明は、上記「2」において検討した本願補正発明の発明特定事項のうち、イメージセンシング用のイメージセンサについての限定を省いたものであり、本願補正発明が、引用発明1及び2並びに周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項1?6、8?13に係る発明について判断を示すまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-12 
結審通知日 2008-03-13 
審決日 2008-03-26 
出願番号 特願2002-500356(P2002-500356)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G08C)
P 1 8・ 121- Z (G08C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴野 幹夫杉浦 淳  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 岡田 卓弥
下中 義之
発明の名称 計量器使用量チェックのための無線端末機と無線通信網を利用した計量器管理システム  
代理人 小田 富士雄  
代理人 小田 富士雄  

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