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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F22G
管理番号 1182417
審判番号 不服2006-9931  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-16 
確定日 2008-08-20 
事件の表示 特願2003- 80577「過熱蒸気発生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 9日出願公開、特開2004-251605〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成14年4月2日に出願された特願2002-100174号、同年8月5日に出願された特願2002-227007号、及び同年12月27日に出願された2002-379645号を優先権の基礎として、平成15年3月24日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成17年11月25日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認められる(以下、「本願発明」という。)。

「発生させた水蒸気を案内する導管の途中に金属製の過熱タンクを配置しその外側に高周波交流電源に接続したコイルを配置した電磁誘導式の過熱蒸気発生装置において、過熱タンク内にその軸芯と直角に磁性体である多数の板材によって隔壁を形成し、隔壁とタンクとを一体化し、直列に配置した区画室を連通させる透孔を隔壁に多数穿設した過熱蒸気発生装置。」

2.引用例

(1)原査定の拒絶の理由に引用した国際公開第02/04033号パンフレット(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「発明を実施するための最良の形態
滅菌・ウイルス/遺伝子組換え関連物の不活化処理は、蒸気を、約24KHzの高周波電磁場誘導加熱手段による輻射熱によって、超高温化し、えられた超高温化蒸気を使うことを特徴とする。
本発明で蒸気とは、水蒸気、アンモニアなど加熱によって、容易に蒸気になる物質が選択される。特に、蒸気の状態において、輻射熱の吸収効率のよい媒体が好ましい。後述する実施例では水蒸気を最良の態様として選択したがこれに限られるものではない。最初の蒸気の発生は、後の輻射熱発生と同一室内でおこなってもよいし、別の室で行ってもよい。好ましくは、別室がよい。輻射熱発生の室は、300℃?1000℃の高温となるので、そのような高温に耐える構造・材料を使う必要があるからである。最初の蒸気の発生は、沸騰による。沸騰は、水等の蒸気原料を適宜供給しおこなう。沸騰のためには、効率的には、高周波交流電源によって電磁場を形成させ、渦電流によるジュール熱で加熱する。
高周波とは、通常20KHz以上、好ましくは20?30KHzである。電磁場の形成は、熱伝導性に優れた例えば銅製(その他、銀やアルミニウム)の筒状タンクを断熱性物質例えばセラミックでおおい、この断熱性物質の外面を導電性線材(例えばガラス繊維で被覆された銅線等)で巻回して誘導コイルを形成させ、高周波交流電源を流して、ジュール熱を発生させる。一方で蒸気原料例えば水をタンク内に供給し、上記の熱によって、沸騰・蒸気化せしめる。この処理により、沸騰蒸気の発生を連続的に数秒で行うことができる。蒸気原料の供給は、一般的には1?100ml/秒で行われる。あるいは、蒸気原料の一定量をタンク内に留置させる手段を導入してもよい。
沸騰蒸気は、ついで、20KHz以上、好ましくは20?30KHzの高周波を使った電磁場誘導加熱手段による輻射熱による加熱処理がされる。加熱容器は、上記と同様の構造であるが、より高熱となるため例えば300℃?千数百℃の高熱にたえうる構造、材料、厚さを形成することが必要である。好ましくは、構造として、多数のフィン構造の導入(空冷法)、水冷法の導入を考慮することが必要である。冷却法として、誘導コイルに中空コイルを利用して、コイル内を冷却媒体を流すことによっても効率的に温度調節が可能である。
沸騰蒸気は、順次この輻射熱手段のタンクに送り込まれ、ここで上記と同じ高周波交流電源-誘導コイルによる電磁場による加熱処理が行われる。高周波とは前記と同じである。タンクに送り込まれた沸騰蒸気は、発生した輻射熱を効率的に吸収して、急速な温度上昇が達成される。約500℃になるのに数秒である。温度調整は、送り込まれる沸騰蒸気量と高周波電源の通電量、及び冷却手段によって行われる。かくして、300?千数百℃のスーパー蒸気が極めて容易に調製される。」(第4頁第17行-第6頁第7行)

・「図1は、スーパー蒸気による滅菌・微生物不活化処理装置の正面断面図であり、図2は、その側面断面図である。蒸気発生装置によって約100℃に調製された蒸気は、蒸気流入口Cから、スーパー蒸気発生装置10(図3)に流入する。スーパー蒸気発生装置10は、高耐熱性の材料で作製され、図3に示すように蒸気の流路である迷路状の流孔Eを有しており、超加熱状態を調整する機能をもつ。この装置は、スーパー蒸気が約300?1000℃程になるので、種々耐熱性のための自公体知の材料・構造・付加手段の導入が必要である。スーパー蒸気発生装置10は、約25kHzの高周波交流電流をコイル11を通電させることで、磁場が形成され、流入した蒸気は、輻射熱を吸収して数秒で約300?1000℃の温度に上昇し、スーパー蒸気となる。スーパー蒸気は、スーパー蒸気流出口Dから滅菌・微生物不活化処理部Bに放出され、減菌処理部位Bに搬入された被処理物のシャワー滅菌・微生物不活化がなされる。滅菌・微生物不活化は数秒で完了し、スーパー蒸気は蒸気回収用のスーパー蒸気流出口Aから再利用のため蒸気発生装置に回収される。かくして調製された装置は、静かで、小型で、極めて効率的な滅菌・微生物不活化装置を提供する。 」(第8頁第1-17行)

また、スーパー蒸気発生装置の筒状タンクは、その蒸気流入口Cから蒸気発生装置で発生された蒸気が供給され、この筒状タンクで発生させたスーパー蒸気がスーパー蒸気流出口Dから滅菌・微生物不活性化処理部Bに放出されるものであり、第1図及び第2図を参照すると、「発生させた蒸気を案内する導管の途中に配置」されたものといえる。

更に、第3図には、スーパー蒸気発生装置の筒状タンクの内部に、その軸芯と直角に多数の板材を設け、これによって隔壁を形成し、また、直列に配置した区画室を連通させる流孔Eを設けた点が記載されている。

加えて、前記多数の板材は、筒状タンク内に蒸気の流路を形成するものであるから、筒状タンクと一体化されているのは、明らかである。

したがって、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明」という。)。

「発生させた水蒸気を案内する導管の途中に金属製の筒状タンクを配置しその外側に高周波交流電源に接続したコイルを配置した電磁誘導式のスーパー蒸気発生装置において、筒状タンク内にその軸芯と直角に多数の板材によって隔壁を形成し、隔壁と筒状タンクとを一体化し、直列に配置した区画室を連通させる流孔を設けたスーパー蒸気発生装置。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用した特開平11-94203号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「【0014】過熱部3は、水平横向きの管体31内に、発熱体32を収納し、管体31に励磁コイル33を巻回したものである。管体31は耐熱性、耐蝕性及び耐圧性に優れたセラミック等の非磁性材料によりパイプ状に形成されたものである。管体31内に収納された発熱体32は、前記励磁コイル33により発生する磁界変化により発熱する金属等の導電性材料により多数の通路を形成したものである。即ち、過熱部3も電磁誘導加熱部として構成されている。」

・「【0022】(中略)このような発熱体の構造を図5及び図6により説明する。なお、発熱体の構造は、大きさが異なるものの、ボイラ部2及び過熱部3で同じ形態のものを用いることが好ましい。
【0023】図5の如くジグザグの山型に折り曲げられた第1金属板531と平たい第2金属板532とを交互に積層し、全体として円筒状の積層体に形成したものである。この第1金属板531や第2金属板532の材質としては、SUS447J1の如きマルテンサイト系ステンレスが用いられる。」

・「【0031】(中略)発熱体12,32には、強磁性体の導電性材料であって、且つ耐蝕性に優れたマルテンサイト系ステンレスが好ましいが、これに限らない。非磁性又は弱磁性の導電性材料であるSUS304であってもよいし、非磁性の導電性材料である炭素又は炭素化合物(セラミック)も使用可能である。」

(3)原査定の拒絶の理由に引用した特開2002-22107号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「【0024】蒸気発生容器(2)と蒸気過熱容器(3)とは共に金属製であり、略同心円上に配され、底部を共通としている。又、両者の上端部は連通し蒸気が通ることのできる連通部(10)が形成されている。」

・「【0029】蒸気過熱容器(3)の内周と蒸気発生容器(2)の外周との間には金属製で螺旋状の仕切板(11)が設けられている。」

・「【0031】過熱用の電磁誘導コイル(5)に高周波電流を流すと流路(12)を構成する蒸気過熱容器(3)と蒸気発生容器(2)と仕切板(11)が誘導加熱により加熱され、流路(12)を通過する蒸気を加熱する。これにより、蒸気が過熱蒸気となる。」

3.対比

本願発明と引用例1発明とを対比する。

引用例1発明の「筒状タンク」は本願発明の「過熱タンク」に相当し、同様に、「スーパー蒸気」は「過熱蒸気」に相当する。また、引用例1発明の「流孔」と本願発明の「透孔」とは、ともに「連通孔」といえる。

したがって、両者は、

「発生させた水蒸気を案内する導管の途中に金属製の過熱タンクを配置しその外側に高周波交流電源に接続したコイルを配置した電磁誘導式の過熱蒸気発生装置において、過熱タンク内にその軸芯と直角に多数の板材によって隔壁を形成し、隔壁とタンクとを一体化し、直列に配置した区画室を連通させる連通孔を設けた過熱蒸気発生装置。」

の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では、「磁性体である多数の板材によって隔壁を形成」するのに対して、引用例1発明では、多数の板材によって隔壁を形成するが、多数の板材が磁性体であるか否か不明な点。

[相違点2]
本願発明では、「区画室を連通させる透孔を隔壁に多数穿設した」のに対して、引用例1発明では、区画室を連通させる流孔を設けるが、この流孔が隔壁に多数穿設されたものか否か不明な点。

4.判断

上記相違点について検討する。

相違点1について、
引用例2には、過熱蒸気発生装置において、過熱部内に収納した発熱体を磁性体として、誘導加熱した点が記載されている。

また、引用例3には、過熱蒸気発生装置において、流路を構成する蒸気過熱容器と、その中に配置した仕切板とを、ともに誘導加熱した点が記載されている。

したがって、引用例1発明において、隔壁を形成する多数の板材を磁性体とし、金属製の過熱タンとともに、誘導過熱することは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、審判請求人は、平成18年5月16日付け審判請求書において、本願発明の作用効果として、「隔壁の存在によって過熱蒸気は膨張させられるから、区画室内で乱流状態となりそのまま透孔を通過して隣の区画室へ噴出させられ、各区画室を順次通過して最終的には高温高圧の状態でタンクの排出側から勢いよく噴出することになる。」(第2頁第24-26行)と主張する。

しかし、引用例1発明においても、多数の板材を磁性体とすると、多数の板材も誘導加熱されることから、加熱タンクに流入した蒸気は、当然に区画室内で膨張し、また、蒸気の流路が、多数の板材及び流孔Eにより、迷路状に形成されていることから、当然に乱流状態となるものと予測できる。

したがって、前記審判請求人の主張は、格別のものではない。

相違点2について、
引用例1の第3図に記載されるような筒状タンクにおいて、直列に配置した区画室を連通させるに際して、当業者が最初に考え得る最も一般的な手法は、隔壁に多数の透孔を穿設することである。

したがって、引用例1発明において、区画室を連通させる流孔を設けるに際して、隔壁に多数の透孔を穿設することは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1ないし3に記載された事項から当業者が予測できた範囲内のものである。

5.むすび

本願発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-04 
結審通知日 2007-04-10 
審決日 2007-04-24 
出願番号 特願2003-80577(P2003-80577)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F22G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大屋 静男  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
間中 耕治
発明の名称 過熱蒸気発生装置  
代理人 肥田 正法  
代理人 肥田 正法  
代理人 肥田 正法  

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