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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1182429
審判番号 不服2005-4796  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-18 
確定日 2008-08-08 
事件の表示 特願2002-255977「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年3月25日出願公開、特開2004-89490〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年8月30日を出願日とする特許出願であって、平成16年9月22日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年11月26日に意見書が提出され、平成17年2月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月18日に拒絶査定不服審判が請求され、同日付けで手続補正がなされたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年3月18日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 遊技機の主制御を行うメイン制御装置と、
前記メイン制御装置からの制御信号に基づいて遊技機の構成要素の制御を行う第1のサブ制御装置と第2のサブ制御装置とを備え、
前記メイン制御装置は、前記第1のサブ制御装置と前記第2のサブ制御装置とに向けて制御信号を送信し、
前記第2のサブ制御装置は、前記第1のサブ制御装置からの制御信号を受信するための受信手段と、
前記第1のサブ制御装置からの前記制御信号に基づいて遊技を制御する信号処理手段と、
前記メイン制御装置から送信された制御信号が前記第1のサブ制御装置と前記第2のサブ制御装置とに入力した所定の契機からの経過時間を計測する時間計測手段と、
前記受信手段から前記信号処理手段に前記第1のサブ制御装置からの前記制御信号を取得可能な許可状態と取得不能な禁止状態とに切り換える切換手段とを備え、
前記時間計測手段によって計測された前記所定の契機からの経過時間が予め定められた待機時間となったときに、前記切換手段を前記許可状態にすると共に、
前記第1のサブ制御装置は、前記所定の契機後であって、前記待機時間の経過前に開始されかつ前記待機時間の経過後に終了する信号送信期間の間に、同じ制御信号を前記第2のサブ制御装置に向けて送信し続けることを特徴とする遊技機。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-29624号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、
【0005】【課題を解決するための手段及び効果】前記課題を解決するため請求項1に記載の遊技機は、遊技の進行を司る主制御基板と、該主制御基板による遊技の進行に基づいた画像を表示する画像表示制御基板と、を含む遊技機において、前記画像制御基板に、前記表示される画像に対応した音を出力制御する画像音制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】主制御基板30は、遊技制御プログラムを記憶したROM及び演算等の作業領域として働くRAMを内蔵した8ビットワンチップマイコンを中心とした論理演算回路として構成され、この他各基板又は各種スイッチ類及び各種アクチェータ類との入出力を行うための外部入出力回路も設けられている。・・・
【0025】音制御基板35は、図5に示すように、入出力回路(I/O回路)35a、音源IC35b及びアンプ35c等から構成されており、主制御基板30の指令を受けてスピーカ46を駆動制御するためのものである。本具体例では、前記特別図柄表示装置32の図柄制御基板32bと入出力回路35aとも電気的に接続されており、図柄制御基板32bからデータを入出力回路35aに送信できる構成とされている。
【0026】前述した特別図柄表示装置32、賞球制御基板31、発射制御基板33、ランプ制御基板34及び音制御基板35への送信は、主制御基板30からのみ送信することができるよう一方向通信の回路として構成されている。
【0034】1.電源投入時
電源投入時のコマンドは、遊技機10に電源が投入されたとき主制御基板30から図柄制御基板32bに送信されるコマンドであり、10H及び01Hの2バイト命令で構成されている。図柄制御基板32bがこのコマンドを受信するとROMに書込まれた制御プログラムに従ってLCD32aの画面上に電源投入時のデモ画面を表示する。・・・
【0057】・・・図柄制御基板32bのマイコンは、受信したスタートコード及び各停止図柄指定コードに基づきROMから出力すべき効果音に対応したデータを読み出す処理を実行する(ステップS100)。出力すべき効果音に対応したデータを読み出すと、図柄制御基板32bのマイコンは図示しない出力回路を介して音制御基板35の入出力回路35aに前記効果音に対応したデータを出力する(ステップS110)。音制御基板35は、受信した音データを音源IC35b及びアンプ35cを介してスピーカ35cに出力する。・・・
との記載が認められる。

摘記した上記の記載によれば、引用文献1には、
「 遊技の進行を司る主制御基板30と、
前記主制御基板30から送信されるコマンドに対応してLCD32aの画面を表示する図柄制御基板32bと前記主制御基板30の指令を受けてスピーカ46を駆動制御する音制御基板35とを備え、
前記主制御基板30は、前記図柄制御基板32bにコマンドを送信、前記音制御基板35に指令を送信し、
前記音制御基板35は、前記図柄制御基板32bからデータを入出力回路35aに送信できる構成とされ、
前記図柄制御基板32bから受信した音データを音源IC35b及びアンプ35cを介してスピーカ35cに出力するようになっている遊技機。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

また、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-353326号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、
【0038】引き続き、主制御基板100から払出制御基板190への制御コマンドの送信について再び図4を参照して説明する。ここでは、主制御基板100のCPU104から、図8中に示す1個払出しの31の16進信号(H)の1バイトのコマンド(00110001)とストローブ信号、及び、CFの16進信号(H)の1バイトのコマンド(11001111)とストローブ信号とが送られる場合を例に挙げて説明する。先ず、主制御基板100のCPU104から、制御コマンドが送られると、出力ポート105で、ストローブ信号が出力ポート106に入力された時点でラッチされ、ラッチされた制御コマンドが出力バッファ107へ送信される。・・・
【0039】出力バッファ107、108からの電位は、ラインCを介して払出制御基板190の入力バッファ195、196へ入力される。ここで、出力バッファ107、108からの制御コマンド及びストローブ信号は、ラインCにて電位が低下しているため、入力バッファ195,196にて電位がTTLレベルまで高められ、払出制御基板190側のCPU194へ入力される。即ち、制御コマンドは、CPU194の入力端子(図示せず)、ストローブ信号は割込端子194aへ入力される。
【0040】本実施形態では、出力バッファ107及び入力バッファ195として、端子107a及び端子195aを接地することで、電圧降下を回復させるように動作させるため、後述するように制御コマンドを3回入力することが意味を持つ。即ち、既存の出力バッファをストローブ信号に同期して制御すると、出力はラッチされているため複数回読み出しても意味がないのに対して、本実施形態では、入力値がラッチされないので、出力バッファ、入力バッファでノイズによって誤った入力値がラッチされることがなくなる。また、制御コマンドを3回以上入力することで、ノイズに影響されない制御コマンドとノイズに影響された制御コマンドとが入力された際に、ノイズに影響されない制御コマンドを特定することが可能になる。
【0041】引き続き、払出制御基板190のCPU194による処理について、図15のフローチャートを参照して説明する。先ず、払出制御基板190のCPUは、入力バッファ196を介して割込端子194aへのストローブ信号の入力が開始されたかを判断する(S12)。ここで、ストローブ信号の入力が開始されると(S12:Yes)、制御コマンドの残り受信回数nとして3を設定する(S16)。そして、3回分の割り込み周期に相当する60μsのタイマがスタートしたかを判断する(S18)。タイマがスタートしていない時には(S18:No)、タイマをスタートする(S20)、そして、60μsが経過するまで待機し(S22:No)、60μsが経過してタイマがタイムアウトすると(S22:Yes)、入力バッファ195からの制御コマンドを入力し(S24)、入力した制御コマンドをRAM193へ格納する(S26)。その後、残り受信回数nから1を減算して2とし(S28)、nが0か、即ち、3回の受信が完了したかを判断する(S30)。ここでは、第1回目のデータを入力したところなので(S30:No)、一旦処理を終了する。
【0042】次回のCPU194の割り込み周期においては、ストローブ信号開始かのS12の判断がNoとなり、ステップ14へ進み、残り受信回数nが1以上か判断する。ここでは、nが2なので(S14:Yes)、ステップ18へ移行し、上述したと同様に処理を進め、制御コマンドを入力してRAM193へ格納する。
【0047】上述した説明では、払出制御基板190による制御コマンドの受信処理を例に挙げて説明したが、図5に示す特別図柄制御装置120、図6に示す音声制御装置170、図7に示すランプ制御装置140も、払出制御基板190と同様に3回制御コマンドを受信し、受信した制御コマンドを比較して、数多く一致している制御コマンドに従い処理を行う。このため、ノイズの影響を受けず、正しい処理を行うことができる。
との記載が認められる。

摘記した上記の記載によれば、引用文献2には、
「主制御基板100が制御コマンド及びストローブ信号を送信するとともに、音声制御装置170が前記ストローブ信号の入力後に前記制御コマンドを3回受信する技術」が開示されていると認められる。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「遊技の進行を司る」は、本願発明の「遊技機の主制御を行う」に相当し、以下同様に、
「主制御基板30」は「メイン制御装置」に、
「主制御基板30から送信されるコマンドに対応して」及び「主制御基板30の指令を受けて」は「メイン制御装置からの制御信号に基づいて」に、
「図柄制御基板32b」は「第1のサブ制御装置」に、
「音制御基板35」は「第2のサブ制御装置」に、
「図柄制御基板32bにコマンドを送信」は「第1のサブ制御装置に向けて制御信号を送信」に、
「音制御基板35に指令を送信」は「第2のサブ制御装置に向けて制御信号を送信」に、
「入出力回路35a」は「受信手段」に、
「音源IC35b及びアンプ35c」は「信号処理手段」に、それぞれ相当する。

また、引用文献1全体の記載等からみて、以下のことが言える。
a.「LCD32a」及び「スピーカ46」は、いずれも遊技機の構成要素であるから、引用発明における「LCD32aの画面を表示する」こと及び「スピーカ46を駆動制御する」ことは、本願発明における「遊技機の構成要素の制御を行う」ことに相当する。

b.引用発明において、「音制御基板35」が、「図柄制御基板32bからデータを入出力回路35aに送信できる構成」とされていることは、「音制御基板35」が「図柄制御基板32bからのデータを受信するための入出力回路35a」を備えているといえるとともに、「図柄制御基板32bからのデータ」は、本願発明の「第1のサブ制御装置からの制御信号」に相当するということができる。

c.引用発明において、「図柄制御基板32bから受信した音データを音源IC35b及びアンプ35cを介してスピーカ35cに出力するようになっている」ことは、「図柄制御基板32bからの音データに基づいてスピーカ35cに出力する音源IC35b及びアンプ35cを備えている」ことと言えるとともに、「図柄制御基板32bからの音データ」及び「スピーカ35cに出力する」は、それぞれ本願発明の「第1のサブ制御装置からの制御信号」及び「遊技を制御する」に相当するということができる。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技機の主制御を行うメイン制御装置と、
前記メイン制御装置からの制御信号に基づいて遊技機の構成要素の制御を行う第1のサブ制御装置と第2のサブ制御装置とを備え、
前記メイン制御装置は、前記第1のサブ制御装置と前記第2のサブ制御装置とに向けて制御信号を送信し、
前記第2のサブ制御装置は、前記第1のサブ制御装置からの制御信号を受信するための受信手段と、
前記第1のサブ制御装置からの前記制御信号に基づいて遊技を制御する信号処理手段とを備えた遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、「第2のサブ制御装置」が「メイン制御装置から送信された制御信号が第1のサブ制御装置と第2のサブ制御装置とに入力した所定の契機からの経過時間を計測する時間計測手段と、受信手段から信号処理手段に前記第1のサブ制御装置からの制御信号を取得可能な許可状態と取得不能な禁止状態とに切り換える切換手段とを備え」ているのに対し、引用発明の「音制御基板35」は、そのような手段を有しているか否か明らかでない点。

[相違点2]
本願発明は、「第2のサブ制御装置」が「時間計測手段によって計測された前記所定の契機からの経過時間が予め定められた待機時間となったときに、前記切換手段を前記許可状態にすると共に」、「第1のサブ制御装置」が「前記所定の契機後であって、前記待機時間の経過前に開始されかつ前記待機時間の経過後に終了する信号送信期間の間に、同じ制御信号を前記第2のサブ制御装置に向けて送信し続ける」のに対し、引用発明の「音制御基板35」及び「図柄制御基板32b」は、どのようにして「図柄制御基板32b」(第1のサブ制御装置)から「音制御基板35」(第2のサブ制御装置)に「データ」(制御信号)を送信しているのか明らかでない点。

4.判断
[相違点1について]
複数台の制御装置が接続されたマルチプロセッサシステムにおいて、基準時点からの経過時間を計測する時間計測手段と、各制御装置が受信手段から該制御装置の信号処理手段に他の制御装置からの制御信号を取得可能な許可状態と取得不能な禁止状態とに切り換える切換手段とを備えて、制御装置間の処理動作を時分割で行うことは、例えば、文献3:特開平6-301651号公報(特に、段落0012?0015及び図1、2を参照)、文献4:特開平6-314261号公報(特に、段落0018?0023、0029?0031、図1及び表1を参照)及び文献5:特開平9-114775号公報(特に、段落0010?0013及び図1、2を参照)に記載されているように、従来周知の技術である。
また、メイン制御装置と複数台のサブ制御装置が接続されたマルチプロセッサシステムにおいて、複数台のサブ制御装置の各々に基準時点からの経過時間を計測する時間計測手段を設けることも、例えば、文献6:特開平2-68649号公報(特に、第2頁右下欄下から4行目?第3頁右上欄第12行目及び第1、2図を参照)及び文献7:特開昭56-123052号公報(特に、第2頁左下欄末行?同頁右下欄第11行目及び第1図を参照)に記載されているように、従来周知の技術である。
そして、遊技機の分野においても、メイン制御装置と複数台のサブ制御装置を接続し、これらの制御装置の下で遊技機の構成要素の制御を行うことは従来慣用されているから、引用発明にマルチプロセッサシステムの分野における上記周知技術を採用し、上記相違点1に係る構成とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)にとって格別困難なことではない。

[相違点2について]
引用文献2(特開2001-353326号公報)には、上記2.引用文献の項で述べたように、「主制御基板100が制御コマンド及びストローブ信号を送信するとともに、音声制御装置170が前記ストローブ信号の入力後に前記制御コマンドを3回受信する技術」(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が開示されていると認められる。
また、引用文献2記載の技術における「音声制御装置170」は「ストローブ信号の入力後」に「主制御基板100」から送信されている「制御コマンドを3回受信」しているのであるから、「主制御基板100」は、少なくとも「ストローブ信号の入力後」所要の期間「同じ制御コマンドを音声制御装置170に向けて送信し続ける」ものということができる。
ところで、引用文献2記載の技術は、主制御基板100が制御コマンド及びストローブ信号を送信し、音声制御装置170がストローブ信号を入力の契機として制御コマンドを受信する技術であるが、主制御基板100は制御コマンドを送る側の基板、音声制御装置170は制御コマンドを受ける側の基板として機能しているものと把握できるので、この技術を引用発明の「前記音制御基板35は、前記図柄制御基板32bからデータを入出力回路35aに送信できる構成」に対して適用することは、当業者にとって格別困難なことではない。
そして、引用発明に上記[相違点1について]の項で述べた周知技術を採用するに際して、引用文献2記載の技術を併せて適用すれば、「音制御基板35」が「図柄制御基板32b」から「データを取得可能な期間」において、「図柄制御基板32b」が「音制御基板35に向けてデータを送信し続ける」構成となり、上記周知技術を採用した場合の上記「データを取得可能な期間」は、「主制御基板30」が「図柄制御基板32bにコマンドを送信」し「音制御基板35に指令を送信」する時点(基準時点)からの経過時間を計測した上で、「音制御基板35」が「図柄制御基板32b」からの「データ」を取得可能な許可状態に切り換えている期間となり、かつ、その基準時点と「データ」を取得可能な許可状態に切り換えている期間の開始時点との間になんらかの待機時間が存在することになるのは当然であるから、引用発明にマルチプロセッサシステムの分野における上記周知技術を採用するとともに、上記引用文献2記載の技術を適用して、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

さらに、本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術及び従来周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-29 
結審通知日 2008-06-04 
審決日 2008-06-24 
出願番号 特願2002-255977(P2002-255977)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 森 雅之
太田 恒明
発明の名称 遊技機  
代理人 松浦 弘  

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