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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1183006
審判番号 不服2005-19228  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-06 
確定日 2008-08-15 
事件の表示 特願2000-383701「サーバ装置、コンテンツ配信方法、記憶媒体およびコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月28日出願公開、特開2002-183354〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年12月18日の出願であって、平成17年8月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後当審において平成20年2月15日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月28日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成20年4月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】 通信ネットワークを介して相互に各種情報の授受が可能なサーバ装置と複数のユーザ端末とにより構成されたコンテンツ配信システムにおける前記サーバ装置であって、
第1のユーザ端末から、該第1のユーザ端末の利用者によって一次または二次著作物として作成されたコンテンツと、当該コンテンツに関する権利者が、前記第1のユーザ端末の利用者のみであるか、または、前記第1のユーザ端末の利用者及び該第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者でなるかを択一的に選択した情報および、後者が選択された場合に前記第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者を指定する情報でなる権利者情報とを受け付ける手段と、
第2のユーザ端末から、コンテンツの配信要求を受け付ける手段と、
前記受け付けたコンテンツを同時に受け付けた前記権利者情報に対応付けて記憶する手段と、
前記受け付けたコンテンツの配信要求に応じて、前記記憶されたコンテンツのうち要求されたコンテンツを読み出して、該要求を行った第2のユーザ端末に対して配信する手段と、
広告供給者から供給される広告情報を記憶する手段と、
いずれかの前記ユーザ端末に対して前記記憶された広告情報を配信する手段と、
前記配信されたコンテンツに対応する権利者情報を参照して、前記広告供給者から入金される広告料の少なくとも一部の金額を、前記第1のユーザ端末の利用者および/または前記配信されたコンテンツに関する権利者であって前記第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者に分配する手段と
を備えたことを特徴とするサーバ装置。」

3.当審の拒絶理由
一方、当審において平成20年2月15日付けで通知した拒絶の理由の概要は、

「(1)本件出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開平11-250145号公報
2.特開平9-73487号公報
3.特開2000-11251号公報

(2)本件出願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」

というものである。

4.引用例
[引用例1]
上記拒絶の理由に引用された特開平11-250145号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項4】 データ伝送路を介してコンテンツ情報提供者からコンテンツ情報利用者に対して所要のコンテンツ情報を適宜提供するコンテンツ情報流通システムであって、
前記コンテンツ情報提供者に設けられ、創作された情報自体もしくは当該情報の構成要素(以下、情報もしくは構成要素)を記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記コンテンツ情報提供者に設けられ、コンテンツ情報利用者からの要求に応じて、前記記憶手段から所要の情報もしくは構成要素を引き出し、これらをコンテンツ情報としてコンテンツ情報利用者に伝送する伝送制御手段と、
前記コンテンツ情報利用者に設けられ、要求に応じてコンテンツ情報提供者より伝送されたコンテンツ情報を再現する再現手段と、
を備えたことを特徴とするコンテンツ情報流通システム。
【請求項5】 前記コンテンツ情報提供者は、創作された情報を前記伝送路を介してコンテンツ情報創作者から取り込む取り込み手段を具備することを特徴とする請求項4記載のコンテンツ情報流通システム。」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、権利としての情報の中味である例えば画像を一定の記憶手段に権利情報として引き出し自在に保存しておき、第三者はそれを必要なときに必要な量だけ引き出して使用し、その使用形態に応じて権利者に使用料を支払うというコンテンツ情報流通システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】高度情報化社会は、技術を含む多くの情報を社会に提供(情報の発信)し、それを自由に取捨選択することにより更なる発展を遂げてきたことは、まぎれもない事実である。特に、電子メディアとよばれるものは、ハイテク産業ゆえに技術の進歩が新しい機器を作り、そこから新しいニーズが生れ、そして新しい方式を作り出すという関係が繰り返され新しいメディアが開発・実用化され普及・発展してきている。
【0003】ところで、その普及・発展の前提となる情報、更にいえば情報の中味であるコンテンツは、必要な情報を、必要なときに、必要な場所で、簡単に、安定で安全に、継承性を持って、人に迷惑をかけず、適正な料金で「授受」できかつそれを使っての新しい「制作」へとつなげて行くことが重要なこととなる。」

(ウ)「【0034】3は、情報の中味を引き出し自在に記憶する、例えばROM/RAM、サーバー等の記憶手段であり、2の制作手段により制作された作品を蓄積したり、創作された全内容もしくはその全内容を必要に応じて領域分割しそれぞれに対して検索のために識別符号を付したりするものである。そして、蓄積すべき情報の種類により動画、静止画、文字、データ、音声対応に大別できる。このうち、動画と音声は、一般にリアルタイム性をもって扱う必要があり、静止画、文字、データはリアルタイム性は要求しない。また、多くの場合、動画とデータは情報量が大きく、その他は、それ程大きな情報量ではない。
【0035】ここで、サーバーとしては、動画を扱えるビデオサーバーと、データを扱うデータサーバーに分けられ、通常音声はビデオサーバーに、静止画と文字はデータサーバーに同居することになる。なお、これらの情報を全て同一のサーバーに蓄積しても勿論よいものである。
【0036】ビデオサーバーとしては、「ファイル転送型」と「リアルタイム転送型」があるが、受信側で動画処理等の複雑な操作を伴わない場合、コスト面でリアルタイム転送型が有利となる。」

(エ)「【0048】そして、この表示手段からの情報は、再び創作手段等へフィードバックされるものである。」

(オ)「【0050】次に、上述したようなコンテンツ情報流通システムの具体的な構成・機能を、図面を参照しながら更に詳細に説明する。
【0051】図2は、図1に示すコンテンツ情報流通システムをAVコンテンツ情報流通システムに適用した場合の全体構成を示すブロック図である。このシステム10は、コンテンツ情報提供者として機能するAVコンテンツバンク(以下、コンテンツバンク)11と、コンテンツ情報創作者の端末システム(以下、コンテンツ登録者)12と、コンテンツ情報利用者の端末システム(以下、コンテンツ利用者)13と、課金処理の実行媒体として機能する金融機関14と、コンテンツ情報をはじめとする各種の情報やメッセージ等を伝送する伝送媒体としてのネットワーク15とから構成されている。
【0052】上記コンテンツバンク11、コンテンツ登録者12、コンテンツ利用者13は、例えばキーボード、マウス、ライトペン又はフレキシブルディスク装置などの入力デバイス、CPU(中央処理装置)、及びこのCPUに接続されたROM、RAM、磁気ディスクなどの記録装置、ディスプレイ装置やプリンタ装置などの出力デバイスを含む通常のコンピュータシステムを介してネットワーク15に接続されている。とくに、後述するコンテンツバンク11の各種機能は、データベースを備えたコンピュータシステム上で実現されている。
【0053】なお、コンテンツ利用者13のコンピュータシステムは、コンテンツバンク11からネットワーク15を通じて伝送されたコンテンツ情報を再現する再現手段の機能を具備し、またコンテンツバンク11のコンピュータシステムは、コンテンツ登録者12からネットワーク15を通じて伝送されたコンテンツを取り込む取り込み手段の機能を具備している。
【0054】次に、図2のように構成されたシステムにおいて、コンテンツ登録者12が新たに創作したコンテンツをコンテンツバンク11に引き出し自在に保存しておき、コンテンツ利用者13が必要とする情報をコンテンツ情報として引き出して使用した場合に、コンテンツ利用者13がその使用形態に応じた使用料をコンテンツバンク11及び金融機関14を介してコンテンツ登録者12へ支払うというコンテンツ情報流通システムについて説明する。」

(カ)「【0057】コンテンツ登録者12からコンテンツが送られてくると、コンテンツ登録者管理データベース15に登録者(コンテンツ登録者)、登録内容、支払い方法等の情報が登録される(動画、静止画、分類項目に分けられる)。以下に一例を示す。
【0058】(1)登録者の情報
氏名、年齢、住所、職業、性別、電話、メールアドレス、支払い方法
(2)登録コンテンツ情報
登録タイトル名、ファイル容量、データ形式、登録日
(3)登録コンテンツ加工・編集後の情報
新(変更)タイトル名等
(4)登録コンテンツ利用情報
利用日、タイトル名、利用料、積算利用料、支払い実行日時、支払額
コンテンツバンク11では、例えばインターネット上にコンテンツ登録/利用のためのホームページを開設しておくことにより、コンテンツ登録者12、コンテンツ利用者13双方の利用を容易なものとすることができる。そして、コンテンツ登録者12が上記のような情報を入力することで登録者として認証されると、その登録者のコンテンツがコンテンツデータベース17へ登録されることになる。」

(キ)「【0066】まず、コンテンツ登録者12はコンテンツの元となる素材を収集し(ステップ101)、コンテンツを制作する(ステップ102)、次に、コンテンツバンク11のホームページにアクセスし(ステップ103)、ホームページ上で登録手続きを行う(ステップ104)。このときに、本人情報、コンテンツの画像データ等をネットワーク15を通じてコンテンツバンク11へ送る。次に、コンテンツバンク11では、登録手続きの際に入力された各種の情報をコンテンツ登録者管理データベース16に登録する(ステップ105)。そして、登録されたコンテンツの加工・編集を行い(ステップ106)。加工・編集されたコンテンツに付加情報を付けてコンテンツデータベース17へ登録する(ステップ107)。この後、登録者に対し登録情報を連絡する。」

(ク)「【0070】コンテンツ利用者13は検索が終了すると、検索項目の中から必要とするコンテンツを選択する。このとき、データ形式、データ量の変更が必要であれば、それを指定してコンテンツを入手する(ステップ205)。コンテンツバンク11では、コンテンツ利用者13に取り込まれたコンテンツ名から、その利用代金等をチェックし、コンテンツ利用者管理データベースに利用コンテンツ情報として記録する。同時に、コンテンツ登録者管理データベース16へ登録コンテンツ利用情報を記録する(ステップ206)。その後は、コンテンツ利用者13から定期的に利用費を徴収し、またコンテンツ登録者12へ定期的に利用費を支払う(ステップ207)。
【0071】利用費の徴収は、例えば金融機関14に登録されているコンテンツ利用者13の口座から定期的(例えば毎月一回)に引き落としをするなどの手法により行う。そして、利用費の徴収後は、コンテンツ利用者管理データベース18に記録されている積算利用金額のクリアと、徴収が行われたことを記録する。また、徴収した利用費の明細をコンテンツ利用者13へネットワーク15(又は郵送等)により通知する。一方、利用費の支払いは、コンテンツ登録者管理データベース16に記録されている積算利用料に応じた金額を、例えば金融機関14に登録されているコンテンツ登録者12の口座へ定期的(例えば毎月一回)に振り込むなどの手法により行う。そして、利用費の支払い後は、コンテンツ登録者データベース16に記録されている積算利用料のクリアと、支払い額及び支払いを行った日時を記録する。また、支払った利用費の明細をコンテンツ登録者12へネットワーク15(又は郵送等)により通知する。
【0072】上述したように、登録されたオリジナルのコンテンツに対して加工・編集などを施すことでコンテンツに付加価値を付け、かつ登録されたコンテンツの内容、レベル等に応じた利用料をコンテンツ登録者に支払うように管理することで、コンテンツ登録者の自己実現等の欲求を満足し、また新たな創作意欲を喚起することができる。一方、コンテンツ利用者(他のコンテンツ制作者)に対して質の良いコンテンツを供給することにより、様々なコンテンツ制作の循環がスムーズになり、質、量ともによりハイレベルなコンテンツが求められる現在のネットワーク時代に対応したAVコンテンツ情報流通システムを提供することができる。」

(ケ)図1には、創作手段1(収集・創作)、制作手段2(制作)、記憶手段3(供給)、伝送手段4(転送)、表示手段5(再現・表示)の間で、情報循環ループが形成されることが図示されている。

上記摘記事項(ア)?(ケ)、および、図1,図2,図5,図6によれば、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「コンテンツ情報提供者として機能するAVコンテンツバンク(以下、「コンテンツバンク」という。)と、コンテンツ情報創作者の端末システム(以下、「コンテンツ登録者端末」という。)と、コンテンツ情報利用者の端末システム(以下、「コンテンツ利用者端末」という。)と、課金処理の実行媒体として機能する金融機関と、コンテンツ情報をはじめとする各種の情報やメッセージ等を伝送する伝送媒体としてのネットワークとから構成されたコンテンツ情報流通システムにおけるコンテンツバンクであって、
コンテンツ登録者端末から、コンテンツ登録者個人が新たに創作したコンテンツと本人情報をネットワークを通じて取り込む取り込み手段と、
前記取り込んだコンテンツをコンテンツデータベースに、本人情報をコンテンツ登録者管理データベースに登録する記憶制御手段と、
コンテンツ利用者端末からの要求に応じてコンテンツ情報を引き出しコンテンツ利用者端末に伝送する伝送制御手段と、
コンテンツ利用者端末に取り込まれたコンテンツ名から、その利用代金等をチェックし、コンテンツ利用者管理データベースに利用コンテンツ情報として記録し、同時に、コンテンツ登録者管理データベースへ登録コンテンツ利用情報を記録する手段と、
コンテンツ利用者管理データベースに記録された利用コンテンツ情報に基づくコンテンツ利用者からの利用費徴収と、コンテンツ登録者管理データベースに記録されている積算利用料に応じたコンテンツ登録者への利用費支払いを行う手段と、
を具備するコンテンツバンク。」

[引用例2]
上記拒絶の理由に引用された特開平9-73487号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(コ)「【0016】プロバイダ(コンテンツ提供者)2は、通常、コンテンツの著作権者(オーサー)である。具体的には、あるコンテンツ(所謂一次的著作物,二次的著作物,映画の著作物,編集著作物)についての単独の著作権者,あるコンテンツについての共有著作権者全員,集合著作物における各構成部分についての著作権者全員,等が挙げられる。これらの者は当該コンテンツの直接の著作権者(所謂モダンオーサー)であり、これらの者との間で販売契約が締結されない限り、SDセンタ1は当該コンテンツの販売を行うことができないからである。これら各プロバイダ2は、夫々、ユニークなID(オーサリングID)を有している。
【0017】その他の権利者3は、プロバイダ2以外の第三者であって、当該コンテンツが複製された際にSDセンタ1に対して直接主張し得る権利を有する者,及び、コンテンツが複製された際にプロバイダ2に対して主張し得る債権(ランニングロヤリティの請求権等)を有する者である。前者の具体例としては、二次的著作物及び映画の著作物における原著作物の著作権者(所謂クラシカルオーサー),映画の著作物に利用された著作物の著作権者,音楽著作物における実演家,編集著作物における各構成部分の著作権者が挙げられる。SDセンタ1は、これらの者の許諾がなければ当該コンテンツを複製することができないので、これらの者との間でも販売契約を締結しなければならない。また、後者の具体例としては、著作権者でない著作者(クリエータ)であって著作権の移転に際して著作権者(プロバイダ2又は前者に該当する著作権者)との間でランニングロヤリティ支払いの契約を交わした者が挙げられる。SDセンタ1は、これらの者と販売契約を締結する必要がないので、これらの者にコンテンツの売上金を直接分配する必要も原則的にはない。しかし、事後的に、プロバイダ2は、自己に分配された分配金を、これらの者にランニングロヤリティとして分配しなければならない。従って、これらの者の取り分がSDセンタ1から直接分配されれば、プロバイダ2の労力が軽減される。これらその他の権利者3の夫々も、ユニークなID(クリエータ等ID)を有している。」

(サ)「【0022】パソコン6内においてナビゲータ10が実行されると、ナビゲータ10は、復号部9を生成する。そして、ナビゲータ10は、ユーザ5からの入力に応じて、CD-ROM11内の試用版コンテンツの試用を可能とするとともに、ユーザ5が購入希望したコンテンツ購入用の購入伝票(テキストデータ)を作成する。また、図示せぬ通信プログラムを利用して、ネットワークサービス会社7と接続し、更にゲートウェイ13を介してSDセンタ1に接続し、作成した購入伝票をSDセンタ1に送信する。なお、この購入伝票には、CD-ROM番号(各CD-ROMの種類毎にユニーク)及びコンテンツID(コンテンツ毎にユニーク)の他、CD-ROM番号とコンテンツIDとマシンIDとから生成されたアクセス番号,及びネットワークサービス会社に登録されている当該ユーザ5のID(以下、「ユーザID」という)が書き込まれる。このアクセス番号によって暗号化された鍵(暗号化されたコンテンツを復調するための鍵)がSDセンタ1から返送されてくると、ナビゲータ10は、記録されていたアクセス番号によって鍵を復号して、復号部9に渡す。復号部9は、ユーザ5が購入希望しているコンテンツ(暗号化されたコンテンツ)をCD-ROM11から読み出して、鍵を用いて複合化し、複合化されたコンテンツをハードディスク12に格納する。
<SDセンタ1の具体的構成>次に、図3を用いてSDセンタ1の詳細な内部構成説明を行う。図3においてコンテンツ受入部15は、プロバイダ2との間でコンテンツ受入契約を結ぶ。これは、SDセンタ1によるコンテンツ流通システムを介して当該コンテンツを将来流通させる準備としてSDセンタ1が当該コンテンツを預かるという旨の契約である。そして、このコンテンツ受入契約締結の効果として、コンテンツ受入部15は、コンテンツを受け入れる。そして、受け入れたコンテンツのID(コンテンツID)を生成し、このコンテンツIDとともに当該コンテンツをコンテンツデータベース21に格納する。また、コンテンツ受入部15は、このコンテンツに関するプロバイダ情報をも、コンテンツデータベース21に格納する。このプロバイダ情報とは、コンテンツ受入契約の当事者であるプロバイダ(オーサー)2のID(オーサリングID),プロバイダ2以外の者であるが当該コンテンツの販売契約の締結が必要な者のID,及びコンテンツの販売契約の締結は必要ないがプロバイダ2に対して当該コンテンツの販売に関してランニングロヤリティの請求権を有する者のIDである。これら各者のIDが、プロバイダ2のID(オーサリングID)を最上位層として、コンテンツデータベース21内に階層的に格納されるのである。なお、これら各者の間に取分の取り決めがある場合には、取り決められた各者の取分についての情報も、プロバイダ情報として、第二のデータベースとしてのコンテンツデータベース21内に格納する。即ち、このプロバイダ情報が、運用者に分配された残りの金額の分配先及びその分配率に関する第2分配情報に相当する。」

(シ)「【0037】支払部19の内部構成を図4に示す。支払部19を構成するコンテンツ売上金算出部25は、請求部18から通知を受けると、売上げ伝票参照部29に対して、記録手段としての売上伝票ファイル24中に蓄積された売上伝票の読み出しを指示する。算出手段としてのコンテンツ売上金算出部25は、読み出した売上伝票に基づいて各コンテンツ毎の売上金額を集計し、運用者取分減算部26に通知する。
【0038】減算手段としての運用者取分減算部26は、コンテンツ売上金算出部25からコンテンツ毎の売上金額の通知を受けると、第1読取手段としての契約マスター参照部30に対して、契約マスター22中に記載されている各コンテンツの支払サイトの読み出しを指示する。運用者取分減算部26は、各コンテンツ毎に、支払サイトによって定まるSDセンタ1の運用者の取り分を売上金から減算し、売上金分配計算部27に通知する。
【0039】分配手段としての売上金分配計算部27は、運用者取分減算部26から減算後の売上金の通知を受けると、第2読取手段としてのコンテンツデータベース参照部31に対して、コンテンツデータベース21に記載されている各コンテンツのプロバイダ情報の読み出しを指示する。売上金分配計算部27は、各コンテンツ毎に、プロバイダ情報としてそのIDが記載されている各プロバイダ(オーサー)2及びその他の権利者3の間で、通知された売上金を分配する。この際、プロバイダ情報中に各プロバイダ(オーサー)2及びその他の権利者3の取分の定めがある場合には、その取分に応じて売上金を分配し、取分の定めがない場合には、各者に対して均等に分配する。売上金分配計算部27は、各ID(プロバイダ2又はその他の権利者3のものとして登録されているID)毎に売上金を集計し、入金処理部28に通知する。
【0040】入金処理部28は、各ID毎に集計された売上金に対する入金処理を行う。即ち、このIDに基づいて各プロバイダ2及びその他の権利者3の銀行口座を特定し、この特定された銀行口座へ、集計された売上金を入金する。」

上記摘記事項(コ)?(シ)、および、図1?4,図6,図10によれば、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「プロバイダ(コンテンツ提供者であって、コンテンツの直接の著作権者)が提供するコンテンツを受け入れるとともにコンテンツをユーザに配布し、ユーザの要求に応じてコンテンツに対する利用許可を与えるSDセンタを備えたコンテンツ流通システムにおいて、該SDセンタに、
コンテンツと、当該コンテンツに関するプロバイダ情報であって、プロバイダのID及びプロバイダ以外の第三者(二次的著作物における原著作物の著作権者)のIDを含むプロバイダ情報とを、コンテンツデータベースに格納するコンテンツ受入部と、
コンテンツデータベースに記載されている各コンテンツのプロバイダ情報に基づいて、各コンテンツ毎の売上金の一部を、プロバイダ及び前記プロバイダ以外の第三者に分配する支払部と、
を備えることで、プロバイダ以外の第三者の取り分をSDセンタから直接分配して、プロバイダの労力を軽減するシステム。」

[引用例3]
上記拒絶の理由に引用された特開2000-11251号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ス)「【0099】また、例えば使用されていない際には初期画面を表示しておくとしたが、使用されていない際に初期画面ではない多様な表示を行うことが考えられる。もしくは初期画面としての選択のためのアイコン等とともに多様な画像表示を行うことが考えられる。例えばスクリーンセーバとして機能するような画像や、各種広告のための画像、設置場所に応じたイメージ画像、デモンストレーション画像などの表示を行うと、より面白味があり、また付加価値の高いシステムとすることができる。場合によっては、広告画像を流すことで、ユーザーに対する料金の無料化などもはかることができる。
【0100】さらにダウンロードする内容の一例として、目的のコンテンツのみではなく、広告画像などのデータも一緒にダウンロードさせるようにすることも考えられる。この場合、広告を付加することでダウンロードするコンテンツに対する料金を無料化することも可能となる。
【0101】また情報販売装置1が無料使用できるシステムの場合は、料金投入処理及び課金処理などは実行されないことはいうまでもない。」

5.対比
本願発明と引用発明1とを対比する。

a)引用発明1における「ネットワーク」、「コンテンツ情報創作者の端末システム(コンテンツ登録者端末)」、「コンテンツ情報利用者の端末システム(コンテンツ利用者端末)」は、それぞれ本願発明における「通信ネットワーク」、「第1のユーザ端末」、「第2のユーザ端末」に相当する。

b)引用発明1における「コンテンツ利用者端末からの要求に応じてコンテンツ情報を引き出しコンテンツ利用者端末に伝送する伝送制御手段」は、本願発明における「第2のユーザ端末から、コンテンツの配信要求を受け付ける手段」および「前記受け付けたコンテンツの配信要求に応じて、前記記憶されたコンテンツのうち要求されたコンテンツを読み出して、該要求を行った第2のユーザ端末に対して配信する手段」に相当する。

c)引用発明1における「コンテンツ登録者個人」はコンテンツの創作者であるから、当該コンテンツに対する著作権等を有する権利者であることは明らかである。したがって、引用発明1における「本人情報」(すなわち、登録するコンテンツを創作したコンテンツ登録者個人を特定する情報)と、本願発明における「当該コンテンツに関する権利者が、前記第1のユーザ端末の利用者のみであるか、または、前記第1のユーザ端末の利用者及び該第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者でなるかを択一的に選択した情報および、後者が選択された場合に前記第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者を指定する情報でなる権利者情報」とは、ともに、「コンテンツに関する権利者情報」である点で共通する。

d)上記摘記事項(イ)の第【0003】段落の記載、摘記事項(エ)、摘記事項(ク)の第【0072】段落の記載、摘記事項(ケ)、および、図1から明らかなように、引用発明1におけるコンテンツ情報流通システムは、あるコンテンツ創作者がコンテンツバンクに登録したコンテンツを利用して、他のコンテンツ創作者が新たなコンテンツを創作し、創作したコンテンツをコンテンツバンクに登録して更なる利用に供するものであるといえる。したがって、コンテンツバンクが取り込むコンテンツには、コンテンツ登録者個人によって一次著作物として作成されたものに加え、二次著作物として作成されたものを含むといえる。そして、引用発明1における「コンテンツ登録者端末から、コンテンツ登録者個人が新たに創作したコンテンツと本人情報をネットワークを通じて取り込む取り込み手段」と、本願発明における「第1のユーザ端末から、該第1のユーザ端末の利用者によって一次または二次著作物として作成されたコンテンツと、当該コンテンツに関する権利者が、・・・でなる権利者情報とを受け付ける手段」とは、ともに、「第1のユーザ端末から、該第1のユーザ端末の利用者によって一次または二次著作物として作成されたコンテンツと、当該コンテンツに関する権利者情報とを受け付ける手段」である点で共通する。

e)引用発明1における「前記取り込んだコンテンツをコンテンツデータベースに、本人情報をコンテンツ登録者管理データベースに登録する記憶制御手段」に関して、引用発明1においては、コンテンツの利用料がコンテンツ登録者に支払われるから、コンテンツに対し、そのコンテンツ登録者が特定できるよう構成されていることは明らかである。したがって、引用発明1の「記憶制御手段」は、コンテンツと本人情報とを対応付けて各データベースに登録しているといえる。よって、引用発明1の「記憶制御手段」は、受け付けたコンテンツを同時に受け付けた権利者情報に対応付けて記憶する手段であるといえる。

f)引用発明1の「コンテンツ利用者端末に取り込まれたコンテンツ名から、その利用代金等をチェックし、・・・同時に、コンテンツ登録者管理データベースへ登録コンテンツ利用情報を記録する手段」においては、コンテンツ登録者管理データベースの中から、コンテンツ利用者端末に取り込まれたコンテンツに対応する登録者個人を特定する処理が当然行われる。そして、その特定処理では、コンテンツに対応する本人情報が参照されることは明らかである。したがって、引用発明1における「コンテンツ利用者端末に取り込まれたコンテンツ名から、その利用代金等をチェックし、コンテンツ利用者管理データベースに利用コンテンツ情報として記録し、同時に、コンテンツ登録者管理データベースへ登録コンテンツ利用情報を記録する手段」および「コンテンツ利用者管理データベースに記録された利用コンテンツ情報に基づくコンテンツ利用者からの利用費徴収と、コンテンツ登録者管理データベースに記録されている積算利用料に応じたコンテンツ登録者への利用費支払いを行う手段」と、本願発明における「前記配信されたコンテンツに対応する権利者情報を参照して、前記広告供給者から入金される広告料の少なくとも一部の金額を、前記第1のユーザ端末の利用者および/または前記配信されたコンテンツに関する権利者であって前記第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者に分配する手段」とは、ともに、「配信されたコンテンツに対応する権利者情報を参照して、金額を、前記配信されたコンテンツに関する権利者に分配する手段」である点で共通する。

g)引用発明1の「コンテンツ情報流通システム」は、コンテンツ情報をコンテンツ利用者端末に配信するから、本願発明における「コンテンツ配信システム」に相当する。

h)引用発明1における「コンテンツバンク」は、上記摘記事項(ウ)に「サーバー」との記載があるようにサーバとして機能している。したがって、引用発明1における「コンテンツバンク」と、本願発明における「サーバ装置」とは、ともに、「サーバとして機能する装置」である点で共通する。

そうすると、本願発明と引用発明1とは、
「通信ネットワークを介して相互に各種情報の授受が可能なサーバとして機能する装置と複数のユーザ端末とにより構成されたコンテンツ配信システムにおける前記サーバとして機能する装置であって、
第1のユーザ端末から、該第1のユーザ端末の利用者によって一次または二次著作物として作成されたコンテンツと、当該コンテンツに関する権利者情報とを受け付ける手段と、
第2のユーザ端末から、コンテンツの配信要求を受け付ける手段と、
前記受け付けたコンテンツを同時に受け付けた前記権利者情報に対応付けて記憶する手段と、
前記受け付けたコンテンツの配信要求に応じて、前記記憶されたコンテンツのうち要求されたコンテンツを読み出して、該要求を行った第2のユーザ端末に対して配信する手段と、
前記配信されたコンテンツに対応する権利者情報を参照して、金額を、前記配信されたコンテンツに関する権利者に分配する手段と
を備えたサーバとして機能する装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「分配する手段」による金額の分配先が、本願発明では「第1のユーザ端末の利用者および/または前記配信されたコンテンツに関する権利者であって前記第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者」であるのに対し、引用発明1では「第1のユーザ端末の利用者」(コンテンツ登録者個人)である点。

(相違点2)
コンテンツに関する権利者情報が、本願発明では、「コンテンツに関する権利者が、第1のユーザ端末の利用者のみであるか、または、前記第1のユーザ端末の利用者及び該第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者でなるかを択一的に選択した情報および、後者が選択された場合に前記第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者を指定する情報でなる権利者情報」であるのに対し、引用発明1では、「本人情報」である点。

(相違点3)
本願発明では、コンテンツに関する権利者に分配される金額が、「広告供給者から入金される広告料の少なくとも一部の金額」であり、広告を配信するための構成として、サーバ装置が「広告供給者から供給される広告情報を記憶する手段」と「いずれかの前記ユーザ端末に対して前記記憶された広告情報を配信する手段」とを備えるのに対し、引用発明1では、コンテンツに関する権利者に分配する金額がコンテンツ利用者が支払う利用料であり、コンテンツバンクは広告を配信するための構成を有していない点。

(相違点4)
「サーバとして機能する装置」が、本願発明では「サーバ装置」であるのに対し、引用発明1では「コンテンツバンク」である点。また、本願発明は「サーバ装置」の発明であるのに対し、引用発明1は「コンテンツバンク」の発明である点。

6.判断
そこで、上記相違点について判断する。

(相違点1について)
引用例2には前記引用発明2、すなわち、
「プロバイダ(コンテンツ提供者であって、コンテンツの直接の著作権者)が提供するコンテンツを受け入れるとともにコンテンツをユーザに配布し、ユーザの要求に応じてコンテンツに対する利用許可を与えるSDセンタを備えたコンテンツ流通システムにおいて、該SDセンタに、
コンテンツと、当該コンテンツに関するプロバイダ情報であって、プロバイダのID及びプロバイダ以外の第三者(二次的著作物における原著作物の著作権者)のIDを含むプロバイダ情報とを、コンテンツデータベースに格納するコンテンツ受入部と、
コンテンツデータベースに記載されている各コンテンツのプロバイダ情報に基づいて、各コンテンツ毎の売上金の一部を、プロバイダ及び前記プロバイダ以外の第三者に分配する支払部と、
を備えることで、プロバイダ以外の第三者の取り分をSDセンタから直接分配して、プロバイダの労力を軽減するシステム。」
の発明が記載されている。そして、引用発明1と引用発明2とは、ともにコンテンツ流通システムに関する点で共通している。また、引用発明1では、二次著作物として作成されたコンテンツの登録が想定されているといえ、原著作物の著作権者に対し対価を分配する必要があることは明らかである。そうすると、引用発明1において、原著作権者に対し対価を分配する構成につき引用発明2を適用し、引用発明1のコンテンツバンクにおける「分配する手段」の金額分配先を、配信されたコンテンツの提供者であるコンテンツ登録者個人、および、配信されたコンテンツに関する権利者であってコンテンツ登録者個人とは異なる権利者(原著作権者)とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、あるコンテンツの原著作権者または二次著作権者のいずれかが自己への対価料を無料とすることは普通にあることであり、このような場合や配信されたコンテンツが一次著作物である場合には、「分配する手段」の金額分配先がコンテンツ登録者個人「または」コンテンツ登録者個人とは異なる権利者となることも当業者に明らかである。
したがって、引用発明1において引用発明2を参酌し、「分配する手段」による金額分配先を、第1のユーザ端末の利用者(コンテンツ登録者個人)および/または配信されたコンテンツに関する権利者であって第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者(コンテンツ登録者個人とは異なる権利者)とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
上記(相違点1について)で検討したとおり、引用発明1のコンテンツバンクが原著作権者に金額を分配することは当業者が容易に想到し得たことであるが、分配実現に際して、コンテンツの原著作権者が誰であるかの情報をコンテンツバンクに備えることは、引用発明2のSDセンタがコンテンツに関するプロバイダ以外の第三者のIDをコンテンツデータベースに格納しているように自明なことである。また、コンテンツが一次著作物である場合と二次著作物である場合とでは、例えば後者の場合にはさらに原著作権者への金額支払い処理を要するという具合に、金額分配の処理ステップに差があるから、コンテンツバンクにおいて、コンテンツが一次著作物/二次著作物のいずれであるかを識別するための情報が必要であることは明らかである。
この点に関し、上記引用例2にはSDセンタがコンテンツの識別情報や原著作権者情報を取得するための手法は記載されていない。しかしながら、コンテンツが一次著作物/二次著作物のいずれであるかや、二次著作物である場合にどの(誰の)原著作物を利用してコンテンツを制作したかを知り得るのはコンテンツ創作者であるから、コンテンツが一次著作物/二次著作物のいずれであるかの識別情報や二次著作物である場合の原著作権者情報をコンテンツ創作者から取得することは至極自然なことである。また、引用例1の摘記事項(カ)には「コンテンツバンク11では、例えばインターネット上にコンテンツ登録/利用のためのホームページを開設しておくことにより、コンテンツ登録者12、コンテンツ利用者13双方の利用を容易なものとすることができる。」との記載があり、引用発明1では、インターネット上に開設されたホームページを介して端末利用者とサーバ間の情報授受やサーバへのコンテンツ登録を行うことが想定されているといえる。インターネット上に開設されたホームページを介してサーバが端末利用者から情報を取得する手法として、端末に表示する画面に択一的選択欄(ラジオボタンやチェックボタン等)や情報入力欄(テキスト入力フォーム等)を設け、これらの欄に端末利用者が入力した情報をサーバに送信する手法は、本願出願前より広く知られたことである。そうすると、引用発明1において、コンテンツバンクが原著作権者に金額を分配する構成とすることに伴って、コンテンツ登録者端末のコンテンツ登録用画面に、コンテンツが一次著作物/二次著作物のいずれであるかを択一的に選択する欄を設けるとともに、二次著作物である場合に原著作権者の情報を入力する欄を設け、これらの欄に入力された情報をコンテンツバンクが受信する構成とすることは、当業者が適宜設計し得る事項といえる。

また、引用発明1のコンテンツバンクは、コンテンツ登録者端末からコンテンツとともに本人情報(コンテンツ登録者個人を特定する情報)を取り込んでいるが、インターネット上に開設されたホームページを通じてサーバが端末利用者にサービスを提供するシステムにおいて、サービスを提供する実画面に移行するに先立ち、サーバが端末利用者のユーザ認証を行って端末利用者を特定することで、その後に表示される実画面を通じたサービスの提供中にサーバが端末利用者の本人情報を必要とした場合でも、端末利用者からの本人情報の入力を不要とすることは、本願出願前より広く用いられている手法である。したがって、引用発明1において、コンテンツ登録用画面に移行するに先立ち、コンテンツバンクが端末利用者個人のユーザ認証を行うことで、コンテンツ登録用画面からの本人情報の入力を不要とすることは、当業者が普通に考えることである。

そうすると、引用発明1において、引用発明2や、インターネット上に開設されたホームページを介して端末利用者とサーバ間の情報授受やサービスの提供を行う場合の周知事項を参酌し、コンテンツ登録者端末から、コンテンツ登録用画面を介してコンテンツが一次著作物か二次著作物かを択一的に選択する情報を入力し、後者の場合にはさらに原著作権者を入力し、本人情報の取得については、ユーザ認証で代用することでコンテンツ登録用画面での入力を不要とする構成とし、コンテンツ登録者端末からコンテンツとともに取り込まれる「コンテンツに関する権利者情報」を、「コンテンツに関する権利者が、第1のユーザ端末の利用者のみであるか、または、前記第1のユーザ端末の利用者及び該第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者でなるかを択一的に選択した情報および、後者が選択された場合に前記第1のユーザ端末の利用者とは異なる権利者を指定する情報でなる権利者情報」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点3について)
コンテンツ流通の技術分野において、コンテンツの利用に対する対価の収入源を、利用者ではなく広告とすることは、引用例3の摘記事項(ス)に記載されているように周知である。また、当該摘記事項(ス)第【0100】段落の「さらにダウンロードする内容の一例として、目的のコンテンツのみではなく、広告画像などのデータも一緒にダウンロードさせるようにすることも考えられる。この場合、広告を付加することでダウンロードするコンテンツに対する料金を無料化することも可能となる。」との記載から、コンテンツと同じダウンロード元から広告をダウンロードすることも、当業者が普通に考えることである。
したがって、引用発明1において、同一の技術分野に属する引用例3に記載された周知事項および技術的事項を参酌し、コンテンツに関する権利者に分配する金額を、広告供給者から入金される広告料の少なくとも一部の金額とし、広告を配信するための構成として、コンテンツバンクに「広告供給者から供給される広告情報を記憶する手段」と「いずれかのユーザ端末に対して記憶された広告情報を配信する手段」とを設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点4について)
引用発明1における「コンテンツバンク」は、上記摘記事項(ウ)に「サーバー」との記載があるようにサーバとして機能しており、当業者がこの機能に着目して、「コンテンツバンク」を「サーバ装置」と称し、「コンテンツバンク」に代え「サーバ装置」の発明と把握することに、格別困難性はない。
したがって、引用発明1において、「コンテンツバンク」を「サーバ装置」とし、「コンテンツバンク」の発明を「サーバ装置」の発明とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1?3の記載事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例1?3に記載された発明および上記周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1?3に記載された発明および上記周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-30 
結審通知日 2008-06-10 
審決日 2008-06-26 
出願番号 特願2000-383701(P2000-383701)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 美樹谷口 信行  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 多賀 実
飯田 清司
発明の名称 サーバ装置、コンテンツ配信方法、記憶媒体およびコンピュータプログラム  
代理人 飯塚 義仁  

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