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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1183007 |
審判番号 | 不服2005-24871 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-22 |
確定日 | 2008-08-15 |
事件の表示 | 特願2002-183716「建築板印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月29日出願公開、特開2004- 25560〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年6月24日の特許出願であって、拒絶理由通知に応答して平成16年9月21日付けで手続補正がされたが、平成17年11月8日付けで拒絶査定がされ、これを不服として同年12月22日付けで審判請求がされたものである。 2.本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明は、平成16年9月21日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。(以下、「本願発明」という。 ) 「【請求項1】 複数のインクジェットノズルが所定ピッチで主走査方向(建築板の進行方向と直交する方向)に一列に配設されているノズルアレイの複数個が同一色について副走査方向(主走査方向に直交する方向、すなわち、建築板の進行方向)に平行に配設され、建築板の搬送に伴いこれら複数のノズルアレイから同一色のインクが同一位置に重ねて噴射されるように構成されているノズルアレイ群が複数色分副走査方向に複数段配設されている印刷ヘッドを備え、インク量が可変の複数のドットで形成される画素による印刷を行うことを特徴とする建築板印刷装置。」 3.引用例記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-11865号公報(以下、「引用例」という。)には図示と共に次の記載がある。 段落【0001】 「【発明の属する技術分野】本発明は、インクの液滴を飛翔して画像を記録するインクジェット画像記録の技術分野に属し、詳しくは、ラインヘッドで高速記録を行っても、画像ボケや、受像紙の伸びによる記録ムラ等に起因する画質劣化の生じないインクジェット記録方法、およびインクジェット記録装置に関する。」 段落【0016】 「これに対し、本発明のように、短尺ヘッド20を主走査方向に配列して、ラインヘッドとすることにより、従来より作製されている短尺なインクジェットヘッドを利用して、長尺なラインヘッドを作製することができ、生産性、コスト、歩留り等の点で有利である。しかも、短尺ヘッド20の一部を副走査方向に重ねて、好ましくは図示例のように千鳥状に配列することにより、端部で短尺ヘッドを突き合わせる方法に比して、各短尺ヘッド20の位置合わせ(特に、各短尺ヘッド20の端部のノズル24同士の位置合わせ)して、長尺ヘッドを容易に作製することができ、コストや生産性でさらに有利である。なお、各短尺ヘッド20の副走査方向の位置ズレは、画像信号の遅延等によって容易に補正できる。 段落【0017】 「前述のように、ラインヘッド12は、K、M、CおよびYの4つのノズル列を有するものであり、従って、それぞれのノズル列を形成する各短尺ヘッド20には、それぞれに対応する4つのノズル列22(ノズル列22K、22M、22Cおよび22Y)を有する。図示例においては、各ノズル列22は、上記順番で、副走査方向に配置され、すなわち、ラインヘッド12の各ノズル列も、これと同様に配置される。」 段落【0019】 「通常は、K、M、CおよびYの4つのドットで表現される1つの画素であっても、各色のインクは若干異なる位置に着弾(最終的に、受像媒体に定着した各インクによるドットは重なる)するのが、画質的には有利である。」 段落【0059】 「図示例の記録装置10は、ドラムに受像媒体を巻き付けて、ドラムの回転によって走査を行うもの(いわゆるドラムスキャナ)であったが、本発明はこれに限定はされず、平面状の受像媒体保持部を有する、いわゆるフラットベットを用い、フラットベットおよびラインヘッドの少なくとも一方を、副走査方向に移動することにより、走査を行うものであってもよい。」 列は英語でアレイであるからノズル列はノズルアレイと呼んでもよい。 引用例の図2(B)からは、短尺ヘッド20にはK、M、C、Yの各ノズル列においてノズル24が所定ピッチで一列に配設されていることが看取される。 段落【0019】には、1つの画素がK、M、CおよびYの4つのドットで表現されることが記載されている。よって、K、M、C、Yの各色のインク滴が飛翔したり飛翔しなかったりして合わさってあるドットの色が表現されることになり、全色分4つのインク滴が来るか1部のインク滴が来るか等に応じて可変のインク量で1つのドットが形成され、その1つのドットで画素が形成される。 してみるに、引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。 「複数のインクジェットノズルが所定ピッチで主走査方向(平面状の受像媒体の進行方向と直交する方向)に一列に配設されているノズルアレイの1個が配設され、平面状の受像媒体の移動に伴いこの1個のノズルアレイからインクが噴射されるように構成されているノズルアレイが複数色分副走査方向に複数段配設されている短尺ヘッドを備え、インク量が可変の1つのドットで形成される画素による記録を行う記録装置。」(以下、引用発明という。) 4.対比 本願発明と引用発明とを比較する。 引用発明の「平面状の受像媒体」は、ドットによる画素で画像が形成される平面状の受像媒体である点で、本願発明の「建築板」と共通する。 引用発明の「ノズルアレイ」は、ノズルアレイが平行に配置された群ではなく単一で一列のノズルアレイではあるが、特定色のインクを吐出するノズルアレイである点で、本願発明の「ノズルアレイ群」と共通する。 引用発明の「短尺ヘッド」は、ノズルアレイが複数色分副走査方向に複数段配設されているヘッドである点で、本願発明の「印刷ヘッド」と共通する。 引用発明の「平面状の受像媒体の移動」は、平面状の受像媒体の(副走査方向への)進行である点で、本願発明の「建築板の搬送」と共通する。 引用発明の「インク量が可変の1つのドット」は、インク量が可変のドットである点で、本願発明の「インク量が可変の複数のドット」と共通する。 引用発明の「記録装置」は、インクジェットにより平面状の受像媒体上に画素からなる画像を形成する画像形成装置である点で、本願発明の「建築板印刷装置」と共通する。 すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「複数のインクジェットノズルが所定ピッチで主走査方向(平面状の受像媒体の進行方向と直交する方向)に一列に配設されているノズルアレイが配設され、平面状の受像媒体の進行に伴いノズルアレイからインクが噴射されるように構成されているノズルアレイが複数色分副走査方向に複数段配設されているヘッドを備え、インク量が可変のドットで形成される画素による画像形成を行う画像形成装置。」 <相違点> (i)本願発明は、平面状の受像媒体が「建築板」、平面状の受像媒体の進行が「建築板の搬送」、画素による画像形成を行う画像形成装置が「画素による印刷を行うことを特徴とする建築板印刷装置」と特定されているのに対して、引用発明は当該特定を有しない点。 (ii)本願発明は、「ノズルアレイの複数個が同一色について副走査方向(主走査方向に直交する方向、すなわち、建築板の進行方向)に平行に配設され、建築板の搬送に伴いこれら複数のノズルアレイから同一色のインクが同一位置に重ねて噴射されるように構成されているノズルアレイ群が複数色分副走査方向に複数段配設されている印刷ヘッドを備え」と特定されているのに対して、引用発明は当該特定を有しない点。 (iii)本願発明は、「インク量が可変の複数のドットで形成される画素」と特定されているのに対して、引用発明は当該特定を有しない点。 5.当審の判断 相違点(i)について 引用例の段落【0059】には「平面状の受像媒体保持部を有する、いわゆるフラットベットを用い、フラットベットおよびラインヘッドの少なくとも一方を、副走査方向に移動することにより、走査を行うものであってもよい。」とある。フラットベットを副走査方向に移動することは、平面状の受像媒体を保持して副走査方向に進行させる点で、本願発明の実施例(本願の段落【0050】参照)において建築板をコンベヤ等で搬送することと違いがない。 そして、建築板をコンベヤで副走査方向に搬送しつつ、インクジェットヘッドで画像を形成することは周知である。例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-153813号公報参照。 インクドットで形成した画素からなる画像を平面状の受像媒体上に形成することを、引用発明では記録と称し、本願発明では印刷と称しているだけであって、記録と印刷に格別の違いはない。 よって、引用発明において本願発明の相違点(i)に係る構成を備えることは、引用例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 相違点(ii)について 平面状の受像媒体が建築板か否かの違い、及び印刷と記録の違い、については上記「相違点(i)について」で既に検討した。相違点(ii)からこれら検討済みの2点を除くと、残る相違点は、本願発明は、「ノズルアレイの複数個が同一色について副走査方向に平行に配設され、平面状の受像媒体の進行に伴いこれら複数のノズルアレイから同一色のインクが同一位置に重ねて噴射されるように構成されているノズルアレイ群が複数色分副走査方向に複数段配設されているヘッドを備え」と特定されているのに対して、引用発明は当該特定を有しない点である。 しかしながら、副走査方向にインクジェットノズルを多段に配置し、各ノズルから飛翔するインクドットを同じ位置に重ねることは周知である。例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-29347号公報第1頁右下欄第18?20行には「縦2列にオリフィスを配置して1ラインの走査中にドットの重ね打ちを行う方法が採用されていた。」と記載されている。また、特開平10-305568号公報も挙げられるが、その請求項6の発明では、本願発明と同じくライン型ヘッドを用いている。 よって、引用発明において上記「残る相違点」に係る構成を備えることは、引用例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 相違点(iii)について インクジェットにおいて、複数のドットで画素を形成することは周知である。例えば、原査定に引用された特開平8-300689号公報の図3に示される実施例参照。 よって、引用発明において本願発明の相違点(iv)に係る構成を備えることは、引用例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 なお、本願発明の実施例では、インク量が可変のドットを得るのに、異なる色のドットを重ねるのでなく、ノズルアレイ群からの同じ色のドットを重ねて行うので、この点(引用発明を本願発明と比較する限り相違点とはならないが、本願発明の実施例と比較した場合に相違点となる可能性のある点)についても検討する。 上記の、特開平2-29347号公報及び特開平10-305568号公報には、副走査方向にインクジェットノズルを多段に配置し、各ノズルから飛翔するインクドットを同じ位置に重ねる際に、ドットの個数を変えてドットのインク量を変えることが記載されており、本願発明の実施例のインク量が可変のドットを得る点も周知である。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例の記載、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-17 |
結審通知日 | 2008-06-18 |
審決日 | 2008-07-02 |
出願番号 | 特願2002-183716(P2002-183716) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小牧 修、後藤 時男 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
江成 克己 菅藤 政明 |
発明の名称 | 建築板印刷装置 |
代理人 | 中村 和男 |