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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61P
管理番号 1183028
審判番号 不服2004-17100  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-17 
確定日 2008-09-02 
事件の表示 特願2000-571937「抗生剤の投与方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月 6日国際公開、WO00/18419、平成14年 8月13日国内公表、特表2002-525335、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.出願の経緯、本願発明
本願は、平成11年 9月24日(パリ条約による優先権主張 1998年 9月25日 (US)アメリカ合衆国 1999年 3月24日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成20年7月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(これを以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】
3?75mg/kgのダプトマイシンの反復投与を必要とするグラム陽性細菌感染ヒト患者を治療するための抗生剤であって、該抗生剤は、3?75mg/kgの投与が可能な量のダプトマイシンを含み、ここでダプトマイシンの投薬間隔が24時間ごとに1回?48時間ごとに1回であって、骨格筋毒性を最小限にした、前記抗生剤。」

2.原審の拒絶の理由
これに対し原審の査定の理由は以下のとおりのものである。
引用文献1(.Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1989年,Vol.33,No.9,p.1522-1525)には、細菌感染に起因する心内膜炎を治療すべく、ウサギに対して、24時間ごとに10mg/kgのダプトマイシンを投与することが、引用文献2(Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1992年,Vol.36, No.2,p.318-325)には、ダプトマイシンの投与に関し、健常人に対して、2、3、4、6mg/kgを72時間ごとに投与することが記載されており、また、かかる投与量、投与間隔において、副作用が発生しなかったことが開示されている。
一般に、医薬の分野において、副作用が少ないことは望まれる課題であって、引用文献1に記載の発明において、これをヒト患者に適用するに際し、引用文献2の記載の投与量、投与間隔の近傍で、副作用が少なくなるよう、その範囲を実験的に最適化し、本願の上記請求項に記載の範囲とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、骨格筋毒性が最小限であるという効果についてみても、本願において特定された投与量、投与間隔とすることに臨界的意義があるとも認められない。したがって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3,当審の判断
引用文献1には、ウサギの細菌感染に起因する心内膜炎の治療に対しダプトマイシンが有用であることが記載され、また、引用文献2には、ダプトマイシンがグラム陽性細菌に有効な抗生物質であって、その作用メカニズムも解明され、動物実験での安全性や有効性が確認されていること、健常人に対してダプトマイシンを投与し、単回用量のダプトマイシンの薬物動態を調べることを意図した研究を行った結果、ダプトマイシンは高用量の反復投薬では薬物が蓄積してしまうので、12時間ごとに2?3mg/kgで投与するのが有効であろうと記載されている。本願優先日当時、抗生物質の1日の投与量を増加する場合には、それを分割して投与することが一般的であるから、そのような用法に従い通常のヒトのグラム陽性細菌感染症に対しダプトマイシンを適用してみようとすること自体は当業者が通常行う範囲ということができる。
しかしながら、ダプトマイシンの投与と副作用に関し、本願優先日当時の技術水準を示す証拠として、出願人が提出した文献(Biotechnology of Antibiotics, 第2版, W.R. Strohl編., 1997, p.415-435)によれば、24時間ごとに2mg/kgのダプトマイシンを投与する方法では種々のグラム陽性菌感染の処置が可能であるが、黄色ブドウ球菌による心内膜炎や重篤な感染症患者の処置には効果が得られず、12時間ごとに3mg/kgの投与ではこれらの処置に対して有効であることが示されたが、この投与では副作用が見られ、臨床試験が中止されたことが記載されている。
そうすると、ダプトマイシンの2mg/kg、24時間ごとの投与を超える高用量を必要とする感染症患者に対する適用については、安全性についての阻害要因が存在したことが認められる。

本願発明は、ダプトマイシンを3?75mg/kgの用量でかつ投薬間隔を24時間ごとに1回?48時間ごとに1回とすることにより、従前の用量を増加し分割投与する用法では安全性の観点から適用不可能とされていたグラム陽性細菌感染ヒト患者に対し、副作用を最小限にした治療が行えることを見出したものであり、上記の阻害要因が存在していたことを考慮するならば、このような患者に対するダプトマイシンの適用については、当業者といえども上記引用例から容易に導くことができるとはいえない。
したがって、本願については、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2008-08-15 
出願番号 特願2000-571937(P2000-571937)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61P)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松波 由美子  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 谷口 博
穴吹 智子
発明の名称 抗生剤の投与方法  
代理人 大崎 勝真  
代理人 川口 義雄  
代理人 金山 賢教  
代理人 小野 誠  
代理人 渡邉 千尋  
代理人 坪倉 道明  

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