ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C30B |
---|---|
管理番号 | 1183041 |
審判番号 | 不服2005-11176 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-06-15 |
確定日 | 2008-08-13 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第230225号「希土類珪酸塩単結晶の育成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月17日出願公開、特開平 9-157090〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は平成8年8月30日(優先権主張平成7年8月31日)の出願であって、平成17年1月27日付けで拒絶理由が通知され(発送日は平成17年1月31日)、平成17年4月1日付けで意見書・補正書が提出され、平成17年5月6日付けで拒絶査定され(発送日は平成17年5月16日)、その後、平成17年6月15日に審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は(以下、「本願発明」という。)平成17年7月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 酸化ガドリニウム、珪素酸化物を含む原料の融液から珪酸ガドリニウム単結晶を育成する方法において、1000℃まで加熱した時の重量減少が1.0 %以下である原料を用いることを特徴とするシンチレータ用珪酸ガドリニウム単結晶の育成方法。 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成6年6月14日に頒布された特開平6-169128号公報(以下、「引用例1」という。)、平成4年6月23日に頒布された特開平4-175297号公報 (以下、「引用例2」という。)、及び、平成6年4月26日に頒布された特開平6-116082号公報(以下、「引用例3」という。)には、それぞれ以下の事項が記載されている。 2-1.引用例1 (1)「【実施例】本発明は、固体非半導体レーザで使用される、希土類をドープされた希土類オルトケイ酸塩の結晶を成長する方法である。」(【0011】) (2)「オルトケイ酸塩は一般式Ln_(2-x)RE_(x)SiO_(5)を有する。ただし、Lnは、イットリウム(Y)および原子番号58?71(Ce?Lu)をもつランタノイド系列希土類元素から選択された少なくとも1つの元素であり、REは、原子番号58?71(Ce?Lu)をもつランタノイド系列のうちの少なくとも1つの希土類元素であってREイオンは化学式中のLnイオンとは異なるもの」(【0011】) (3)「結晶成長のためには、最低純度99.999%以上の酸化物粉末が希土類酸化物(Ln_(2)O_(3)およびRE_(2)O_(3))とSiO_(2)の両方に使用される。」(【0015】) (4)「酸化物粉末は、粉末に湿気およびCO_(2)がないことを保証するために、結晶成長工程で使用される前に1100℃で2?8時間焼成される。次に、焼成された酸化物粉末は秤量され、(Ln_(2-x)RE_(x)O_(3)):SiO_(2)が1:1の化学量論比になるように混合され、均一に円柱形に加圧成形され、坩堝に装填される。」(【0016】) (5)「実施例では・・・・・・結晶は、液体表面温度約2070℃の溶融物から成長され」(【0017】) (6)「本発明によれば、希土類オルトケイ酸塩結晶は、チョクラルスキー技術によって・・・・・・成分酸化物の溶融混合物から成長される。」(【0032】) ここで、上記(1)?(6)の記載について検討する。 (あ)上記(2)には、「Lnは、イットリウム(Y)およびランタノイド系列希土類元素から選択された少なくとも1つの元素」、「REは、ランタノイド系列のうちの少なくとも1つの希土類元素」であって「REとLnは異なる」旨の記載があり、一方、ガドリニウム及びセリウムは共にランタノイド系列希土類元素の一つであるから、上記(3)の「希土類酸化物(Ln_(2)O_(3)およびRE_(2)O_(3))の粉末」として「酸化ガドリニウム粉末及び酸化セリウム粉末」の場合が含まれるといえる。 (い)上記(4)において、「希土類酸化物(Ln_(2)O_(3)およびRE_(2)O_(3))粉末とSiO_(2)が秤量され、所定の化学量論比となるよう混合され坩堝に装填される」から、「希土類酸化物粉末である酸化ガドリニウム粉末及び酸化セリウム粉末とSiO_(2)を混合し坩堝に装填している」ことを含むといえる。 (う)上記(5)において、「結晶は溶融物から成長」しているから、「希土類酸化物粉末である酸化ガドリニウム粉末及び酸化セリウム粉末とSiO_(2)を混合し」「坩堝に装填した後に溶融し結晶を成長」させていることは明らかである。 (え)上記(3)からSiO_(2)も酸化物粉末であり、SiO_(2)粉末と希土類酸化物粉末は、上記(4)に示すように「粉末に湿気およびCO_(2)がないことを保証するために、結晶成長工程で使用される前に1100℃で2?8時間焼成」されるものである。そして、「結晶成長工程で使用される前」とは上記(4)から「秤量され坩堝に装填される」前である。 以上より、上記(1)?(5)の記載事項を本願発明の記載ぶりに則して整理すると、引用例1には、 「酸化ガドリニウム粉末及び酸化セリウム粉末とSiO_(2)粉末を混合し坩堝に装填した後に溶融し結晶を成長する方法において、これら粉末を、粉末に湿気およびCO_(2)がないことを保証するために、秤量され坩堝に装填され溶融される前に1100℃で2?8時間焼成する結晶を成長する方法」 の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 2-2.引用例2 (1)「珪酸ガドリニウム単結晶等の希土類珪酸塩単結晶は、シンチレータ・・・・・として広く用いられている」(1ページ右欄9?11行) 2-3.引用例3 (1)「単結晶がセリウムで賦活した珪酸ガドリニウム単結晶であり」(【請求項3】) (2)「本発明はシンチレータ等の光学結晶に用いられる単結晶の製造方法に関する。」(【0001】) 3.対比・判断 本願発明と引用発明1を対比する。 (か)引用発明1の「SiO_(2)」は本願発明の「珪素酸化物」に相当し、引用発明1の「酸化ガドリニウム粉末及び酸化セリウム粉末とSiO_(2)」は、「混合し坩堝に装填した後に溶融し」ているから、本願発明の「酸化ガドリニウム、珪素酸化物を含む原料」であって「融液」となるものに相当する。 (き)引用発明1において「酸化ガドリニウム粉末とSiO_(2)粉末」を「混合し坩堝に装填した後に溶融」すれば、「珪酸ガドリニウム」が生成することは明らかである。 (く)上記2-1.(6)には、「結晶はチョクラルスキー技術によって成長される」旨の記載があるから引用発明1においてはチョクラルスキー技術によって結晶を成長させているといえ、チョクラルスキー技術によって成長させた結晶は単結晶であるから、引用発明1の「結晶を成長する方法」は本願発明の「単結晶を育成する方法」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明1は、共に、「酸化ガドリニウム、珪素酸化物を含む原料の融液から珪酸ガドリニウム単結晶を育成する方法」の発明である点で一致し、 (A)本願発明が、「1000℃まで加熱した時の重量減少が1.0 %以下である原料を用い」ているのに対し、引用発明1では原料を「湿気およびCO_(2)がないことを保証するために、秤量され坩堝に装填され溶融される前に1100℃で2?8時間焼成する」点、 (B)珪酸ガドリニウム単結晶につき、本願発明が「シンチレータ用」であるのに対し、引用発明1はかかる用途について言及がない点、 で相違している。 そこで、これら相違点について検討する。 ・相違点(A)について (さ)本願明細書の「希土類酸化物原料には吸着ガス・水和物を含み酸化珪素と秤量・混合する際、実際には2酸化珪素過剰の組成状態になってしまうことが多い。このため、安定して良好なシンチレ-タ特性が得られないという問題があった。本発明は、安定して良好なシンチレ-タ特性が得られる希土類珪酸塩単結晶を育成する方法を提供するものである。」(【0003】)との記載、 及び「本発明は、希土類珪酸塩単結晶を育成する場合に、吸着ガスや水和物の含有量の極めて少ない希土類酸化物等の原料を使用する」(【0004】)との記載、 からみて、本願発明の「1000℃まで加熱した時の重量減少が1.0 %以下である原料」とは、「酸化珪素と秤量・混合する際」、「2酸化珪素過剰の組成状態」を解消すべく「1000℃まで加熱した時の重量減少が」起こる、「吸着ガス・水和物」の含有量を極めて少なくした原料であって、この「重量減少が1.0 %以下」とは、この「吸着ガス・水和物」の原料中の含有許容量の上限値を特定したものとみることができる。 (し)本願発明の加熱温度が「1000℃」まであり、引用発明1の「秤量され坩堝に装填され溶融される前」の加熱温度が「1100℃」であって、両者は加熱温度が近似しているから、引用発明1において「ないことを保証する」「湿気およびCO_(2)」は「吸着ガス・水和物」に相当するとみることができる。 (す)そうすると、引用発明1の原料を「湿気およびCO_(2)がないことを保証するために、秤量され坩堝に装填され溶融される前に1100℃で2?8時間焼成する」とは、原料に含まれる「吸着ガス・水和物」をなくすようにするものであって、原料に含まれる「吸着ガス・水和物」を極力少なくするものとみることができる。 (せ)よって、上記(さ)?(す)より、本願発明の「1000℃まで加熱した時の重量減少が1.0 %以下である原料」とは、原料中の「吸着ガス・水和物」含有許容量の上限値を特定したものであり、本願発明と引用発明1とは、この原料中の「吸着ガス・水和物」含有量を極力少なくする点で共通するものといえるから、引用発明1において、極力少なくする目標値、すなわち、含有許容量の上限値を特定するにより、「1000℃まで加熱した時の重量減少が1.0 %以下である原料」とすることは、当業者ならば困難とはいえない。 ・相違点(B)について 上記2-2.(1)に示すように引用例2には、また、上記2-3.(1)(2)に示すように引用例3には、それぞれ、珪酸ガドリニウム単結晶の用途としてシンチレータが記載されているから、引用発明1において成長する結晶である珪酸ガドリニウム単結晶の用途としてシンチレータを特定することは当業者にとって困難とはいえない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-09 |
結審通知日 | 2008-06-16 |
審決日 | 2008-06-27 |
出願番号 | 特願平8-230225 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C30B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 則充 |
特許庁審判長 |
板橋 一隆 |
特許庁審判官 |
木村 孔一 森 健一 |
発明の名称 | 希土類珪酸塩単結晶の育成方法 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 箱田 篤 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 大塚 文昭 |