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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1183067
審判番号 不服2005-3529  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-28 
確定日 2008-08-14 
事件の表示 特願2001- 4331「行動認識発話型語学学習装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月26日出願公開、特開2002-207413〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成13年1月12日の出願であって、平成17年1月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年2月28日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

本願の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「学習者の行動を撮影するカメラを接続した学習行動検出部と、
前記学習行動検出部の信号を入力し、前記カメラの信号により少なくとも学習者の行動を認識する行動認識装置と、
前記行動認識装置により認識されたデータにより、そのデータと関連し、学習言語選択指示部で指示された言語についての語学学習用データを出力する語学学習処理装置と、
前記語学学習処理装置の出力データを音声化する音声化処理装置とからなることを特徴とする行動認識発話型語学学習装置。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-292710号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

ア.「【請求項1】 外国語の文例と文法事項と挿し絵を含む画像情報を記憶した画像情報記憶手段と、前記画像情報記憶手段に記憶してある画像情報を表示する表示手段と、マウスによる入力手段から画像情報が選択されたときに、画像情報を説明する音声情報を記憶した音声記憶手段を検索する検索手段と、前記検索手段より検索された音声情報を再生する再生手段と、を具備していることを特徴とする外国語学習支援装置。」(以下、「引用発明」という。)
イ.「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、外国語学習支援装置に関し、特に、学習説明用情報を出力するための音声情報検索機能つき外国語学習支援装置に関する。」
ウ.「【0004】 そこで本発明は、文字や画像を説明するための音声情報を、文字や画像を選択する事によって出力させることを目的としている。」
エ.「【0007】 表示手段100は画面情報記憶手段104に記憶してある学習内容を学習者に提示する。学習者は入力手段103により、説明を求めたい項目を選ぶことが出来る。
【0008】 今、学習者は入力手段103より項目101を選択したとする。検索手段102は選択された項目101の画面上の位置座標をキーにして音声情報記憶手段105を検索する。検索された場合、検索された音声情報を再生手段106より、出力する。」

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。

a.引用発明の「外国語の文例と文法事項と挿し絵を含む画像情報を説明する音声情報」は「語学学習用データ」ということができ、また、引用発明の「外国語学習支援装置」は音声情報が再生されるから、「発話型語学学習装置」ということができる。
b.引用発明の「音声情報を再生する再生手段」は、「語学学習処理装置の出力データを音声化する音声化処理装置」ということができる。
c.引用発明が「マウスによる入力手段から画像情報が選択されたときに、画像情報を説明する音声情報を記憶した音声記憶手段を検索する検索手段と、前記検索手段より検索された音声情報を再生する再生手段と、を具備していること」から、引用発明は、語学学習用データを選択する手段を有していることは明らかであり、該選択する手段は選択のためのデータを出力することは当然である。また、その選択のためのデータにより、そのデータと関連するデータを再生手段に出力する装置(以下、「関連データ出力装置」という。)を具備していることも当然である。
d.本願発明の「行動認識装置により認識されたデータにより、そのデータと関連する語学学習用データを出力する語学学習処理装置」における「行動認識装置により認識されたデータ」は選択のためのデータといえ、当該データにより語学学習処理装置が出力する、そのデータと関連する「語学学習用データ」は、当該データと関連するデータといえる。
e.c.とd.から、引用発明の「関連データ出力装置」と本願発明の「語学学習処理装置」とは、選択するためのデータにより、そのデータと関連するデータを音声化処理装置に出力する装置である限度で一致している。

してみると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違している。

<一致点>
語学学習用データを選択する手段と、
前記選択手段が出力する選択のためのデータにより、そのデータと関連する語学学習用データを出力する装置と、
前記語学学習用データを音声化する音声化処理装置とからなる発話型語学学習装置。

<相違点1>
本願発明では、語学学習用データを選択する手段として、学習者の行動を撮影するカメラを接続した学習行動検出部と前記学習行動検出部の信号を入力し、前記カメラの信号により少なくとも学習者の行動を認識する行動認識装置とを備えると共に、選択のためのデータが前記行動認識装置によって認識されたデータであると特定されているのに対して、引用発明ではそのような特定がされたものではない点。
<相違点2>
本願発明では、語学学習データが、「学習言語選択指示部で指示された言語についての」ものであることが特定されているのに対して、引用発明ではそのような特定がされたものではない点。
<相違点3>
語学学習用データを出力する装置及び発話型語学学習装置が、本願発明では、それぞれ「語学学習処理装置」及び「行動認識発話型語学学習装置」と特定されているのに対して、引用発明ではそのような特定がされたものではない点。

4.相違点についての検討
<相違点1>について検討する。
引用発明において、マウスによる入力手段から表示手段上に表示された画像情報が選択されることにより選択のためのデータが出力されるから、マウスと、該マウスにより検出されるマウス操作行動の信号を入力し、該信号により学習者の行動であるマウス操作行動を認識するマウス操作行動認識手段を備えていることは自明である。マウスは行動検出部といえるから、結局、引用発明は、学習行動検出部と学習者の行動を認識する行動認識装置を備えているといえる。
そして、本願発明において、学習行動検出部が検出すべき学習者の行動、学習行動検出部の信号を行動認識装置がどのように学習者の行動として認識するか及び認識されたデータと語学学習用データをどのように予め関連づけておくかについては、特許請求の範囲で格別限定のない事項であり、また行動認識装置の構成は行動検出部の構成如何によって決定されるものであるから、結局、相違点1は、学習行動検出部の相違に帰着する。
「人の行動を撮影するカメラを接続した」行動検出部は、例えば特開平2-132510号公報(第2ページ左下欄第8行目?右下欄第2行目)、特開平9-128141号公報(【0022】、【0023】)等に示されるように周知である。刊行物記載の行動認識発話型語学学習装置におけるマウスにかえて、人の行動を撮影するカメラを採用することに伴い、カメラの信号により少なくとも人の行動を認識する行動認識装置を備え、相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。
請求人は、審判請求書の「3.拒絶査定について」において、「しかしながら、引用文献1に記載の発明は、「学習者の行動」はマウスの操作であり、マウスによって選択した画像情報に関する音声情報を再生出力するものであり、「マウスを操作した」という行動を認識して、認識されたデータにより、例えば「あなたはマウスを操作しました。」のような音声出力するものではありません。本発明はこのように、人間が行動したことを音声化する点に特徴があり、マウスでいろいろな画像を選択しても、それは学習者にとってその画像に関する行動を行っていないため、学習者にとって何の実感も伴わない空虚な情報にすぎず、その画像に関する音声が発せられても本発明でいう学習効果が上がりません。本発明はあくまでも、学習者が行動することによって運動神経が刺激されている状態で、その運動神経に関連する音声が発せられることにより初めて学習効果が得られるものです。」と主張している。しかしながら、本願発明は請求項1に記載されたとおりのものであって、検出した情報をどのように認識し、どのような情報を音声化するか特定されていない。したがって、「人間が行動したことを音声化する」、「運動神経に関連する音声」等の請求人の主張は、請求項1の記載に基づくものではない。

<相違点2>について検討する。
語学を学習するための装置において、1つの言語だけでなく、複数の言語についても学習でき、言語を選択できる構成とすることは、例えば特開平3-211664号公報(第11ページ右上欄第16実施例)、実願昭59-161569号(実開昭61-78356号)のマイクロフィルム(第4ページ第18?20行目「回答提示モード指定領域31」)等に示すように周知である。言語を選択できる構成とされている場合、どの言語について学習するのか選択指示する必要があることは明らかであるから、刊行物記載の行動認識発話型語学学習装置に周知技術である学習言語選択指示部を設け、語学学習データを指示部で指示された言語についてのものとすることは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。

<相違点3>について検討する。
相違点3は単なる呼称上の違いにすぎず、実質的な構成上の相違点ではない。

そして本願発明の作用効果も、刊行物に記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、刊行物に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、本願のその余の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-10 
結審通知日 2008-06-17 
審決日 2008-06-27 
出願番号 特願2001-4331(P2001-4331)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大山 栄成  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 長島 和子
七字 ひろみ
発明の名称 行動認識発話型語学学習装置  
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