• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D
管理番号 1183069
審判番号 不服2005-9808  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-25 
確定日 2008-08-14 
事件の表示 特願2000-591317「内燃機関の出力状態検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月 6日国際公開、WO00/39444〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1999年9月17日(優先権主張1998年12月24日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成17年4月20日付けで拒絶の査定がなされ、平成17年5月25日付けで拒絶の査定に対する審判が請求され、平成20年1月23日付けで当審より拒絶の理由が通知され、平成20年3月31日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

したがって、本願請求項1に係る発明は、平成20年3月31日付け手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
内燃機関とその内燃機関により駆動されて電力を生成しバッテリの電力を受けて駆動するモータージェネレーターとを搭載したハイブリッド車の内燃機関の出力状態検出装置において、
前記モータージェネレーターのトルク反力を検出するトルク検出手段と、
前記内燃機関の出力状態を検出する出力状態検出手段と、
前記モータージェネレーターを制御して前記内燃機関の回転数を所定領域に維持する回転制御手段と、
前記内燃機関の出力を前記モータージェネレーターと駆動輪に振り分ける動力分割手段と、
を備え、
前記出力状態検出手段が、前記回転制御手段による回転制御中において、前記トルク検出手段によって検出された前記モータージェネレーターのトルク反力を基にして前記内燃機関の出力状態を検出すること、
を特徴とする内燃機関の出力状態検出装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物に記載された発明
当審において通知した拒絶の理由において周知技術のひとつとして引用した、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-201005号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、次のことが記載されている。

a)「【0124】エンジン50の回転速度の変化率ω’を算出すると、次式(13)によりエンジン50が現在出力していると推定される推定トルクTefを算出する(ステップS236)。ここで、式(13)の右辺の「I」は、クランクシャフト56やクランクシャフト56に結合されたアウタロータ32等のクランクシャフト56の軸の回りの慣性モーメントである。この式(13)は、クランクシャフト56に作用する力の釣り合いに基づく運動方程式として導き出される。即ち、クランクシャフト56に作用するエンジン50のトルクTeが、クラッチモータ30のトルクTcと系の加速度運動として表わされる力(I×ω’)との和に等しいことに基づく。
【0125】Tef=Tc+I×ω’ …(13)」(段落【0124】、【0125】)

b)「【0158】第5実施例の動力出力装置110が組み込まれた車両は、図29に示すように、クランクシャフト156にクラッチモータ30とアシストモータ40とが取り付けられている代わりにプラネタリギヤ120,モータMG1およびモータMG2が取り付けられている点を除いて第1実施例の動力出力装置20が組み込まれた車両(図3)と同様の構成をしている。したがって、同一の構成には、値100を加えた符号を付し、その説明は省略する。なお、第5実施例の動力出力装置110の説明でも、明示しない限り第1実施例の動力出力装置20の説明の際に用いた符号はそのまま同じ意味で用いる。
【0159】図27に示すように、動力出力装置110は、大きくは、エンジン150、エンジン150のクランクシャフト156にプラネタリキャリア124が機械的に結合されたプラネタリギヤ120、プラネタリギヤ120のサンギヤ121に結合されたモータMG1、プラネタリギヤ120のリングギヤ122に結合されたモータMG2およびモータMG1,MG2を駆動制御する制御装置180から構成されている。
【0160】プラネタリギヤ120およびモータMG1,MG2の構成について、図28により説明する。プラネタリギヤ120は、クランクシャフト156に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸125に結合されたサンギヤ121と、クランクシャフト156と同軸のリングギヤ軸126に結合されたリングギヤ122と、サンギヤ121とリングギヤ122との間に配置されサンギヤ121の外周を自転しながら公転する複数のプラネタリピニオンギヤ123と、クランクシャフト156の端部に結合され各プラネタリピニオンギヤ123の回転軸を軸支するプラネタリキャリア124とから構成されている。このプラネタリギヤ120では、サンギヤ121,リングギヤ122およびプラネタリキャリア124にそれぞれ結合されたサンギヤ軸125,リングギヤ軸126およびクランクシャフト156の3軸が動力の入出力軸とされ、3軸のうちいずれか2軸へ入出力される動力が決定されると、残余の1軸に入出力される動力は決定された2軸へ入出力される動力に基づいて定まる。なお、このプラネタリギヤ120の3軸への動力の入出力についての詳細は後述する。
【0161】リングギヤ122には、動力の取り出し用の動力取出ギヤ128がモータMG1側に結合されている。この動力取出ギヤ128は、チェーンベルト129により動力伝達ギヤ111に接続されており、動力取出ギヤ128と動力伝達ギヤ111との間で動力の伝達がなされる。図29に示すように、この動力伝達ギヤ111はディファレンシャルギヤ114にギヤ結合されている。したがって、動力出力装置110から出力された動力は、最終的に左右の駆動輪116,118に伝達される。
【0162】モータMG1は、同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石135を有するロータ132と、回転磁界を形成する三相コイル134が巻回されたステータ133とを備える。ロータ132は、プラネタリギヤ120のサンギヤ121に結合されたサンギヤ軸125に結合されている。ステータ133は、無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、ケース119に固定されている。このモータMG1は、永久磁石135による磁界と三相コイル134によって形成される磁界との相互作用によりロータ132を回転駆動する電動機として動作し、永久磁石135による磁界とロータ132の回転との相互作用により三相コイル134の両端に起電力を生じさせる発電機として動作する。なお、サンギヤ軸125には、その回転角度θsを検出するレゾルバ139が設けられている。
【0163】モータMG2も、モータMG1と同様に同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石145を有するロータ142と、回転磁界を形成する三相コイル144が巻回されたステータ143とを備える。ロータ142は、プラネタリギヤ120のリングギヤ122に結合されたリングギヤ軸126に結合されており、ステータ143はケース119に固定されている。モータMG2のステータ143も無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されている。このモータMG2もモータMG1と同様に、電動機あるいは発電機として動作する。なお、リングギヤ軸126には、その回転角度θrを検出するレゾルバ149が設けられている。」(段落【0158】?【0163】)

c)「【0180】第5実施例の動力出力装置110におけるトルク制御は、図32に例示するトルク制御ルーチンを実行することにより行なわれる。本ルーチンが実行されると、制御装置180の制御CPU190は、まずリングギヤ軸126の回転数Nrを入力する処理を行なう(ステップS300)。リングギヤ軸126の回転数Nrは、レゾルバ149から読み込んだリングギヤ軸126の回転角度θrから求めることができる。次に、アクセルペダルポジションセンサ165により検出されるアクセルペダルポジションAPを読み込み(ステップS302)、読み込まれたアクセルペダルポジションAPに応じてリングギヤ軸126に出力すべきトルクの目標値であるトルク指令値Tr*を導出する処理を行なう(ステップS304)。ここで、アクセルペダルポジションAPに応じて駆動輪116,118に出力すべきトルクを導出せずに、リングギヤ軸126に出力すべきトルクを導出するのは、リングギヤ軸126は動力取出ギヤ128,動力伝達ギヤ111およびディファレンシャルギヤ114を介して駆動輪116,118に機械的に結合されているから、リングギヤ軸126に出力すべきトルクを導出すれば、駆動輪116,118に出力すべきトルクを導出する結果となるからである。なお、第5実施例では、トルク指令値Tr*とリングギヤ軸126の回転数NrとアクセルペダルポジションAPとの関係を示すマップを予めROM190bに記憶しておき、アクセルペダルポジションAPが読み込まれると、マップと読み込まれたアクセルペダルポジションAPおよびリングギヤ軸126の回転数Nrに基づいてトルク指令値Tr*の値を導出するものとした。
【0181】次に、導き出されたトルク指令値Tr*と読み込まれたリングギヤ軸126の回転数Nrとから、リングギヤ軸126に出力すべきエネルギPrを計算(Pr=Tr*×Nr)により求め(ステップS306)、リングギヤ軸126に出力すべきエネルギPrに基づいてエンジン150の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを設定する処理を行なう(ステップS152)。上述したように、このエンジン150の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを設定する際に、第1実施例の動力出力装置20で説明した図6のマップ、即ち、各エネルギPrに対してエンジン150ができる限り効率の高い状態で運転され、かつエネルギPrの変化に対してエンジン150の運転状態が滑らかに変化するエンジン150の運転ポイントを目標トルクTe*および目標回転数Ne*としたマップを用いる。
【0182】こうしてエンジン50の目標トルクTe*および目標回転数Ne*を設定すると、この目標トルクTe*および目標回転数Ne*に基づいてモータMG1の制御(ステップS310)、モータMG2の制御(ステップS312)およびエンジン150の制御(ステップS314)が行なわれる。なお、第5実施例でも図示の都合上、各制御を別々のステップとして記載しているが、実際には、これらの制御は同時に並行して行なわれる。」(段落【0180】?【0182】)

d)「【0185】次に、リングギヤ軸126の回転数Nrを入力し(ステップS326)、ステップS324の処理と同様の処理によりリングギヤ軸126の回転速度の変化率ωr’を計算する(ステップS328)。こうして、サンギヤ軸125およびリングギヤ軸126の回転速度の変化率ωs’およびωr’を算出すると、次式(27)によりエンジン150が現在出力していると推定される推定トルクTefを算出する(ステップS330)。ここで、式(27)の右辺の「Ie」は、エンジン150およびクランクシャフト156の軸の回りの慣性モーメントであり、「Ig」は、モータMG1のロータ132およびサンギヤ軸125の軸の回りの慣性モーメントである。この式(27)は、図30および図31に例示した共線図における動作共線の力の釣り合いに基づく運動方程式から導き出される。
【0186】
【数12】
Tef=(1+ρ)/ρ×Tm1+Ie/(1+ρ)×ωs'
+{ρ/(1+ρ)×Ie+(1+ρ)/ρ×Ig}×ωr' ……(27)

【0187】続いて、図6のエンジン50の運転ポイントを決定するマップを用いてエンジン150の推定トルクTefに対応する回転数(推定目標回転数)Nef*を導出する処理を実行する(ステップS332)。第3実施例と同様に、例えば、図21の説明図に示すように、推定目標回転数Nef*を、エンジン150の高効率運転ポイントの曲線A上の推定トルクTefに対応する値として求めるのである。そして、求めた推定目標回転数Nef*と入力したリングギヤ軸126の回転数Nrとから、次式(28)によりサンギヤ軸125の目標回転数Ns*を計算する(ステップS334)。この式(28)は、図30および図31の共線図における各座標軸S,C,Rの回転数の比をとることにより容易に導き出すことができる。
【0188】
【数13】
Ns*=(1+ρ)/ρ×Nef*-1/ρ×Nr …… (28)
【0189】次に、求めた推定トルクTefや推定目標回転数Nef*および目標回転数Ns*を用いて次式(29)によりモータMG1のトルク指令値Tm1*を計算して設定する(ステップS336)。この式(29)の右辺第2項は、サンギヤ軸125の回転数Nsと目標回転数Ns*との偏差に基づく補正項であり、kcは定数である。また、式(29)の右辺第3項は、サンギヤ軸125の回転数Nsの目標回転数Ns*に対する定常偏差を解消するための積分項であり、kiは定数である。このようにモータMG1のトルク指令値Tm1*を設定してモータMG1を制御することにより、エンジン150をトルクTeが推定トルクTefで回転数Neが推定目標回転数Nef*の運転ポイントで運転するよう制御することができるのである。
【0190】
【数14】
Tm1*=ρ/(1+ρ)×Tef+kc(Ns-Ns*)+∫ki(Ns-Ns*)dt ……(29)
【0191】ここで、サンギヤ軸125の回転数Nsを目標回転数Ns*に制御することにより、エンジン150を、推定トルクTefおよび推定目標回転数Nef*の運転ポイントで運転するよう制御できるのは次の理由による。図30および図31の共線図を用いて説明したように、プラネタリギヤ120は、サンギヤ軸125,リングギヤ軸126およびプラネタリキャリア124の回転数のうちいずれか2つの回転数を決定すれば残余の回転数はこれらに基づいて定まる。駆動輪116,118に機械的に接続されているリングギヤ軸126の回転数Nrは入力値として与えられるから、サンギヤ軸125の回転数Nsかエンジン150の回転数Neのいずれかを制御すれば、プラネタリギヤ120の3軸の回転状態が定まる。いま、エンジン150を推定トルクTef,推定目標回転数Nef*の効率のよい運転ポイントで運転したいから、エンジン150の回転数Neを制御すればよいが、エンジン150のトルクTeと回転数Neは、スロットルバルブ166の開度BPや燃料噴射量をきめ細かく制御してもエンジン150の負荷トルクによって変動するものであるから、エンジン150の運転ポイントを独立に制御するのは困難である。一方、サンギヤ軸125の回転数Nsは、モータMG1の回転数制御により容易にかつ高精度に行なうことができる。したがって、第5実施例では、エンジン150の回転数Neの制御をモータMG1によるサンギヤ軸125の回転数Nsの制御によって行なうのである。」(段落【0185】?【0191】)

e)上記a)、d)、図27、30及び31等の記載からみて、引用刊行物に記載されたものは、モータMG1のトルクTm1に基づいてエンジンの推定トルクTefを算出するものであるから、何らかの手法によるモータMG1のトルクを検出するトルク検出手段を備えること、及び、エンジンの推定トルクTefを算出するエンジントルク算出手段若しくはエンジントルク算出装置、を備えるものであることがわかる。

f)上記b)、c)及び図27等の記載からみて、プラネタリギヤ120は、そのリングギヤ軸126が動力取出ギヤ128、動力伝達ギヤ111、駆動軸112,ディファレンシャルギヤ114を経由して駆動輪に接続され、また、サンギヤ軸125はモータMG1と接続され、プラネタリキャリア124はエンジンに接続されており、エンジン150の出力は、当該プラネタリギヤ120によりモータMG1と駆動輪とに振り分けられるものであることがわかる。

g)上記d)の段落【0187】?【0189】の記載からみて、モータMG1を制御することにより、エンジン150は、その回転数を目標回転数Nef*となるように制御されるものであり、そのような回転数制御手段が記載されているといえる。

h)以上のこと、及び図面の記載からみて、引用刊行物には以下の発明が記載されているといえる。

「エンジン150とそのエンジン150により駆動されて電力を生成しバッテリ194の電力を受けて駆動するモータMG1とを搭載した動力出力装置110のエンジントルク算出装置において、
前記モータMG1のトルクTm1を検出するトルク検出手段と、
前記エンジン150の推定トルクTefを算出するエンジントルク算出手段と、
前記モータMG1を制御して前記エンジン150の回転数を推定目標回転数Nefとなるように制御する回転数制御手段と、
前記エンジン150の出力を前記モータMG1と駆動輪に振り分けるプラネタリギヤ120と、
を備え、
前記エンジントルク算出手段が、前記トルク検出手段によって検出された前記モータMG1のトルクを基にして前記エンジン150の推定トルクTefを検出する、
エンジン150のエンジントルク算出装置。」(以下、「引用刊行物に記載の発明」という。)

3.対比
本願発明と、引用刊行物記載の発明とを比較すると、引用刊行物記載の発明における「エンジン150」、「モータMG1」、「回転数制御手段」、「プラネタリギヤ120」及び「トルクTM1」は、それぞれ本願発明における「内燃機関」、「モータージェネレーター」、「回転制御手段」、「動力分割手段」及び「トルク反力」に相当し、また、引用刊行物記載の発明は「動力出力装置110」とされているが、その構造からみてハイブリッド車に関するものであることは明らかであり、さらに、引用刊行物記載の発明において算出される「推定トルクTef」は、エンジンの出力状態の一つであり本願発明の「出力状態」に含まれるので、引用刊行物記載の発明が備える「エンジントルクを算出するエンジントルク算出手段」及び「エンジントルク算出装置」は、それぞれ本願発明の備える「出力状態を検出する出力状態検出手段」及び「出力状態検出装置」に包含される。加えて、引用刊行物記載の発明の「エンジンの回転数を推定目標回転数Nefとなるように制御する回転数制御手段」は、その機能からみて、当然本願発明のような「内燃機関(エンジン)の回転数を所定領域に維持する回転制御手段」に相当するものである。

したがって、両者は以下の一致点・相違点を有するものである。

〈一致点〉
「内燃機関とその内燃機関により駆動されて電力を生成しバッテリの電力を受けて駆動するモータージェネレーターとを搭載したハイブリッド車の内燃機関の出力状態検出装置において、
前記モータージェネレーターのトルク反力を検出するトルク検出手段と、
前記内燃機関の出力状態を検出する出力状態検出手段と、
前記モータージェネレーターを制御して前記内燃機関の回転数を所定領域に維持する回転制御手段と、
前記内燃機関の出力を前記モータージェネレーターと駆動輪に振り分ける動力分割手段と、
を備え、
前記出力状態検出手段が、前記トルク検出手段によって検出された前記モータージェネレーターのトルク反力を基にして前記内燃機関の出力状態を検出する、
内燃機関の出力状態検出装置。」

〈相違点〉
本願発明が備える「出力状態検出手段」は、「前記回転制御手段による回転制御中において」、前記トルク検出手段によって検出された前記モータージェネレーターのトルク反力を基にして前記内燃機関の出力状態を検出する、ものであるのに対し、引用刊行物記載の発明が備える「エンジントルク算出手段」は、同様の検出を行うものではあるが、当該検出を行う時期については明らかではない点、相違する。

4.当審の判断
引用刊行物記載の発明において、推定トルクTefの算出はモータMG1の制御の中において行われる(引用刊行物、段落【0185】、図33等)ものであるが、当該モータMG1の制御に関しては、モータMG2の制御及びエンジン150の制御と「実際には、これらの制御と同時に並行して行われる。」(引用刊行物、段落【0182】)とされており、このことは、全体の複数の制御について同時並行的に実行するということを示すものであり、このことを参酌すれば、全体の制御に含まれる特定の制御の一部分の処理についても同時並行的に実行しようとすることは、当業者にとりごく自然に想到することであり、上記の出力状態の検出についてエンジン150の回転数制御等と同時並行的に実行することとし、本願発明のようにすることは、当業者にとり特段の創作力を要することなく想到する程度のことにすぎず、また、本願発明のようにした結果、予想される以上の顕著な効果が生じたものとも認められない。

5.発明の詳細な説明の記載不備について
本願発明の前提となる駆動系について、エンジン1、モータージェネレーターMG2及びモータージェネレーターMG3が動力分割機構(プラネタリーギヤユニット)4により結合されており、その運動方程式についても、この3者についての慣性モーメント、回転角速度について運動方程式が成立するものと考えられるが、本願の発明の詳細な説明の記載には、この系全体の運動方程式を記載することなく、その中の一部(モータージェネレーターMG2に関する部分)を除いた運動方程式について大まかな説明があるのみで、何故そのような運動方程式が成立するかについて何ら説明もなく、当該方程式が成立することを前提に発明についての説明が展開されている。また、エンジンの回転制御についてもいかなる時期にどのような回転制御を行うものか等(本願発明の前提となる駆動系には2つのモータージェネレーター(MG2,MG3)が存在するが、その何れかがいかに回転制御を実行するか、あるいは2つのモータージェネレーターが分担して何かしらの制御を実行するものか等)、その具体的内容を何ら説明せず極めて概略的に記述するのみであり、そのような曖昧な説明のみである駆動系を前提とする本願発明が、本願の発明の詳細な説明の記載に基づいて、その内容を当業者が実施ができる程度に十分明確に記載されたものとは認められない。
(この点に関し、当審より拒絶の理由を通知し釈明を求めたが、請求人は抽象的な論を主張するのみで、算出の前提条件、具体的算出手法についてなんら説明することはなかった。)

6.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が容易に本願発明の実施をすることができる程度に記載されたものとは認められないので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものではない。

よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2008-06-16 
結審通知日 2008-06-17 
審決日 2008-07-01 
出願番号 特願2000-591317(P2000-591317)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F02D)
P 1 8・ 536- WZ (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤井 眞吾  
特許庁審判長 早野 公惠
特許庁審判官 深澤 幹朗
荘司 英史
発明の名称 内燃機関の出力状態検出装置  
代理人 上田 和弘  
代理人 黒木 義樹  
代理人 長谷川 芳樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ