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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1183081
審判番号 不服2005-23295  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-01 
確定日 2008-08-14 
事件の表示 平成11年特許願第223790号「遊戯機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月20日出願公開、特開2001- 46602〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願補正発明
本願は平成11年8月6日に出願されたものであって、平成17年6月29日付の拒絶理由が通知され、平成17年9月5日付で意見および手続補正がなされ、平成17年10月27日付で拒絶査定がなされたのに対して平成17年12月1日付で審判請求がなされ、平成17年12月26日付で手続補正がなされたものである。

(1)補正の内容
平成17年12月26日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成17年9月5日付の手続補正で補正された特許請求の範囲である
「【請求項1】 複数の電子部品が機能別に分類され、
それぞれの機能に対して、各電子部品を制御する複数の制御基板と、
当該複数の制御基板とは分離され、それぞれの制御基板へ島側から入力される交流電源を直流電源に変換し所定の直流電圧の電源及び停電時に少なくとも揮発性メモリを備えた制御基板が制御不能となる以前に、停電を報知する停電検出信号を出力し、停電中は前記揮発性メモリの記憶能力を保持するバックアップ電源を供給する電源モジュールと、
を有し、
前記揮発性メモリを備えた制御基板に前記電源断検出信号が検出されると、復帰に必要な情報を前記揮発性メモリに退避及び保護する処理、及び電源電圧低下に伴い電子機器や電子部品の各種動作を停止する電源断処理を実行し、
停電復帰後には、停電時に前記揮発性メモリに退避及び保護した記憶内容に基づいて、停電直前の状態で再開させる遊戯機。
【請求項2】 前記制御基板には、入賞によって、予め定められた数量又は倍率の遊戯球又はコイン等の賞品を遊戯者に獲得させるために必要な情報の記憶能力を持つ電子部品で構成された賞品付与制御機器と、所定の条件が成立すると遊戯者に有利な特別遊戯状態に変換するために必要な情報の記憶能力を持つ電子部品で構成された遊戯変換制御機器と、前記賞品を払い出しすると共に金銭に代えて貸与するために必要な情報の記憶能力を持つ電子部品で構成された払出制御機器と、が備えられ、 獲得した遊戯球又は遊戯コイン等の賞品の数量で遊戯者の遊戯状態の優劣を決める遊戯機であって、
前記電源モジュールは、前記賞品付与制御機器、遊戯変換制御機器、払出制御機器の少なくとも1つの記憶能力に対して、停電時に所定時間継続して供給する電源電圧を維持するようにバックアップ電源を供給することを特徴とした請求項1記載の遊戯機。
【請求項3】 前記電源モジュールと各制御基板との間には、中継基板が介在され、前記中継基板は、電源モジュールからの前記所定の直流電源、バックアップ電源及び停電検出信号の出力を必要に応じて各制御基板に振り分けることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遊戯機。
【請求項4】 賞品付与制御、遊戯変換制御を実行するための主制御基板及び払出制御を実行する払出制御基板、並びに図柄、音声及びランプを制御する基板を備え、前記電源モジュールは主制御基板及び/又は払出制御基板を前記バックアップ電源の供給対象としている、ことを特徴とする請求項2記載の遊戯機。
【請求項5】 前記払出制御基板が、前記電源モジュールから電源が供給されているプリペイドカードユニットに通信回線接続されていることを特徴とする請求項4記載の遊戯機。
【請求項6】 複数の電子部品が機能別に分類され、それぞれの機能に対して、各電子部品を制御する複数の制御基板と、
当該複数の制御基板とは分離され、それぞれの制御基板へ島側から入力される交流電源を直流電源に交換し所定の直流電圧の電源及び停電中は前記揮発性メモリの記憶能力を保持するバックアップ電源を供給する電源モジュールと、を有し、
前記複数の制御基板のうち主制御基板が停電検出回路を備え、当該停電検出回路が停電を検出した場合には、主制御基板の機能がダウンする前に、復帰に必要な情報を前記揮発性メモリに退避及び保護する処理、及び電源電圧低下に伴い電子機器や電子部品の各種動作を停止する電源断処理を実行し、
停電復帰後には、停電時に前記揮発性メモリに退避及び保護した記憶内容に基づいて、
停電直前の状態で再開させる遊戯機。
【請求項7】 前記揮発性メモリは、停電が発生した場合に、停電復帰後に停電直前の状態に戻すための必要最小限のデータを記憶するバックアップエリアと、その他のデータを記憶する非バックアップエリアに分割されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の遊戯機。」(以下、「補正前の請求項1?7に係る発明」という。)

を、

「【請求項1】 複数の電子部品が機能別に分類され、
それぞれの機能に対して、各電子部品を制御する複数の制御基板と、
当該複数の制御基板とは分離されて設けられ、それぞれの制御基板と接続され、島側から入力される交流電源を直流電源に変換して所定の直流電圧の電源及び停電時に少なくとも揮発性メモリを備えた制御基板が制御不能となる以前に、停電を報知する電源断検出信号を出力し、停電中は前記揮発性メモリの記憶能力を保持するバックアップ電源を供給する電源基板と、
を有し、
前記揮発性メモリを備えた制御基板で前記電源断検出信号が検出されると、復帰に必要な情報を前記揮発性メモリに退避及び保護する処理、及び電源電圧低下に伴い電子機器や電子部品の各種動作を停止する電源断処理を実行し、
停電復帰後には、停電時に前記揮発性メモリに退避及び保護した記憶内容に基づいて、停電直前の状態で再開させる遊戯機。
【請求項2】 前記制御基板には、入賞によって、予め定められた数量又は倍率の遊戯球又はコイン等の賞品を遊戯者に獲得させるために必要な情報の記憶能力を持つ電子部品で構成された賞品付与制御機器と、所定の条件が成立すると遊戯者に有利な特別遊戯状態に変換するために必要な情報の記憶能力を持つ電子部品で構成された遊戯変換制御機器と、前記賞品を払い出しすると共に金銭に代えて貸与するために必要な情報の記憶能力を持つ電子部品で構成された払出制御機器と、が備えられ、獲得した遊戯球又は遊戯コイン等の賞品の数量で遊戯者の遊戯状態の優劣を決める遊戯機であって、
前記電源基板は、前記賞品付与制御機器、遊戯変換制御機器、払出制御機器の少なくとも1つの記憶能力に対して、停電時に所定時間継続して供給する電源電圧を維持するようにバックアップ電源を供給することを特徴とした請求項1記載の遊戯機。
【請求項3】 前記電源基板と各制御基板との間には、中継基板が介在され、前記中継基板は、電源基板からの前記所定の直流電源、バックアップ電源及び電源断検出信号の出力を必要に応じて各制御基板に振り分けることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遊戯機。
【請求項4】 賞品付与制御、遊戯変換制御を実行するための主制御基板及び払出制御を実行する払出制御基板、並びに図柄、音声及びランプを制御する基板を備え、前記電源基板は主制御基板及び/又は払出制御基板を前記バックアップ電源の供給対象としている、ことを特徴とする請求項2記載の遊戯機。
【請求項5】 前記払出制御基板が、前記電源基板から電源が供給されているプリペイドカードユニットに通信回線接続されていることを特徴とする請求項4記載の遊戯機。
【請求項6】 複数の電子部品が機能別に分類され、
それぞれの機能に対して、各電子部品を制御する複数の制御基板と、
当該複数の制御基板とは分離されて設けられ、それぞれの制御基板と接続され、島側から入力される交流電源を直流電源に変換した所定の直流電圧の電源及び停電時に少なくとも揮発性メモリを備えた制御基板が制御不能となる以前に、停電を報知する電源断検出信号を出力し、停電中は前記揮発性メモリの記憶能力を保持するバックアップ電源を供給する電源基板と、
を有し、
前記複数の制御基板のうち主制御基板が、前記電源断検出信号に基づいて停電発生を検出する停電検出回路を備え、当該停電検出回路が停電を検出した場合には、主制御基板の機能がダウンする前に、復帰に必要な情報を前記揮発性メモリに退避及び保護する処理、及び電源電圧低下に伴い電子機器や電子部品の各種動作を停止する電源断処理を実行し、
停電復帰後には、停電時に前記揮発性メモリに退避及び保護した記憶内容に基づいて、停電直前の状態で再開させる遊戯機。
【請求項7】 前記揮発性メモリは、停電が発生した場合に、停電復帰後に停電直前の状態に戻すための必要最小限のデータを記憶するバックアップエリアと、その他のデータを記憶する非バックアップエリアに分割されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の遊戯機。」

とするものである(以下、本件補正の請求項1に係る発明を「本願補正発明」というとともに、請求項2?7に係る発明については「補正後の請求項2?7に係る発明」という。)。

(2)補正の適否
電源の供給を受けて装置を駆動する装置一般において、「電源モジュール」と「電源基板」とは実質的に同意味で使用されていることから、本件補正において、補正前の「電源モジュール」を、補正後に「電源基板」と単に言い換えたものと解される。
また、本願補正発明においては、補正前の請求項1に係る発明の「当該複数の制御基板とは分離され、それぞれの制御基板へ島側から入力される交流電源を直流電源に変換し」を、「当該複数の制御基板とは分離されて設けられ、それぞれの制御基板と接続され、島側から入力される交流電源を直流電源に変換して」として言い回しを変える補正は、明瞭でない記載の釈明であると解される。
さらに、補正前の「停電検出信号」を補正後の「電源断信号」とする補正は、拒絶査定時の「停電検出信号」と「前記電源断信号」との関係が不明瞭である指摘に基づく補正であるので、明瞭でない記載の釈明と認められる。
そして、本願補正発明における言い換えおよび明瞭でない釈明に連動して、補正前の請求項2?7に係る発明を補正後の請求項2?7に係る発明とする補正もまた、本願補正発明と同じく言い換えおよび明瞭でない記載の釈明と解される。
してみると、補正後の請求項1?7に係る発明とする本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に適合していると認められる。

2.引用例について
(1)引用例1について
原査定の拒絶理由に引用された刊行物である特開平10-305148号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図1?図8とともに記載されている。

・記載事項1
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機等で代表される弾球遊技機に関し、詳しくは、打玉を遊技領域に打込んで遊技が行なわれる弾球遊技機に関する。」

・記載事項2
「【0063】次に、パチンコ遊技機1の裏面側に設けられた各種基板の接続態様について説明する。図4は、各種基板の接続態様を示すブロック図である。」

・記載事項3
「【0064】電源基板121においては、パチンコ遊技機1の外部からの電力が供給される外部電源コード121aが電源コネクタ98に接続されている。電源基板121には、電源コネクタ98の他に、遊技制御基板112に電力を供給するための配線132および電飾基板119に電力を供給するための配線133が接続されるコネクタ84と、賞球基板116に電力を供給するための配線131が接続されるコネクタ85とが設けられている。」

・記載事項4
「【0065】電源基板121においては、次のように配線が設けられている。電源コネクタ98と、コネクタ84との間には、遊技制御基板112用の配線88aと、電飾基板119用の配線89aとが並列に設けられている。配線88aには、電源スイッチ92およびヒューズ88が設けられている。この電源スイッチ92は、パチンコ遊技機1全体を動作させるための電源スイッチである。配線89aには、ヒューズ89が設けられている。電源コネクタ98と、コネクタ85との間には、賞球基板116用の配線90aが設けられている。これらの配線を通じて外部からの電力がコネクタ84,85にそれぞれ送られる。」

・記載事項5
「【0066】電源基板121のコネクタ84と遊技制御基板112のコネクタ78との間が電源配線132によって接続されており、電源基板121から電源配線132を介して遊技制御基板112に電力が供給される。電源基板121のコネクタ84と電飾基板119のコネクタ79との間が電源配線133によって接続されており、電源基板121から電源配線133を介して電飾基板119に電力が供給される。電源基板121のコネクタ85と賞球基板116のコネクタ80との間が電源配線131によって接続されており、電源基板121から電源配線131を介して賞球基板116に電力が供給される。」

以上の記載事項1?5及び図1?図8によれば、引用例1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用例1発明」という。)

「遊技制御基板112と賞球基板116と電飾基板119と、遊技制御基板112と賞球基板116と電飾基板119と分離され、それぞれの制御基板へ交流電源を供給する電源基板121とを有する弾球遊技機。」

(2)引用例2について
原査定の拒絶理由に引用された刊行物である特開昭60-58186号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が第1?第6図(a)(b)とともに記載されている。

・記載事項イ
「発明の分野 本発明は電子的に制御されるパチンコ台等の遊戯機の停電処理装置に関するものである。」(公報1頁右下欄10行?12行)

・記載事項ロ
「第3図は制御部17の電気的構成を示すブロック図である。本図においてパチンコ台表面のクリアスイッチ7、継続スイッチ8及び打止めクリアスイッチ9と複数のパチンコ台、例えばパチンコ店の全ての台あるいは複数の台から構成される島単位に設けられるオールクリアスイッチ20とオール継続スイッチ21の出力が入力バッファ22に与えられ、波形整形及び信号の一時保持が成される。又パチンコ台の裏面の入賞球検知センサ15と放出した賞球を確認する賞球確認センサ19の出力が同じく入力バッファ22によって波形整形され、それらの各出力は入力信号11?17として中央演算装置(以下CPUという。)23に伝えられる。CPU23は内部にシステムプログラムを記憶するリードオンリメモリ(以下ROMという)23aとデータを一時保持するランダムアクセスメモリ(以下RAMという)23bを有するものとする。RAM23bには賞球の放出時に立てられ、確認によってリセットされる賞球放出フラグF1と賞球の放出が確認されたときに立てられる確認フラグF2及び停電を検知したときに立てられる停電検知フラグF3、更に入賞球数を計数して放出すべき賞球を保持する賞球放出レジスタM1が設けられている。CPU23には商用交流入力を直流電源に変換する電源部24と電源切換部25が接続されている。」(公報3頁左上欄7行?右上欄12行)

・記載事項ハ
「次に第4図は電源部24及び電源切換部25を更に詳細に示すブロック図である。本図において商用交流入力はトランス31によって二つの低電圧に変換され、一方の電圧源には電源部24の停電検知回路32と電源回路33が接続され、通常はこの電源回路33によりCPU23及び他の回路部に電源が供給されている。又トランス31の他方の低電圧源には電源切換部25が接続される。即ち低電圧源には整流素子34を介して充電式電池35と単安定マルチバイブレータ36が並列に接続されている。充電式電池35は整流器34によって常に充電されており、又単安定マルチバイブレータ36はCPU23からの停電信号に基づいて所定時間、例えば10秒間の出力信号を与えるものである。単安定マルチバイブレータ36の出力は更に電源切換用トランジスタ37に与えられる。整流素子34にはこのトランジスタ37によって駆動され電源供給用トランジスタ38が接続されている。トランジスタ38は停電直後に充電式電池35の電圧出力をダイオード39、40を介してCPU23と他の回路部に伝えるものである。又ダイオード41、42は停電時に充電式電池35よりCPU23のRAM23bをバックアップするために整流出力端とCPU23の電源端子間に接続されている。」(公報3頁右上欄18行?右下欄2行)

・記載事項ニ
「又単安定マルチバイブレータ36がセットアップしていればステップ64に進んで停電フラグF3をクリアし、プログラムカウンタ及びデータ・レジスタを保存した後、CPU23をスタンバイモードに切換えて処理を終了する。」(公報4頁右上欄12行?17行)

・記載事項ホ
「次に第6図(b)は停電割込処理を示すフローチャートである。停電検知回路32よりCPU23に停電検知信号が与えられると停電割込処理が開始される。これはステップ80においてCPU23よりトリガ信号03を与えて単安定マルチバイブレータ36を起動させる。そしてステップ81において停電フラグF3をセットして処理を終了する。」(公報4頁左下欄12行?18行)

・記載事項ヘ
「更に停電になれば電源回路33から制御部17の各部に電源が与えられなくなるが、単安定マルチバイブレータ36が出力している10秒間はトランジスタ37がオン状態にあるため充電式電池35よりトランジスタ38とダイオード39、40を介してCPU23及び他の回路部に電源が供給される。そして10秒間以上経過すればトランジスタ37、38はオフとなり、CPU23に停止信号19が与えられてCPU23はスタンバイモードになる。一方充電式電池35よりダイオード41、42を介してCPU23にのみ電源が供給され続け、そのRAM23bのデータはそのまま保持される。従って賞球放出レジスタM1や各フラグF1からF3の内容はそのまま保持される。」(公報4頁左下欄18行?右下欄12行)

・記載事項ト
「続いて停電が復旧した場合には第5図に示すフローチャートの動作が開始され、停電後10秒間以内であればステップ51を介してステップ54に進みCPU23が動作モードとなって動作が再開される。10秒間以上経過した場合にも継続信号が与えられれば同様にしてCPUが初期処理を行うことなくそのまま賞球放出レジスタM1の内容がRAM23bが保持され動作が再開される。又クリア信号が与えられれば初期処理が行われて全く新に動作が開始される。」(公報4頁右下欄12行?5頁左上欄2行)

・記載事項チ
「尚本実施例では停電処理装置をパチンコ台に適用した場合について説明したが、電子的に制御する種々の遊戯機に対して同様に本発明を適用することが可能である。」(公報5頁左上欄15行?18行)

以上の記載事項イ?チ及び第1?6図(a)(b)によれば、引用例2には以下の技術事項が記載されていると認められる。(以下、「引用例2に記載の技術事項」という。)

「制御部17へ交流電源を直流電源に変換し所定の直流電圧の電源をCPU23に供給するとともに、停電検知回路32よりCPU23に停電検知信号が与えられると、単安定マルチバイブレータ36を起動させ、停電フラグF3をクリアし、プログラムカウンタ及びデータ・レジスタを保存した後、CPU23をスタンバイモードに切り換えて処理を終了し、更に停電になれば、単安定マルチバイブレータ36が出力している10秒間、充電式電池35よりトランジスタ38とダイオード39、40を介してCPU23及び他の回路部に電源が供給され、10秒間以上経過すれば、CPU23に停止信号19が与えられてCPU23はスタンバイモードになり、充電式電池35よりダイオード41、42を介してCPU23にのみ電源が供給され続け、そのRAM23bのデータはそのまま保持され、停電の復旧が停電後10秒間以内であればCPU23が動作モードとなって動作が再開され、10秒間以上経過した場合にも継続信号が与えられればRAM23bに保持されたデータに基づいて動作が再開される制御を行う遊戯機の停電処理装置。」

3.対比
引用例1発明と本願補正発明を対比すると、引用例1発明の「遊技制御基板112と賞球基板116と電飾基板119」は本願補正発明の「複数の制御基板」に相当し、以下同様に、「電源基板121」は「電源モジュール」に、「弾球遊技機」は「遊戯機」にそれぞれ相当している。

そして、引用例1発明については、以下のことがいえる。

引用例1発明の「遊技制御基板112」、「賞球基板116」および「電飾基板119」は、それぞれ「遊技制御」、「賞球」および「電飾」の機能別に分類された電子部品を制御するものであることは明らかである。
また、遊戯機技術分野において、パチンコ機やスロットマシン等の遊戯機に島側から電源を供給するに当たって、遊戯機に入力する電源が交流電源であることは技術常識に過ぎない。
してみると、引用例1発明の弾球遊技機の電源基板121には、実質的に交流電源が島側から入力されているということができる。

以上を考慮すると、本願補正発明と引用例1発明は、以下の点で一致するとともに相違している。

<一致点>
「複数の電子部品が機能別に分類され、それぞれの機能に対して、各電子部品を制御する複数の制御基板と、当該複数の制御基板とは分離され、それぞれの制御基板へ島側から入力される交流電源に基づいて電力を供給する電源モジュールとを有する遊戯機。」

<相違点1>
電源モジュールから制御基板に供給される電力が、本願補正発明においては、交流電源を直流電源に変換した所定の直流電圧であるのに対して、引用例1発明においては、交流電源である点。

<相違点2>
本願補正発明においては、電源基板が、停電時に少なくとも揮発性メモリを備えた制御基板が制御不能となる以前に、停電を報知する停電検出信号を出力し、停電中は揮発性メモリの記憶能力を保持するバックアップ電源を供給するとともに、揮発性メモリを備えた制御基板で前記電源断検出信号が検出されると、復帰に必要な情報を揮発性メモリに退避及び保護する処理、及び電源電圧低下に伴い電子機器や電子部品の各種動作を停止する電源断処理を実行し、停電復帰後には、停電時に揮発性メモリに退避及び保護した記憶内容に基づいて、停電直前の状態で再開させるものであるのに対して、引用例1発明においては、電源基板が、停電中のバックアップ電源を有していないとともに、停電時の電源断処理を実行し、停電直前の状態で遊技を再開させるものでない点。

4.判断
上記相違点について、検討する。
<相違点1について>
特開平11-197295号公報(【0046】図3)、特開平10-156015号公報(【0096】図8)、特開平10-179862号公報(図5)、および特開平11-431号公報(図5)等には、遊戯機技術分野において、交流電源は電源回路を介して所望の各種電圧の直流電源に変換した上で各種の制御基板に供給することは、周知な技術にすぎない(以下、「周知技術A」という。)。
そして、遊戯機技術分野に属する引用例1発明に技術分野を同じくする周知技術Aを適用することに格別の困難性はない。
そうすると、引用例1発明の交流電源が供給される電源モジュールから複数の制御基板に交流電源を供給することに代えて、上記周知技術Aを適用して、交流電源が供給される電源モジュールから直流電源に変換し所定の直流電圧としてその所定の直流電圧を要するそれぞれの制御基板に供給するようにすること、すなわち本願補正発明の上記相違点1に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことということができる。

<相違点2について>
引用例2に記載の技術事項の「停電検知信号」は、「停電」および「検知」がそれぞれ「電源が断絶されたこと」および「検出」と同意義であるから、停電時の電源断を検出する「電源断検出信号」と言い換えできる。

また、引用例2に記載の技術事項について、以下(1)?(4)のことがいえる。

(1)制御基板が制御不能となる以前の電源断検出信号の出力について
引用例2に記載の技術事項の「停電検知回路32よりCPU23に停電検知信号が与えられると、」は、少なくとも停電時に制御部17が制御不能とならないように、事前に停電を検知し、その停電の事実を知らせるために停電検出信号をCPU23に出力していることは明らかであり、かつ、上記のとおり引用例2に記載の技術事項の「停電検知信号」は本願補正発明の「電源断検出信号」と言い換えできるのであるから、「停電時に少なくとも揮発性メモリを備えた制御基板が制御不能となる以前に、停電を報知する電源断検出信号を出力し、」と言い換える得ることは明らかである。

(2)停電直後の作動について
引用例2の記載事項ホの「次に第6図(b)は停電割込処理を示すフローチャートである。停電検知回路32よりCPU23に停電検知信号が与えられると停電割込処理が開始される。これはステップ80においてCPU23よりトリガ信号03を与えて単安定マルチバイブレータ36を起動させる。そしてステップ81において停電フラグF3をセットして処理を終了する。」なる記載、同記載事項ニの「又単安定マルチバイブレータ36がセットアップしていればステップ64に進んで停電フラグF3をクリアし、プログラムカウンタ及びデータ・レジスタを保存した後、CPU23をスタンバイモードに切換えて処理を終了する。」なる記載および技術常識に基づけば、停電直前において、CPU23のRAM23bはCPU23の動作状態を示すプログラムカウンタおよびデータ・レジスタに関するデータを常に記憶しており、停電直後を示す停電検知信号がCPU23に与えられると、停電フラグF3をセットし、単安定マルチバイブレータ36がセットアップしていれば、停電フラグF3をクリアし、停電直前のCPU23の動作状態を示すプログラムカウンタ及びデータ・レジスタに関するデータをRAM23bに保存した後、CPU23をスタンバイモードに切り換えて処理を終了するものであることは明らかである。なお、プログラムカウンタおよびデータ・レジスタに関するデータを保存する場所は明らかではないが、プログラムカウンタおよびデータ・レジスタに関するデータを停電復旧時に再利用するのであるから、停電中にデータを保持するRAM23bに保存していることは明らかである。
また、RAM23bにプログラムカウンタおよびデータ・レジスタに関するデータを保存することは、プログラムカウンタおよびデータ・レジスタからデータをRAM23bに送った上で、RAM23bに保存しているのであるから、「プログラムカウンタおよびデータ・レジスタに関するデータを保存する」は、「退避および保護する処理を実行している」と実質的に言い換えることができるとともに、その「RAM23bに保存されたデータ」は、「退避および保護された記憶内容」と言い換えることができると解される。

(3)停電中の作動について
引用例2の記載事項ヘの「更に停電になれば電源回路33から制御部17の各部に電源が与えられなくなるが、単安定マルチバイブレータ36が出力している10秒間はトランジスタ37がオン状態にあるため充電式電池35よりトランジスタ38とダイオード39、40を介してCPU23及び他の回路部に電源が供給される。そして10秒間以上経過すればトランジスタ37、38はオフとなり、CPU23に停止信号19が与えられてCPU23はスタンバイモードになる。一方充電式電池35よりダイオード41、42を介してCPU23にのみ電源が供給され続け、そのRAM23bのデータはそのまま保持される。・・・」なる記載および上記2)停電直後の作動についてにおいて示したRAM23bに保存されたデータはプログラムカウンタおよびデータ・レジスタに関するデータであるとの判断に基づけば、停電中には、停電時間が10秒以内であれば、RAM23bに保存したデータをそのまま用いてCPU23の動作を再開する一方、停電時間が10秒間以上の場合であれば、RAM23bのデータはそのまま保持され、その保持されたデータに基づいてCPU23の動作を再開するものであって、停電復旧までの停電時間が10秒以内および10秒以上のいずれの場合においても、RAM23bに保存されているプログラムカウンタおよびデータ・レジスタに関するデータを保持し、その保持されたRAM23bのプログラムカウンタおよびデータ・レジスタに関するデータに基づいて、停電復旧時にCPU23の動作を再開しているということができる。

(4)停電復旧時の作動について
上記(2)停電直後の作動について、(3)停電中の作動について、および引用例2の記載事項トの「続いて停電が復旧した場合には第5図に示すフローチャートの動作が開始され、停電後10秒間以内であればステップ51を介してステップ54に進みCPU23が動作モードとなって動作が再開される。10秒間以上経過した場合にも継続信号が与えられれば同様にしてCPUが初期処理を行うことなくそのまま賞球放出レジスタM1の内容がRAM23bが保持され動作が再開される。又クリア信号が与えられれば初期処理が行われて全く新に動作が開始される。」なる記載に基づけば、RAM23bにそのまま保持されたプログラムカウンタおよびデータ・レジスタに関するデータは、停電直前の状態のCPU23の動作に関するものであることは自明なことであり、かつ、停電復帰後には、停電直前にRAM23bにそのまま保持されたプログラムカウンタおよびデータ・レジスタに関するデータに基づいて、停電直前の状態でCPU23の動作を再開させていることも自明なことであるから、「RAM23bに保持されているプログラムカウンタおよびデータ・レジスタに関するデータ」は、「復帰に必要な情報」と実質的に言い換えることができる。

また、引用例2に記載の技術事項の「制御部17」、「充電式電池35」、「RAM23b」、「与えられれば」は、本願補正発明の「制御基板」、「バックアップ電源」、「揮発性メモリ」、「検出される」にそれぞれ相当している。

以上を考慮すると、引用例2に記載の技術事項は「制御基板へ交流電源を直流電源に変換し所定の直流電圧の電源を供給するとともに、停電時に少なくとも揮発性メモリを備えた制御基板が制御不能となる以前に、停電を報知する電源断検出信号を出力し、停電中は揮発性メモリの記憶能力を保持するバックアップ電源を供給し、揮発性メモリを備えた制御基板に電源断検出信号が検出されると、復帰に必要な情報を揮発性メモリに退避及び保護する処理を実行し、停電復帰後には、停電時に揮発性メモリに退避及び保護した記憶内容に基づいて、停電直前の状態で再開させる制御を行う遊戯機の停電処理装置。」なる発明が記載されているということができる(以下、「引用例2発明」という。)。

ところで、特開平10-337363号公報(【0037】【0040】)、特開平10-230062号公報(【0038】【0041】)、特開平10-216320号公報(【0033】【0036】)および特開平10-15203号公報(【0059】)等には、遊技制御基板と払い出し制御基板を有し、停電時にバックアップ電源を用いて、それぞれの制御基板に設けたRAM等のメモリに記憶されている情報を停電時に保全し、停電復帰後に、遊技制御や賞球払い出し制御を自動的に再開するようにすることは周知な技術にすぎない(以下、「周知技術B」という。)。
また、遊戯機の制御技術分野にかぎらず一般的なコンピュータを利用する装置の制御技術分野において、電圧が低下した場合には、停電時と同意義状態と解して、停電時と同様に電子部品の各種動作を停止する電源断処理を行うことは技術常識にすぎない(一例として、特開平4-360253号公報(【0002】【0012】)を示す。)
そして、引用例1発明と引用例2発明は、遊戯機技術分野における電源基板と制御基板の間を接続する技術で共通すること、および引用例2の記載事項チの「・・・電子的に制御する種々の遊戯機に対して同様に本発明を適用することが可能である。」なる記載があることを踏まえれば、両者を相互に技術利用することが格別に困難ということはできない。
また、遊技機技術分野に属する引用例1発明に、技術分野を同じくする周知技術Bを適用することは格別に困難であるということはできない。
そうすると、引用例1発明の遊戯機の電源基板に代えて、引用例2発明の電源基板を採用する際に、周知技術B並びに技術常識を参酌して、電源基板が、停電時に少なくとも揮発性メモリを備えた制御基板が制御不能となる以前に、停電を報知する停電検出信号を出力し、停電中は揮発性メモリの記憶能力を保持するバックアップ電源を供給し、揮発性メモリを備えた制御基板に電源断検出信号が検出されると、復帰に必要な情報を揮発性メモリに退避及び保護する処理、及び電源電圧低下に伴い電子機器や電子部品の各種動作を停止する電源断処理を実行し、停電復帰後には、停電時に揮発性メモリに退避及び保護した記憶内容に基づいて、停電直前の状態で再開させるようにすること、すなわち本願補正発明の上記相違点2に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことということができる。

5.作用効果
よって、本願補正発明は、引用例1発明、引用例2発明、周知技術Aおよび周知技術B並びに技術常識に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであり、本願補正発明によって奏する効果も、引用例1発明、引用例2発明、周知技術Aおよび周知技術B並びに技術常識に基づいて、普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあると認められない。

6.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1発明、引用例2発明、周知技術Aおよび周知技術B並びに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-10 
結審通知日 2008-06-17 
審決日 2008-06-30 
出願番号 特願平11-223790
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保瀬津 太朗  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 小原 博生
太田 恒明
発明の名称 遊戯機  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 西元 勝一  
代理人 中島 淳  

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