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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1183090
審判番号 不服2006-2282  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-09 
確定日 2008-08-14 
事件の表示 平成 8年特許願第 82896号「空気膜造形体」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月21日出願公開、特開平 9-274460〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年4月4日の出願であって、平成17年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月9日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成18年2月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年2月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正により、本件補正前の平成16年12月27日付け手続補正書により補正された請求項1が、
「袋状に形成された膜構造体と、
この膜構造体の内部に空気を送り込む送風機と、
前記膜構造体の内部に配置され、前記送風機によって前記膜構造体内に空気が送り込まれて前記膜構造体が膨張して立体的に造形された状態で点灯可能な照明器具と、
を備える空気膜造形体において、
前記照明器具は、前記膜構造体が膨張して立体的に造形された状態の時、前記膜構造体が空気圧で膨張する力を受けて引張力が発生する紐状部材に4方向以上から引っ張られた状態で保持されることを特徴とする空気膜造形体。」から

「袋状に形成された膜構造体と、
この膜構造体の内部に空気を送り込む送風機と、
前記膜構造体の内部に配置され、前記送風機によって前記膜構造体内に空気が送り込まれて前記膜構造体が膨張して立体的に造形された状態で点灯可能な照明器具と、
を備える空気膜造形体において、
前記膜構造体は、前記送風機から空気が送り込まれて立体造形された際に凹凸を形成するものであり、
前記照明器具は、前記膜構造体の内部に複数配置され、前記膜構造体が膨張して立体的に造形された状態の時、前記膜構造体が空気圧で膨張する力を受けて引張力が発生する紐状部材に4方向以上から引っ張られて配置位置や光量が設定されることを特徴とする空気膜造形体。」と補正された。

本件の請求項1に係る補正は、出願当初の明細書又は図面の記載の範囲内で補正前の請求項1における「膜構造体」を「膜構造体は、送風機から空気が送り込まれて立体造形された際に凹凸を形成するものであり、」と限定するとともに、補正前の請求項1における「照明器具」について、「膜構造体が膨張して立体的に造形された状態の時、前記膜構造体が空気圧で膨張する力を受けて引張力が発生する紐状部材に4方向以上から引っ張られた状態で保持される」ものであることを、「膜構造体の内部に複数配置され、前記膜構造体が膨張して立体的に造形された状態の時、前記膜構造体が空気圧で膨張する力を受けて引張力が発生する紐状部材に4方向以上から引っ張られて配置位置や光量が設定される」と限定したものである。
したがって、本件補正は、いずれも平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
本願出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第95/29739号パンフレット(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。ただし、各記載事項の翻訳文については、刊行物1の内容を国内公表した公表特許公報である特表平10-500870号公報(以下、「公表公報」という。)の記載を採用する。
ア.「 Le ballon repesente sur les figures 1 et 2 comprend une enveloppe 2 par exemple en un materiau souple, transparent ou translucide, qui, lorsqu'elle est gonflee par un gaz par exemple plus leger que l'air, se presente sous la forme d'une sphere.
Cette enveloppe presente a sa partie superieure, ou pole nord, un passage circulaire dans lequel est fixee de facon etanche une platine 3 et presente a sa partie inferieure, ou pole sud, une ouverture circulaire dans laquelle est fixee de facon etanche une platine 4.
Entre la platine 3 et la platine 4, le ballon 1 presente un element filaire 5 qui comprend un fil souple 6 dont l'extremite superieure est fixee de facon connue a la platine superieure 3 et un ressort 7 en spirale dont l'extremite superieure est fixee a l'extremite inferieure du fil 6 et dont l'extremite inferieure est reliee a la platine 4 comme on le decrira plus loin.
Sur le fil 6 est fixe un support d'ampoule 8 qui porte deux ampoules opposees 9 et 10.
Comme on le voit sur la figure 1, lorsque le ballon 1 est a l'etat gonfle, l'element filaire 5 s'etend verticalement selon une diagonale de l'enveloppe 2, le ressort 7 etant tendu.
Lorsque le ballon est gonfle, le support 8 portant les ampoules 9 et 10 est sensiblement au milieu de l'element filaire 5, sensiblement a egale distance des platines 3 et 4.」(第2ページ第33行目?第3ページ第20行目)
「第1図と第2図に図示の気球は気嚢2を含み、この気嚢2は例えば透明または半透明の可撓性材料から成り、例えば空気より軽いガスによって膨張させられた時に球状を成す。この気嚢はその上部または北極に円形通路を備え、この通路の中に支持板3が密着され、また前記気嚢はその下部または南極に円形開口を備え、この開口の中に支持板4が密着されている。支持板3と支持板4との間において、気球1は線状部品5を有し、この線状部品5は可撓性ワイヤ6を含み、このワイヤの上端が公知のようにして上方支持板3に固着され、また前記ワイヤはコイルバネ7を含み、このコイルバネ7の上端は前記ワイヤ6の下端に固着されまたコイルバネ7の下端は後述のようにして支持板4に結合される。ワイヤ6に対して電球支持体8が固着され、この支持体8は2つの対向電球9と10とを担持する。第1図に見られるように、気球1が膨張状態にある時、線状部品5は気嚢2の対角線にそって垂直に延在し、バネ7は引張られている。 気球が膨張状態にある時、電球9、10の支持体8は線状部品5の実質的に中央にあり、支持板3と4から実質的に等距離にある。」(公表公報第9ページ第3?6行目)
イ.「Comme on peut le voir en particulier sur la figure 3, lorsque le ballon 1 est a l'etat gonfle, le ressort 7 est tendu et le ressort 15 est comprime, l'epingle 18 etant dans une position haute de telle sorte que sa partie d'extremite 21 est a sa position haute et que le plot d'actionnement 26 de l'interrupteur 25 est a sa position sortie. Dans cette position, l'interrupteur 25 etablit la connexion electrique entre le conducteur 29 relie au sol a une source d'energie electrique et les ampoules 9 et 10 qui sont alors eclairantes. 」(第5ページ第1?8行目)
「特に第3図に見られるように、気球1が膨張状態にある時、バネ7が引張られ、バネ15が圧縮され、ヘアピン18は高い位置にあってその端部21がその高い位置にあり、またスイッチ25の作動接点26が地上の給電施設に接続された導線29と電球9、10との間に電気接続を成し、これらの電球が点灯されている。」(公表公報第9ページ第3?6行目)
ウ.【図1】からは、電球9、10が気嚢2の内部に配置され、電球9、10の支持体8が線状部品5によって2方向から引っ張られていることが看取できる。

上記記載を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認めることができる。
「空気より軽いガスによって膨張させられた時に球状を成す気嚢2と、
前記気嚢2の内部に配置され、支持体8に担持され、気球1が膨張状態にある時点灯されている電球9、10と、
を備える気球1において、
電球9、10の支持体8が、気球1が膨張して球状を成している時、気嚢2の対角線にそって垂直に延在する線状部品5に2方向から引っ張られている気球1。」(以下、「引用発明」という。)

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-329590号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

エ.「略球面を持つ半透明バルンと、このバルンの内部に設けられる投影装置と、このバルンにヘリウムを高圧ホースを介して送る高圧タンクと、このバルン内の投影装置にケーブルを介して映像信号を送る地上局とを備えたバルンムービー。」(【請求項1】)
オ.「このような投影装置2は、図1に示す半透明バルン1内の略中心に位置するように、バルン1の天井からロープ16等で吊り下げられ、更に横方向がロープ17で例えば3点支持される。また、光源10には電力が電力ケーブルを経由して供給され、各表示器12には、映像信号が信号ケーブルを経て供給される。」(【0018】)
カ.【図1】からは、投影装置3がロープ16、ロープ17によりバルン1から3方向に引っ張られていることが看取出来る。

(3)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「気嚢2」、「支持体8及び電球9、10」、「線状部材5」、「気球1」は本願発明の「膜構造体」、「照明器具」、「紐状部材」、「空気膜造形体」に相当する。
b.引用発明の気嚢2もガスによって膨張させられた時に球状を成すから、「袋状に形成された」ものである。
c.引用発明において「気球1が膨張状態にある時」は気嚢2が膨張させられた時でもあるから、本願発明と引用発明は、「膜構造体の内部に配置され、膜構造体が膨張して立体的に造形された状態で点灯可能な照明器具」を備える点で共通する。
d.引用発明において、気球1が膨張して球状を成している時、線状部品5は気嚢2の対角線にそって垂直に延在しているから、引用発明の線状部品5においても、「気嚢2が空気圧で膨張する力を受けて引張力が発生」しているといえる。
e.補正発明の「紐状部材に4方向以上から引っ張られて配置位置や光量が設定される」とは、「紐状部材に4方向以上から引っ張られることにより、(膜構造体に対する照明器具の)配置位置が定まるとともに、(その結果膜構造体の)光量が定まる」の意味と解される。引用発明においても、電球9、10の支持体8が、気嚢2の対角線にそって垂直に延在する線状部品5に2方向から引っ張られていることにより、気嚢2に対する電球9、10の支持体8の配置位置が定まるとともに、その結果気嚢2の光量が定まるから、補正発明と引用発明は、「紐状部材に2方向以上から引っ張られて、配置位置や光量が設定される」点で共通する。

したがって、補正発明と引用発明を比較すると、
「袋状に形成された膜構造体と、
前記膜構造体の内部に配置され、前記膜構造体が膨張して立体的に造形された状態で点灯可能な照明器具と、
を備える空気膜造形体において、
前記照明器具は、前記膜構造体の内部に配置され、前記膜構造体が膨張して立体的に造形された状態の時、前記膜構造体が空気圧で膨張する力を受けて引張力が発生する紐状部材に2方向以上から引っ張られて、配置位置や光量が設定される空気膜造形体。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]補正発明においては、「膜構造体の内部に空気を送り込む送風機」を有し、「膜構造体は、送風機から空気が送り込まれて立体造形された際に凹凸を形成するもの」と特定されているのに対し、引用発明では、上記特定を有していない点。
[相違点2]補正発明においては、照明器具は、「膜構造体の内部に複数配置され」、「紐状部材に4方向以上から引っ張られ」と特定されているのに対し、引用発明では、上記特定を有していない点。

(4)判断
[相違点1]について検討する。
空気膜構造体において、「膜構造体の内部に空気を送り込む送風機」を有するものは、例えば特開平3-11389号公報(第2ページ右下欄第13?15行目、第1図)、特開平5-273927号公報(【0007】、【図2】)等に示されるように周知である。
また、空気が送り込まれて立体造形された際に凹凸を形成する膜構造体は、実願昭57-135744号(実開昭59-38996号)のマイクロフィルム(第7ページ第4?9行目、第6図)、登録実用新案第3020356号公報(【0033】、【0034】、【図2】)等に示されるように周知である。
したがって、刊行物1記載の空気膜構造体において、「膜構造体の内部に空気を送り込む送風機」を有し、「膜構造体は、送風機から空気が送り込まれて立体造形された際に凹凸を形成するもの」とする構成、すなわち相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。

[相違点2]について検討する。
照明器具を複数配置するかどうかは、膜構造体の大きさや所望の光量に応じて、当業者が適宜設計する事項である。
「紐状部材に4方向以上から引っ張られ」について検討すると、刊行物2には、照明器具である投影装置3がロープ16、ロープ17によりバルン1から3方向に引っ張られている点、即ち2方向より多い方向に引っ張ることが記載されている。
膜構造体の形状が複雑となれば、これが単純な球状のものと比して、膜構造体内における照明器具の配置位置をより精密に設定する必要があるのは自明であり、外観上の光り具合を設定することも同様の必要を生じる。してみれば、このような配置を単に2方向のみならず4方向以上とすることは、当業者であれば容易に想起しうる程度のことである。

そして、補正発明の作用効果も、刊行物1、2記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、補正発明は、本願出願前に頒布された刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年12月27日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定された次のとおりのものと認める。

「袋状に形成された膜構造体と、
この膜構造体の内部に空気を送り込む送風機と、
前記膜構造体の内部に配置され、前記送風機によって前記膜構造体内に空気が送り込まれて前記膜構造体が膨張して立体的に造形された状態で点灯可能な照明器具と、
を備える空気膜造形体において、
前記照明器具は、前記膜構造体が膨張して立体的に造形された状態の時、前記膜構造体が空気圧で膨張する力を受けて引張力が発生する紐状部材に4方向以上から引っ張られた状態で保持されることを特徴とする空気膜造形体。」

(2)進歩性について
本願発明は、2.における「(2)補正発明の認定」で検討したように、「膜構造体」についての限定及び「照明器具」についての限定を一部削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに前記の各限定を行ったものに相当する補正発明が、前記2.における「(4)判断」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願のその余の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-12 
結審通知日 2008-06-17 
審決日 2008-06-30 
出願番号 特願平8-82896
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 七字 ひろみ
長島 和子
発明の名称 空気膜造形体  
代理人 石黒 健二  
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