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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47C
管理番号 1183100
審判番号 不服2006-9646  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-11 
確定日 2008-08-14 
事件の表示 平成 7年特許願第130085号「健康寝具」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月 3日出願公開、特開平 8-317833号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成7年5月29日の出願であって、平成18年4月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年5月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年6月9日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成18年6月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年6月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「寝具に内蔵した形状記憶素子と、生体情報センサーとしてのいびき検知装置と、前記いびき検知装置からの信号に応じて前記形状記憶素子を駆動する制御装置とを備え、前記いびき検知装置がいびきを判定してからいびきの停止を判定するまで、前記制御装置は身体が波打つように前記形状記憶素子を駆動するようにした健康寝具。」(下線部は補正個所を示す)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明の構成に欠くことのできない事項である「制御装置」の機能について、「前記いびき検知装置がいびきを判定してからいびきの停止を判定するまで、前記制御装置は身体が波打つように前記形状記憶素子を駆動するようにした」とする限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
A.原査定の拒絶の理由に引用された、特開平3-7150号公報(以下、「引用例1」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a.「また、第2の目的は、音圧レベルが所定値よりも低い状態から高い状態となった時点と、前記状態から再び前記所定値よりも低い状態となった時点とを音圧レベル測定手段をもって検知し、前記所定値よりも高い音圧レベル状態の連続時間が第1の所定時間以上であって、かつ第2の所定時間以下であった場合にのみカウンタ手段をもってカウントし、前記カウンタ手段のカウント数が所定数となった後、音圧レベルが前記所定値よりも高い状態となった時点でいびきが発生していると判断するいびき検知手段と、使用者の頭部を支持すると共に略水平な方向に延在する軸線回りに揺動可能なように固定部材に支持された可動支持部材と、前記可動支持部材を前記検知手段による検知結果に基づき選択的に前記可動支持部材を揺動させる手段とを有することを特徴とするいびき防止装置を提供することにより達成される。」(2ページ右下欄9行?3ページ左上欄6行)
b.「従って、モータ16の駆動軸17が回転することにより、ウォ-ム18、ウォ-ムギヤ14、縦方向軸13、ウォ-ム12、ウォ-ムギヤ10及び横方向軸8を介して両偏心カム部材9が回転し、当接部材20を介して可動ケーシング3を所定の角度範囲で比較的緩かな速度で揺動させることが可能となっている。
尚、可動ケーシング3の上面は使用者の頭部との間のクツション材としての発泡材19により覆われている。
一方、モータ16は、いびき検知回路及びモータ駆動回路を有する制御回路23に接続されている。この制御回路23は固定ケーシング2の適宜な位置に設けられた1対の集音マイク24及び固定ケーシング2の中央部に設けられた電池であって良い電源25に接続されている。
また、第3図に良く示すように制御回路23は、集音マイク24に接続されたいびき検知回路23aと、モータ16を駆動するためのモータ駆動回路23bとからなる。従って、図示されない電源スィッチをオンとした場合に集音マイク24からの音をいびき検知回路23aにていびきが発生しているか否かを判断し、いびきが発生していれば、モータ駆動回路23bによりモータ16を例えば2秒間駆動することにより可動ケーシング3を揺動させる。」(3ページ左下欄10行?右下欄14行)
c.「このようにしていびきの発生を検知すれば、第4図に示すように呼吸吸気時にのみいびき音が発生するいびきばかりでなく第5図に示すような呼吸の吸排気時に共にいびき音が発生する往復いびきをも容易に検出可能である。また、上記可動ケーシング3の傾動作業をいびきが発生する毎に行うことにより使用者を覚醒させることなく好適にいびきを抑制することができる。
第7図及び第8図は、上記実施例の変形実施例を示す横方向軸8の軸線方向から見た断面図である。第7図に於て、横方向軸8に固着された偏心カム部材9の上端に当接する当接部材20の当接面21′が凹凸形状をなしている。また、第8図に於て、横方向軸8に固着された偏心カム9′が角部を有する多角形断面をなしている。従って、横方向軸8が回転するのに伴い、可動ケーシング3がやや振動し、使用者の頭部に軽微な刺激を与え、一層好適にいびきを抑制することができる。」(4ページ右下欄10行?5ページ左上欄7行)
そして、第6図には、上記記載a.に関連して、いびき防止装置の作動要領を示すフローチャートが図示されているが、いびきを検知してモータを2秒間駆動した後(ST13)、カウントがリセットされて初期状態(ST1)に戻ることが示されている。

記載a.には、いびき検知手段と、いびき検知手段による検知結果に基づき選択的に使用者の頭部を支持する可動支持部材を揺動させる手段とを有するいびき防止装置が記載されている。このいびき防止装置は、その可動支持部材により使用者の頭部を支持するものであるから、実質的に枕に相当するものといえる。
記載b.には、いびき検知手段の具体的な構成として、集音マイク24と、これに結合された制御回路の一部であるいびき検知回路23aとからなるものが記載されており、また、可動支持部材として可動ケーシングが記載され、可動支持部材を揺動させる手段として、モータ16等からなる駆動機構と、これを駆動制御する、制御回路の一部であるモータ駆動回路23bとからなるものが記載されている。
記載b.には、いびきを検知すると、可動支持部材(可動ケーシング)を介して使用者の頭部を比較的緩かな速度で揺動させる旨記載され、また、記載c.には、上記可動ケーシング3の傾動作業をいびきが発生する毎に行うことが記載され、また、可動ケーシングの揺動にあたり、これをやや振動させ、使用者の頭部に軽微な刺激を与えることもできる旨記載されている。
上述のように、記載c.に、「上記可動ケーシング3の傾動作業をいびきが発生する毎に行う」と記載されているが、第6図のフローチャートによれば、このいびき防止装置は、モータを所定時間駆動した後、いびきが継続していれば、再度カウントを開始し、所定カウントでモータを再度駆動する動作を繰り返すことが明らかであるから、このいびき防止装置は、いびき検知手段がいびきを判定してからいびきの停止を判定するまで、間歇的に駆動機構を駆動するものであるといえる。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「枕に内蔵した駆動機構と、いびき検知手段と、前記いびき検知手段からの信号に応じて前記駆動機構を駆動するモータ駆動回路とを備え、前記いびき検知手段がいびきを判定してからいびきの停止を判定するまで、前記モータ駆動回路は使用者の頭部が揺動するように間歇的に前記駆動機構を駆動するいびき防止装置。」

B.同じく原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭63-59953号公報(以下、「引用例2」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
d.「形状記憶合金で構成した多数のコイルスプリングを縦横に配設すると共に、夫々のコイルスプリングに通電用電線を接続し、夫々のコイルスプリングを適宜群毎に通電制御することにより、群毎に温度変化させて、形状記憶効果により変位自在に構成したことを特徴とする身体支持用クツシヨン機構。」(1ページ左下欄5行?11行)
e.「次に本発明の身体支持用クツシヨン機構は、適宜他のクツシヨン体10と共に被覆部材11で被覆してマツトレス12として構成したり、あるいは寝台の床板等上に固定した身体支持装置として構成して、患者等の仰臥に供するのであるが、これらの具体的構成は適宜である。」(3ページ左上欄8?13行)

記載e.には、本発明の身体支持用クツシヨン機構は、患者等の仰臥に供するマットレスとして構成したりすることができる旨記載されているので、身体支持用クツシヨン機構は寝具として構成することができるといえる。
また、記載d.に、「夫々のコイルスプリングを適宜群毎に通電制御する」とあることから、この身体支持用クッション機構は、通電制御手段を有することが明らかである。
これら記載事項を総合すると、引用例2には、次のものが記載されている。
「寝具に内蔵した形状記憶合金で構成した多数のコイルスプリングと、前記コイルスプリングを通電制御する通電制御手段とを備え、前記通電制御手段は夫々のコイルスプリングを適宜群毎に通電制御することにより前記コイルスプリングを変位させるようにした寝具。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「枕」は、本願補正発明の「寝具」に相当し、以下同様に、「いびき検知手段」は「生体情報センサーとしてのいびき検知装置」に、「モータ駆動回路」は「制御装置」にそれぞれ相当し、また、引用発明の「いびき防止装置」は、いびきを防止することにより使用者の健康維持に役立つ枕といえるから、本願補正発明の「健康寝具」に相当する。
また、引用発明の「駆動機構」と、本願補正発明の「形状記憶素子」とは、寝具を変位させる「変位手段」という概念で共通している。
そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「寝具に内蔵した変位手段と、生体情報センサーとしてのいびき検知装置と、前記いびき検知装置からの信号に応じて前記変位手段を駆動する制御装置とを備え、前記いびき検知装置がいびきを判定してからいびきの停止を判定するまで、前記制御装置は前記変位手段を駆動するようにした健康寝具。」

そして、両者は次の点で相違する(対応する引用発明(引用例記載)の用語を( )内に示す)。
(相違点1)
本願補正発明の「変位手段」は、「形状記憶素子」であるのに対し、引用発明の「変位手段」は、「駆動機構」である点。

(相違点2)
本願補正発明は、制御装置が、身体が波打つように変位手段を駆動するのに対し、引用発明は、制御装置(モータ駆動回路)が、使用者の頭部が揺動するように間歇的に変位手段(駆動機構)を駆動するものである点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例2には、「寝具に内蔵した形状記憶合金で構成した多数のコイルスプリングと、前記コイルスプリングを通電制御する通電制御手段とを備え、前記通電制御手段は夫々のコイルスプリングを適宜群毎に通電制御することにより前記コイルスプリングを変位させるようにした寝具。」が記載されている。
ここで、「形状記憶合金で構成したコイルスプリング」は、本願補正発明の「形状記憶素子」に相当する変位手段であるといえ、また「通電制御手段」は、「制御装置」に相当するといえる。
そこで、引用発明において、寝具に内蔵した変位手段として、「駆動機構」に代え「形状記憶合金で構成したコイルスプリング」を適用して、相違点1に係る本願補正発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
一般に、いびきをかいている人の身体を揺すったりすると、いびきが止まることは、例えば、実願昭58-72570号(実開昭59-177419号)のマイクロフィルムに、「人がいびきをかいているときに、その人の体をゆすってやったり・・・何らかの刺激を与えてやると、いびきが止まることは良く知られているが」(明細書2ページ9?12行)と記載されているように、周知の事項である。
引用発明は、体の部位として、頭部を揺動させるものであるが、上述のように、頭部に限らず体をゆすってやればいびきが止まることは良く知られていることであり、また、そのようにしたいびき防止装置も、例えば上記文献に、「振動発生手段が身体の頭部以外の部分に振動を与えるような構成としてもよい」(明細書8ページ18?19行)とあるほか、特開昭63-501270号公報に、いびきを検知して振動を発する箱4をベッドマットレスもしくは枕の下に配置することが記載されており、特開平3-49748号公報に、第5実施例として、順次変位する袋体55を寝具に設けるものが記載されているように周知であるので、引用発明において、頭部に代えて身体を揺動させるように構成し、その揺動態様として波打つような変位を採用して、相違点2に係る本願補正発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、また、変位手段の駆動を間歇的に行うか否かということは当業者が適宜選択し得た設計的事項にすぎない。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下され、また、平成17年6月3日付けの手続補正は原審ですでに却下されているので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成17年3月17日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「寝具に内蔵した形状記憶素子と、生体情報センサーとしてのいびき検知装置と、前記いびき検知装置からの信号に応じて前記形状記憶素子を駆動する制御装置とを備えた健康寝具。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、「制御装置」の機能について、「前記いびき検知装置がいびきを判定してからいびきの停止を判定するまで、前記制御装置は身体が波打つように前記形状記憶素子を駆動するようにした」とする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに、他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、限定が省かれた結果、本願発明と引用発明との相違点は上記相違点1のみとなることから、本願発明も、同様に、引用発明及び引用例2に記載されたものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載されたものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-16 
結審通知日 2008-06-17 
審決日 2008-06-27 
出願番号 特願平7-130085
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A47C)
P 1 8・ 121- Z (A47C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 敏長岩崎 晋  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 仲村 靖
阿部 寛
発明の名称 健康寝具  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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