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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1183101
審判番号 不服2006-10225  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-18 
確定日 2008-08-14 
事件の表示 平成 8年特許願第251319号「輪転印刷機のローラ洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月14日出願公開、特開平10- 95104〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成8年9月24日の出願であって、平成18年4月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年5月18日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

本願の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「駆動装置によりローラ表面に対し接離自在に設けられこのローラ表面上の粘性流体を除去するブレードと、このブレードにより除去された粘性流体を集めるとともに排出する排出口を有する液槽と、この液槽内へ洗浄液を供給する液槽洗浄手段とを備えた輪転印刷機のローラ洗浄装置であって、前記粘性流体が前記液槽内に入る前にあらかじめ液槽内に洗浄液の供給を開始し、かつ少なくとも粘性流体が前記液槽内に入り終わるまで洗浄液の供給を行うように前記液槽洗浄手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とする輪転印刷機のローラ洗浄装置。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭57-115777号(実開昭59-19332号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

ア.「ローラ洗浄後の洗浄液を集める洗浄液槽をインキローラの近傍に設け、エア源および噴射用洗浄液との間をノズルを介して接続された洗浄液噴射管を前記洗浄液槽内に噴射孔を開口させて支架するとともに、前記洗浄液槽の排液口と機外の排液槽との間を管体で接続したことを特徴とする輪転印刷機のインキローラ洗浄装置。」(実用新案登録請求の範囲)
イ.「ローラ洗浄後の汚れた洗浄液を集める洗浄液槽と、この槽へ洗浄液を噴射する噴射装置と、洗浄液槽内の洗浄液を機外へ流出させる管体とを設けることにより、作業環境と作業能率の向上および設置スペースの縮小を計つた輪転印刷機のインキローラ洗浄装置を提供するものである。」(第3ページ第8?13行目)
ウ.「以上のように構成されたインキ装置18には、全体を符号28で示しインキ装置18の各ローラを洗浄するインキローラ洗浄装置が付設されている。すなわち、前記振りローラ25近傍には、L字状に形成された左右一対のブラケツト29が左右のフレーム30にボルト31で固定されており、左右のブラケツト29のU字溝には、振りローラ25とほぼ同長の樋状に形成された洗浄液槽32の両端軸33が回転自在かつ着脱自在に軸支されている。一方、インキ装置18の上端部にある前記振りローラ23の上方には、洗浄作業時に洗浄液を振りローラ23、移しローラ24の周辺へかける噴霧管34がローラの軸方向に沿つて架設されており、かけられた洗浄液が回転中のローラ群を経てインキを洗浄しながら転移し、洗浄液槽32に集められるように構成されている。35は振りローラ25まで転移してきた洗浄液を洗浄液槽32内へ導く刃であつて、基端を洗浄液槽32の端縁に固定され、先端を振りローラ25の周面へ臨ませて設けられている。また、洗浄液槽32の一端に一体形成されたレバー36の上端部には、調節ボルト37が進退調節自在に螺入されていて、この調節ボルト37には、フレーム側30側のブラケツト38に枢着された偏心カム39のカム面が対接されており、偏心カム39に固定したハンドル40で偏心カム39を回動させることにより調節ボルト37とレバー36を介して刃35が振りローラ25の周面に対し着脱されるように構成されている。なお、調節ボルト37を進退させることにより振りローラ25の周面に対する刃35の接触圧が調節される。」(第6ページ第9行目?第7ページ第19行目)
エ.「さらに洗浄液槽32の底面は一方のフレーム側へ向つて低くなるように傾斜しており、その最低部に設けた排液口52は機外に設けた排液槽53との間をホース54によつて接続されている。」(第8ページ第17行目?第9ページ第1行目)
オ.「印刷作業の終了時や色替え時にインキ装置18の各ローラを洗浄する場合には、インキ着ローラ27を版胴17から離間させインキ装置18の各ローラを低速回転させたのち噴霧管34から洗浄液を噴射させる。すると、洗浄液が移しローラ24と振りローラ23からローラ群26の各ローラを経て順次転移し、各ローラに付着したインキが洗浄液によつて溶かされる。溶けたインキは洗浄液とともに転移して振りローラ25に達し、このとき刃35が偏心カム39の回動によつて振りローラ25の周面に圧接されているので、振りローラ25に転移した汚ない洗浄液は刃35で掻き寄せられ刃35を伝つて洗浄液槽32内へ流れ込む。またこのときコツク50が開かれていて高圧エアがノズル44から噴出しているので、ノズル44の出口が低圧となり、洗浄液容器47内の洗浄液48が吸引されて噴射管43の噴射孔42から勢いよく噴出する。そして汚れた洗浄液がホース54を通つて排液槽53へ排出されるとともに、噴射孔42から噴出する洗浄液48が洗浄液槽32に残つたり槽32の内壁に付着したりした汚ない洗浄液を洗い落としながら汚れた洗浄液とともに排液槽53へ排出される。したがつて洗浄液槽32の内部が完全に洗浄されるとともに、排出時にホース54の内部も洗浄され、インキが槽32内やホース54内部で固まつて詰まることがない。」(第9ページ第3行目?第10ページ第19行目)
カ.「本考案によれば輪転印刷機のインキローラ洗浄装置においてローラ洗浄後の汚れた洗浄液を集める洗浄液槽に、別の洗浄液を噴射する噴射装置を付設し、洗浄後汚れた洗浄液と噴射洗浄液とを同時に機外へ排出するように構成することにより、洗浄液槽に溜まつた洗浄後の洗浄液を捨てる必要がないので、作業者の手や衣服が汚れず作業環境が向上するとともに、洗浄液槽の着脱作業が無くなり、この分だけ他の作業ができて総体的に生産性が向上する。」(第11ページ第3?12行目)

この記載事項を含む刊行物全体の記載によると、刊行物には「偏心カム39に固定したハンドル40で偏心カム39を回動させることにより、振りローラ25の周面に対し着脱され、振りローラ25に転移した汚ない洗浄液を掻き寄せる刃35と、刃35によって掻き寄せられ伝って流れ込んだ汚ない洗浄液を集めるとともに排出する排液口52を有する洗浄液槽32と、洗浄液槽32へ洗浄液48を噴射する噴射装置とを備えた輪転印刷機のインキローラ洗浄装置。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「振りローラ25」、「汚ない洗浄液」、「刃35」、「排液口52」、「洗浄液槽32」、「洗浄液48」、「インキローラ洗浄装置」は、それぞれ本願発明の「ローラ」、「粘性流体」、「ブレード」、「排出口」、「液槽」、「洗浄液」、「ローラ洗浄装置」に相当する。
引用発明において、刃35は、偏心カム39に固定したハンドル40で偏心カム39を回動させることにより、振りローラ25の周面に対し着脱されるから、引用発明における偏心カム39に固定したハンドル40は「刃35を振りローラ25の表面に対し接離自在とする駆動装置」といえる。また、引用発明においても刃35が振りローラ25に転移した汚ない洗浄液を掻き寄せているから、刃35は「ローラ表面上の粘性流体を除去する」ものといえる。
引用発明の噴射装置は、洗浄液槽32へ洗浄液48を噴射しているから、引用発明においても「液槽内へ洗浄液を供給する液槽洗浄手段」と備えているといえる。
してみると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違している。

<一致点>
駆動装置によりローラ表面に対し接離自在に設けられこのローラ表面上の粘性流体を除去するブレードと、このブレードにより除去された粘性流体を集めるとともに排出する排出口を有する液槽と、この液槽内へ洗浄液を供給する液槽洗浄手段とを備えた輪転印刷機のローラ洗浄装置。
<相違点>
本願発明では、「粘性流体が液槽内に入る前にあらかじめ液槽内に洗浄液の供給を開始し、かつ少なくとも粘性流体が液槽内に入り終わるまで洗浄液の供給を行うように液槽洗浄手段を制御する制御手段を備えた」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がされたものではない点。

4.相違点についての検討
<相違点>について検討する。
印刷インキはそもそもあらゆるものに付着しやすく固まりやすいため、排出管等にインキが固まって詰まるおそれがある。そのため、引用発明においては、インキローラ群の上流でインキを溶かすことに加えて、液槽内において洗浄液の噴射をさらに行い、インキが溶けた洗浄液を溶かしながら積極的に洗い流すようにしている。粘性流体が液槽内に入る前から液槽内に洗浄液を供給し始め、常時液槽内に洗浄液を供給すれば、粘性流体の液槽への付着を防止し、洗浄効果が高まるが、常時液槽内に洗浄液を供給することは不経済であることは自明であるから、洗浄液の供給を、「粘性流体が液槽内に入る前にあらかじめ液槽内に洗浄液の供給を開始し、かつ少なくとも粘性流体が液槽内に入り終わるまで洗浄液の供給を行うように」することは、当業者が容易に想到しうる程度のことであり、制御手段を設けて制御を行わせることも周知である。
また、洗浄水の供給を制御し、予め流れをつくることによって、排出したい流体をその流体が集められる部分に付着することなく排出させる点は、例えば特開昭52-64195号公報(第3ページ右上欄第7?18行目)等に示されるように分野を問わず周知である。

そして本願発明の作用効果も、刊行物に記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、刊行物に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、本願のその余の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-10 
結審通知日 2008-06-17 
審決日 2008-06-27 
出願番号 特願平8-251319
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 七字 ひろみ
番場 得造
発明の名称 輪転印刷機のローラ洗浄装置  
代理人 西山 修  
代理人 紺野 正幸  
代理人 山川 茂樹  
代理人 山川 政樹  
代理人 黒川 弘朗  

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