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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服200625301 | 審決 | 特許 |
不服200717080 | 審決 | 特許 |
不服20062586 | 審決 | 特許 |
不服20072731 | 審決 | 特許 |
不服2006876 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1183199 |
審判番号 | 不服2004-9639 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-05-07 |
確定日 | 2008-08-22 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第506543号「粒状製剤及びその製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月 6日国際公開、WO97/03656〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成8年7月19日(優先権主張 1995年7月21日 日本国)を国際出願日とする出願であって、その請求項2に係る発明は、平成20年2月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項2】 粒子径が100?250μmである油性低融点物質と、薬物粉体とを溶融造粒により造粒した粒状物にタルク及び微粉状のエチルセルロースを溶融コーティングによりコーティングさせることを特徴とする細粒の製造法。」 2.当審の拒絶理由 一方、当審において平成19年12月5日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された特開平6-91150号公報(以下、「引用文献1」という。)に記載された発明、並びに、特開昭62-181214号公報(以下、「引用文献2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.引用文献の概要 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 a.「粉粒状の水不溶性低融点物質、粉粒状の崩壊剤及び薬物の粉体とを溶融造粒して得た粒状物を、該低融点物質の融点以上の温度で、微粉状添加剤と流動下、溶融して得た粒状物。」(特許請求の範囲) b.「一般に不快な味を有する粒状製剤には、不快な味をマスキングするための製剤的工夫がなされるのが通例である。・・・特に、粒状製剤のマスキングにおいては、水不溶性のコーティング剤を用いるため、条件変動による被膜形成性のバラツキや被膜量のわずかな変動により品質上重要となる薬物の溶出特性に大きな影響を及ぼすことを注意しなければならない。」(段落0003) c.「本発明は薬物のにがみなどを効果的にマスクした粒状物を提供することを目的とする。」(段落0004) d.「本発明は不快な味を有する薬物の粉体、粉粒状の崩壊剤及び粉粒状の水不溶性低融点物質とを溶融造粒し、得られた造粒物を当該低融点物質の融点以上の温度で微粉状添加剤と溶融造粒すると不快な味が効果的にマスキングできるとの知見に基づいてなされたのである。」(段落0005) e.「本発明で用いる水不溶性低融点物質としては、その融点が40?90℃、好適には50?80℃のものが望ましく、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸などの脂肪酸類、・・・、硬化油、木ロウ等の油脂類、グリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤、パラフィン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、もしくはこれらの混合物が挙げられる。・・・又、粉粒状のものを使用するのが好ましく、その粒径は目的とする粒状物の粒径に応じて決定すればよく、通常100?840μm の範囲のものを用いるのがよい。」(段落0008) f.「上記被コーティング粒状物の表面に被覆する微粉状添加剤としては、例えば、タルク、・・・あるいはこれらの混合物などが挙げられる。」(段落0010) g.「本発明の粒状物は、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、粉粒状の水不溶性低融点物質を用いて通常0.1?150μm 粒径の薬物粉体と粉粒状の崩壊剤、場合によっては適当な賦形剤とともに流動混合下、低融点物質の融点以上の温度に通常5?30分間加熱しながら造粒することにより被コーティング粒状物を得る。得られた被コーティング粒状物及び微粉状添加剤、所望によっては被コーティング粒状物1重量部に対し通常0.1 重量部以下の上記の如き賦形剤とともに回転混合機あるいは流動乾燥機に入れ、用いた低融点物質の融点以上の温度に保持しながら流動混合させることにより被コーティング粒状物に微粉状添加剤を付着させて水不溶性低融点物質及び前記添加剤からなる皮膜を形成させることができ、こののち、混合操作を停止することなく冷却させることにより、目的とする粒状物を製造することができる。」(段落0011) h.「 本発明の粒状物は、口中における味のマスキング性、溶出性、外観、強度安定性等粒状製剤として優れた品質を有する。また、その他にも極めて有用な以下の利点を有する。・・・(3)水不溶性低融点物質の粒度を変えることにより、容易に製品の粒度をコントロールすることができる。例えば、造粒時150?250μm の水不溶性低融点物質を用いると、粒径250?500μm の細粒剤が得られ、300?850μm の水溶性低融点物質を用いると、粒径500?1400μm の顆粒剤を得ることができる。(4)水不溶性低融点物質、崩壊剤及び微粉末状添加剤の種類や量を調節することにより口中におけるマスキングの程度及び体内での溶出性を自由にコントロールすることができる。」(段落0013) i.「実施例1 流動層造粒機(グラットWSG-5型)に塩酸セトラキサート2.8Kg(粒径:150μm 以下)、・・・及びモノステアリン酸グリセリン(150?250μm 、日本油脂製)1.2Kgを入れ、吸気温度85℃で加熱流動させながら造粒したのち冷却し、・・・被コーティング粒状物を得た(平均粒径約400μm )・・・次にジャケット付きクロスロータリーミキサー(CM-10型)に該被コーティング粒状物2.1Kgとタルク0.9Kg(粒径:約10μm 以下)を入れ、80℃の温水をジャケット内に循環させながら1分間に20回転の速度で回転させ、10分後循環水を水道水に切り替えて資料温度40℃まで冷却し、マスキング粒状製剤(細粒剤、平均粒径:約400μm )を得た。(段落0015)」 j.「表1から明らかなように、本発明のマスキング粒状物は十分な口中マスキング性を有し、しかも速やかな溶出特性を示した。」(段落0021)」 また、引用文献2には、以下の事項が記載されている。 k.「低融点物質を核として造粒された塩酸プロカインアミドの粒状物にタルクを付着させた塩酸プロカインアミドの粒状物」(特許請求の範囲) l.「本発明において、粉粒状の低融点物質を核として造粒されたPA(審決注:塩酸プロカインアミドのこと)の粒状物(以下、PA素顆粒と称す)とは、特開昭58-214333号(以下、引例と称す)に開示された方法により製造された粒状物、即ちPAの粉体、好ましくは100μm以下のものと粉粒状の低融点物質の混合物を流動下加温し、低融点物質の溶融過程で、PAの粉体を低融点物質に付着させて得られる粒状物を意味し、・・・」(P2左上欄16行?右上欄3行) m.「低融点物質としては、その融点が30?100℃、・・・であればいかなるものでもよく例えば、・・・硬化油、木ロウ、カカオ脂等の油脂類、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸類、・・・グリセリンモノステアレート、・・・等があげられる。・・・用いられる低融点物質の大きさは20?40メッシュのものが好ましく・・・」(P2右上欄9行?左下欄9行) n.「PA素顆粒及びタルクを回転混合機あるいは糖衣パンに入れ、用いた低融点物質の融点以上の温度に保持させながら転動させ、低融点物質の溶融過程でPA素顆粒にタルクを付着させたのち、これを冷却することにより目的とするPAの徐放性粒状物を得ることができる。」(P2左下欄13?19行) o.「PA素顆粒にタルクを付着させる際に・・・エチルセルロース、メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマー等の水不溶性高分子等を添加して加温及び転動を行うと一層スムーズにタルクを付着させることができ、かつ製される徐放性粒状物の被膜は一層ち密のものとなる。・・・これらの添加物質は混合して添加することも可能であり、その大きさは一般に20μm以下である。」(P2右下欄4行?P3左上欄1行) p.「流動層造粒機(グラフ1-WSG-5型)に100メツシュ篩にて篩過したPA 3.75kg、球状ステアリン酸(20?40メツシユ)1.25kgを入れ、90℃で加熱流動させながら造粒したのち、16及び40メツシユの篩にて整粒し、PA素顆粒を得た。次に自製のジャケット付き二重円錐型混合機に当該素顆粒1kgと、10μm以下のタルク 0.1kg(素顆粒に対して10%)を入れ、75℃の温水をジャケット内に循環させながら回転させた。10分後循環水を冷水に切り替えてステアリン酸の融点以下の温度に冷却し、PAの粒状物を得た。」(実施例1) q.「実施例1で得られたPA素顆粒1kgと、10μm以下のタルク0.1kg及び10μm以下に微粉砕したオイドラギットL 100 (Rohm Pharm社製) 0.1kgを自製したジャケット付き二重円錐型混合機に入れ、実施例1と同様に操作して、PAの粒状物を得た。」(実施例4) r.「実施例1で得られたPA素顆粒1kg 、10μm以下のタルク0.1に、g及び10μm以下に微粉砕したオイドラギットRS (Rohm Pharm社製) 0.1kgを用いて実施例1と同様に処理し、PAの粒状物を得た。」(実施例5) 4.対比 引用文献1の実施例1には、上記摘記事項i.に記載されるとおり、「粒子径が150?250μmであるモノステアリン酸グリセリンと、粒子径が150μm以下である塩酸セトラキサートとを85℃で加熱流動させながら造粒して得られた被コーティング粒状物とタルクとを80℃の温水をジャケット内に循環させたジャケット付きクロスロータリーミキサー内で回転させてマスキング細粒剤を製造する方法」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 引用発明における「粒径150?250μmのモノステアリン酸グリセリン」、「塩酸セトラキサート」は、本願発明のうち「粒径150?250μmの油性低融点物質」、「薬物粉体」に相当する。(上記摘記事項e.,段落0009) また、同「85℃で加熱流動させながら造粒」する、との被コーティング粒状物造粒工程、並びに、それに続く「80℃の温水をジャケット内に循環させたジャケット付きクロスロータリーミキサー内で回転」させる、とのマスキング細粒剤製造工程は、水不溶性低融点物質と薬物粉体とを低融点物質の融点以上の温度に加熱しながら造粒することにより被コーティング粒状物を得る、得られた被コーティング粒状物と微粉状添加剤とを低融点物質の融点以上の温度に保持しながら流動混合させることにより被コーティング粒状物に微粉状添加剤を付着させて水不溶性低融点物質及び前記添加剤からなる皮膜を形成させる、との粒状物の製造方法に関する引用文献1の一般的記載事項(上記摘記事項g.)、及び、タルクが微粉状添加剤であること(上記摘記事項f.)からみて、溶融造粒により得られた被コーティング粒状物にタルクを溶融コーティングによりコーティングさせたものであるといえる。 そうすると、本願発明と引用発明は、「粒子径が150?250μmである油性低融点物質と、薬物粉体とを溶融造粒により造粒した粒状物に粉体を溶融コーティングによりコーティングさせることを特徴とする細粒の製造法。」である点で一致し、下記の点で相違する。 本願発明では、「タルク及び微粉状のエチルセルロース」を溶融コーティングによりコーティングさせるとしているのに対し、引用発明では、「タルク」を溶融コーティングによりコーティングさせている点(以下「相違点」という。) 5.当審の判断 上記相違点について、以下検討する。 引用文献2には、低融点物質を用いて、溶融コーティングを施すことにより、薬物粉体から溶融造粒により粒状物を得、さらに溶融コーティングを施すことによりタルクで被覆された粒状製剤を得る際に、タルクに加えてエチルセルロース、メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマー等の水不溶性高分子を添加して加温及び転動を行うと一層スムーズにタルクを付着させることができる、と記載されており(上記摘記事項o.)、また、その実施例4、5には、上記水不溶性高分子の一種であるオイドラギット類とタルクとからなるコーティング剤を用いて溶融コーティングしてなる薬物粒状物の製造例が具体的に記載されている。(上記摘記事項p.?r.) そうすると、同じ溶融コーティングによりタルクをコーティングさせる方法を採用している引用発明においても、タルクの付着性を改善すべく、引用文献2に例示の水不溶性高分子の一種である微粉状エチルセルロースを用いてみることは当業者が容易に想到しうることである。 審判請求人は、本願発明の製造法により得られる細粒は、特に(ア)苦味マスキング、(イ)固結防止効果、(ウ)優れた薬物の放出性、の3つの優れた性質を有するものであり、引用文献1、2記載の発明から予想できるものでもない旨主張する。 しかし、(ア)については、エチルセルロースの併用によりマスキング効果を有するタルク自体の付着性が改善され、結果として、引用文献1記載のマスキング効果がさらに向上するであろうことは、タルクに水不溶性高分子を添加すると、一層スムーズにタルクを付着させることができる旨の引用文献2の記載(上記摘記事項o.)から予想しうることであるし、また、エチルセルロースそれ自体も薬剤の不快な味を消すためのコーティング剤として、本出願前にすでに広く使用されている成分であるので(「医薬品添加物ハンドブック」エチルセルロース P44?47 丸善株式会社 平成元年3月30日発行 参照)、(ア)の点を予想外に格別のものとすることはできない。 また、(イ)について、引用文献1、2に明示の記載はないものの、医薬製剤については、製造後に、長期保存試験、過酷試験、または加速試験等により当該製剤の安定性を確認することは当業者が通常行うことであるから、(イ)の点も、これらの試験を行うことにより当業者が容易に確認しうる性質であって、エチルセルロースの併用によって付随的にもたらされる効果を確認したにすぎないものである。 さらに、(ウ)について、審判請求人は、優れた薬物の溶出性を獲得しようとする場合には、当業者は、溶出性に難があると予想されるエチルセルロースを通常、採用することはない、とし、その理由として、エチルセルロースが徐放性のコーティング剤(徐放性フィルム)成分であることを挙げている。(上記「医薬品添加物ハンドブック」) しかし、引用文献1の試験例1に、実施例1のマスキング粒状物の溶出時間が5.2分と記載されるように、引用発明の製法における細粒は、その薬物放出性が良好なものであるし、また、引用文献1の摘記事項h.にみるとおり、溶出特性は、微粉末状添加剤、コーティング材料にのみ依存するのではなく、水不溶性低融点物質、崩壊剤の種類や量に応じても変化するのであるから、溶融コーティング時にタルクと共にエチルセルロースを使用することが直ちに溶出性を阻害するものとはいえない。 6.むすび したがって、本願は、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-04-17 |
結審通知日 | 2008-04-23 |
審決日 | 2008-07-09 |
出願番号 | 特願平9-506543 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 北畑 勝彦、福井 美穂 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
谷口 博 穴吹 智子 |
発明の名称 | 粒状製剤及びその製造法 |
代理人 | 本多 弘徳 |
代理人 | 萩野 平 |
代理人 | 小栗 昌平 |
代理人 | 市川 利光 |
代理人 | 添田 全一 |