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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1183212
審判番号 不服2005-1510  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-27 
確定日 2008-08-21 
事件の表示 平成11年特許願第315943号「スクリーン印刷における版離れ方法とスクリーン印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月15日出願公開、特開2001-129965〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成11年11月5日の出願であって,平成16年12月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月27日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたもので、その請求項1に係る発明は,平成16年4月14日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「スクリーンが持つ印刷パターンの孔に粘性物を充填してスクリーンが接する被印刷体上に供給した後、スクリーンと被印刷体とを分離して粘性物を被印刷体の上に残す版離れ工程を経て印刷を行うスクリーン印刷における版離れ方法であって、
前記版離れ工程において被印刷体をスクリーンから分離するのに先立ち微小量上下動させた後、被印刷体を下降させてスクリーンから分離することを特徴とするスクリーン印刷における版離れ方法。」

2.引用刊行物記載の発明
これに対して原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-58682号公報 (以下「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

ア.「テーブル上に支持される基板上に載せたスクリーンのパターンを通して基板上にクリームハンダ等の印料を載着した後、スクリーンを基板から剥離するスクリーン印刷において、前記スクリーンの剥離に際し、前記テーブルに微細な振動を与えてその縦振幅を剥離初期に緩く、中期に高く、かつ、終期に緩く前記基板に印加するとともに、前記テーブルを剥離初期に緩く次第に上昇する速度にて振動の発生源から離すことを特徴とするスクリーン印刷における版離れ制御方法。」(【請求項1】)

イ.「この発明はスクリーン印刷における版離れ制御方法及びその装置に関するもので、基板上に載せたスクリーンのパターンを通して基板上に印刷材料を載着した後、基板上に載着されたパターンを崩さないようにスクリーンを基板から剥離するための制御方法と装置に関する。」(【0001】)

ウ.「そこで、スクリーン12の上にクリームハンダ等の印料を載着するために、スキージ装置がスクリーン12の上面を移動して印料載着が終了すると、スクリーン12を基板11から剥離するのであるが、そのとき、振動素子9を駆動して第2テーブル8に振動を与えるとともに、駆動ロッド3を操作して第1テーブル5を下方へ移動させる。振動素子9による振動は、図2に示すように、初期に緩く、中期に次第に上昇し、終期に最大となるように操作するとともに、第1テーブル5の下降速度は、図3に示すように、超音波に同調して、初期は小さく、中期に高く、終期に小さくする。この振動は、当所から振幅を大きくするとクリームハンダが崩れる惧れがあり、したがってクリームハンダ等の印料の特質によって振幅を変えることが必要である。なお、第1テーブル5の下降を操作することなく、図4に示すように、次第に高くなる振動のみを与え、最高の時点Aで完全な版離れが行われるようにしてもよい。」(【0015】)

上記ア.によれば、スクリーンは基板上に載せられているから、スクリーンは基板に接している。

上記ア.の「スクリーンのパターンを通して・・」との記載から、スクリーンのパターンが孔を有することは明らかである。

上記ア.の「スクリーンのパターンを通して基板上にクリームハンダ等の印料を載着し」との記載について、上記ウ.の「スキージ装置がスクリーン12の上面を移動して印料載着が終了する」との記載と合わせてみるに、スキージ装置がスクリーン上を移動することで、スクリーンのパターンの孔にクリームハンダが充填され、スクリーンが接する基板上にクリームハンダが供給されているものといえる。

上記ア.によれば、テーブルに振動を与えることで基板に振動が与えられている。

上記イ.の「基板上に載着されたパターンを崩さないようにスクリーンを基板から剥離する」とは、クリームハンダからなるパターンが崩れず基板上に残されるようにスクリーンを基板から剥離することだから、スクリーン印刷が、スクリーンを基板から剥離してクリームハンダを基板上に残す工程を経て行われているといえる。

上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「スクリーンのパターンの孔にクリームハンダを充填してスクリーンが接する基板上に供給した後、スクリーンを基板から剥離しクリームハンダを基板上に残す工程を経て印刷を行うスクリーン印刷における版離れ制御方法であって、スクリーンの剥離に際し基板に振動を与えて、スクリーンを基板から剥離するスクリーン印刷における版離れ制御方法。」

3.対比
本願発明と刊行物記載の発明とを比較すると、刊行物記載の発明の「パターン」、「クリームハンダ」、「基板」、「工程」、「版離れ制御方法」は、それぞれ本願発明の「印刷パターン」、「粘性物」、「被印刷体」、「版離れ工程」、「版離れ方法」に相当し、刊行物記載の発明の「スクリーンを基板から剥離し」は、本願発明の「スクリーンと被印刷体とを分離して」に相当し、刊行物記載の発明の「スクリーンの剥離に際し」は、本願発明の「版離れ工程において」に相当する。
また刊行物記載の発明の「基板に振動を与えて」と、本願発明の「被印刷体を・・微小量上下動させ」とは、被印刷体を上下に動かす点で共通であり、刊行物記載の発明の「スクリーンを基板から剥離する」と、本願発明の「被印刷体を下降させてスクリーンから分離する」とは、被印刷体をスクリーンから分離する点で共通である。
よって両者は、
「スクリーンが持つ印刷パターンの孔に粘性物を充填してスクリーンが接する被印刷体上に供給した後、スクリーンと被印刷体とを分離して粘性物を被印刷体の上に残す版離れ工程を経て印刷を行うスクリーン印刷における版離れ方法であって、
前記版離れ工程において被印刷体を上下に動かし、被印刷体をスクリーンから分離するスクリーン印刷における版離れ方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点)
版離れ工程に関し、本願発明は「被印刷体をスクリーンから分離するのに先立ち微小量上下動させた後、被印刷体を下降させてスクリーンから分離する」と特定するのに対し、刊行物記載の発明においてはそのように特定されていない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。

先ず、本願発明において「被印刷体をスクリーンから分離するのに先立ち微小量上下動させ」る点、「微小量上下動させた後、被印刷体を・・スクリーンから分離する」点は、動作の時系列を特定する記載として差異は無い。この時系列に関する特定についての判断を以下に示す。
本願発明においては「被印刷体をスクリーンから分離する」ことについて、被印刷体とスクリーンとが間に何も介さず完全に分かれた状態となること(前者という)を指すのか、或いは、被印刷体とスクリーンとが、スクリーンの孔から抜けきらない粘性物を間に介しつつ、互いに離され始めること(後者という)を指すのか、特定されていないので、双方の場合について以下にそれぞれ検討する。
前者の場合、被印刷体とスクリーンとが完全に分かれて間に何も介さないのだから、分離に際して粘性物はスクリーンの孔から抜けきり、完全に版離れされた状態となる。ここで刊行物には上記ウ.に「・・図4に示すように、次第に高くなる振動のみを与え、最高の時点Aで完全な版離れが行われるようにしてもよい」との記載があり、クリームハンダの完全な版離れの前に基板に振動が与えられること、すなわち、粘性物がスクリーンの孔から抜けきるに先立って、被印刷体が上下に動かされることの示唆がある。よって「被印刷体をスクリーンから分離するのに先立ち」との特定は、刊行物が開示する事項の範囲内である。
後者の場合、刊行物記載の発明においては、被印刷体とスクリーンとが互いにどの時点で離され始めるのか、そのタイミングが不明であるが、スクリーン印刷の版離れにおいて、被印刷体とスクリーンとが互いに離され始める前に粘性物に振動を与えることは、例えば特開平4-35090号公報(第4欄第13-19行等参照)、実願平1-141922号(実開平3-79479号)のマイクロフィルムに示されるように周知である。よって刊行物記載の発明において、被印刷体とスクリーンとが互いに離され始める前に、すなわち「被印刷体をスクリーンから分離するのに先立ち」、粘性物に振動が与えられるように被印刷体を上下に動かすことは、当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。

次に本願発明における「微小量上下動させ」との記載について検討する。「微小量」とは動きの幅をそれ自体で限定するものでなく、動きの幅について相対的に参照し得る被印刷体の厚み等の具体的限定も本願発明は伴うものでない。また「上下動」とは、その動きの方向が上方と下方とを兼ね備える以上のことは限定し得ない。そして、スクリーン印刷の版離れの際、被印刷体に種々の動き幅で上方及び下方に動きを与えること自体は、例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-329276号公報(【0030】等)にも示されるように周知であって、よって「微小量上下動させ」との記載に格別な技術的意義を見出すことはできない。

最後に「被印刷体を下降させて」との記載について検討する。
スクリーン印刷において、被印刷体とスクリーンとを分離する際、被印刷体を下降させることは、例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-329276号公報の他、特開平6-320708号公報、特開平4-35950号公報にも示されるように周知であり、刊行物記載の発明において該周知の技術を採用することに格別困難性は認められない。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-23 
結審通知日 2008-06-24 
審決日 2008-07-07 
出願番号 特願平11-315943
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大仲 雅人  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 佐藤 宙子
酒井 進
発明の名称 スクリーン印刷における版離れ方法とスクリーン印刷装置  
代理人 石原 勝  

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