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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B43K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B43K |
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管理番号 | 1183238 |
審判番号 | 不服2006-2123 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-02-07 |
確定日 | 2008-08-21 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第216022号「棒状体繰り出し装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月10日出願公開、特開平10- 35179〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年7月29日の出願であって、平成16年4月26日付けで手続補正がなされ、同年10月21日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日付けで手続補正がなされたところ、平成17年12月20日付けで当該補正についての補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 2.本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] (1)本件補正の内容 本件補正は、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1を 補正前「【請求項1】 筒状の螺旋部材と棒状体案内部材と、それら螺旋部材と棒状体案内部材の相対的な回転により移動する棒状体受け部材とを有する棒状体繰り出し装置であって、その棒状体繰り出し装置を軸筒に対して回転不能ではあるが着脱自在に嵌入すると共に、前記棒状体繰り出し装置の少なくとも2つの部材に各々突起を形成し、それらの突起を前記回転動作により係脱可能にしたことを特徴とする棒状体繰り出し装置。」 から 補正後「【請求項1】 筒状の螺旋部材と棒状体案内部材と、それら螺旋部材と棒状体案内部材の相対的な回転により移動する棒状体受け部材とを有する棒状体繰り出し装置であって、その棒状体繰り出し装置を軸筒に対して回転不能ではあるが着脱自在に嵌入すると共に、前記棒状体繰り出し装置の少なくとも2つの部材に各々突起を形成し、それらの突起を前記回転動作により係脱可能にすると共に、前記各々の突起を隠蔽し、また、その各々突起を視認不能にしたことを特徴とする棒状体繰り出し装置。」 に補正する内容を含むものである。 上記請求項1に係る補正は、補正前の請求項1の発明特定事項である「突起」に関し、「前記各々の突起を隠蔽し、また、その各々突起を視認不能にした」との限定を付加したものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実公平6-24236号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a.「[産業上の利用分野] 本考案は、筆記具、化粧具等の略筒状部材のすくなくとも長手方向の移動を制限する固定装置に関する。」(第1欄第12?14行) b.「[実施例] 以下、添付図面に示す実施例により詳細に説明する。 第1図は、本考案の特に好適な例として、略筒状部材を回転可能に固定する場合の実施例としてシャープペンシルについた消しゴム繰り出し機構を示したものであり、軸筒1の前方には公知の芯戻り止め部材2を有する先金3が螺着されている。また、軸筒1内方には先端にチャック4を連設した芯タンク5が設けられており、該芯タンク5と軸筒1との間にはノックスプリングSが介在され、チャック4前方にはチャックリング6が摺動可能に外嵌されている。7は螺旋溝7aを有する螺旋部材(略筒状部材)であり、軸筒1と芯タンク5との間に回転不能に嵌入された長手方向にスリット8aと溝10とを有する内部材8(本実施例においては消しゴム案内部材8:以下消しゴム案内部材8という)に設けられた消しゴム受け13の落下防止や消しゴム繰り出し機構の分解防止等のための規制段部9と消しゴム案内部材8の溝10に係止された変形可能な一部切欠部を有するリング(リングの断面は円形であっても多角形であってもよく、切欠は固定部材に径方向の弾性を有していれば必ずしも必要はない。)からなる固定部材11(第1-B図参照)によって挾持固定され、前記消しゴム案内部材8に対して回転可能に配置されている。また、消しゴム案内部材8の中間部には、前方に向かって順次縮径した傾斜面12が形成されており、前記固定部材11をその傾斜面12に沿って溝10に案内するようになっている。尚、規制段部9は消しゴム案内部材8と別体で構成されていてもよく、規制段部、溝及び傾斜面は螺旋部材に設けても良いものである(第5-A図参照)。該消しゴム案内部材8内には消しゴム14を挾持固定する消しゴム受け13が挿入され、該消しゴム受け13はその突部13aを消しゴム案内部材8のスリット8aより顕出させ螺旋部材7の螺旋溝7aに係合している。 次に上述せる構成に基づき組み立て方法について説明する。 第1図では、前部のシャープペンシル機構部と後部の消しゴム繰り出し機構部が分離したノック式シャープペンシルを例示してあるが、前部については一般的なシャープペンシル機構であるため後部の消しゴム繰り出し機構について説明する。」(第3欄第9?48行) c.「尚、固定部材11に長手方向に弾性を有する部材、例えばコイルスプリングや1巻バネ(第3図)またはリングに複数個の鍔11a(第4-B図)やつめ11b(第5-B図)を設けたものを利用すれば、製造工程において発生した誤差によって、例えば、規制段部9と固定部材11に挾持されている螺旋部材7との間に隙ができた場合にでも固定部材11のもつ弾性によって規制段部9の方に常に螺旋部材7を当接している状態にできるため隙によって生じるガタなども極力防止できたり、従来摩擦力によって回転荷重を設定していたものを固定部材の弾性で調節できるため安定した回転荷重を得られる点で望ましい。また、第6図に示すように、固定部材11が係止された螺旋部材7及び消しゴム案内部材8の溝10に凸部16を形成すれば、螺旋部材7を回動させる際に適度な抵抗を加えることができ、その凸部16の形状、個数や固定部材11の形状(例えば、第6-B図に示すようにリングに凸部17を形成したものなど。)(審決注:「第5-B図」は「第6-B図」の明らかな誤記であるので、訂正して摘記した。)を調整することで回動時にカチカチという音を出すこともでき、使用感の優れたものとすることができる。これは、規制段部と螺旋部材に凸部及び凹部を形成することでもなし得る。」(第4欄第10?30行) d.第1-A図および第6-B図から、螺旋部材7及び消しゴム案内部材8の溝10に形成された凸部16、および、リングの凸部17(上記c.参照。)からなる、回動させる際に適度な抵抗を加える構造は、視認不能であることが見てとれる。 上記a.?d.から、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている、と認められる。 「螺旋部材(略筒状部材)と、 軸筒と芯タンクとの間に回転不能に嵌入された長手方向にスリットと溝とを有する消しゴム案内部材と、 消しゴム案内部材の溝に係止された変形可能な一部切欠部を有するリングからなる固定部材とを有し、 螺旋部材は、消しゴム案内部材に対して回転可能に配置されており、 該消しゴム案内部材内には消しゴムを挾持固定する消しゴム受けが挿入され、該消しゴム受けはその突部を消しゴム案内部材のスリットより顕出させ螺旋部材の螺旋溝に係合しており、 螺旋部材を回動させる際に適度な抵抗を加える構造を有し、前記抵抗を加える構造が視認不能である、消しゴム繰り出し機構。」 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア.引用発明の「螺旋部材(略筒状部材)」および「軸筒」は、それぞれ、本願補正発明の「筒状の螺旋部材」および「軸筒」に相当する。 イ.引用発明の「消しゴム」の形状が「棒状」であるのは明らかであるから、引用発明の「消しゴム」は、本願補正発明の「棒状体」に相当する。したがって、引用発明の「消しゴム案内部材」および「消しゴム受け」は、それぞれ、本願補正発明の「棒状体案内部材」および「棒状体受け部材」に相当する。また、「『螺旋部材(略筒状部材)』、『消しゴム案内部材』および『消しゴム受け』を有する『消しゴム繰り出し機構』」は、本願補正発明の「『筒状の螺旋部材と棒状体案内部材と』『棒状体受け部材とを有する棒状体繰り出し装置』」に相当する。 ウ.引用発明の「消しゴム繰り出し機構」は、「消しゴム受け」の「突部を消しゴム案内部材のスリットより顕出させ螺旋部材の螺旋溝に係合し」、「螺旋部材」を「消しゴム案内部材に対して回転可能に配置」しているから、前記回転により、「消しゴム受け」すなわち「棒状体受け部材」(上記イ.参照。)が移動するものと認められる。したがって、引用発明と本願補正発明とは、「棒状体受け部材」が、「螺旋部材と棒状体案内部材の相対的な回転により移動する」点においても一致する。 エ.本願補正発明の「その棒状体繰り出し装置を軸筒に対して回転不能…に」の意味について、「棒状体繰り出し装置」は「螺旋部材」と「棒状体案内部材」を有するところ、「螺旋部材と棒状体案内部材」は「相対的な回転」をしうるものであるから、該「棒状体繰り出し装置」の部材である「螺旋部材」と「棒状体案内部材」のいずれもが「軸筒に対して回転不能」とはならないのは明らかである。したがって、上記意味は、「棒状体繰り出し装置」のいずれかの部材が「軸筒に対して回転不能」(本願明細書【0005】では、棒状体案内部材8が、軸筒1と芯タンク5との間に回転不能に嵌入している。)のことであると解すべきである。 してみると、引用発明の「棒状体案内部材」(上記イ.参照。)は、「軸筒と芯タンクとの間に回転不能に嵌入」されているから、引用発明が、本願補正発明の「『棒状体案内部材』を有する『棒状体繰り出し装置』」を「軸筒に対して回転不能」に「嵌入」する構成を備えているのは明らかである。 オ.本願補正発明の「『棒状体繰り出し装置の少なくとも2つの部材に各々突起を形成し、それらの突起を』螺旋部材と棒状体案内部材の相対的な『回転動作により係脱可能にする』」構成は、棒状体に過大な力が作用しても容易には没入しない機能を発揮するものであり(本願明細書【0008】参照。)、前記回転動作に対してある程度の抵抗力を有しているのは明らかである。 してみると、引用発明の「螺旋部材を回動させる際に適度な抵抗を加える構造」と、本願補正発明の「『棒状体繰り出し装置の少なくとも2つの部材に各々突起を形成し、それらの突起を』螺旋部材と棒状体案内部材の相対的な『回転動作により係脱可能にする』」構成とは、いずれも、「相対的な回転に抵抗力を与える構成」である点において一致する。 カ.引用発明の「相対的な回転に抵抗力を与える構成」(上記オ.参照。)は、上記(2)d.で指摘したように「視認不能」であるから、隠蔽する構成を備えているといい得るのである。したがって、引用発明と本願補正発明とは、「相対的な回転に抵抗力を与える構成を隠蔽し、また、その構成を視認不能にした」ものである点においても一致する。 キ.したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「筒状の螺旋部材と棒状体案内部材と、それら螺旋部材と棒状体案内部材の相対的な回転により移動する棒状体受け部材とを有する棒状体繰り出し装置であって、その棒状体繰り出し装置を軸筒に対して回転不能に嵌入すると共に、前記相対的な回転に抵抗力を与える構成を有し、前記相対的な回転に抵抗力を与える構成を隠蔽し、また、その構成を視認不能にした棒状体繰り出し装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> 「棒状体繰り出し装置」が、本願補正発明では「軸筒に対して」「着脱自在」であるのに対し、引用発明ではそのようになっているか否か不明である点。 <相違点2> 「相対的な回転に抵抗力を与える構成」が、本願補正発明では「棒状体繰り出し装置の少なくとも2つの部材に各々突起を形成し、それらの突起を前記回転動作により係脱可能にする」ものであるのに対し、引用発明ではそのようになっているか否か不明である点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 (4-1)上記相違点1について 引用発明において、芯タンクの機能から、該芯タンクには芯が入らなければならないのは明らかである。そして、空になった芯タンクに芯を入れるとき、棒状体案内部材に遮られないように、前記棒状体案内部材を有する棒状体繰り出し装置を軸筒から取り外さなければならのは明らかだから、そのために、前記棒状体繰り出し装置を軸筒に対して着脱自在に嵌入する構成、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者にとっては容易である。 (4-2)上記相違点2について 「棒状体繰り出し装置の分野において、棒状体繰り出し装置の少なくとも2つの部材に各々突起を形成し、それらの突起を回転動作により係脱可能とし、相対的な回転に抵抗力を与える技術」は、本願出願前周知である(例:実願昭63-102663号(実開平2-25924号)のマイクロフィルム(実用新案登録請求の範囲(1)、第7頁第12行?第8頁第第5行、第16頁第19行?第17頁第9行、第1図参照。一方係合突部8と、この一方係合突部8に乗り越え可能に係合する他方係合突部9が、回転動作により係脱可能な突起であり、前記係合により逆転を防止する機構が、相対的な回転に抵抗力を与えるものである。)、実公昭57-44891号公報(第2欄第33行?第3欄第9行、第3図参照。間欠的に係合する突起14および突部16が、回転動作により係脱可能な突起であり、前記突部16のストッパ作用が、相対的な回転に抵抗力を与えるものである。))。 そして、引用発明において相対的な回転の抵抗力を具体的にどの程度のものとするかは、当業者が適宜設定すべき事項であり、適度な抵抗力を得るために引用発明に上記周知技術を適用し、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者にとっては容易である。また、前記適用により、前記回転は前記突起の間欠的な係脱とともになされるのであるから、繰り出し操作が一定量の段階的なものとなることは、自明である。 また、本願補正発明の効果は、引用発明および上記周知技術から当業者が予測しうる程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明および上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成16年4月26日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 筒状の螺旋部材と棒状体案内部材と、それら螺旋部材と棒状体案内部材の相対的な回転により移動する棒状体受け部材とを有する棒状体繰り出し装置であって、その棒状体繰り出し装置を軸筒に対して回転不能ではあるが着脱自在に嵌入すると共に、前記棒状体繰り出し装置の少なくとも2つの部材に各々突起を形成し、それらの突起を前記回転動作により係脱可能にしたことを特徴とする棒状体繰り出し装置。」(以下「本願発明」という。) (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記「2.[理由]」で検討した本願補正発明の「突起」に関する、「前記各々の突起を隠蔽し、また、その各々突起を視認不能にした」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.[理由](4)」で検討したとおり、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、本願発明の効果は、引用発明および周知技術から当業者が予測しうる程度のものである。 (5).むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載の発明および上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-13 |
結審通知日 | 2008-06-24 |
審決日 | 2008-07-07 |
出願番号 | 特願平8-216022 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B43K)
P 1 8・ 121- Z (B43K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 砂川 充 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
酒井 進 三橋 健二 |
発明の名称 | 棒状体繰り出し装置 |