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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01B
管理番号 1183292
審判番号 不服2007-1076  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-12 
確定日 2008-08-22 
事件の表示 平成 9年特許願第297423号「導電性微粒子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月21日出願公開、特開平11-134935〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成9年10月29日に出願されたもので、平成18年7月25日付け拒絶理由通知書が送付され、願書に添付した明細書又は図面についての同年9月27日付け手続補正書が提出されたものの、同年11月2日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として平成19年1月12日付けで請求されたもので、同年4月23日付け手続補正によって補正された審判請求書が提出されている。

2.原査定
原審の拒絶査定の理由の概要は、次のとおりのものである。
本願の請求項1-10に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1;特開昭62-76215号公報
2?6は、省略。

3.当審の判断

3-1.本件の発明
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成18年9月27日付け手続補正書により補正された請求項1に記載の事項により特定されるものであって、同項の記載は、以下のとおりのものと認める。

「平均粒径0.3?25μm、アスペクト比1.5未満、CV値40%以下の金属球を核とする導電性微粒子を製造する方法であって、
前記金属球を分散媒中に分散させ、落下速度差を利用して分級する工程を有する
ことを特徴とする導電性微粒子の製造方法。」

3-2.刊行物の記載

1)原査定の拒絶理由にある刊行物1の特開昭62-76215号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の記載が認められる。
ア;「LSIチップやパッケージ々の電極等を熱圧着によって接続する電気材料において、
所定の融点と所定の粒径を有した導電性粒子と、所定の膜厚を有して前記導電性粒子を被覆したカプセル皮膜とから構成されることを特徴とする電気接続用異方導電材料。」(特許請求の範囲)
イ;「ここで、異方導電マイクロカプセル10は第2図に示すように、芯物質11と、該芯物質11を被覆する単層または多重の皮膜物質12より構成される。
芯物質11としては、金、白金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、クロム等の金属及び金属化合物(ITO、ハンダ等)導電性カーボン等の導電性無機物及び無機化合物有機金属化合物等の導電性有機化合物等を用いることができる。」(第2頁右上欄第14行?左下欄第1行)
ウ;「前述の製法によって調整された第2図の如き異方導電マイクロカプセル10を粒径5±0.2μm、膜厚0.8±0.05μm(20本/mmの分解能の要求から割出された値)に作成し、これをスクリーン印刷あるいはスプレー等によって下部電極基板5の所定部分に塗布(第1図(a)に示す)する。」(第3頁左上欄第3?8行)及び第2図(第3頁)

2)引用刊行物には、記載アによれば、所定の融点と所定の粒径を有した導電性粒子が記載されており、該導電性粒子の製造方法の発明としても把握できるものが記載されている。更に、この導電性粒子として、記載イには、金属の芯物質が例示されており、記載ウには、粒径5±0.2μmと記載されているとともに、球状のものが示唆されている。
してみると、引用刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「粒径5±0.2μmの金属球を芯物質とする導電性粒子を製造する方法。」

3-3.対比判断
1)引用発明と本件発明とを対比する。引用発明の導電性粒子は「粒径5±0.2μm」であるが、「平均粒径5μm、標準偏差0.2μm」の場合のCV値は4(=0.2/5×100)%である。ここで、引用発明の導電性粒子の「粒径5±0.2μm」について、±0.2μmを最大幅とみると、その標準偏差は0.2μm以下となるから、そのCV値は4%以下となる。また、導電性粒子の平均粒径に関して、引用発明の「5μm」は、本件発明の「0.3?25μm」に含まれており、さらに、導電性粒子のCV値に関して、引用発明の「4%以下」は、本件発明の「40%以下」に含まれる。
そうすると、本件発明と引用発明は、
「平均粒径0.3?25μm、CV値40%以下の金属球を核とする導電性微粒子を製造する方法。」である点で一致し、以下の相違点a及びbで相違していると認められる。

相違点a;導電性微粒子について、本件発明は、アスペクト比1.5未満に対し、引用発明では、アスペクト比が不明な点。

相違点b;本件発明は、金属球を分散媒中に分散させ、落下速度差を利用して分級する工程を有する。

2)まず、相違点aについて、検討する。

異方導電材料に用いる導電性粒子は、真球状、すなわち、アスペクト比1の粒子が好ましいことは、技術常識といえ(例えば、特開平7-302667号公報、【0012】、参照)、引用発明の異方導電材料に用いることが明らかな、金属球を芯物質とする導電性粒子は、真球状ではないものの球状であるから、引用発明において、上記技術常識を参酌し、できるだけ真球のもの、すなわち、アスペクト比1にできるだけ近付け、アスペクト比1.5未満のものとすることは、当業者が容易に為し得たものといえる。

3)次に、相違点bについて、検討する。

引用発明においても、粒径5±0.2μmの粒径の比較的揃った金属球を使用しており、これを分級によって作ることは当業者が容易に着想し得たものといえる。一方、湿式分級とは液体(主として水)中における粒子の沈降速度の差を利用して、粒子群を粗粒と微粒に分離する方法をいい、粒子の分散が容易で分級の精度がよいという特徴がある(井伊谷鋼一編、「粉体工学ハンドブック」、6版、朝倉書店、昭和47年4月発行、P.376、参照)。そして、金属粒子を湿式分級すること、すなわち、金属粒子を液体(分散媒)中に分散させ、沈降(落下)速度差を利用して分級することは、周知技術であるから(例えば、特開平5-65348号公報、【0013】、及び、特開平6-184409号公報、【0026】、参照)、引用発明において、金属球を分散媒中に分散させ、落下速度差を利用して分級する工程を採用することは、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。

4)以上、述べたことから、相違点a及びbは、容易に為し得たものであって、本件発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

3-4.まとめ
本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできず、原査定の拒絶理由は、相当である。

4.結び
原査定は、妥当である。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-19 
結審通知日 2008-06-25 
審決日 2008-07-09 
出願番号 特願平9-297423
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 服部 智  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 坂本 薫昭
山本 一正
発明の名称 導電性微粒子の製造方法  

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