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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1183312
審判番号 不服2006-5207  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-20 
確定日 2008-09-05 
事件の表示 特願2002-43776「平板表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月25日出願公開、特開2002-311853〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯及び本願発明
本願は、平成14年(2002年)2月20日(パリ条約による優先権主張2001年2月27日、大韓民国)の特願2002-43776号の出願に係り、原審における平成17年2月14日付の拒絶理由通知に対し、平成17年5月23日付の意見書とともに同日付の手続補正書が提出されたところ、前記拒絶理由により平成17年12月12日付で拒絶査定され、その後前記拒絶査定を不服として、平成18年3月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、当審が審理すべき本願発明は、平成17年5月23日付の前記手続補正書を以て補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、特にその請求項6に係る発明は、次のとおりのもの(以下、「本願発明6」という。)である。
「【請求項6】相互対向配置された第1及び第2基板と、前記第1及び第2基板をシールする第1及び第2シーラントとを備えたディスプレイを複数個備えた平板表示装置であって、
前記の隣接した2個のディスプレーパネルは連結部で相互接触し、前記第1シーラントは前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールして、前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールし、前記第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成されて前記第1シーラントが付着する突出部を有する平板表示装置。」

2 引用刊行物及びその記載事項
(1)原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平11-167354号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「携帯用表示装置」に関し、図面の記載とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は携帯用表示装置に関する。より詳しくは、携帯性に比例して相対的に低下した画面の大きさを改善した携帯用表示装置に関する。
【0002】【従来の技術】 一般に、表示装置とは、コンピュータからの出力情報を文字又は絵で表示することで視覚的な情報を提供する装置を指す。このような表示装置は、高密度集積回路、大容量の電池、液晶表示装置(LCD)またはEL素子(Electroluminescence element)などが開発されることによって次第に小型化し、初期の単純な計算のための電子計算機から現在に至っては各種個人情報を管理する電子手帳やパームトップ(palm top)コンピュータにまで続々と実用化されている。
【0003】【発明が解決しようとする課題】 しかし、前記のような表示装置は、使用者が携帯し得るという便利さを提供しているが、携帯性を強調しすぎることによって相対的にパネルの大きさが縮小して表示内容の認識程度及び表示され得る容量が低下した。
【0004】 従って、本発明は前記従来の技術が解決できなかった技術的な課題を解決するために考案されたものであり、本発明の目的は、携帯性を維持しつつ表示内容の良好な認識及び表示容量を向上させ得るように画面の面積を大きくした携帯用表示装置を提供することにある。
【0005】【課題を解決するための手段】 前記本発明の目的を実現するために、本体と、この本体と折りたたんだり広げられるように連結された蓋と、前記本体に情報を入力する入力手段と、前記本体と蓋の対向面にそれぞれ提供されて前記入力手段が入力した各種入力情報とこの入力情報の提供を受けた本体が出力する出力情報とを表示する表示手段とを含む携帯用表示装置を提案する。
【0006】 また、前記携帯用表示装置は、蓋自体が広げられたり折りたたまれるように第1蓋と第2蓋の2つの部分に両分してそれぞれの蓋に表示手段を提供することもできる。
前記入力手段としてはキーボードまたはライトペンが提供される。
前記表示手段としては液晶表示装置(LCD)、EL素子、蛍光表示管(VFD)、気体放電表示素子(PDP)などの平板表示装置が全て適用可能であるが、本発明では特に製品適用度が優れた液晶表示装置を提供する。
【0007】【発明の実施の形態】 以下、本発明による携帯用表示装置の実施例を、添付した図面に基づいてより詳しく説明する。図1は本発明の第1実施例によって新たに具現された携帯用表示装置の全体的な形態を示す図面であり、図2は表示手段として提供された2つの液晶表示装置が互いに対向移動して密着した状態を示す図面である。
図1及び図2を参照すると、本発明の第1実施例によって新たに具現される携帯用表示装置は、本体101と、この本体101に連結されたライトペン105と、前記本体101に折り曲げられたり広げられる蓋103と、前記本体101及び蓋103にそれぞれ備えられた液晶表示装置107、109を含む。
【0008】 前記本体101は演算、記憶、制御機能を遂行してこの携帯用表示装置を作動させる役割を果すものであって、電源ボタンを含む各種機能ボタン111を備える。
【0009】 前記蓋103は本体101に折り曲げられたり平坦に広げられるようにヒンジ結合されることにより、非使用時には折り曲げられ、本体101に提供された機能ボタン111の不要な作動を防止し、本体101及び蓋103にそれぞれ提供された液晶表示装置107、109を保護する。
【0010】 前記本体101及び蓋103には、蓋103が不要に広げられるのを防止する係止手段が提供される。この係止手段は、蓋103に突出形成された係止突起135と、本体101に形成され前記係止突起135を嵌合する係止溝137と、前記係止溝137に嵌合された係止突起135を解除して蓋103が開くようにする解除ボタン139とを含む。
【0011】 一方、前記液晶表示装置107、109は、ライトペン105が本体101に資料又は命令などの入力情報を入力する時に、その過程及び結果を映像として表示して使用者に眼で確認させる作用をする。このような液晶表示装置107、109は蓋103と本体101とが折りたたまれる対向面にそれぞれ提供される。この時、本体101及び蓋103に提供された液晶表示装置107、109は互いに異なる映像を具現し得るが、液晶パネルが小型であることを考慮すると、それぞれの液晶表示装置107、109で表示し得る映像は限定されているため、2つの液晶表示装置107、109は相互連結された1つの映像を表示するのが好ましい。
この時、2つの液晶表示装置107、109が離れていると、具現された映像は相互連結されていないため、まるで1つの絵を2つに分けたように見えるという問題をもたらす。これを解決するためには、本体101及び蓋103が広げられた後に、本体101及び蓋103に提供された2つの液晶表示装置107、109を互いに密着させなければならない。
【0012】 図3ないし図5は2つの液晶表示装置を密着させるための構造を示す図面であって、図3は液晶表示装置を本体から分離した図面であり、図4は図2に表示したA-A′線の断面を示す図面であり、図5は図1に表示したB-B′線の断面を示す図面であって、この図面における液晶表示装置は本体から分離されている。
図3ないし図5を参照すると、液晶表示装置107は本体101にスライド結合していることがわかる。即ち、液晶表示装置107の両側面には長さ方向にスライド突起113が提供され、本体101にはスライド溝115が形成されることによって、液晶表示装置107がスライド結合するようになる。前記スライド結合は蓋103に提供された液晶表示装置109にも同一に適用される。図面符号117は使用者が液晶表示装置107、109をより容易にスライド移動させ得るように提供された取っ手117であって、この取っ手117の表面には多数個の溝110が横方向に形成されて使用者の手が滑るのを防止する。
【0013】 図6は蓋に提供された液晶表示装置のみをスライド移動させて2つの液晶表示装置を密着させる過程を示す図面である。
前記では、2つの液晶表示装置107、109が全てスライド移動できるが、図6を参照すると、本体101に提供された液晶表示装置107は固定され、蓋103に提供された液晶表示装置109のみがスライド移動し得るようになっている。この場合には、スライド溝115を蓋103だけではなく本体101にまで延長形成して蓋103に提供された液晶表示装置109が本体101にまでスライド移動し得るようにしなければならない。
図6では蓋103に設けられた液晶表示装置109をスライド移動させているが、その反対に蓋103に設けられた液晶表示装置109を固定して本体101に設けられた液晶表示装置107をスライド移動させることも可能である。
【0014】 図7は第1実施例による携帯用表示装置の底面を示す図面であって、液晶表示装置107、109が互いに密着した後に、蓋103及び本体101が使用者の意図に係わらずに折りたたまれて液晶表示装置107、109が破損するのを防止するパネル保護手段を図示している。
前記パネル保護手段は、平坦に広げられた本体101及び蓋103が使用者の意図に係わらずに折りたたまれるのを防止するものであって、蓋103の底面に形成された保護溝120aと、この保護溝120aからスライド移動する保護突起120bと、本体101の後面に形成されて前記保護突起120bが嵌合される挿着溝120cとを含む。これによって本体101及び蓋103が平坦に広げられている時、使用者が保護溝120aに挿まれた保護突起120bを押して挿着溝120cに嵌合すると、本体101及び蓋103は折りたたまれなく、折りたたもうとする場合には保護突起120bを挿着溝120cから抜き取った後で折ればよい。
【0015】 一方、前記スライド構造を用いて2つの液晶表示装置107、109を密着させても、継ぎ目によって2つの液晶表示装置107、109で具現された映像は両分されたように見える。
【0016】 図8aないし図8cは継ぎ目の厚さを最少化するための技術を示す図面であって、図8aは液晶表示装置の接合面の一部分を拡大した図面であり、図8bは液晶表示装置の一側の接合面を示す図面であり、図8cは液晶表示装置の接合面部分の断面を示す図面である。
図8aないし図8cを参照すると、先ず2つの液晶表示装置107、109が互いに密着する面には、これら液晶表示装置107、109を駆動する透明電極119が外部に現れないようにコーティングがされなければならず、これら液晶表示装置107、109の両基板(substrate)の間に注入された液晶が外部に流出しないように前記両基板を接合する側壁121の幅は0.3mm以下にしなければならない。このように2つの液晶表示装置107、109の接合面を形成すると、継ぎ目が最少化して1つの映像のように見える。
【0017】 一方、前記側壁121は、液晶表示装置に通常使用されているシーラント(sealant)によって形成されるのが普通であるが、前記側壁121は前記継ぎ目の最少化のために厚膜印刷法(Thick-film printing method)で形成することもできる

前記厚膜印刷法は、膜の厚さを通常は100μm?200μmに維持して膜を形成し得る方法であって、前記側壁121がこのような厚膜印刷法によって形成される場合、その幅は前記シーラントによって形成される場合の幅に比べてより狭く形成される。
前記側壁121が前記厚膜印刷法によって形成される場合、この側壁121は図8aを基準にしてみて前記液晶表示装置107、109の接合面側のみに厚膜印刷法によって形成されるか、或いは液晶表示装置107、109の全体周面に沿って厚膜印刷法によって形成されてもよい。
【0018】 こうして2つの液晶表示装置107、109が密着する面を前記のような状態のまま置くと、密着する回数が多くなるほど摩耗したり側壁121が破損して液晶が流出するおそれがある。これを解消するために2つの液晶表示装置107、109が互いに密着する面には破損防止手段が設けられる。
この破損防止手段は、2つの液晶表示装置107、109の摩耗を最少化するだけではなく、絶縁作用及び接合面の画像が良好に具現されるように光の散乱を最少化させる作用をする。このような作用をする破損防止手段は、絶縁性を有するのは勿論、光の散乱を最少化するように黒色を有する樹脂フィルム123を含む。前記樹脂フィルム123は場合に応じて同一特性の金属板に置き換えることができる。前記破損防止手段として提供された樹脂フィルム123は2つの液晶表示装置107、109の継ぎ目を最少化するために0.1mm以下の厚さを有するのが好ましい。
【0019】 また、液晶表示装置107、109の接合面をより強化するために、樹脂フィルム123の上にはまた一つの破損防止手段として金属で形成された別途の補強部材125をさらに提供し得る。前記補強部材125は継ぎ目を最少化するためにその厚さを0.2mm以下にするのが好ましい。
【0020】 前記では2つの液晶表示装置107、109を密着させる時に継ぎ目の幅を1.2mm以下にしているが、1.5mm以下までは、2つの画面を一つの画面として連結させても自然な映像を具現することができる。
前記2つの液晶表示装置107、109は、図示してはいないが、フレキシブルな信号連結線で連結される。
【0021】 図9は、本発明によって前記液晶表示装置107、109が密着した場合に、光学フィルムを用いてその継ぎ目が使用者の眼に見えないようにする技術を説明するために図示した図面である。図示されているように、携帯用表示装置が前述したように構成された状態において、前記2つの液晶表示装置107、109の表面には、前記蓋103が前記本体101から水平状態に開かれた場合に、平坦な状態を成すようになる光学フィルムシート127が付着されている。
【0022】 前記光学フィルムシート127は実質的には多数のマイクロ凸レンズ127aが組合わされて形成されるシートであって、これは前記液晶表示装置107、109が作用する時にこの液晶表示装置107、109で具現される画像パターンを拡大することで使用者の視野に前記継ぎ目が入らないようにする役割を果す。
【0023】 このような光学フィルムシート127は、前記液晶表示装置107、109の全面にかけて設けられてもよく、或いは図10に示されているように前記継ぎ目部位の付近に該当する前記液晶表示装置107、109の部位に形成されてもよい。
ここで、前記マイクロ凸レンズ127aは、良好な作用のために前記液晶表示装置107、109の基板の厚さと同一な焦点距離を有するのが好ましい。」
「【0043】【発明の効果】 前記で具現された携帯用表示装置は、携帯性を維持しつつ少なくとも2つ以上の液晶表示装置を配置して互いに密着させることにより、画面の大きさが拡大するので出力されたデータの認識及び表示容量が向上する。」

そして、液晶表示装置107(109)の側断面図である図8(c)、前記液晶表示装置107、109が密着した場合の継ぎ目が眼に見えないようにするために、前記液晶表示装置107、109の少なくとも継ぎ目部位に多数のマイクロ凸レンズ127aが組合わされて形成される光学フィルムシート127を付着する技術について説明した断面図である図9及び図10の各図面の記載からみて、引用刊行物1の図面には、
「本体101側の液晶表示装置107が、上下両基板の間に注入された液晶を有し、相互に対向配置される上方基板及び下方基板と、前記上下両基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121とを備えたディスプレイ平板表示装置から構成され、また、蓋103側の液晶表示装置109も、上下両基板の間に注入された液晶を有し、相互に対向配置される上方基板及び下方基板と、前記上下両基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121とを備えたディスプレイ平板表示装置から構成されており、前記液晶表示装置107と前記液晶表示装置109とは相互に隣接して、両者の継ぎ目部位において互いに密着されてなる、2つの液晶表示装置を配置して互いに密着させることにより、画面の大きさを拡大させるようにした携帯用表示装置」の記載が認められる。

そうしてみると、引用刊行物1の上記摘記事項及び図面の図示からみて、前記引用刊行物1には、次の発明(以下、これを「引用発明1」という。)の記載が認められる。
「本体101側の液晶表示装置107が、上下両基板の間に注入された液晶を有し、相互に対向配置される上方基板及び下方基板と、前記上下両基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121とを備えたディスプレイ平板表示装置から構成され、また、蓋103側の液晶表示装置109も、上下両基板の間に注入された液晶を有し、相互に対向配置される上方基板及び下方基板と、前記上下両基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121とを備えたディスプレイ平板表示装置から構成されており、前記液晶表示装置107と前記液晶表示装置109とは相互に隣接して、両者の継ぎ目部位において互いに密着されてなる、2つの液晶表示装置107、109を配置して互いに密着させることにより、画面の大きさを拡大させるようにした携帯用表示装置」

(2)原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平5-19270号公報(以下、「周知技術文献1」という。)には、「液晶表示装置」に関し、図面の記載とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】 本発明は、液晶表示装置に関し、より詳細には、貼合わせる2枚の電極基板の間に液晶を封止してなる液晶表示装置のシール部及び液晶注入口部の構成に関する。
【0002】【従来の技術】 従来、2枚の電極基板の間に液晶を封止して成る液晶表示装置のシール部は図3に示すように、下基板9と上基板10の電極基板をシール用接着剤11により接着する構成である。
【0003】 また、液晶を注入する注入口部は、図4に示すように基板12とシール用接着剤14と液晶を注入した後に注入口を封口する封口剤15で封口される様に構成されている。
【0004】【発明が解決しようとする課題】 しかし、前述の従来技術では次のような課題がある。
【0005】 図3に示した構成では、高温、高湿など広範な環境下で使用される状況下においては、特に前記シール用接着剤11から、またはシール用接着剤11と下基板9と上基板10との接着界面から、液晶層12へ水分が入り液晶材料や配向膜材料の特性を劣化させる。更には液晶材料を制御するトランジスタ等スイッチング素子の特性や前記スイッチング素子を駆動する信号線の腐食などをおこす課題がある。
【0006】 また、図4に示した液晶注入口の構成では、封口剤15が2点鎖線で示した、表示部16の内部まで入り過ぎ、表示不良になる課題がある。
【0007】 更に、シール用接着剤14には、パネルのギャップを形成するためにスペーサ剤を混入しているが、封口剤15には前記スペーサ剤を混入していない。その理由は、封口剤15にスペーサ剤を混入すると注入口がうまく封口できないためである。そのために、封口部付近のパネルのギャップは、支えとなるスペーサがないので局所的に狭くなる課題がある。
【0008】 本発明は、上記従来技術の課題を解消し、広範な環境下で使用される液晶表示装置の信頼性と高い表示品質と性能を提供するものである。
【0009】【課題を解決するための手段】 そして上記課題を解決する手段は、2枚の電極基板を貼合わせるシールの箇所にシールに沿って防湿用凸部を前記電極基板両方に複数設けるものである。
【0010】 あるいは、2枚の電極基板を貼合わせるシールを液晶を注入する液晶注入部で二重にするとともに、二重にしたシール部分に防湿用凸部と同じ形状を有するギャップ形成用凸部を設けるものである。
【0011】 あるいは、液晶注入口を封口する封口剤の入り込みを二重にしたシールの二重部以内とする手段を用いるものである。
【0012】【作用】 上記手段の作用は、次のようになる。
【0013】 2枚の電極基板を貼合わせるシールの箇所に、シールに沿って防湿用凸部を前記電極基板両方に複数設けことによって、接着面積が増えることによる接着力の向上と、シール用接着剤と下基板及び上基板との接着界面からの水分の侵入を防止する堤防の作用がある。
【0014】 また、2枚の電極基板の間に、液晶を注入する液晶注入部のシールを二重にするとともに、二重にしたシール部分に防湿用凸部と同じ形状を有するギャップ形成用凸部を設けることにより、従来封口部分にパネルのギャップを支えるスペーサ材等がないことで生じた局所的なギャップむらが対策できる。
【0015】 更に、液晶注入口を封口する封口剤の入り込みを二重にしたシール以内とすることにより従来封口剤が表示部まで入り過ぎることによる表示品質・性能の低下を防ぐことができる。
【0016】【実施例】 以下本発明の実施例を図面にもとづいて説明する。
図1(a)、(b)は、それぞれ本発明の液晶表示装置の一実施例の構成を示す正面断面図と平面断面図である。1は下基板、2は上基板である。そして液晶3を封止するシール4の箇所に水分の侵入を防止する防湿用凸部5を下基板1と上基板2の両方に設けてある。
【0017】 この防湿用凸部5は図1(b)に示すように、シールの箇所に沿って複数設けている。本図では3本の防湿用凸部を図示しているが、実際の実施例では防湿用凸部の幅を150μm、高さを0.5μmとし300μmのピッチでシール箇所に1.5mmの範囲に設けている。
【0018】 尚、防湿用凸部の高さについては0.8μmを越えると液晶の配向不良等別の課題が生じるので0.3?0.8μmの範囲が適当と思われる。
【0019】 以上の構成によれば、シール4と下基板1あるいは上基板2との接着面積が増えるので、接着力が向上する。更にはシール4と前記上下の基板との接着界面から侵入する水分を積止めする堤防の役割を果たす効果がある。
【0020】 本実施例を用いた効果を、P.C.T後のシールと基板との接着力で評価してみた。するとP.C.T前の初期強度では5.5Kgあった接着力が対策していないパネルでは2.5Kgまで低下するのに比べ本実施例を用いたパネルは4.8Kgと少しの低下にとどまった。
【0021】 またP.C.T後の電圧保持率を比較した結果、従来のパネルは60%まで低下したのに比べ本実施例を用いたパネルは85%の低下にとどまった。
【0022】 図2は、本実施例装置の注入口付近の詳細を示した平面図で、シール4が注入口6で二の字状に二重にしてある。また、そのシールの下には図1で説明した防湿用凸部5と同じ高さを有したギャップ形成用凸部8を、シール4の箇所に二の字状に二重に設けてある。
【0023】 従って、従来の液晶パネルでは、注入口付近にはパネルのギャップを支えるものがないため、局所的なギャップむらが生じたが、注入口部分に防湿用凸部と同じ高さのギャップ形成用凸部を設けたことにより、本実施例装置では、シール剤の中に混練したスペーサ材とギャップ形成用凸部が支えとなり封口部付近で生じた局所的なギャップむらが対策できる。
【0024】 更に図2では、液晶3を注入口6から注入後に、封口剤7を塗布し注入口6を封止するが、このとき封口剤7の入り込みを、二の字状にしたシール4の二重部以内にとどめてある。このことにより従来のパネルでは封口剤が表示部まで入り込み表示不良となったが、本実施例を用いることによって封口部の封止強度を損なう事なく表示部まで前記封口剤が入り込むことが防止できる。 【0025】【発明の効果】 以上のように、本発明は2枚の電極基板を貼合わせるシール箇所にシールに沿って水分の侵入を防止する防湿用凸部を前記電極基板両方に複数設けることによって、接着面積が増えることによる接着力の向上とシール用接着剤と下基板及び上基板との接着界面からの水分の侵入を防止する効果がある。
【0026】 また、液晶を注入する液晶注入部のシールを二重にするとともに、二重にしたシール箇所にも水分の侵入を防止する防湿用凸部と同じ形状のギャップ形成用凸部を設けることにより、従来封口部分に生じた局所的なギャップむらが対策できる効果がある。
【0027】 更に、液晶注入口を封口する封口剤の入り込みを二重にしたシール以内とすることにより封口剤が表示部まで入り過ぎることによる表示不良を防ぐ効果がある。」

(3)本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平4-20929号公報(以下、「周知技術文献2」という。)には、「液晶表示パネル」に関し、図面の記載とともに次の事項が記載されている。
「周縁部に凹凸面をそれぞれ形成する2つの透明電極基板を上下に対向させ前記周縁部を凹凸面上で樹脂接着する液晶セルと、前記液晶セル内に注入される液晶材とを含むことを特徴とする液晶表示パネル。」(1頁左欄5?9行の特許請求の範囲の記載)
「[産業上の利用分野]
本発明は液晶表示パネルに関し、特に大形液晶表示パネルのパネル構造に関する。
[従来の技術]
液晶表示パネルは低電圧、低消費電力といった好ましい特性をもつので、その特長を活かした応用技術分野が急テンポで拡がっている。すなわち、腕時計、電卓等の小形液晶表示用から始まった応用分野は、最近では情報端末機、自動車等の大型液晶表示用へと、ますます用途を拡大しており、これと共に表示パネルの面積もより大型化して行く傾向にある。
この液晶表示パネルは、通常2枚の透明電極基板(硬質ガラス)で形成される液晶セル内に液晶材を注入し封止したもので、第3図はその代表的な断面構造図を示している。
第3図から明らかなように、この従来の液晶表示パネルは、まず最初平滑な硬質ガラスから成る一方の下部透明電極基板2の縁端部上にシール材(エポキシ樹脂)を配置し、また、同じく硬質ガラスから成る他方の上部透明電極基板1上に内部ギャップ材(例えば、ミクロパール(商品名)の如き耐熱性の樹脂ビーズ)4を100μm^(2)当り1個程度の割合で散布した後、この2つの透明電極基板を重ね合わせ圧着焼成してシール材層3を形成し、透明電極基板同士を接着させて液晶セルを形成する。
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、この従来の液晶表示パネルは、信頼性を調べるため電圧印加の長時間エージングと耐湿試験を行うと、表示ムラが急速に加速されて多数発生することが認められている。この特性不良は液晶セルの構造的欠陥を要因として発生するもので、シール材層およびシール材層と透明電極基板との接着界面を通してそれぞれ外部から水分が侵入すること、また、シール材層と透明電極基板との接着界面に剥離が生じ易いなど、全ての問題点が液晶セルの基板接着部に集中していることが明らかとなった。
本発明の目的は、上記の情況に鑑み、上下透明電極基板の接着界面に剥れまたは水分侵入などを生ずる従来液晶セルの構造的欠陥を改善した液晶表示パネルを提供することである。
[課題を解決するための手段]
本発明によれば、液晶表示パネルは、周縁部に凹凸面をそれぞれ形成する2つの透明電極基板を上下に対向させ前記周縁部を凹凸面上で樹脂接着する液晶セルと、前記液晶セル内に注入される液晶材とを含んで構成される。
[作用]
本発明によれば、液晶セルの透明電極基板は樹脂封止部に凹凸面を形成するので、基板接着面の接着強度を著しく強固にすることができ、且つ外部からの水分に対するリークパスが長大化される。従って、接着界面の剥離および水分の侵入による耐湿性の劣化など信頼性上好ましからざる問題点が改善される。
[実施例]
つぎに本発明を図面を参照して詳細に説明する。本発明の液晶表示パネルの構造は液晶セルの製造方法を明らかにすることで最もよく理解し得る。従って、液晶セルの製造方法をまず説明する。
第1図(a)?(c)は本発明の一実施例を製造する場合の一手法を示す液晶セルの工程順序図である。本実施例によると、本発明液晶表示パネルの液晶セルは、第1図(a)に示すように硬質ガラスの下部透明電極基板2の周縁部の表面上に深さ1μmのストライプ状凹凸部5がそれぞれ複数本枠状に形成されるところから始まる。このストライプ状凹凸部5の形成は、基板材質がコーニング#7059の如き硬質ガラスであれば、フォトレジストをマスクとする希釈(1:100)フッ化水素酸水溶液を用いた選択エッチングで簡単にできる。つぎに、第1図(b)に示すように、このストライプ状凹凸部5上にシール材3′がスクリーン印刷法で枠状に配置される。他方、上部透明電極基板1が準備され、その周縁部の面上に同じく複数個のストライプ状凹凸部5が形成されると共に、ミクロパール(商品名)の如き耐熱性樹脂ビーズ(5?6φ)の内部ギャップ材4が100μm^(2)当り約1個の割合で散布される。つぎにこの2つの透明電極基板1,2は周縁部のストライプ状凹凸部5を互いに対向させて重ね合せられる。ついで、これを上下から圧接加熱焼成してシール材3′を溶融せしめることで、第1図(c)に示す如き硬質ガラス基板1,2の周縁部をシール材層3で接着した液晶セルが形成される。
このように、上下2つの基板の接着面に複数本のストライプ状凹凸部5がそれぞれ形成された場合は、シール材層3との接着面積が大きくなるので、基板接着面の接着強度は著しく改善される。従って、従来、シール材層と透明電極基板との接着界面に発生していた剥離問題を有効に解消することができ、また、接着界面を介して浸入する水分のリークパスを長くすることもできるので、信頼性の改善に大きな効果をあげることができる。
第2図は本発明の他の実施例における液晶セルの部分製造工程図で、透明電極基板の接着面にモザイク状凹凸部6を形成した場合が示される。このように凹凸部を前実施例のストライプ状に代えてモザイク状とした場合では、前実施例より大きい接着面積を持つことができるので、シール材層3との接着強度が更に改善される。
[発明の効果]
以上詳細に説明したように、本発明によれば、液晶セルの上下2つの透明電極基板は接着面に凹凸部をそれぞれ形成してシール材層との接着面積を実質的に増大させる。従って、基板接着部の強固な液晶セルを構成できるので、従来生じ易かった液晶セルの構造的欠陥が改善される。すなわち、300Hrs以上の電圧印加エージングと耐湿試験を行っても、表示ムラを全く発生することなき電気光学特性の優れた、表示品位の良好な液晶表示パネルを提供することができる。」(1頁左欄11行?3頁左上欄11行)

3 当審の判断
(1)対比
本願発明6と上記引用発明1とを比較すると、引用発明1の「上下両基板の間に注入された液晶を有し、相互に対向配置される上方基板及び下方基板」、「ディスプレイ平板表示装置」、「2つの液晶表示装置107、109を配置して互いに密着させることにより、画面の大きさを拡大させるようにした携帯用表示装置」、「前記液晶表示装置107と前記液晶表示装置109とは相互に隣接して」及び「継ぎ目部位において互いに密着されてなる」のそれぞれが、本願発明6の「相互対向配置された第1及び第2基板」、「ディスプレイ」、「ディスプレイを複数個備えた平板表示装置」、「前記の隣接した2個のディスプレーパネル」及び「連結部で相互接触し、」のそれぞれに相当する。
また、引用発明1の「上下両基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121」は、引用刊行物1の図8、図9及び図10の記載から、上下両基板同士をシールし側壁121を形成するシーラントが、上下両基板の間に注入された液晶が外部に流出しないようにするために、本体101側の液晶表示装置107と蓋103側の液晶表示装置109とのそれぞれの相互に対向配置される上方基板及び下方基板の四周をぐるりとシールしていることは、明らかである。
しかして、引用発明1においては、上下両基板同士をシールするシーラントを、継ぎ目部位に対応する上下両基板同士をシールする第1シーラントと、それ以外の部位の上下両基板同士をシールする第2シーラントとに区分してはいないが、引用発明1においても、継ぎ目部位において互いに密着されてなる2つの液晶表示装置107、109の継ぎ目部位に対応する上下両基板同士は、前記シーラントでシールされており、また同時に互いに密着されてなる2つの液晶表示装置107、109の継ぎ目部位を除く上下両基板同士の他の周囲も、同じく前記シーラントでシールされていることになるから、引用発明1の前記「上下両基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121」が、本願発明6の「前記第1及び第2基板をシールする第1及び第2シーラント」に対応するものであるといえる。
そして、引用発明1のシーラントに求められる機能についての前記考察から、引用発明1の前記「上下両基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121」が、本願発明6の「前記第1シーラントは前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールして」及び「前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールし」と同様の役割を担っていることは明らかである。

そうすると、本願発明6と引用発明1とは、
「相互対向配置された第1及び第2基板と、前記第1及び第2基板をシールする第1及び第2シーラントとを備えたディスプレイを複数個備えた平板表示装置であって、前記の隣接した2個のディスプレーパネルは連結部で相互接触し、前記第1シーラントは前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールして、前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールした平板表示装置」
である点で一致し、次の点で構成が相違する。
相違点:本願発明6が「第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成されて前記第1シーラントが付着する突出部を有する」のに対し、引用発明1は、前記構成を有していない点。

(2)相違点についての検討
上記周知技術文献1に、2枚の電極基板1、2(本願発明6の「第1基板、第2基板」に相当する。)に防湿用凸部5(本願発明6の「突出部」に相当する。)を設けることにより、基板とシール4(本願発明6の「シーラント」に相当する。)との接着面積が増えることによる接着力の向上とシール用接着剤と下基板1及び上基板2との接着界面からの水分の侵入を防止する効果を図るために、2枚の電極基板1、2を貼合わせるシール箇所に、シール4に沿って水分の侵入を防止する防湿用凸部5を前記電極基板1、2の両方に複数設ける技術手段について記載されている。
また、上記周知技術文献2にも、液晶セルにおける上部透明電極基板1及び下部透明電極基板2(本願発明6の「第1基板、第2基板」に相当する。)の周縁部の表面上にストライプ状凹凸部5(本願発明6の「突出部」に相当する。)をそれぞれ複数本枠状に形成し、このストライプ状凹凸部5上にシール材3′(本願発明6の「シーラント」に相当する。)を配置して、つぎにこれらの2つの透明電極基板1、2の周縁部のストライプ状凹凸部5を互いに対向させて重ね合せ、上下から圧接加熱焼成してシール材3′を溶融せしめて、硬質ガラス基板1、2の周縁部をシール材層3で接着する技術手段について記載されている。
このように、上記周知技術文献1及び周知技術文献2におけるかかる技術手段からみて、液晶パネルのような平面表示装置を構成する基板とシーラントとの間の接着力を増大させるために、基板の表面にシーラントが付着する面積を増大させるための突出部を前記基板の表面に設けることは、本願の優先権主張日前の周知技術であるといえる。

ところで、審判請求人は、その平成18年4月19日付の手続補正により補正された審判請求書の請求の理由において、本願発明6に関し、「本願請求項6に記載の発明の主な特徴は、『隣接した2個のディスプレーパネルは連結部で相互接触し、前記第1シーラントは前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールして、前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールし、前記第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成されて前記第1シーラントが付着する突出部を有する』点にある。そして、本願発明は、上記の特徴に基づき、2個のディスプレーパネルの連結部の幅が高い信頼性を有したシーラントによって減少されるために、ディスプレー画面が一つのように見える効果が大きなマルチパネルディスプレー装置を得ることができるという顕著な効果を奏するものとなっている。」と主張する。
しかして、本願発明6は、「1 手続の経緯及び本願発明」欄に前記したとおりの、「【請求項6】相互対向配置された第1及び第2基板と、前記第1及び第2基板をシールする第1及び第2シーラントとを備えたディスプレイを複数個備えた平板表示装置であって、前記の隣接した2個のディスプレーパネルは連結部で相互接触し、前記第1シーラントは前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールして、前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールし、前記第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成されて前記第1シーラントが付着する突出部を有する平板表示装置。」というものである。
そして、審判請求人が主張するところの「2個のディスプレーパネルの連結部の幅が高い信頼性を有したシーラントによって減少されるために、ディスプレー画面が一つのように見える効果が大きなマルチパネルディスプレー装置を得ることができるという顕著な効果を奏する」という作用効果を担保する構成として、審判請求人は、「前記第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成されて前記第1シーラントが付着する突出部を有する」という点を主張する。
しかしながら、請求項6においては、前記連結部に対応する第1及び第2基板の部分をシールする第1シーラントが付着する前記突出部については、単に「基板のうちの少なくとも一方の内面の一部分上に形成されて」とのみ限定されているだけである。
そうすると、本願発明6においては、連結部で相互接触する隣接した2個のディスプレーパネルのそれぞれの前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分は、それぞれの第1シーラントでシールされているのであるから、本願発明6は、連結部で相互接触する隣接した2個のディスプレーパネルのそれぞれの前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の少なくとも一方の内面の一部分上に突出部が形成されていて、第1シーラントが前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の前記突出部の部分をシールしているということになる。
さすれば、本願発明6は、「第1及び第2基板の少なくとも一方の基板の連結部に対応する前記第1及び/又は第2基板の内面の一部分上に突出部が形成されていて、前記連結部に対応する前記第1及び/又は第2基板の部分を前記突出部に付着する第1シーラントでシールし、第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールして、個々のディスプレーパネルが構成され、前記構成のディスプレーパネルを隣接させて、2個又は複数個のディスプレーパネルを前記連結部で相互接触させた平板表示装置」というものとなる。
したがって、3個のディスプレーパネルを連結部で相互接触させた平板表示装置にあっては、前記連結部も2個存在することになるから、ディスプレイを3個備えた平板表示装置の中央に位置するディスプレーパネルでは、その左右両側端辺の2個所に連結部を有することになり、また、9個のディスプレーパネルを連結部で相互接触させた平板表示装置にあっては、その中央部に位置するディスプレーパネルでは、その四辺全周の4個所に連結部を有することになるのであり、そうすると、本願発明6において、前記第1及び第2基板をシールするシーラントを、「前記第1シーラントは前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールして、前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールし、」のように、「第1シーラント」と「第2シーラント」とに敢えて区分する理由はないことになる。すなわち、第1及び第2基板をシールするシーラントのすべてが、「第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成された突出部に付着して、連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールする第1シーラント」から構成されるものであるとしたとしても、本願発明6の範囲内のものと考えてもよいことになる。
したがって、審判請求人が主張する本願発明6の前記作用効果を担保する構成として、「第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に、連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールする第1シーラントが付着する突出部が形成されて」いる点を強調しても、その構成自体は、上記した周知技術文献1及び2に記載されているように本願の優先権主張日前の周知技術であり、また、「相互対向配置された第1及び第2基板と、前記第1及び第2基板をシールする第1及び第2シーラントとを備えたディスプレイを複数個備えた平板表示装置」及び「前記の隣接した2個のディスプレーパネルは連結部で相互接触し、前記第1シーラントは前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールして、前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールした平板表示装置」も、本願の優先権主張日前の引用刊行物1に記載された発明であり、本願発明6の構成は、引用刊行物1並びに周知技術文献1及び同2に記載されているものである。
そして、本願の優先権主張日前の引用刊行物1に記載された発明に、本願の優先権主張日前の前記周知技術を付加した点に、格別の技術的特徴を要する創意工夫も認めることができないから、審判請求人の前記主張は的を射ない主張であり、採用することができない。

そうすると、引用発明1に前記周知技術を付加することにより、本願発明6の相違点に係る前記「前記第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成されて前記第1シーラントが付着する突出部を有する」構成を得ることは、当業者が何ら困難を要することではなく、前記周知技術に基いて容易に想到することができることである。
そして、本願発明6の奏する作用効果は、引用発明1及び周知技術から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本願発明6は、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明6は、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明6は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-18 
結審通知日 2007-05-22 
審決日 2007-06-05 
出願番号 特願2002-43776(P2002-43776)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南 宏輔波多江 進  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 森口 良子
森内 正明
発明の名称 平板表示装置  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  

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