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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1183366
審判番号 不服2007-1516  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-17 
確定日 2008-08-21 
事件の表示 特願2001-324755「指紋照合装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 9日出願公開、特開2003-132341〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月23日の出願であって、平成18年11月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月15日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年2月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年2月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。
「指の指紋を示す凹凸を画像データとして検出し、登録済みの情報と照合を行う指紋照合装置において、
指紋の紋様を示す凹凸を電気量に変換する複数の検出セルからなり、これらの検出セルの出力を白から黒までの濃淡を示す階調値を有する複数の画素から構成された画像データとして読み取る指紋センサと、
指紋の紋様データが予め登録されている指紋辞書と、
前記指紋辞書に登録されている指紋の紋様データと前記指紋センサで読み取られた指紋画像データとを比較照合する指紋照合部と、
指置きが検出されていない待機状態では、前記指紋センサ中の中央付近の一部の検出セルからなる指置き検出用の小領域だけで、指置き動作よりも短い周期で常時画像読み取りを行い、前記小領域で読み取った複数の画像データから得られた白以外の階調を有する画素のうち所定範囲の階調値を有する画素の数の変化量に基づき、前記指紋センサへ指が置かれたことを検出し、前記指紋センサへの指置きを検出した場合に、指紋センサによる指紋全面の読み取り動作と指紋照合部による指紋画像データの比較照合動作を開始させる動作切替部と
を備えることを特徴とする指紋照合装置。」
(この記載事項により特定される発明を以下、「本願補正発明」という。)

上記補正は、発明を特定する事項である「動作切替部」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-167274号公報(平成13年6月22日出願公開、以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 指紋を読み込み、登録された指紋と照合して個人を判別する
指紋照合装置において、
指先を接触させて指紋画像を連続して撮像し読み込む撮像手段と、
前記指紋画像の中から前記指先が接触した直後の画像を抽出する抽出手段
と、
前記抽出手段が抽出した画像から基準位置を検出する検出手段と、
前記基準位置を中心として指紋データを作成する作成手段と、
過去に登録した登録指紋データを記憶する記憶手段と、
前記指紋データと前記登録指紋データとを照合する照合手段と、
前記照合手段による照合結果から前記指紋データと前記登録指紋データとが同一人物のものか否かを判定する判定手段と、を有することを特徴とする指紋照合装置。」

(2)「【0024】指紋を照合する場合は、まず撮像手段2aの読み込み面に指先を置いて、指紋を読み込む。撮像手段2aは指紋登録の場合と同様に、指先を置く、置かないにかかわらず常に連続して撮像を行い、指先が読み込み面に接触した直後から密着するまでの画像を段階的に読み込む。抽出手段2bは、撮像手段2aの読み込み面に指先が接触した瞬間の画像を抽出し、この画像から検出手段4aは照合のための基準位置を検出する。
【0025】作成手段4bでは、読み込み面に指先が接触した直後の画像、およびそれ以後指先が密着するまでに読み込んだ画像から、基準位置を中心として指紋の特徴を抽出していき、指紋データを作成する。この指紋データは照合手段4cに送られ、記憶手段6aに登録された登録指紋データと、それぞれが有する特徴について照合される。この特徴が一致する数によって、判定手段5aは同一の指紋であるかを判定する。」

(3)「【0029】次に、本発明の実施の形態例を図4に示す。指紋照合装置1は、個人の指紋を読み込んで登録し、また読み込んだ指紋と登録された指紋とを照合して個人を判別する。
【0030】指紋画像読み込み部2は、読み込み面に指先を置いて指紋を読み込み、指紋の凹凸がアナログ画像信号に変換される。この読み込みには、CCDを用いた光学カメラが使用される。また他に、半導体を用いた静電容量方式によってもよい。
【0031】この指紋画像の読み込みは、読み込み面に指が置かれる以前から短い周期で連続して行われる。そして読み込まれた画像の中から、指紋画像読み込み部2の読み込み面に指先が接触した直後の画像を抽出する。
【0032】読み込み面に指先が接触した直後の画像を抽出するには、画像を連続的に読み込み続け、絶えず1フレーム前の画像と最新の画像とを認証部4で比較する。そしてある大きさ以上の差異が検出されたとき、その差異が検出された場所が読み込み面に指が接触した直後の画像であると認識す
る。
【0033】A/D変換部3は、アナログ信号を8ビットのデジタル信号に変換するICであり、指紋画像読み込み部2から送られるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。
【0034】認証部4は、A/D変換部3から送られるデジタル信号から、照合の基準位置を検出し、指紋の特徴を抽出して指紋データを作成し、照合処理を行う。メインCPU5は、指紋画像読み込み部2の制御や読み込み面の指置きの検知、認証部4での照合結果の判定、外部機器7とのデータの送受信の制御など、システム全体の制御を行う。」

したがって、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「指紋を読み込み、登録された指紋と照合して個人を判別する指紋照合装置において、
読み込み面に置いた指先の指紋を読み込み、指紋の凹凸をアナログ画像信号に変換する、CCDを用いた光学カメラ、または、半導体を用いた静電容量方式による指紋画像読み込み部と、
過去に登録した登録指紋データを記憶する記憶手段と、
読み込んだ画像から作成された指紋データと、前記登録指紋データとを照合する照合手段と、を備え、
指紋画像の読み込みは、読み込み面に指が置かれる以前から短い周期で連続して行われ、指先が読み込み面に接触した直後から密着するまでの画像を段階的に読み込み続け、絶えず1フレーム前の画像と最新の画像とを比較して、ある大きさ以上の差異が検出されたとき、その差異が検出された場所が読み込み面に指が接触した直後の画像であると認識して、読み込み面に指先が接触した直後の画像、およびそれ以後指先が密着するまでに読み込んだ画像から、指紋データを作成し、記憶手段に登録された登録指紋データと、それぞれが有する特徴について照合されることを特徴とする指紋照合装置。」
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-255481号公報(以下引用例2という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(4)「2.特許請求の範囲
(1)被照合パターンを有する被検査対象物を透明体の載置面上に載置し て、前記透明体を介して前記被検査対象物とは反対側から前記載置面に内部光源からの光を照射せしめた際、前記載置面に生じる光学的境界変化による反射光によつて得られる画像を用いて前記被照合パターンを検出する画像入力装置において、前記画像中の所定の位置の画素の濃淡値を検出、記憶する手段と、前記検出された濃淡値より被検査対象物が前記載置面へ載置完了したことを検査出力する検査手段と、前記検査出力を受けた後の時刻及びこの時刻以後であつて、一定時間以内に画像中の所定位置の画素の濃淡値を検 出、記憶する手段と、前記時刻及びこの時刻以後であつて、一定時間以内に取り込まれた前記画像中の所定の位置の画素の濃淡値より正常なる被検査対象物が載置されたか否かの判定をする判定手段と、前記判定手段により正常と判定した後の、前記所定位置または新たな所定位置の画素の濃淡値が所定のいき値以上である時、前記載置面に生じる画像を採取する採取手段を備 え、被検査対象物接触検査及び被検査対象物正常入力判定及び画像採取を時系列的に行うことを特徴とする画像入力装置。
(2)前記濃淡値検出に必要な画素の位置が、あらかじめ定められた2次元パターン状に配置された特許請求の範囲第1項の画像入力装置。
(3)前記濃淡値検出に必要な画素の位置が、あらかじめ定められた2次元パターン状に配置され、前記画像上での位置に応じて中心から周辺部へ向けて重み付けされている特許請求の範囲第1項の画像入力装置。
(4)前記濃淡値検出に必要な画素の位置があらかじめ定められた位置の一個もしくは複数個およびその近傍位置である特許請求の範囲第1項の画像入力装置。」
(特許請求の範囲)

(5)「(産業上の利用分野)
本発明は画像入力装置に関し、特に指紋等の被照合パターンを光学的に検出して電気信号とする画像入力装置に関する。」
(第2頁左上欄第2行-同欄第5行)

(6)「第3図に示すとうり、指が載置面に接触した時刻Taから急激な濃度変化が始まり、指の載置が完了する時刻Tbまで濃度変化が続く。例え ば、この時の濃度Gaをいき値とし、検出画像中の画素の濃淡値が前記いき値を超えた時、指が載置面に載置完了したこととし、画像採取を行うものである。載置後の発汗作用による濃度変化(Gb-Ga)は時刻Tcまでゆるやかに生じるため、この発汗作用による濃度変化量を検出した時点であらかじめ設定したいき値と比較し正常入力と判定する。なお、発汗量には個人差を生じるため偽造入力判定のためのいき値には、一定の許容量を与える必要がある。」
(第4頁左下欄第1行-同欄第13行)

(7)「このS1?S4は偽造入力の判定処理時間であり画像中の一部についての処理であるので短時間に行なうことが出来る。したがって、利用者の不快を取り除くことが可能となる。偽造入力判定後、正常入力であるならば、再び画像走査し(S6)、以下の操作を行う。指紋入力部9におけるプリズム1に指を載置した場合、プリズム面と指との境界面に生じる光学的変化のため、画像上に濃淡分布を生じるが、前記のS1、S2での位置、また は、新たな所定位置の暗画素の濃度が高くなった時、すなわち、S6において検出された濃淡値があるいき値を超えた時、指紋画像採取を行う(S
7)。」
(第4頁右下欄第15行-第5頁左上欄第7行)

上記(4)の記載において、特許請求の範囲第2から4項の「前記濃淡値検出に必要な画素の位置」は、「検査手段」に用いる濃淡値のものか、「判定手段」に用いる濃淡値のものか特定はされていない。上記(6)の記載のように、指が載置面に載置完了したことの検査のための濃淡値と偽造入力判定のための濃淡値とは、第3図のように1つのグラフにより連続して示されている。これらのことから、「検査手段」に用いる濃淡値の検出に必要な画素の位置も、「判定手段」に用いるものと変わりはなく、上記(7)で「このS1?S4は偽造入力の判定処理時間であり画像中の一部についての処理であるので短時間に行なうことが出来る。」とあるのと同様に、指が載置面に載置完了したことの検査が短時間に行なうことができることは明らかである。
また、第5図(D)?(F)には、中心部が密である2次元パターンが示されている。
したがって、引用例2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

「画像中の一部の所定の位置の画素の濃淡値を検出し、前記検出された濃淡値より指が載置完了したことを検査出力し、その後、画像採取を行う指紋パターン画像入力装置において、
前記濃淡値検出に必要な所定の位置が、あらかじめ定められた中心部が密である2次元パターンであるか、
あらかじめ定められた前記画像上での位置に応じて中心から周辺部へ向けて重み付けされている2次元パターンであるか、
あらかじめ定められた位置の一個もしくは複数個およびその近傍位置であることを特徴とする指紋パターン画像入力装置。」

原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-225345号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(8)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 被照合パターンを有する被検査対象物を透明体の載置面上に載置して、前記透明体を介して前記被検査対象物とは反対側から前記載置面に内部光源からの光を照射せしめた際、前記載置面に生じる光学的境界条件による反射光によって得られる画像を用いて前記被照合パターンを検出する画像入力装置において、
……
【請求項4】 前記採取手段は、前記判定手段により正常なる被検査対象物による入力と判定した後の、前記所定位置、または新たな所定位置の画素の濃淡値が前記予め設定された所定の濃淡いき値以上であり、かつ、予め定めた所定の濃淡いき値以下であるうえ、前記濃淡値が前記二つの濃淡いき値で定められた範囲内にある前記画素数が前記予め定められた所定のいき値以上である時、前記載置面に生じる画像を採取することを特徴とする請求項1記載の画像入力装置。」

(9)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は画像入力装置に関し、特に指紋等の被照合パターンを光学的に検出して、電気信号とする画像入力装置に関する。」

(10)「【0052】図7において、S1,S2での位置、または、新たな所定位置の暗画素の濃淡値Gが所定の濃淡下限いき値G1 以上であり、かつ、別途定めた所定の濃淡上限いき値G2 以下である時(S71-3)すなわち、S6において検出された濃淡値Gがある濃淡範囲内にある場合、この濃淡範囲内の画素数Pを計数し(S72-3)、画素数いき値N1 以上である時(S73-3)、指紋画像採取を行う。光学的条件による濃淡分布が検出されず、画像採取タイミングが得られない場合は、利用者に再押捺を要求する(S8)。」

したがって、引用例3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているといえる。

「指紋を光学的に検出して、電気信号とする画像入力装置において、
所定位置の暗画素の濃淡値Gが所定の濃淡下限いき値G1 以上であり、かつ、別途定めた所定の濃淡上限いき値G2 以下である、検出された濃淡値Gがある濃淡範囲内にある場合、この濃淡範囲内の画素数Pを計数し、画素数いき値N1 以上である時、指紋画像採取を行う画像入力装置。」

2-3.対比
引用発明1は「指紋を読み込み、登録された指紋と照合して個人を判別する指紋照合装置」であるから、指の指紋を示す凹凸を画像データとして検出し登録済みの情報と照合を行う指紋照合装置である点で、本願補正発明と共通するもので、その「指紋画像読み込み部」、「記憶手段」及び「照合手
段」は、それぞれ本願補正発明の「指紋センサ」、「指紋辞書」及び「指紋照合部」に対応するものといえる。
引用発明1は「指紋画像の読み込みは、読み込み面に指が置かれる以前から短い周期で連続して行われ、指先が読み込み面に接触した直後から密着するまでの画像を段階的に読み込み続け」とするのであるから、指置きが検出されていない待機状態では、指置き動作よりも短い周期で常時画像読み取りを行う点で、本願補正発明と共通する。
引用発明1は「絶えず1フレーム前の画像と最新の画像とを比較して、ある大きさ以上の差異が検出されたとき、その差異が検出された場所が読み込み面に指が接触した直後の画像であると認識して、読み込み面に指先が接触した直後の画像、およびそれ以後指先が密着するまでに読み込んだ画像か
ら、指紋データを作成し、記憶手段に登録された登録指紋データと、それぞれが有する特徴について照合される」ものであるから、複数の画像データから得られる変化量に基づき、指紋センサへ指が置かれたことを検出し、指紋センサへの指置きを検出した場合に、指紋照合部による指紋画像データの比較照合動作を開始させる機能の点では、本願補正発明の「動作切替部」と共通するといえる。

したがって、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、次の点で一致する。

「指の指紋を示す凹凸を画像データとして検出し、登録済みの情報と照合を行う指紋照合装置において、
指紋の紋様を示す凹凸を電気量に変換する複数の検出セルからなり、これらの検出セルの出力を白から黒までの濃淡を示す階調値を有する複数の画素から構成された画像データとして読み取る指紋センサと、
指紋の紋様データが予め登録されている指紋辞書と、
前記指紋辞書に登録されている指紋の紋様データと前記指紋センサで読み取られた指紋画像データとを比較照合する指紋照合部と、
指置きが検出されていない待機状態では、指置き動作よりも短い周期で常時画像読み取りを行い、複数の画像データから得られる変化量に基づき、前記指紋センサへ指が置かれたことを検出し、前記指紋センサへの指置きを検出した場合に、指紋照合部による指紋画像データの比較照合動作を開始させる動作切替部と
を備えることを特徴とする指紋照合装置。」

また次の点で相違する。

相違点
動作切替部において、複数の画像データから得られる変化量に基づき、指紋センサへ指が置かれたことを検出するのに、本願補正発明では、指紋センサ中の中央付近の一部の検出セルからなる指置き検出用の小領域だけで、常時画像読み取りを行い、前記小領域で読み取った複数の画像データから得られた白以外の階調を有する画素のうち所定範囲の階調値を有する画素の数の変化量に基づき検出するのに対して、引用発明1では「ある大きさ以上の差異が検出されたとき」とあるだけで具体的な特定はなく、また本願補正発明では一部の検出セルからなる指置き検出用の小領域だけで指紋センサへ指が置かれたことを検出するのにともない、指紋センサへの指置きを検出した場合に、指紋センサによる指紋全面の読み取り動作を開始するのに対して、引用発明1ではそのような特定がない点。

2-4.相違点に対する判断
引用発明2のように、画像中の一部の所定の位置の画素の濃淡値を検出し指が載置完了したことを検査出力することが、さらに所定の位置として、
「前記濃淡値検出に必要な所定の位置が、あらかじめ定められた中心部が密である2次元パターンであるか、
あらかじめ定められた前記画像上での位置に応じて中心から周辺部へ向けて重み付けされている2次元パターンであるか、
あらかじめ定められた位置の一個もしくは複数個およびその近傍位置であること」
のように中央付近を重視したものとすることが知られおり、画像中の一部の所定の位置の画素の濃淡値を検出し指が載置完了したことを検査出力するのであるから、その後行う画像採取は、照合のために全面の読み取りであることは当然である。
また、引用発明1において、指先が読み込み面に接触することにより、指紋画像読み込み部の画像信号は、接触する部分に応じて白(または黒)から白以外(または黒以外)に変化する画素が生じることは明らかであり、ある大きさ以上の差異の検出を、変化する画素の数で検出することに格別の点はなく、本願補正発明の「白以外の階調を有する画素のうち所定範囲の階調値を有する画素」は、発明の実施の形態では、
「【0025】
また、指置き検出処理では、待機状態における指紋センサが読み取った画像データの状態を示す指標として、非白画素(階調が0?254)の画素の割合を示す黒割合を用いるようにしたが、これに限るものではない。この指標として任意の階調範囲、例えば階調0?100を有する検出セルの数の割合を用い、その変化量に基づき指置き有無を判定するようにしてもよい。」
と記載されているように、所定のしきい値で二値化したものを黒とすることと格別の相違はないといえるし、そのような階調範囲でないとしても、引用発明3のように、ある濃淡範囲内の画素数を計数し、画素数いき値以上である時に指紋画像採取を行うことは知られている。
以上のことから、引用発明1において、ある大きさ以上の差異の検出を、本願補正発明のように、指紋センサ中の中央付近の一部の検出セルからなる指置き検出用の小領域だけで、白以外の階調を有する画素のうち所定範囲の階調値を有する画素の数の変化量に基づき、検出すること、及びそれにともない指紋センサへの指置きを検出した場合に、指紋センサによる指紋全面の読み取り動作を開始させることに困難な点はない。
上記のとおり、引用発明1において相違点を本願補正発明のようにすることに困難な点はないから、本願補正発明は引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2-5.むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成19年2月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年
10月2日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「指の指紋を示す凹凸を画像データとして検出し、登録済みの情報と照合を行う指紋照合装置において、
指紋の紋様を示す凹凸を電気量に変換する複数の検出セルからなり、これら検出セルの出力を白から黒までの濃淡を示す階調値を有する複数の画素から構成された画像データとして読み取る指紋センサと、
指紋の紋様データが予め登録されている指紋辞書と、
この指紋辞書に登録されている指紋の紋様データと前記指紋読み取り部で読み取られた指紋画像データとを比較照合する指紋照合部と、
前記指紋読み取り部が読み取った複数の画像データから得られた白以外の階調を有する画素のうち所定範囲の階調値を有する画素の数の変化に基づき、前記指紋センサへ指が置かれたことを検出し、前記指紋センサへの指置きを検出した後、前記指紋照合部による比較照合を行う動作切替部とを備えることを特徴とする指紋照合装置。」

原査定の拒絶の理由に引用された引用発明1及び3の記載事項は、前記のとおりである。
そして、本願発明は、動作切替部において本願補正発明のような限定がないものであるから、本願補正発明と同様、引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-11 
結審通知日 2008-06-17 
審決日 2008-06-30 
出願番号 特願2001-324755(P2001-324755)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 脇岡 剛▲広▼島 明芳松野 広一  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 伊藤 隆夫
加藤 恵一
発明の名称 指紋照合装置および方法  
代理人 本山 泰  
代理人 根岸 裕一  
代理人 本山 泰  
代理人 根岸 裕一  

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