• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1183375
審判番号 不服2007-5743  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-22 
確定日 2008-08-21 
事件の表示 特願2000- 82455「薄肉容器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月 2日出願公開、特開2001-270507〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成12年3月23日の出願であって、平成19年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年2月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成19年3月13日に手続補正がなされたものである。

2 平成19年3月13日にした手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、明細書の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】熱可塑性プラスチック材料のブロー成型により形成する、ネック部、肩部、胴部および底部を有する容器本体を具える薄肉容器であって、前記容器本体の肩部、胴部および底部をネック部よりも薄肉に形成した容器において、
前記肩部に隣接する前記ネック部の付け根近傍に、一対の半円の相互間に長方形を配置したレーストラック形状の鍔状部を設け、前記鍔状部と肩部との間に保持具を滑りこませて容器本体を保持する隙間を形成したことを特徴とする薄肉容器。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「異形の平面形状を有する鍔状部」を「一対の半円の相互間に長方形を配置したレーストラック形状の鍔状部」と限定するものであり、この特定事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されている。しかも、補正後の請求項1に記載された発明と補正前の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-247432号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。

「【0008】図1に示す実施例の液体用容器10は、柔軟性を有する容器本体12と、この容器本体12から上方に突出した硬質の口部14とを有し、容器本体12と口部14とはブロー成形により一体成形されている。」
「【0012】口部14は、略円筒状に形成され、その上下方向(高さ方向)の中間部には、断面六角形状のフランジ部14Bが設けられている。この口部14は、ブロー成形により容器本体12と一体的に形成されるのであるが、その際この口部14の部分は容器本体12より径が小さいために容器本体12より厚肉となるように形成することができ、これがため、口部14はある程度固くなるように形成されている。ここで、口部14,フランジ部14B及びこれらの近傍の平均肉厚は、好ましくは1?4mm,より好ましくは1?3mm,特に好ましくは1.2mm?2.5mmとなるように形成され、容器本体12の平均肉厚は、好ましくは0.1mm?1.5mm,より好ましくは0.2mm?1.0mm,特に好ましくは0.3mm?0.7mmとなるように形成され、両者の差が好ましくは0.2mm以上,より好ましくは0.5mm以上になるようにされる。」

「【0014】液体用容器10は、図2にも示されるように、容器本体の縦すじ16とその他の部分とは、異なる材料により形成されており、このため、パリソン(成形品の元となるプラスチックチューブ)も縦すじ16に対応する部分が高密度ポリエチレンから成り他の部分が低密度ポリエチレンから成るパリソンを用いてブロー成形により一体成形される。なお、液体用容器10は、射出ブロー成形や延伸ブロー成形により形成してもよい。」

「【0016】上述の如く構成された本実施例の液体用容器10によると、口部14は比較的固く、しかもフランジ部14Bが六角形状に形成されているので、工場における現像液,定着液等の処理液の充填作業を円滑に行うことができる。また、口部14が比較的固く、フランジ部14Bが持ちやすいので、キャップ30の取り外し時に本体部12(この部分は縦すじ16を除き柔軟である。)が捩じれることがない。……」

「【0018】さらに、液体用容器10は、使用後は、図3に示されるように、縦すじ16を折れ目として簡単に押し潰すことができるので減容化を図ることができ……使用後に破棄された液体用容器10の回収効率を向上させることができる。」

「【0021】なお、上記実施例では、口部14に外方に突出した六角形のフランジ部14Bを形成する場合を例示したが、このフランジを,四角形,八角形等のフラットな面が一部にある形状に形成すれば、このフラットな面を機械により簡単に挟持させることができるので、工場における現像液等の処理液の充填作業を円滑に行うことができる。」

そして、図1には、口部、肩部、胴部及び底部を有する容器本体12が、図示されている。

以上の記載及び図1ないし図3によれば、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。
低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンからなる材料のブロー成型により形成する、口部、肩部、胴部及び底部を有する容器本体を備える薄肉容器であって、容器本体の肩部、胴部及び底部を口部よりも薄肉に形成した容器において、肩部に隣接する口部の上下方向中間部に、四角形のフランジ部を設けた薄肉容器。

また、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-329947号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。

「【請求項1】口部と胴部と底部とからなり射出延伸ブロー成形法によって成形されるプラスチック製薄肉容器であって、口部が2.0乃至3.0mmの肉厚を有し、胴部は前記口部の1/10以下の肉厚で構成されていることを特徴とする、プラスチック製薄肉容器。」

「【0017】成形されたボトル1は口部2には2?3mmの肉厚を有しキャップと嵌合する螺子部2aが形成され、螺子部の下方にフランジ部4が形成されている。このフランジ部4は容器の搬送時や内容物充填時に保持するために用いることができ…」

そして、図1、図3には、一対の半円の相互間に長方形を配置したレーストラック形状のフランジ部4が、図示されている。

以上の記載及び図1ないし図3によれば、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。
口部に、一対の半円の相互間に長方形を配置したレーストラック形状のフランジ部が形成された、ブロー成型により形成されるプラスチック製薄肉容器。

(3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンからなる材料」、「口部」及び「口部の上下方向中間部」は、それぞれ本願補正発明の「熱可塑性プラスチック材料」、「ネック部」及び「ネック部の付け根近傍」に相当する。
また、本願補正発明の「鍔状部」は、保持具などにより容器本体を保持するためのものである(本願明細書段落【0010】参照。)ところ、引用例1記載の発明の「フランジ部」も、機械により挟持することにより容器本体の保持を可能にする(引用例1の上記段落【0021】参照。)ものであるから、引用例1記載の発明の「フランジ部」は、本願補正発明の「鍔状部」に相当する。
そうすると、両者は、
「熱可塑性プラスチック材料のブロー成型により形成する、ネック部、肩部、胴部および底部を有する容器本体を具える薄肉容器であって、前記容器本体の肩部、胴部および底部をネック部よりも薄肉に形成した容器において、
前記肩部に隣接する前記ネック部の付け根近傍に、鍔状部を設けた薄肉容器」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本願補正発明では、鍔状部が、一対の半円の相互間に長方形を配置したレーストラック形状であるのに対して、引用例1記載の発明では、鍔状部が四角形である点。
[相違点2]
本願補正発明では、鍔状部と肩部との間に保持具を滑りこませて容器本体を保持する隙間を形成したのに対して、引用例1記載の発明では、そのような隙間を形成したとの言及がない点。

(4)相違点の検討
そこで、上記各相違点について検討する。
《相違点1について》
引用例2に、口部に、一対の半円の相互間に長方形を配置したレーストラック形状のフランジ部が形成されたプラスチック製薄肉容器が、記載されており、上記引用例2記載の「フランジ部」は、容器の搬送時や内容物充填時に容器を保持するために用いられる(引用例2の上記段落【0017】参照。)から、本願補正発明の「鍔状部」に相当する。
そして、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明は、共に、ブロー成型により形成されるプラスチック製薄肉容器に関するものであるから、引用例1記載の発明において、鍔状部の形状として、引用例2記載の発明の鍔状部の形状、すなわち一対の半円の相互間に長方形を配置したレーストラック形状を採用して、相違点1に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

《相違点2について》
引用例1記載の発明において、鍔状部(フランジ部)は、ネック部(口部)の上下方向中間部に形成され、図1に、鍔状部と肩部との間に隙間が形成されている態様が図示されていることから、引用例1記載の発明も、鍔状部と肩部との間に隙間が形成されており、当該隙間を、本願補正発明のように、保持具を滑りこませて容器本体を保持する隙間とすることは、当業者が状況に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎない。

そして、本願補正発明が奏する効果も、引用例1及び引用例2記載の発明から当業者が予測できたものであり、格別顕著なのものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例1及び引用例2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成18年10月12日にした手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】熱可塑性プラスチック材料のブロー成型により形成する、ネック部、肩部、胴部および底部を有する容器本体を具える薄肉容器であって、前記容器本体の肩部、胴部および底部をネック部よりも薄肉に形成した容器において、
前記肩部に隣接する前記ネック部の付け根近傍に異形の平面形状を有する鍔状部を設け、前記鍔状部と肩部との間に保持具を滑りこませて容器本体を保持する隙間を形成したことを特徴とする薄肉容器。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、上記2(2)に記載したとおりである。

(3)対比
本願発明1と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンからなる材料」、「口部」及び「口部の上下方向中間部」は、それぞれ本願発明1の「熱可塑性プラスチック材料」、「ネック部」及び「ネック部の付け根近傍」に相当する。
また、本願発明1の「鍔状部」は、保持具などにより容器本体を保持するためのものである(本願明細書段落【0010】参照。)ところ、引用例1記載の発明の「フランジ部」も、機械により挟持することにより容器本体の保持を可能にする(引用例1の上記段落【0021】参照。)ものであるから、引用例1記載の発明の「フランジ部」は、本願発明1の「鍔状部」に相当する。そして、「異形の平面形状」に関して、本願明細書段落【0005】に「異形(円形でないもの)の平面形状」との記載があることから、引用例1記載の発明の「四角形のフランジ部」は、本願発明1の「異形の平面形状を有する鍔状部」に相当する。
そうすると、両者は、
「熱可塑性プラスチック材料のブロー成型により形成する、ネック部、肩部、胴部および底部を有する容器本体を具える薄肉容器であって、前記容器本体の肩部、胴部および底部をネック部よりも薄肉に形成した容器において、
前記肩部に隣接する前記ネック部の付け根近傍に異形の平面形状を有する鍔状部を設けた薄肉容器」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本願発明1では、鍔状部と肩部との間に保持具を滑りこませて容器本体を保持する隙間を形成したのに対して、引用例1記載の発明では、そのような隙間を形成したとの言及がない点。

(4)相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。
引用例1記載の発明において、鍔状部(フランジ部)は、ネック部(口部)の上下方向中間部に形成され、図1に、鍔状部と肩部との間に隙間が形成されている態様が図示されていることから、引用例1記載の発明も、鍔状部と肩部との間に隙間が形成されており、当該隙間を、本願発明1のように、保持具を滑りこませて容器本体を保持する隙間とすることは、当業者が状況に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎない。
そして、本願発明1が奏する効果も、引用例1記載の発明から当業者が予測できたものであり、格別顕著なのものとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用例1記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである

(5)むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-20 
結審通知日 2008-06-24 
審決日 2008-07-07 
出願番号 特願2000-82455(P2000-82455)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武内 大志谷治 和文  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 村山 禎恒
熊倉 強
発明の名称 薄肉容器  
代理人 杉村 興作  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 来間 清志  
代理人 澤田 達也  
代理人 杉村 憲司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ