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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1183446
審判番号 不服2006-2011  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-06 
確定日 2008-08-18 
事件の表示 平成 8年特許願第153044号「答案用紙の自動採点システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月 2日出願公開、特開平 9-311621〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成8年5月23日の出願であって、平成18年1月19日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年2月6日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年2月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前請求項1乃至8の記載を、補正後請求項1乃至3の記載のとおり補正したものである。

・補正前請求項1乃至8の記載
「【請求項1】予め印刷された複数の解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に記入された解答及びそれぞれの解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に、解答欄(31 ?3n/51 ?5n)及び解答と異なる色で採点記号(7a・7b)が記入された答案用紙(1)を撮像して撮像データを出力する撮像手段(9)、
撮像データから解答欄(31 ?3n/51 ?5n)及び解答と採点記号の色の相異に基づいて採点記号データのみを抽出する抽出手段(31)、
採点記号データ、答案用紙(1)における解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データ、各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された各解答の点数データを夫々記憶する記憶手段(25)、
各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データに基づいて答案用紙(1)の各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)を特定すると共に特定された各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の採点記号データに基づいて採点記号(7a・7b)を判別する判別手段(31)、判別された各採点記号(7a・7b)及びそれぞれの採点記号(7a・7b)が記入された各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された点数データに基づいて採点データを演算処理して記憶手段(25)に記憶させる制御手段(21)、
とからなる自動採点システム。
【請求項2】予め印刷された複数の解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に記入された解答及びそれぞれの解答欄(31 ?3n/51?5n)に、解答欄(31 ?3n/51 ?5n)及び解答と異なる色で採点記号(7a・7b)が記入された答案用紙(1)を撮像して採点記号の撮像データを出力する撮像手段(9)、
採点記号(7a・7b)の撮像データ、答案用紙(1)における各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データ、各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された各解答の点数データ及び採点データを夫々記憶する記憶手段(25)、
各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データに基づいて答案用紙(1)の各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)を特定すると共に特定された各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の採点記号データに基づいて採点記号を判別する判別手段(31)、判別された各採点記号(7a・7b)及びそれぞれの採点記号(7a・7b)が記入された各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された点数データに基づいて採点データを演算処理して記憶手段(25)に記憶させる制御手段(21)、
とからなる自動採点システム。
【請求項3】請求項2において、撮像手段(9)には採点記号(7a・7b)の色彩のみを読取るフィルターが装着され、採点記号(7a・7b)の撮像データのみを出力可能にした自動採点システム。
【請求項4】請求項1又は2の撮像手段(9)は、ディジタルビデオカメラからなる自動採点システム。
【請求項5】請求項1又は2の撮像手段(9)は、ディジタルスチルカメラからなる自動採点システム。
【請求項6】請求項1又は2において、制御手段(21)に表示装置を接続し、該表示装置に採点データを表示可能にした自動採点システム。
【請求項7】請求項1又は2において、制御手段(21)に外部記憶装置を接続し、外部記憶装置に採点データを記憶可能にした自動採点システム。
【請求項8】請求項1又は2において、制御手段(21)に印字装置を接続し、印字装置により採点データを印字可能にした自動採点システム。」

・補正後請求項1乃至3の記載
「【請求項1】予め印刷された複数の解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に記入された解答及びそれぞれの解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に、解答欄(31 ?3n/51 ?5n)及び解答と異なる色で採点記号(7a・7b)が記入された答案用紙(1)を撮像して撮像データを出力する撮像手段(9)、
撮像データから解答欄(31 ?3n/51 ?5n)及び解答と採点記号(7a・7b)の色の相異に基づいて採点記号データを抽出する抽出手段(31)、
採点記号データ、答案用紙(1)における解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データ、各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された各解答の点数データ及び採点データを夫々記憶する記憶手段(25)、
各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データに基づいて答案用紙(1)の各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)を特定し、特定された各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の採点記号データに基づいて採点記号(7a・7b)を判別する判別手段(31)、
判別された各採点記号(7a・7b)及びそれぞれの採点記号(7a・7b)が記入された各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された点数データに基づいて採点データを演算処理して記憶手段(25)に記憶させる制御手段(21)、
とからなる自動採点システム。
【請求項2】予め印刷された複数の解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に記入された解答及びそれぞれの解答欄(31 ?3n/51?5n)に、解答欄(31 ?3n/51 ?5n)及び解答と異なる色で採点記号(7a・7b)が記入された答案用紙(1)を撮像して採点記号のみの撮像データを出力する撮像手段(9)、
採点記号(7a・7b)の撮像データ、答案用紙(1)における各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データ、各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された各解答の点数データ及び採点データを夫々記憶する記憶手段(25)、
各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データに基づいて答案用紙(1)の各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)を特定し、特定された各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の採点記号データに基づいて採点記号を判別する判別手段(31)、
判別された各採点記号(7a・7b)及びそれぞれの採点記号(7a・7b)が記入された各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された点数データに基づいて採点データを演算処理して記憶手段(25)に記憶させる制御手段(21)、
とからなる自動採点システム。
【請求項3】請求項2において、撮像手段(9)には採点記号(7a・7b)の色彩のみを読取るフィルターが装着され、採点記号(7a・7b)の撮像データのみを出力可能にした自動採点システム。」

(2)補正目的について
本件補正には、以下の補正事項が含まれている。

ア.補正事項1:補正前請求項1で特定されている「抽出手段」に関して「撮像データから解答欄(31 ?3n/51 ?5n)及び解答と採点記号の色の相異に基づいて採点記号データのみを抽出する」とあったのを、補正後請求項1では、「撮像データから解答欄(31 ?3n/51 ?5n)及び解答と採点記号(7a・7b)の色の相異に基づいて採点記号データを抽出する」とし、
補正前請求項1で特定されている「記憶手段」に関して「採点記号データ、答案用紙(1)における解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データ、各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された各解答の点数データを夫々記憶する」とあったのを、補正後請求項1では「採点記号データ、答案用紙(1)における解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データ、各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された各解答の点数データ及び採点データを夫々記憶する」とし、
補正前請求項1で特定されている「判別手段」に関して「各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データに基づいて答案用紙(1)の各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)を特定すると共に」とあったのを、補正後請求項1では「各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データに基づいて答案用紙(1)の各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)を特定し、」とする補正事項

イ.補正事項2:補正前請求項2で特定されている「撮像手段」に関して「答案用紙(1)を撮像して採点記号の撮像データを出力する」とあったのを、補正後請求項2では、「答案用紙(1)を撮像して採点記号のみの撮像データを出力する」とし、
補正前請求項2で特定されている「判別手段」に関して「答案用紙(1)の各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)を特定すると共に」とあったのを、補正後請求項1では「答案用紙(1)の各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)を特定し、」とする補正事項

本件補正について、上記補正事項順に検討する。
最初に、補正事項1における「採点記号(7a・7b)」と附番を付す点は、既に「判別手段(31)」においては「採点記号(7a・7b)」なる特定がされており、これと整合させた記載を行い補正前に「採点記号のみ」としていた特定内容を明らかにしたものと解されるので、誤記の訂正あるいは明りようでない記載の釈明を目的とするものといえる。
次に、同補正事項1における「・・・特定すると共に」とあったのを、「・・・特定し、」とする点は、「・・・特定」がされたことを前提に、その後の判断が行われることを明記したものであって、誤記の訂正あるいは明りようでない記載の釈明を目的とするものといえる。
残る、同補正事項1における「記憶手段(25)」に係る「各解答の点数データ」に加えて「採点記号データ」が存在することを追加特定した点は、当該「記憶手段(25)」の記憶内容を限定したもので、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものといえる。
してみれば、少なくとも補正事項1は、請求項1に関して特許請求の範囲の限定的減縮を行おうとするもの故に、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)独立特許要件について
(3-1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された文献を、以下、順に「引用例1」及び「引用例2」といい、それぞれ、図面とともに以下の事項が記載されている。

(3-1-1)引用例1:特開平8-30188号公報
【特許請求の範囲】
「【請求項1】 原稿の画像を読み取る画像読取手段と、該手段によって読み取った画像情報を記憶する画像記憶手段と、該画像記憶手段に記憶された画像情報を用紙上に画像形成して出力する画像出力手段とを備えた画像処理装置において、
問題及び解答が記載されている答案用紙を原稿とし、前記画像読取手段によって読み取った該答案用紙の画像情報から出題された問題に対する解答を認識する解答認識手段と、
該解答認識手段によって認識した解答を、前記答案用紙に記載されているか予め入力又は記憶されている前記問題に対する正解と比較して採点処理を行なう採点手段と、
答案用紙に出題される問題に対する解答又はその採点結果についての解説を入力するか予め記憶して保持する解説保持手段と、
該解説保持手段に保持した解説のうち、前記解答認識手段によって認識した解答又は前記採点手段による採点結果に応じた解説を選択する解説選択手段と、
少なくとも前記画像読取手段によって画像情報が読み取られた答案用紙における問題及び解答の画像範囲並びに前記解説選択手段によって選択した解説の画像範囲に基づいて、前記画像出力手段で使用する用紙のサイズを決定する用紙サイズ決定手段と、
前記画像読取手段によって読み取った答案用紙の画像情報,前記採点手段による採点結果の画像情報,及び前記解説選択手段によって選択した解説の画像情報を前記画像出力手段に出力し、前記用紙サイズ決定手段によって決定したサイズの用紙上に合成して画像形成させる画像出力制御手段とを設けたことを特徴とする画像処理装置。」

段落【0004】「【発明が解決しようとする課題】上述のように、答案用紙の採点を手作業で行なう場合には、相当の手間がかかり採点効率が悪いばかりか、誤った採点を行なってしまう恐れもある。一方、自動採点を行なう場合には、予め解答用紙の解答欄に塗り潰しマーク等の決められた方法で解答させるマークシート方式が多く採用されているが、解答方法が極めて単純なものに規制されてしまうばかりか、その採点装置も専用のもので、短時間に大量の解答用紙を読み込んで採点する高速処理の装置であり、大容量のメモリも必要とするために非常に高価なものとなっている。さらに、装置が大きくその使用方法も特殊なため、個々の学校や学習教室などでは使用することができなかった。」

段落【0005】「その上、マークシートを読むこと以外はできないため、専用機として購入する必要があり、ダウンサイジング(分散化)への障害となっている。また、答案用紙自体に採点がなされないため、採点した答案用紙を受験者に返却して学習に役立てることができないし、受験者も個々の問題に対する解答の正否を確認できないという問題もあった。」

段落【0006】「そこで、解答用紙がマークシートに制限されず、任意の答案用紙に直接採点でき、しかも教師等がパーソナルで手軽に使用できる自動採点・集計システムが開発された。このシステムでは、採点台上の所定の位置に採点する答案用紙をセットして、解答欄の解答に対して従来の手作業による採点方法と同様に赤ペン等で○や×を付けていくと、それを自動的に読み取って合計点を算出し、そのデータをデータベースに蓄積して、個人別の成績表を作成したり、設問ごとの正解率や平均点などの統計情報も提供できるものである。」

段落【0007】「しかしながら、このようなシステムでは、採点(○×をつけること)自体は人手によって行なわなければならず、採点した答案用紙への合計点の記入も、ディスプレイに表示される点数を採点者が転記しなければならないなどの手間がかかり、殆ど省力化には役立たない。」

段落【0008】「この発明は上記のような問題を解決するためになされたものであり、学校等にも広く普及している複写機、特に近年急速に普及してきているデジタル複写機のように、画像読取手段(イメージスキャナ)とその読み取った画像情報を記憶する画像記憶手段(画像メモリ)、及びその記憶された画像情報を用紙上に画像形成して出力する画像出力手段(プリンタ部)を備えた画像処理装置を利用して、任意の答案用紙(答案原稿)の採点を誰でも簡単にできるようにし、その採点結果も自動的に出力できるようにすると共に、従来の自動採点システムに比べて安価でしかも汎用性があり、採点時間を大幅に短縮することができるようにすることを目的とする。」

前記段落【0004】の記載によれば、従来から手作業による答案用紙の採点には手間がかかり採点効率が悪いことが問題として意識されており、他方、自動採点を行う上でマークシート方式が存在するも、解答方法が単純なもののみ規制され、そのための採点装置は専用故に、個々の学校や学習教室での使用には不都合であったことが把握できる。
また、前記段落【0005】?【0007】の記載によれば、従来提言されたシステムは、マークシートに特化したもの、あるいは採点台に答案用紙をセットして手作業採点することで、採点データの自動入力を可能とするシステムが存在していたことが把握できる。
さらに、前記段落【0008】の記載によれば、当該引用例1に記載される発明は、デジタル複写機のように、画像読取手段(イメージスキャナ)とその読み取った画像情報を記憶する画像記憶手段(画像メモリ)、及びその記憶された画像情報を用紙上に画像形成して出力する画像出力手段(プリンタ部)を備えた画像処理装置を利用して、任意の答案用紙(答案原稿)の採点を誰でもが簡単にできるようにし、その採点結果も自動的に出力できるようにすることを目的としていることが把握できる。

段落【0021】「【作用】この発明による画像処理装置は、原稿として通常のコピー原稿をセットして画像読取手段Aに読み取らせれば、その読み取った画像情報を画像記憶手段Bに一旦記憶し、その記憶した画像情報を用紙上に画像形成して出力するので、従来のデジタル複写機と同様に必要な枚数のコピーを簡単にとることができる。」

段落【0022】「また、原稿として問題及び解答が記載されている答案用紙をセットして画像読取手段Aに読み取らせれば、その読み取った答案用紙の画像情報からそこに出題された問題に対する解答を解答認識手段Dによって認識し、その認識した解答を採点手段Eにより答案用紙に記載されているか予め入力又は記憶してある該問題に対する正解と比較して採点処理を行なう。」

前記段落【0021】及び【0022】の記載からみて、当該引用例1記載の画像処理装置は、以下のものと把握できる。

「問題及び解答が記載されている答案用紙を原稿として扱い、当該答案用紙の画像情報を画像読取手段で読み取り、この画像情報に基づいて認識した解答を予め入力又は記憶してある当該問題に対する正解と比較して採点処理を採点手段により行う画像処理装置。」
(以下、「引用例1記載発明」という。)

なお、実施例に係る段落記載には、以下のような記載がある。
段落【0034】「【実施例】以下、この発明の実施例を図面の図4以降を参照して具体的に説明する。図4は、この発明の一実施例である画像処理装置の基本構成を示すブロック図である。」

段落【0035】「この画像処理装置1は、デジタル複写機2に、この発明による採点処理等を実現するためのアプリケーション部3を、インタフェース(以下「I/F」という)部4を介して接続して構成される。このI/F部4は、デジタル複写機2とアプリケーション部3とを接続し、相互の命令の通信や画像の入出力に使用される。デジタル複写機2とアプリケーション部3には、それぞれを制御するマイクロコンピュータ(CPUと略称する)20,30を備えている。」

段落【0036】「これをもう少し具体的に示したものが図5であり、アプリケーション部3はOSにより管理されるCPUを含むアプリ制御部31と、各種認識,採点,作画等の処理を行なうアプリベースボード32とをバス接続しており、デジタル複写機2との間でRS232Cによる通信コマンドによりビデオデータの入出力を行なう。」

前記段落【0034】?【0036】の記載からみて、引用例1記載発明の実施例においては、デジタル複写機が元々備える制御手段であるCPU20以外に、アプリケーション部3なる各種認識,採点,作画等の処理を行なうアプリベースボード32を追加し、デジタル複写機の備える画像読取手段により得られたビデオデータを受けて、当該ボード側で前記各処理を行うものと把握できる。

段落【0046】「光学走査系103は、機械的な駆動系によって図面の左右方向に駆動されるので、原稿面の各部の露光によって得られる画像光が順次1ライン毎にCCD106に読み取られる。この実施例では、CCD106としてカラーイメージセンサを使用しているので、画像の受光量のR,G,B成分に応じた3信号によるカラー画像情報を出力する。」

段落【0047】「このCCD106によって読み取られた画像情報(画像データ)は、後述する画像メモリに一旦記憶され、必要に応じて後述する画像処理が施された後出力画像データ(ビデオデータ)に変換され、レーザプリンタ200の書込装置201に送出される。」

前記段落【0046】及び【0047】の記載から画像読取手段である光学走査系103は、画像をR,G,B成分に応じた3信号によるカラー画像情報として出力可能であること、また、ここで読取られた画像情報(画像データ)は、画像メモリに記憶されることが把握できる。

段落【0067】「図9の上側に並んでいるのが、アプリ制御用CPU30によって制御あるいは使用されるアプリケーション部3側の各部であり、ROM23,RAM24,OCR部25,バーコード認識部26,辞書検索部27,辞書部28,不揮発性メモリ29,音声出力装置36,タイマ37,問題データメモリ38,解説データメモリ50,データ記憶部39,解答データメモリ40,画像メモリ41,及び採点処理部42と、コピーI/F43,操作パネルI/F44,外部メモリI/F45,FAXI/F46,ホストI/F47,ICカードI/F48,及び拡張ボードI/F49の各種I/Fとを備えている。」

段落【0068】「アプリ制御用CPU30は、中央処理装置(CPU),ROM,RAM,I/O等からなるマイクロコンピュータであり、ROM23やその他の記憶装置に記憶されたプログラムに従ってアプリケーション部3全体を統括的に制御する。例えば、操作パネルI/F44を介して操作パネル10の制御を行なったり、コピーI/F43を介してデジタル複写機2に対するコマンドの発行や応答データの管理を行なったり、タイマ設定やメモリ管理を行なったりする。」

段落【0069】「ROM23は、アプリ制御用CPU30を動作させるためのアプリケーション・プログラムやフォントデータ,コンスタントデータなどを格納する固定メモリである。RAM24は、入力データのバッファメモリ,アプリ制御用CPU30の作業用メモリ,採点結果データ等の一時記憶メモリなどに使用されるメモリである。」

段落【0070】「OCR部25は、スキャナ部100で読み取った画像データから、答案用紙に印刷されている問題の文字や解答欄などの罫線、受験者番号(受験者No.)や解答の手書きされた文字,記号又はマークを認識するが、その認識した文字等を辞書検索部27によって辞書部28内の単語等を検索して照合する。辞書部28は単語等を記憶しており、新規の語句の登録/変更も可能である。」

前記段落【0067】?【0070】の記載からは、アプリケーション部3のアプリ制御CPUが、アプリケーション部全体を統括的に制御すると共に、デジタル複写機23に対してコマンドを発して、応答データの管理を行っていること、
OCR部25は、デジタル複写機のスキャナ部100で読み取った画像データから、答案用紙に印刷されている問題の文字や解答欄などの罫線、受験者番号(受験者No.)や解答の手書きされた文字,記号又はマークを認識する機能を備えていることが把握できる。

段落【0074】「データ記憶部39は、問題データや正解データと配点データ,採点パターン(○,×,△等),及びそれらの管理データなどを入力するか予め記憶して保持するRAM又は不揮発性メモリである。解答データメモリ40は、スキャナ部100で読み取られた画像データのうちの解答データをその管理データと共に記憶するRAM又は不揮発性メモリである。」

前記段落【0074】の記載からは、当該アプリケーション部3には、問題データや正解データと配点データ,採点パターン(○,×,△等),及びそれらの管理データなどを入力するか予め記憶して保持するデータ記憶部39、及びスキャナ部100で読み取られた画像データのうちの解答データをその管理データと共に記憶する解答データメモリ40を備えていることが把握できる。

段落【0109】「図19は、図12における解答データ抽出処理のサブルーチンのさらに他の例を示すフローチャートである。まず、画像メモリ57上の今読み取った画像データの中から予め決められた位置に描画されている問題のID情報(問題,解答にそれぞれ対応する色情報が含まれているものとする)を読み込み、そのID情報の内容をOCR部25又はバーコード認識部26によって認識する。」

段落【0110】「そして、画像メモリ57からは解答に対応する色の画像データ(解答データ)だけを抽出した後、その解答エリアの位置や大きさを求める解答エリア算出処理を行なう。例えば、図20の(a)に示すように画像メモリ57上の今読み取った画像データを構成する問題データ及び解答データがそれぞれ黒データ,赤データであれば、黒と赤の識別処理によって画像メモリ57からは同図の(b)に示すように解答データだけを抽出することができる。」

前記段落【0109】、【0110】の記載からは、答案用紙に存在する問題或いは解答に色情報があることを前提として、それにより抽出する情報を識別して入手できることが記載されている。

(3-1-2)引用例2:特公平5-74825号公報
1頁2欄8?15行「〔産業上の利用分野〕
この発明はマイクロコンピユータを使用した答案用紙の採点装置に係り、特に採点者の評価によつて採点を行うと供に答案用紙毎の採点結果を各答案用紙に対しプリントすると共に所定の記憶媒体に記憶保持してこれら接点データをコンピユータ処理することができる答案用紙の採点装置に関する。」

1頁2欄16行?2頁3欄14行「〔従来の技術〕
従来、各種試験問題の解答並びに採点方式として、大量の受験者を対象とする場合に採点の公正を期するため、コンピユータ処理方式が採用されている。
この種のコンピユータ処理による採点方式としては、所定のマークシートの解答欄にマークを記入し、このマークシートを光学マーク読取り装置(Optical Mark Reader)で読取つて採点する方式が知られている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、前述した従来の採点方式では、解答手段に制約があるため、受験者の能力判断を多角的に行うことができず、例えば問題に対する解答を導びき出す思考過程は全く判断できない難点がある。
従つて、従来よりこの種の思考過程を重視する採点方式にあつては、採点者が手作業により各答案用紙を採点した後改めて採点結果を集計し処理する手作業が必要であり、このため多くの手作業と処理時間を要し極めて非能率的であつた。
そこで、本発明においては、解答様式は多機能に保持し得ると共に各解答の配点も任意に設定できる答案用紙を使用し、この答案用紙の採点作業と採点結果の集計処理とを同時に行うことができるコンピユータ処理方式による採点装置を提供することを目的とするものである。」

4頁7欄41?8欄2行「さらに、データの入力手段として、採点者が手書きした各解答欄の評価「○」、「×」、「レ」を光学的に読み込んだり、受験者の各解答欄に記入された解答を光学的に読み込んでそれぞれ採点の演算処理を行うよう構成することができることは勿論である。」

前記1頁2欄16行?2頁3欄14行の〔従来の技術〕の記載によれば、コンピュータ処理による採点方式において、マークシートを光学マーク読取り装置(Optical Mark Reader)で読取って採点する方式が知られているものの、回答手段に制約があるために、受験者の能力判断を多角的に行うことができず、例えば問題に対する解答を導びき出す思考過程は全く判断できない難点があること、他方、思考過程を重視する採点方式にあっては、採点者が手作業により各答案用紙を採点した後改めて採点結果を集計し処理する手作業が必要であり、このため多くの手作業と処理時間を要し極めて非能率的であったことが、従来から認識されており、それ故、前記1頁2欄8?15行に記載のように、当該引用例2記載の発明では、マイクロコンピュータを使用した答案用紙の採点装置であって、特に採点者の評価によって採点を行うと供に答案用紙毎の採点結果を各答案用紙に対しプリントすると共に所定の記憶媒体に記憶保持してこれら接点データをコンピュータ処理することができる答案用紙の採点装置を提供することが目的とされている。
そして、この答案用紙の採点装置においては、前記4頁7欄41?8欄2行記載のように、効率的なデータ入力を行うべく、データの入力手段に、採点者が手書きした各解答欄の評価「○」、「×」、「レ」を光学的に読み込んだり、受験者の各解答欄に記入された解答を光学的に読み込んでそれぞれ採点の演算処理を行うよう構成することも採用可能との示唆がある。

(3-1-3)引用例3:特開平3-163486号公報
1頁右欄2?5行「A.産業上の利用分野
本発明はデータ処理装置に係り、特に試験の解答用紙採点に適したデータ処理装置に関するものである。」

1頁右欄6?13行「B.発明の概要
本発明は、試験の解答書を認識してコードデータに変換するデータ処理装置において、認識部によって認識されたデータと正解データとを照合して採点する採点部と、採点結果より個人別指標算出処理を行う指標情報処理部とを設けることによって、試験の採点を容易にし、且つ出題問題に巾をもたせることを可能としたものである。」

2頁左下欄15行?右下欄4行「第1図は本発明の一実施例を示す構成図である。
同図において1は入力部でイメージスキャナやCCDカメラなどが用いられ、解答用紙である被写体を白または黒の点としての画素単位、すなわち2値化データに変換する。」

2頁右下欄4行?3頁左上欄8行「2はベクトル変換部で、2値化されたデータの白と黒の境界を追跡して輪郭画素系列を作り、その画素列を直線近似して輪郭ベクトルを生成する。3は要素分解部で、輪郭ベクトル群を文字要素と図形要素に分離する。4は文字認識部、5は図形認識部で、これら各認識部のうち文字認識部4は文字要素を認識し、図形認識部5はシンボルが存在する場合シンボルを分離認識し、その他は線分処理を行って整形する。各認識部が行う認識方法としては、例えば大分類処理によるパターン認識方式や、詳細分類処理によるパターン認識方法がとられる。6は予め正解のデータが記憶される第1の記憶部、7は採点部で、認識データと正解データとを照合して採点する。8は第二の記憶部で個人別の過去のデータ、すなわち過去の平均値や偏差値などが記憶される。9は指標情報処理部で、採点結果より個人別の偏差値などが演算され、個人別指標として記憶部8に蓄えると共に出力部10に出力する。11は編集制御部で、1?3と7、8の処理制御を行う。」

(3-2)引用例1記載発明と本願補正発明の対比
本願補正発明においては、答案用紙を撮像して、撮像データを取得しており、当該答案用紙を読み取る対象である原稿として扱っているといえる。
また、本願補正発明においては、この撮像データから採点記号データを抽出して、この採点記号データに基づいて、解答が正解か否かが判別されており、その後、予め設定された点数データに基づいた採点の演算処理が行われる自動採点システムである。
他方、引用例1記載発明は、答案用紙を画像読み取り手段により画像情報として読み取り、当該画像情報から解答を認識した後、当該解答を予め入力又は記憶してある正解と比較して正解であるか否かが判別され、採点処理が行われる、いわば全自動の採点システムである。
すると、本願補正発明と引用例1記載発明の両者は、少なくとも自動採点システムである点で共通している。
ここで、本願補正発明の答案用紙を撮像して所得された「撮像データ」と、引用発明1記載発明の答案用紙を読み取った「画像情報」とは、いずれも答案用紙から取得した「画像データ」であって異ならない。
してみれば、本願補正発明と引用例1記載発明とは、以下の点で一致しているといえる。

<一致点>
「答案用紙を原稿として扱い、当該答案用紙の画像データを読み取り、この画像データに基づいて把握した解答について正解か否かを判別して採点処理を行う自動採点システム。」

他方、本願補正発明と引用例1記載発明とは、画像データの取得手段が異なると共に、前記で対比したように、答案用紙に記載された解答が正解か否かを判別する手法及び使用する手段が異なる故に、以下の各点で相違している。

<相違点1>
答案用紙を原稿として画像データを取得するに際して、
本願補正発明においては、「答案用紙を撮像して撮像データを出力する撮像手段」を用いていることが特定されているのに対して、
引用例1記載発明においては、「画像読み取り手段」を用いており、前記特定を有しない点。

<相違点2>
答案用紙を原稿として画像データを取得するに際して、
本願補正発明においては、「予め印刷された複数の解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に記入された解答及びそれぞれの解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に、解答欄(31 ?3n/51 ?5n)及び解答と異なる色で採点記号(7a・7b)が記入された答案用紙(1)を撮像」と特定されているように、「予め印刷された複数の解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に記入された解答及びそれぞれの解答欄(31 ?3n/51 ?5n)」と「採点記号(7a・7b)」とが「異なる色で」あることが前提とされ、
「撮像データから解答欄(31 ?3n/51 ?5n)及び解答と採点記号(7a・7b)の色の相異に基づいて採点記号データを抽出する抽出手段(31)」を備えることが特定されているのに対して、
引用例1記載発明においては、解答データを扱うものであって採点記号を扱うものではなく、前記特定を有しない点。

<相違点3>
本願補正発明においては、「採点記号データ、答案用紙(1)における解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データ、各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された各解答の点数データ及び採点データを夫々記憶する記憶手段(25)」を備えるとの特定がなされているのに対して、
引用例1記載発明においては、採点を行う以上、各解答の点数データ及び採点データを記憶する手段を備えることは想定できても、画像データに採点記号が存在するものではないから、採点記号データを記憶する手段を備えてはおらず、また、答案における回答欄の位置データを記憶するか定かでなく、前記特定を備えるとはいえない点。

<相違点4>
本願補正発明においては、「各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の位置データに基づいて答案用紙(1)の各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)を特定し、特定された各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)の採点記号データに基づいて採点記号(7a・7b)を判別する判別手段(31)」を備えるとの特定がなされているのに対して、
引用例1記載発明においては、解答データを扱うものであって採点記号を扱うものではなく、前記特定を有しない点。

<相違点5>
本願補正発明においては、「判別された各採点記号(7a・7b)及びそれぞれの採点記号(7a・7b)が記入された各解答欄(31 ?3n/51 ?5n)に対応して予め設定された点数データに基づいて採点データを演算処理して記憶手段(25)に記憶させる制御手段(21)」を備えるとの特定がなされているのに対して、
引用例1記載発明においては、採点を行う以上、各解答の点数データに基づいて採点データを演算処理して、その結果を何らかの記憶手段に記憶させる制御を行う手段を想定することは想定できるとしても、採点記号を扱うものではなく、前記特定を有するとはいえない点。

(3-3)判断
(3-3-1)相違点1について
画像データの所得を行うに際して、イメージスキャナやCCDカメラを用いて2値化したデータとしての画像入力は、コンピュータを用いたデータ処理技術において技術常識に属する。また、前記引用例3に記載があるように、答案用紙の記載された解答を画像データとして取得する際においても、従来から適宜に採用されていることといえる。
してみるに、「答案用紙を撮像して撮像データを出力する撮像手段」を用いることは、格別なことではなく、当業者であれば必要に応じて適宜に採用し得た程度のことである。

(3-3-2)相違点2について
答案用紙を採点するに際して、解答欄及び解答とは異なる色、一般常識的には「赤色」を用いて、正解か否かの「○」、「×」あるいは部分的な加点を意味する「△」等の記号を答案用紙の解答欄に付したり、アドバイスを記入することは、人が採点を行う場合、ごく常識的なことである。
他方、試験結果を管理・利用する目的でコンピュータを利用したい場合、人手による採点が行われた答案用紙からコンピュータ用記録装置に採点データの入力を行う必要があり、このデータ入力をなるべく簡易で迅速に行い得る手法が求められていることは、引用例1或いは2の記載をあげるまでもなく、よく認識されていることである。
そして、前記引用例2における前記4頁7欄41?8欄2行「さらに、データの入力手段として、採点者が手書きした各解答欄の評価「○」、「×」、「レ」を光学的に読み込んだり、受験者の各解答欄に記入された解答を光学的に読み込んでそれぞれ採点の演算処理を行うよう構成することができることは勿論である。」の記載に明らかなように、採点者が手書きした回答欄の評価「○」、「×」、「レ」を光学的に読み込む手法、あるいは受験者の各解答欄に記入された解答を光学的に読み込む手法は、当業者であれば直ちに想起し得る手法といえる。
してみるに、前記相違点2に係る本願補正発明の特定は、採点記号が、答案用紙に予め印刷された解答欄及び解答とは異なる色である事項を前提とするも、既に、答案用紙が人手により採点が行われていることを前提とすれば、当該事項は常識的なものであり、それ故に、色の違いに基づいて、取得し得るデータを識別可能となし得ることは技術常識に属する。
この点、引用例1記載発明の実施例に係る前記段落【0046】、【0047】の記載によれば、引用例1記載発明における画像データ取得手段は、答案用紙のデータを色で識別し得るものであって、前記段落【0109】、【0110】の記載にあるように、こと、採点データを対象とするのではないものの、問題或いは解答を色データにより識別する処理を行っていることに鑑みれば、採点データを色により識別した処理を想起することは、当業者であれば、容易に想到可能なことといわざるを得ない。

(3-3-3)相違点3について
前記「(3-3-2)相違点2について」で検討したように、答案用紙に記入された採点記号をその他の情報と色の違いをもって識別することは、当業者にとり容易想到である。
そして、後に解答が正解か否かを判別するためには、識別された情報を記憶しておく必要があることは自明なことである。
よって、採点記号データを記憶させる記憶手段を備えるようになすことは、当業者が適宜になし得た事項に属する。
そして、記憶を行わせるに際して、当該対象とする採点記号が、いずれの問題に対するものであるかは当然に区別可能となすべきであって、これを解答欄の位置により区別するのであれば、解答欄の位置データを要することは自明なことである。
また、採点対象の解答に与えるべき点数及び答案用紙に記入された解答すべてに与えられるべき採点データを記憶しておく必要があることも自明な事項に属する。
してみれば、相違点3に係る「記憶手段」を備えることは、採点を行う上で、当然に必要とされる手段を備えることを特定したに過ぎず、格別なこととはいえない。

(3-3-4)相違点4について
前記「(3-3-3)相違点3について」で検討したように、答案用紙に記入された採点記号を対象となる解答欄の位置情報と対応させて記憶させることは、採点上、必要な手段を与えたに過ぎない。
そして、対象となる解答欄をもって、出題された問題と対応させたのみでは、解答が正解か否かの特定はされていないわけで、当然に、予め設定された正解と対比した判別手段を要することは、自明である。
したがって、当該相違点4に係る判別手段を備えることは、当業者であれば当然に行うことであって、これも格別なこととはいえない。

(3-3-5)相違点5について
当該相違点5に係る「制御手段」は、採点データを演算処理するために備えられたものであるが、答案用紙に係る解答を採点する以上は、解答に与えられるべく既に設定されている点数に基づいた演算を要することは自明なことであり、そのための演算手段を備えることは、技術常識に属する。
そして、引用例1記載発明においても、前記【特許請求の範囲】に「該解答認識手段によって認識した解答を、前記答案用紙に記載されているか予め入力又は記憶されている前記問題に対する正解と比較して採点処理を行なう採点手段」を備えることが特定されているように、採点を行う演算を行う手段は、当然に備えられている。
また、前記相違点2?4で検討したように、採点に際して用いるべき情報を、採点記号データとすることは、当業者にとって容易想到であって、そのために、前記「制御手段」を採点記号データに対応させたものとして構成することは、設計事項に属することである。

(3-3-6)まとめ
以上、各相違点1?5について概ね個別に検討したが、これらの相違点1?5に係る構成を組み合わせたとしても、結局は、答案用紙に係る解答を採点する上で、人手による採点処理を前提とした採点システムを構築するか、コンピュータ処理によるいわば全自動採点を前提とした採点システムを構築するかは、当業者が用途要請に応じて、適宜に選定するものである。
してみれば、本件補正発明が、各相違点1?5に係る構成を組み合わせたものであっても、当業者であればこれらを組み合わせることは容易に想到し得ることであって、引用例1記載発明及び従来周知の手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるを得ない。
また、こと、引用例1の記載が全自動採点システムを意図したものであって、人手による採点を排除しているものとして記載されていたとしても、この文献をみた当業者は、人手による採点を前提とした場合に、どの程度の部分を流用できるかを当然に想起し得るのであって、ことさらに、阻害要因があるものとはいえない。

(3-4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年12月20日付けで補正された特許請求の範囲請求項1に記載されたとおりのものと認める(上記第2(1)における「・補正前請求項1乃至8の記載」の請求項1記載参照)。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された文献及びその記載事項は、前記「第2(3)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明における「記憶手段」に関して、「点数データ及び採点データを夫々記憶する」から、「点数データを夫々記憶する」として、「採点データ」に係る記載を削除した点が実質的な違いであって、同「抽出手段」に関して「採点記号(7a・7b)」の附番を外して「採点記号のみ」とするもの、或いは「判別手段」に関して、「・・・特定し、」を「・・・特定すると共に」とするものは、特段に、補正前後の発明内容に変更を加えるものではない。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2(3)」に記載したとおり、引用例1記載発明及び従来周知の手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1記載発明及び従来周知の手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

また、本願発明の効果は、引用例1記載発明及び従来周知の手法から予測しうる範囲内のものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1記載発明及び従来周知の手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-23 
結審通知日 2008-06-24 
審決日 2008-07-07 
出願番号 特願平8-153044
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09B)
P 1 8・ 575- Z (G09B)
P 1 8・ 121- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大山 栄成松川 直樹  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 七字 ひろみ
江成 克己
発明の名称 答案用紙の自動採点システム  
代理人 伊藤 研一  
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