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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1183568
審判番号 不服2006-1113  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-17 
確定日 2008-08-29 
事件の表示 平成11年特許願第 47265号「液晶駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月14日出願公開、特開2000-250487〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年2月24日の出願であって、平成17年12月13日付け(発送日:同年12月19日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成18年1月17日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同年2月15日付けで明細書を補正対象とする手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「平成18年2月15日付け補正」といい、また「本件補正」ともいう。)が提出されたものである。
なお、平成17年11月25日付け手続補正、は平成17年12月13日付けで補正の却下がされている。

第2 平成18年2月15日付け補正についての補正の却下の決定
1 補正の却下の決定の結論
平成18年2月15日付け補正を却下する。

2 補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を次のように補正する内容を含むものである。

ア 本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 液晶表示パネルを構成する液晶画素を駆動する画像信号を、第1及び第2の経路に設けられたサンプリングコンデンサに所定の周期で交互に蓄積、出力する2系統のサンプルホールド回路と、前記第1及び第2の経路に設けられたサンプリングコンデンサから出力される信号レベルを所定の増幅率で増幅し、前記液晶画素に接続された信号ラインに交互に出力する2系統のアンプ回路と、を有する出力回路部を前記信号ラインごとに備えた液晶駆動装置において、
前記画像信号は、前記液晶表示パネルの隣接する走査ライン毎に対応して極性が反転されるとともに、フィールド毎に極性が反転され、前記2系統のアンプ回路には一定の電源電圧が印加され、
前記出力回路部は、前記液晶表示パネルに一画面分の前記画像信号を出力する偶数フィールド及び奇数フィールドのいずれにおいても、同一の走査ラインに対して同一経路側の前記アンプ回路を介して、前記信号ラインに前記画像信号を出力することを特徴とする液晶駆動装置。
【請求項2】 前記出力回路部は、前記2系統のアンプ回路を所定の周期で切り換え制御するスイッチ回路を有し、前記スイッチ回路を切り換え制御する制御信号は、前記偶数フィールド及び奇数フィールド相互において、同一周期及び同一波形を有していることを特徴とする請求項1記載の液晶駆動装置。
【請求項3】 液晶表示パネルを構成する液晶画素を駆動する画像信号を、第1及び第2の経路に設けられたサンプリングコンデンサに所定の周期で交互に蓄積、出力する2系統のサンプルホールド回路と、前記第1及び第2の経路に設けられたサンプリングコンデンサの各々から出力される信号レベルを所定の増幅率で増幅し、前記液晶画素に接続された信号ラインに交互に出力する2系統のアンプ回路と、前記2系統のサンプルホールド回路及びアンプ回路への前記画像信号の入力、出力を所定の周期で切り換え制御するスイッチ回路と、を有する出力回路部を前記信号ラインごとに備えた液晶駆動装置において、 前記画像信号は、前記液晶表示パネルの隣接する走査ライン毎に対応して極性が反転されるとともに、フィールド毎に極性が反転され、前記2系統のアンプ回路には一定の電源電圧が印加され、
前記スイッチ回路は、前記液晶表示パネルに一画面分の前記画像信号を出力する偶数フィールド及び奇数フィールドのいずれにおいても、同一の走査ラインに対して同一経路側の前記サンプルホールド回路及びアンプ回路を介して、前記信号ラインに前記画像信号を出力するように切り換え制御されることを特徴とする液晶駆動装置。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 液晶表示パネルを構成する液晶画素を駆動する画像信号を、第1及び第2の経路に設けられたサンプリングコンデンサに所定の周期で交互に蓄積、出力する2系統のサンプルホールド回路と、前記第1及び第2の経路に設けられたサンプリングコンデンサから出力される信号レベルを所定の増幅率で増幅し、前記液晶画素に接続された信号ラインに交互に出力する2系統のアンプ回路と、を有する出力回路部を前記信号ラインごとに備えた液晶駆動装置において、
前記画像信号は、前記液晶表示パネルの隣接する走査ライン毎に対応して極性が反転されるとともに、フィールド毎に極性が反転され、前記2系統のアンプ回路には一定の電源電圧が印加され、
前記出力回路部は、前記走査ライン毎に対応して、前記画像信号の蓄積、出力および前記信号ラインへの出力を前記第1及び第2の経路のサンプルホールド回路および前記2系統のアンプ回路の一方及び他方に交互に切り換え制御するスイッチ回路を有し、該スイッチ回路は、前記液晶表示パネルに一画面分の前記画像信号を出力する偶数フィールド及び奇数フィールドのいずれにおいても、同一の走査ラインに対して同一経路側の前記サンプルホールド回路から前記アンプ回路を介して、前記信号ラインに前記画像信号を出力するように制御されることを特徴とする液晶駆動装置。
【請求項2】 前記出力回路部は、前記スイッチ回路を切り換え制御する制御信号は、前記偶数フィールド及び奇数フィールド相互において、同一周期及び同一波形を有していることを特徴とする請求項1記載の液晶駆動装置。
【請求項3】 液晶表示パネルを構成する液晶画素を駆動する画像信号を、第1及び第2の経路に設けられたサンプリングコンデンサに所定の周期で交互に蓄積、出力する2系統のサンプルホールド回路と、前記第1及び第2の経路に設けられたサンプリングコンデンサの各々から出力される信号レベルを所定の増幅率で増幅し、前記液晶画素に接続された信号ラインに交互に出力する2系統のアンプ回路と、前記2系統のサンプルホールド回路及びアンプ回路への前記画像信号の入力、出力を所定の周期で切り換え制御するスイッチ回路と、を有する出力回路部を前記信号ラインごとに備えた液晶駆動装置において、
前記画像信号は、前記液晶表示パネルの隣接する走査ライン毎に対応して極性が反転されるとともに、フィールド毎に極性が反転され、前記2系統のアンプ回路には一定の電源電圧が印加され、
前記スイッチ回路は、前記走査ライン毎に対応して、前記画像信号の蓄積、出力および前記信号ラインへの出力を前記第1及び第2の経路のサンプルホールド回路および前記2系統のアンプ回路の一方及び他方に交互に切り換え、前記液晶表示パネルに一画面分の前記画像信号を出力する偶数フィールド及び奇数フィールドのいずれにおいても、同一の走査ラインに対して同一経路側の前記サンプルホールド回路及びアンプ回路を介して、前記信号ラインに前記画像信号を出力するように切り換え制御されることを特徴とする液晶駆動装置。」
なお、アンダーラインは補正箇所を示すために請求人が付したものである。

(2)補正の目的について
本件補正の請求項1についての補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「出力回路部」について、「前記走査ライン毎に対応して、前記画像信号の蓄積、出力および前記信号ラインへの出力を前記第1及び第2の経路のサンプルホールド回路および前記2系統のアンプ回路の一方及び他方に交互に切り換え制御するスイッチ回路を有し」という限定を付加し、該スイッチ回路により出力回路部における経路が制御されるものに限定するものであって、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(3)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-75543号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0008】・・・これに対し、本願の譲受人であるNEC Corporation 1990年 発行のプリリミナリ・データ・シート“MOS INTEGRATED CIRCUIT UPD16400”記載の液晶表示パネル駆動用半導体装置においては、対向電極全部をパネル基準電位点に共通に接続する構成が採られており、駆動回路はそれだけ単純化され消費電力に軽減される。しかし、上記対向電極の電位をパネル基準電位点に固定し画素電極への印加電圧のみを正負両極性にわたり制御する構成となっているので、液晶表示パネル駆動用半導体装置の上記サンプル/ホールド回路の出力段トランジスタの出力電圧の範囲を広くする必要がある。この点につき次に詳述する。
【0009】上述のソース駆動回路に含まれる複数(ソース駆動線と同数)のサンプル/ホールド回路の各各は、1つのフィールドにおける各水平走査ラインの画像信号電圧サンプル値の抽出および保持と保持電圧サンプル値の出力とを交互に行う第1の回路部分と第2の回路部分とを含みこれらつの回路部分は画像信号およびこの画像信号の水平同期信号と同期したLCDセル印加電圧極性表示パルス(極性表示パルス)の供給を共通に受ける。第1の回路部分は上記水平シフトパルスと極性表示パルスとの論理積出力を生ずるAND回路と、この論理積出力に応答して画像信号電圧をサンプリングする第1のサンプリングスイッチと、このスイッチの出力であるサンプル値を保持する第1のコンデンサと、このコンデンサの出力を増幅する第1のバッファ増幅器と、この増幅器の出力を対応の前記ソース駆動線に選択的に導く第1の出力スイッチとを備える。同様に、第2の回路部分は上記AND回路、第1のサンプリングスイッチ、および出力スイッチとそれぞれ相補的に動作するNAND回路、第2のサンプリングスイッチ、および第2の出力スイッチを備え、第2のサンプリングスイッチの出力を第2のコンデンサに保持したうえ第2のバッファ増幅器および第2の出力スイッチを経て上記ソース駆動線に選択的に導くように構成される。一つのフィールドの期間においてはたとえば奇数番目の水平走査ラインごとに上記第1のサンプリングスイッチが閉じ画像信号電圧サンプル値を第1のコンデンサに保持する。この期間においては第1の出力スイッチは開いた状態にあり第1の回路部分からソース駆動線への駆動電圧出力は生じない。これと対照的に、第2の回路部分の上記第2の出力スイッチはこの期間には閉じているので1ライン前の期間に第2のコンデンサに保持されていた電圧サンプル値が第2のバッファ増幅器および第2のスイッチを経て対応ソース駆動線に出力される。」

イ 「【0010】上述の画像信号の振幅は上記液晶セルの劣化防止のために1ラインごとに極性反転され、しかもその1ラインごとの極性反転の有無は1フィールドごとに逆転されている。そうすることによって、たとえば1つのフィールド期間に正の極性の画像信号の印加を受けたある1つのラインに属する液晶セルは次のフィールドの期間には必らず負極性の画像信号の印加を受けるように構成されている。」

ウ 「【0011】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のこの種の液晶表示パネル駆動用半導体装置においては、画像信号の上記1ラインごとの極性反転の有無を1フィールドまたは1フレームごとに逆転することはなされているものの、その画像信号の水平同期信号と同期して抽出される水平走査1ライン長の上記極性表示信号については画像信号のそれを対応する極性反転有無の逆転はなされていない。すなわち画像信号の1ライン分の極性反転の有無と極性表示信号の表示する極性反転の有無とが一致しないことがあり得る。したがって、ある水平走査ラインのある画像電極に対応する上記サンプル/ホールド回路の上記第1の回路部分は、一つのフィールド(またはフレーム)期間中に極性反転のない画像信号の供給を受けて上述の正のサンプル値の保持およびバッファ増幅を行うだけでなく、次のフィールド(またはフレーム)期間中に極性反転のある画像信号の供給を受けてその画像信号の負のサンプル値の保持およびバッファ増幅を行う必要がある。上記第2の回路部分についても全く同様の必要がある。すなわち、上記サンプル値保持用のコンデンサは正極性/負極性両方のサンプル値を保持し、それに伴ってバッファ増幅器の扱う電圧値の範囲が増大するので、バッファ増幅器のトランジスタ(FET)の耐圧はそれだけ高くなければならない。」

引用例の上記摘記事項アないしウの一連の記載は、引用例における従来技術及びその技術課題を説明するためになされたものであり、上記摘記事項アのサンプル/ホールド回路の回路構造を用いて上記摘記事項イの制御を行うという従来技術を前提に、上記摘記事項ウの課題についての記載を読むと、上記摘記事項アの回路構造を有するサンプル/ホールド回路に供給される「画像信号」及び「極性表示パルス」は、上記摘記事項ウの「画像信号」及び「極性表示信号」と同じ信号であり、「画像信号」は、1フィールドまたは1フレームごとに極性反転の有無を逆転することにより、1つのフィールド期間に正の極性の画像信号の印加を受けた液晶セルは、次のフィールド期間では負極性の画像信号の印加を受けるようにし、「極性表示信号」については、極性反転有無の逆転がなされないようにしたものを読み取ることができる。
そうすると、上記摘記事項アないしウから、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「画像信号電圧をサンプリングする第1のサンプリングスイッチと、このスイッチの出力であるサンプル値を保持する第1のコンデンサと、このコンデンサの出力を増幅する第1のバッファ増幅器と、この増幅器の出力を対応のソース駆動線に選択的に導く第1の出力スイッチとを備える第1の回路部分と、第2のサンプリングスイッチ、および第2の出力スイッチを備え、第2のサンプリングスイッチの出力を第2のコンデンサに保持したうえ第2のバッファ増幅器および第2の出力スイッチを経て上記ソース駆動線に選択的に導くように構成される第2の回路部分とを含むサンプル/ホールド回路を、ソース駆動線と同数備えた液晶表示パネル駆動用半導体装置において、
第1の回路部分と第2の回路部分は、1つのフィールドにおける各水平走査ラインの画像信号電圧サンプル値の抽出および保持と保持電圧サンプル値の出力とを交互に行うものであり、
前記画像信号の振幅は、1ラインごとに極性反転され、1ラインごとの極性反転の有無は1フィールドごとに逆転され、
前記サンプル/ホールド回路の第1の回路部分の第1のサンプルスイッチは、水平シフトパルスと極性表示パルスとの論理積出力を生じるAND回路の論理積出力に応答して画像信号電圧をサンプリングするものであり、第2の回路部分は、上記AND回路、第1のサンプルスイッチ、および出力スイッチとそれぞれ相補的に動作するNAND回路及び第2のサンプルスイッチを備えるものであり、
前記サンプル/ホールド回路に供給される画像信号および極性表示信号について、画像信号の振幅は、1ラインごとに極性反転され、1ラインごとの極性反転の有無は1フィールドごとに逆転されていることにより、1つのフィールド期間に正の極性の画像信号の印加を受けたある1つのラインに属する液晶セルは、次のフィールド期間には必ず負極性の画像信号の印加を受けるように構成され、極性表示信号については、極性反転有無の逆転がなされないようにした液晶表示パネル駆動用半導体装置。」

(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「画像信号」は、液晶表示パネル駆動用半導体装置に入力されるものであるから、本件補正発明の「液晶表示パネルを構成する液晶画素を駆動する画像信号」に相当し、引用発明の「液晶表示パネル駆動用半導体装置」は、本件補正発明の「液晶駆動装置」に相当する。
b 引用発明の「第1の回路部分」及び「第2の回路部分」により形成される2つの信号経路は、本件補正発明の「第1及び第2の経路」に相当する。
c 引用発明の「第1のコンデンサ」及び「第2のコンデンサ」は、本件補正発明の「第1及び第2の経路に設けられたサンプリングコンデンサ」に相当し、引用発明の「第1のサンプリングスイッチ」及び「第1のコンデンサ」、並びに、「第2のサンプリングスイッチ」及び「第2のコンデンサ」により構成される2系統の回路は、本件補正発明の「2系統のサンプルホールド回路」に相当する。
d 引用発明の「第1のバッファ増幅器」及び「第2のバッファ増幅器」からなる回路は、本件補正発明の「2系統のアンプ回路」に相当し、引用発明において、第1のバッファ回路の出力と第2のバッファ回路の出力とが、第1の出力スイッチと第2の出力スイッチにより選択的にソース駆動線に導かれることは、本件補正発明の2系統のアンプ回路が「液晶画素に接続された信号ラインに交互に出力する」ことに相当する。
e 引用発明において、「サンプル/ホールド回路を、ソース駆動線と同数備えた」ことは、本件補正発明において、「出力回路部を前記信号ラインごとに備えた」ことに相当する。
f 引用発明において、「前記画像信号の振幅は、1ラインごとに極性反転され、1ラインごとの極性反転の有無は1フィールドごとに逆転され」ることは、本件補正発明において、「前記画像信号は、前記液晶表示パネルの隣接する走査ライン毎に対応して極性が反転されるとともに、フィールド毎に極性が反転され」ることに相当する。
g 引用発明の「第1のサンプルスイッチ」及び「第1の出力スイッチ」並びに「第2のサンプルスイッチ」及び「第2の出力スイッチ」からなる回路は、本件補正発明の「スイッチ回路」に相当する。また、引用発明の各スイッチは、「第1の回路部分と第2の回路部分は、1つのフィールドにおける各水平走査ラインの画像信号電圧サンプル値の抽出および保持と保持電圧サンプル値の出力とを交互に行う」ように制御されるから、本件補正発明のスイッチ回路と同様に、「前記走査ライン毎に対応して、前記画像信号の蓄積、出力および前記信号ラインへの出力を前記第1及び第2の経路のサンプルホールド回路および前記2系統のアンプ回路の一方及び他方に交互に切り換え制御される」ものである。
h 引用発明において、画像信号は、1ラインごとの極性反転の有無を1フィールドごとに逆転するのに対し、「極性表示信号については、極性反転有無の逆転がなされない」ことは、極性表示信号については、各フィールドで極性反転有無の逆転のない同じ信号を入力することを意味し、同じ極性表示信号の入力により動作するAND回路の論理積出力は各フィールドにおいて同じタイミングで出力されることとなり、AND回路からの論理積出力に応答して動作する第1のサンプリングスイッチは、各フィールドにおいて同じタイミングでONとされることとなる。そして、各フィールドにおいて同じタイミングで入力され、極性反転の有無が1フィールドごとに逆転される同一の水平走査ラインの画像信号は、極性表示信号の極性反転有無の逆転がないことにより、常に、同じ側のサンプリングスイッチがONとされているから、同一の回路部分によりサンプリングされ、保持及び増幅がなされることとなる。これは、引用例の上記摘記事項ウの「したがって、ある水平走査ラインのある画像電極に対応する上記サンプル/ホールド回路の上記第1の回路部分は、一つのフィールド(またはフレーム)期間中に極性反転のない画像信号の供給を受けて上述の正のサンプル値の保持およびバッファ増幅を行うだけでなく、次のフィールド(またはフレーム)期間中に極性反転のある画像信号の供給を受けてその画像信号の負のサンプル値の保持およびバッファ増幅を行う必要がある。」との記載とも整合するものである。したがって、引用発明において「極性表示信号については、極性反転有無の逆転がなされない」ことにより、第1及び第2の回路部分の第1及び第2のサンプリングスイッチを動作させることは、本件補正発明において、「該スイッチ回路は、前記液晶表示パネルに一画面分の前記画像信号を出力する偶数フィールド及び奇数フィールドのいずれにおいても、同一の走査ラインに対して同一経路側の前記サンプルホールド回路から前記アンプ回路を介して、前記信号ラインに前記画像信号を出力するように制御される」ことに相当する。

そうすると、上記aないしhの対比関係から、本件補正発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

(一致点)
「液晶表示パネルを構成する液晶画素を駆動する画像信号を、第1及び第2の経路に設けられたサンプリングコンデンサに所定の周期で交互に蓄積、出力する2系統のサンプルホールド回路と、前記第1及び第2の経路に設けられたサンプリングコンデンサから出力される信号レベルを所定の増幅率で増幅し、前記液晶画素に接続された信号ラインに交互に出力する2系統のアンプ回路と、を有する出力回路部を前記信号ラインごとに備えた液晶駆動装置において、
前記画像信号は、前記液晶表示パネルの隣接する走査ライン毎に対応して極性が反転されるとともに、フィールド毎に極性が反転され、
前記出力回路部は、前記走査ライン毎に対応して、前記画像信号の蓄積、出力および前記信号ラインへの出力を前記第1及び第2の経路のサンプルホールド回路および前記2系統のアンプ回路の一方及び他方に交互に切り換え制御するスイッチ回路を有し、該スイッチ回路は、前記液晶表示パネルに一画面分の前記画像信号を出力する偶数フィールド及び奇数フィールドのいずれにおいても、同一の走査ラインに対して同一経路側の前記サンプルホールド回路から前記アンプ回路を介して、前記信号ラインに前記画像信号を出力するように制御されることを特徴とする液晶駆動装置。」

(相違点)
本件補正発明が「前記2系統のアンプ回路には一定の電源電圧が印加され」るのに対し、引用発明の「第1のバッファ増幅器」及び「第2のバッファ増幅器」には、一定の電源電圧が印加されているかどうか不明である点。

(5)当審の判断
上記相違点について検討する。
通常、増幅器は、何らかの基準電圧に基づき入力信号の増幅を行うことが当業者にとって技術常識であるところ、画像信号を増幅する複数の増幅器の基準電圧にばらつきがあれば、各増幅器毎に増幅特性がばらついて各画素に入力される画像信号がばらつくこととなり、画像品質が低下してしまうことが明らかである。したがって、引用発明の「第1のバッファ増幅器」及び「第2のバッファ増幅器」を構成するそれぞれの増幅器についても、増幅特性をそろえるべく、一定の電源電圧を印加して動作させることにより、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
そして、本件補正発明の作用効果も、引用例の記載から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成18年2月15日付け補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成17年2月4日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 2(1)ア」の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載のとおりである。

第4 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 2(3)引用例」に記載したとおりのものである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2 2」で検討した本件補正発明の発明特定事項である「出力回路部」について、「前記走査ライン毎に対応して、前記画像信号の蓄積、出力および前記信号ラインへの出力を前記第1及び第2の経路のサンプルホールド回路および前記2系統のアンプ回路の一方及び他方に交互に切り換え制御するスイッチ回路を有し」という限定を省き、該スイッチ回路により出力回路部における経路が制御されるという限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 2 (5)」に記載したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-13 
結審通知日 2008-06-24 
審決日 2008-07-08 
出願番号 特願平11-47265
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 直明  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 堀部 修平
山川 雅也
発明の名称 液晶駆動装置  

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