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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1183574
審判番号 不服2006-12179  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-14 
確定日 2008-08-29 
事件の表示 平成11年特許願第271873号「光情報記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年3月21日出願公開、特開2000-82237〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明

(1) 本願は、平成7年11月17日に出願した特願平7-322452号の一部を平成11年9月27日に新たな特許出願としたものであって、拒絶理由通知に対し平成17年12月21日付けで手続補正がされたが、平成18年5月10日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年7月7日付けで手続補正がされ、当審からの拒絶理由通知に対し、平成20年5月19日付けで手続補正がされたものである。

(2) 本願請求項1乃至4に係る発明は平成20年5月19日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】透光性基板の一方の主面側が記録する側又は記録した側であり、該透光性基板の他方の主面側が記録光及び再生光の内少なくとも再生光が入射される側であって剥離可能な保護膜を有し該保護膜を剥離して使用する光情報記録媒体において、該保護膜は該保護膜とは別体の架橋したアクリル系共重合体を主成分とするアクリル系粘着剤層を介して貼着することにより剥離可能に設けられ、JISZ0237による180度剥離法による該アクリル系粘着剤層の粘着力が環境試験(70℃,乾燥状態で16時間放置、23℃,乾燥状態で1時間放置、-20℃,乾燥状態で9時間放置及び23℃,乾燥状態で1時間放置を1サイクルとして10サイクル繰り返す)下において1g?10g/25mmである光情報記録媒体。」

2.引用例

(1) 当審で通知した拒絶理由に引用された特開平2-58740号公報(以下、「引用例1」という。)には、「情報記録媒体およびその記録方法」に関して図面とともに、以下の事項が記載されている。
(なお、下線は当審で付加した。以下の各引用例も同様。)
ア.「1。円盤状基板の表面にレーザー光による情報の書き込み、読み取りおよび/または消去が可能な記録層が設けられた情報記録媒体であって、且つ該レーザー光が照射される、該記録層が設けられていない側の基板表面または該記録層の表面に一枚の不透明性フィルムが密着されてなる情報記録媒体。」(特許請求の範囲)
イ.「第1図において、11は基板、12は記録層そして13は不透明性フィルムである。この情報記録媒体に情報を記録する際、本発明の記録方法は、不透明性フィルム13を剥離した後、すぐに基板表面にレーザー光を照射して行なわれる。第1図の構造は、基板、記録層そして不透明性フィルムの基本的な構成を示したものにすぎず、基板と記録層の間には、下塗層、トラッキング層等が設けられても良く、記録層上には保護層、反射層等が設けられても良い。」(3頁左下欄3?12行)
ウ.「本発明の不透明性フィルムは上記記録する時だけてなく、例えば再生専用の情報記録媒体(例えばコンパクトディスクのように)の場合であっても、本発明の不透明性フィルムを基板等に密着させておき、再生時にこれを剥離した後再生を行なうことにより、正確に再生することができる。また、同じ考え方によリ、記録前に先に消去に行なう必要がある場合等にも本発明の不透明性フィルムを利用して正確な消去か可能である。従って、本発明は、記録、再生または消去のために初めて情報記録媒体に光を照射する時まで本発明の不透明性フィルムを光が照射される基板等表面に保護のため密着しておくことに有用性があるということができる。さらに、本発明の不透明性フィルムを剥離して記録、再生等を行なった後、再び基板等の表面に密着させて保護フィルムとして利用しても良い。」(4頁右下欄14行?5頁左上欄10行)
エ.「上記不透明性フィルムを、情報記録媒体の基板表面あるいは記録層表面(または記録層上に設けられた保護層等の表面)に密着させる方法は、上記フィルムが粘着性を有する場合は、そのまま上記情報記録媒体の表面に覆って密着させることにより行なわれる。また粘着性を有しない上記フィルムの場合は、粘着剤を介して情報記録媒体の表面に覆って密着させる。粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましい。」(5頁右上欄下4行?左下欄5行)

(2) 同じく、当審で通知した拒絶理由に引用された特開平6-1957号公報(以下、「引用例2」という。)には、「表面保護用粘着テープの製造方法」に関して以下の事項が記載されている。
オ.「【0011】本発明により製造される表面保護用粘着テープの被着体に対する初期粘着力の大きさは、保護する被着体の形状、表面状態、加工の方法、加工条件あるいは粘着テープの切断、貼付等の作業性により異なるが、5?3000g/25mmが好ましい。
【0012】本発明に用いられる粘着剤の組成は、特に制限はなく、市販品の中から適宜選択出来る。具体的な例として、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、エステル系樹脂、ナイロン系樹脂等を主成分とする粘着剤が挙げられる。これらの中で、生産性、価格、汎用性等の点からアクリル系樹脂が好ましい。
【0013】上記アクリル系樹脂とは、アクリル酸アルキルエステルモノマー及びカルボキシル基を有するモノマーを含むモノマー混合物を乳化重合して得られるものである。更に、必要に応じてそれらと共重合可能なビニルモノマー、多官能性モノマー、内部架橋型モノマー等を混合したモノマー混合物を乳化重合して得られるものであることが好ましい。」(2頁右欄?3頁左欄)
カ.「【0026】架橋反応が終了する時間は、加熱温度、架橋剤の種類、添加量等により異なるが、通常1?300時間の範囲である。架橋剤の種類、添加量、加熱時間、加熱温度等を調節することにより、任意の粘着力を持った粘着テープが製造出来る。
【0027】粘着剤が架橋剤と反応することにより、粘着剤層の分子量が高くなるので、被着体に粘着テープを貼付した後の粘着力が経時的に上昇することがない。従って、保護用粘着テープとしての役目が終了して、該粘着テープを被着体表面から剥離する際に、極めて容易に剥離出来る。また、粘着剤層の分子量が大きくなることにより、被着体への粘着剤の転着等も防止することが出来る。」(4頁左欄)
キ.「【0029】(1)粘着力
JIS G-4305に規定する厚さ2.0mmのSUS304板にテープを貼付し、23℃×50%R.Hの雰囲気中に所定の時間放置した後、JIS Z-0237に規定される方法に準じて、180°剥離応力を測定し、25mm巾の値に換算したものを粘着力とする。」(4頁左欄。なお「丸数字の1」は表記の制約があるため(1)に置き換えた。)
ク.「【0044】
【発明の効果】本発明により得られる表面保護用粘着テープは、被着体の表面に貼付された後、その粘着力が経時的に上昇することがなく、しかも粘着剤が該板体表面に転着することがない。そのため、被着体の表面からの剥離が容易であり、かつ、被着体の表面を汚染することがないので、合成樹脂板や金属板等の表面保護用粘着テープとして有用である。」(6頁)

(3) 当審で通知した拒絶理由に引用された特開平6-25630号公報(以下、「引用例3」という。)には、「水性エマルジョン型粘着剤」に関して以下の事項が記載されている。
ケ.「【請求項1】アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル100重量部と、カルボキシル基含有共重合性モノマー1?5重量部と、少なくとも2個の二重結合を有する架橋性モノマー0.1?1重量部を水溶性アゾ系重合開始剤及び乳化剤の存在下で乳化重合して得られる、平均粒子径が100nm以下の内部架橋構造の重合体粒子を含有する水性エマルジョンに対し、少なくとも2個のアジリジン基を有する架橋剤を配合してなる水性エマルジョン型粘着剤。」(特許請求の範囲)
コ.「【0007】本発明において用いる重合性モノマー主成分は、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル(以下、アクリル系モノマーとも言う)である。この場合のアルキル基の炭素数は特に制約されないが、好ましくは2?8である。共重合性モノマーとしては、2重結合を1個含有するカルボキシル基含有化合物が用いられる。このような共重合性モノマーとしては、アクリル酸やメタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。共重合性モノマーの使用割合は、アクリル系モノマー100重量部に対し、1?5重量部、好ましくは2?4重量部の割合である。共重合性モノマーの使用割合がこの範囲より少ないと、本発明の粘着剤をプラスチックフィルムに塗布して被着体に粘着させた後、再剥離する際に、粒子間架橋密度不足により、被着体表面へ粘着剤成分が残り、被着体表面の汚染を生じるようになり、一方、前記範囲より多くなると、粘着力が経時的に変化するようになるので好ましくない。
【0008】架橋性モノマーとしては、二重結合を少なくとも2個含有する化合物が用いられる。このような架橋性モノマーとしては、2価アルコールや3価アルコール等の多価アルコールと、不飽和カルボン酸とのエステル、例えば、トリアクリル酸トリメチロールプロパンや、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸ジプロピレングリコール、ジメタクリル酸ジプロピレングリコール、ジアクリル酸ネオペンチルグリコール、ジアクリル酸1,6-ヘキサジオール等が挙げられる。架橋性モノマーの使用割合は、アクリル系モノマー100重量部に対し、0.1?1重量部、好ましくは0.3?0.7重量部の割合である。架橋性モノマーの使用割合がこの範囲より少ないと、本発明の粘着剤をフィルム材料に塗布して被着体に粘着させた後、再剥離する際に、粒子内架橋密度の不足のために、被着体表面への粘着剤成分が残り、被着体表面の汚染を生じるようになり、一方、前記範囲より多くなると、粒子内架橋密度が過多になるため、フィルム材料への投錨性不足を生じるようになるので好ましくない。」(2頁右欄?3頁左欄)
サ.「【0013】
【発明の効果】本発明の水性エマルジョン型粘着剤は、耐水性、耐湿性及び耐熱性にすぐれ、かつ剥離性にすぐれた粘着膜を形成する。本発明の粘着剤は、紙や不織布、プラスチックフィルム等のシート材料表面に塗布乾燥することにより粘着性シート材料を与える。このような粘着性シート材料においては、そのシート材料表面と粘着層との間の密着性にすぐれ、シート材料がポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムであっても、粘着剤層はそのプラスチックフィルムに強く密着する。本発明の粘着剤を用いて形成した粘着性シート材料は、ステンレス板、アルミニウム板等の金属板や、樹脂板、ガラス板、あるいはそれらの塗装板の表面を一時的に保護するための表面保護シートや表面保護フィルムとして有利に用いられる。即ち、前記板体においては、その運搬や加工あるいは保管する際に、その表面の損傷や汚れを防ぐために、表面保護シートでその板体表面を一時的に被覆保護することが行われているが、本発明による粘着性シート材料は、その板体表面に対する粘着性にすぐれ、しかも、必要時にその粘着性シート材料を板体表面から剥離させる時の剥離性にすぐれ、かつ板体表面に粘着剤成分が残存せず、板体表面を汚染するようなこともない。さらに、板体表面に粘着被覆させた表面保護シートは、その粘着剤の経時による粘着力変化がないために、板体表面から経時により自然に剥離したり、あるいは剥離しづらくなるような問題も生じない。本発明の粘着剤は、水性エマルジョン型で、有機溶剤を用いないことから、安全性にすぐれたもので、その使用に際し、大気汚染や作業環境悪化の問題を生じるようなこともない。」(4頁左欄)
シ.「【0016】[表面保護用粘着剤としての評価]固形分を40重量%に調整した上記水性エマルジョンを、架橋剤として市販品(ケミタイトPZ-33、日本触媒化学工業社製)を添加したのち、ポリエチレンフィルム(厚さ60μm)のコロナ処理面に固形分で厚さ5μmになるように塗布し、60℃で2分間乾燥して、粘着性フィルムを得た。次いで、その粘着性能を以下の基準により評価した。なお、前記架橋添加量は、重合体粒子中のカルボキシル基の50%を封鎖する量である。
接着力:試料(25mm幅)をSUS304ステンレス板に2Kgゴムローラーの8往復にて貼圧着し、23℃(湿度65%)で60分間及び5日間放置後、23℃(湿度65%)にて、180度の方向に、300mm/minの速度で引き剥がした時の剥離強度を測定した。
粘着性:J.Dow法に準処して測定した。
【0017】[被着体表面の汚染状態]粘着剤試料を、アクリル板(5×10cm)に貼圧着し、23℃(湿度65%)で60分間放置後、50℃(湿度95%)の条件下に5日間放置した後、23℃(湿度65%)にて剥離し、以下の基準により評価した。
○:汚染なし
△:汚染若干あり
×:汚染あり
××:粘着剤成分の移行あり
以上の方法で、水性エマルジョン中の重合体粒子径を測定するとともに、その粘着剤としての性能評価を行った。その結果を表1に示す。実験No.1,2は、本発明の実施例であり、表面保護フィルム用エマルジョン型粘着剤として優れた性能を示していることが判る。実験No.3?11は、比較例である。」(4頁右欄)
ス.5頁の表1には、No.1は60分後、5日後とも接着力は40、No.2は60分後、5日後とも接着力は30で、被着体表面の汚染は○と記載されている。(なお、接着力の単位は記載されていない。)

(4) 当審で通知した拒絶理由に引用された特開平6-344488号公報(以下、「引用例4」という。)には、「表面保護粘着フィルム」に関して、以下の事項が記載されている。
セ.「【請求項1】軟質塩化ビニルフィルムの片面に、アクリル系粘着剤エマルションを塗布、乾燥して粘着剤層を形成させた後、該粘着剤層を内側にして、ロール状に券回させて得られる表面保護粘着フィルムにおいて、該アクリル系粘着剤エマルションが、アクリル酸エステル100重量部及びアクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリルのうち何れかである架橋性モノマー0.01?5重量部を含むモノマー混合物より合成されることを特徴とする表面保護粘着フィルム。」(特許請求の範囲)
ソ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は表面保護粘着フィルムに関する。詳しくは本発明は、ステンレス板、アルミ板、その他金属板、樹脂塗装板、樹脂板、化粧板等の各種被着体表面に仮着させるロール状表面保護粘着フィルムに関するものである。」(2頁左欄)
タ.「【0015】本発明に使用されるアクリル系粘着剤エマルションは、架橋性モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー及びそれらと共重合可能なビニルモノマーを乳化重合して得られるものである。
【0016】本発明に使用される架橋性モノマーはアクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリルの何れかでなければならない。該架橋性モノマーの使用量は、通常0.01?5重量部であり、好ましくは、0.05?3重量部、さらに好ましくは、0.1?2重量部である。該架橋性モノマーの使用量が0.01部に満たない場合は、凝集力が向上せず、良好な巻戻し力が得られない。また、5重量部を超える場合には、粘着力が極度に低下して実用的ではない。」(3頁右欄)
チ.「【0026】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。
<巻戻し力>表面保護フィルムを製造後、50℃、7日間、放置した後、23℃の雰囲気下で、300mm/分の速度で巻戻した時の応力を測定し、フィルム幅25mmに換算した。
<粘着力>表面保護フィルムを製造後、50℃、7日間、放置した後、表面保護フィルムを鏡面ステンレス(#800研磨)にラミネーター(圧力1kg/cm2 )で貼り合わせ、23℃、1日放置した後、剥離角180゜、速度300mm/分で引き剥した時の応力を測定し、フィルム巾25mmに換算した。
<表面汚染>表面保護フィルムを製造後、50℃、7日間、放置した後、表面保護フィルムを鏡面ステンレス(#800研磨)にラミネーター(圧力1kg/cm2)で貼り合わせ、60℃、1ヶ月間放置した後、表面保護フィルムを剥離し、鏡面ステンレス表面の汚染を観察した。」(4頁左欄)
ツ.6頁の表1には、実施例1?4の粘着力は90?60g/25mmで汚染性はいずれも○、比較例2、6の粘着力は15 g/25mmで汚染性はいずれも○であることが記載されている。

3.対比

上記ア?エ(特に下線部参照)によれば、引用例1には
「円盤状基板の表面にレーザー光による情報の書き込み、読み取りおよび/または消去が可能な記録層が設けられた情報記録媒体であって、且つ該レーザー光が照射される、該記録層が設けられていない側の基板表面に一枚の不透明性フィルムが密着されてなる情報記録媒体であって、不透明性フィルムはアクリル系粘着剤を介して情報記録媒体の表面に覆って密着させた情報記録媒体」が記載されている。(以下、「引用例発明」という。)

引用例発明の「円盤状基板の表面にレーザー光による情報の書き込み、読み取りおよび/または消去が可能な記録層が設けられた」ことは、本願発明の「透光性基板の一方の主面側が記録する側又は記録した側」であることに相当し、引用例発明の「該レーザー光が照射される、該記録層が設けられていない側の基板の表面」は、本願発明の「該透光性基板の他方の主面側が記録光及び再生光の内少なくとも再生光が入射される側」に相当する。
また、引用例には、不透明性フィルムを剥離した後に記録又は再生を行うことが記載されているから(前記イ、ウ)、引用例発明の「不透明性フィルムを密着させた情報記録媒体」は、本願発明の「剥離可能な保護膜を有し該保護膜を剥離して使用する光情報記録媒体」に相当する。
そして、引用例発明において不透明性フィルムとアクリル粘着剤(層)とは別体であるから、引用例発明の「アクリル系粘着剤を介して情報記録媒体の表面に覆って密着させた」は本願発明の「アクリル系粘着剤層を介して貼着することにより剥離可能に設けられ(た)」に相当する。

本願発明と引用例発明とを比較すると、一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「透光性基板の一方の主面側が記録する側又は記録した側であり、該透光性基板の他方の主面側が記録光及び再生光の内少なくとも再生光が入射される側であって剥離可能な保護膜を有し該保護膜を剥離して使用する光情報記録媒体において、該保護膜は該保護膜とは別体のアクリル系粘着剤層を介して貼着することにより剥離可能に設けられた光情報記録媒体。」

[相違点]
本願発明では、「アクリル系粘着剤層」が「架橋したアクリル系共重合体を主成分とした」ものであり、「JISZ0237による180度剥離法による該アクリル系粘着剤層の粘着力が環境試験(70℃,乾燥状態で16時間放置、23℃,乾燥状態で1時間放置、-20℃,乾燥状態で9時間放置及び23℃,乾燥状態で1時間放置を1サイクルとして10サイクル繰り返す)下において1g?10g/25mmである」のに対し、引用例発明ではアクリル系粘着剤についてそのような特定がされていない点。

4.相違点についての判断

(1)アクリル系粘着剤について
各種の物品の表面保護膜用の粘着剤として、架橋したアクリル系共重合体を主成分としたものが用いられることは引用例2?4に記載されている(前記オ、ケ、コ、セ、ソ参照)ように周知であって、架橋剤の種類、添加量、加熱時間、加熱温度等を調節することにより、任意の粘着力を持った表面保護用の粘着テープが製造できることも引用例2に記載されている。(前記カ)
また、アクリル系粘着剤は、必要時にその粘着性シート材料を板体表面から剥離させる時の剥離性にすぐれ、かつ板体表面に粘着剤成分が残存せず、板体表面を汚染することがないことも引用例2?4に記載されている。(前記ケ、サ、ス参照)
そうすると、引用例発明におけるアクリル系粘着剤として、引用例2?4に記載された、架橋したアクリル系共重合体を主成分としたものを用いることは当業者が容易に想到しうる事項にすぎない。

(2)環境試験の条件について
刊行物3には「50℃(湿度95%)の条件下に5日間放置した後」の被着体表面の汚染状態を評価したことが(前記シ)、引用例4には、「50℃、7日間、放置した後」に粘着力を、貼り合わせ、60℃、1ヶ月間放置した後の表面汚染の有無を評価したことが記載されており(前記チ)、これらの試験は環境試験ということができる。
また、製造業者は製品の品質保証のために、その製品が置かれる環境条件を想定して環境試験を行うことは慣用手段にすぎず、環境試験の条件は、安全率を見込んで、あるいは、加速試験の意味でより過酷な条件を設定することは、当業者が容易に推考しうることである。
一方、本願発明における環境試験の条件について、その条件を設定した理由について何ら記載されておらず、本願発明における「70℃,乾燥状態で16時間放置、23℃,乾燥状態で1時間放置、-20℃,乾燥状態で9時間放置及び23℃,乾燥状態で1時間放置を1サイクルとして10サイクル繰り返す」との試験条件の温度、保持時間、サイクル数に特段の技術的意義があると認めることはできない。

(3) 粘着力の数値範囲について
光情報記録媒体は、製造されてから使用されるまでに様々な環境条件に曝されることを考慮すれば、粘着力は環境試験後のものを表示することは当業者であれば普通に考慮すべき事項である。
また、粘着剤の粘着力をJIS Z-0237による180度剥離法で測定することは、引用例2に記載されており(前記キ)、引用例3、4においても引用例2と同様に180度剥離法で測定されている(前記サ、ソ)ように、180度剥離法における幅25mmあたりの応力として粘着剤の粘着力を求めることは一般的な測定法であるから、アクリル系粘着剤層の粘着力を、環境試験下における25mmあたりの応力で表示することは容易に想到しうる事項である。
そして、引用例2には「本発明により製造される表面保護用粘着テープの被着体に対する初期粘着力の大きさは、保護する被着体の形状、表面状態、加工の方法、加工条件あるいは粘着テープの切断、貼付等の作業性により異なるが、5?3000g/25mmが好ましい」(前記オ)と記載されているように、保護膜として用いる以上、保護対象となる物品に対して保存中にはがれることなく、剥離時に剥離しやすい適切な粘着力であって、かつ、糊残りのない粘着力を設定することは、当業者が当然考慮すべき事項である。
引用例2における5?3000g/25mmという数値は初期粘着力であるが、引用例2において粘着力が経時的に上昇することがない(上記ク)のであるから、5?3000g/25mmは環境試験後の数値も意図していると解される。

一方、本願明細書には、粘着力を「1?100g/25mm、望ましくは1?30g/25mm」(段落[0011])とする根拠は何ら示されておらず、実施例として粘着力が10g/25mmであった1例が記載されているにすぎないから、粘着力が1?10g/25mmであることには特段の臨界的意義があるものと認めることはできない。
そうすると、本願発明において、粘着力が1?10g/25mmとすることは、光情報記録媒体における保護膜として適した粘着力を単に数値で表記したにすぎないというべきである。

そして、上記の相違点による効果について総合的に検討してみても、本願発明が当業者の予測を超えた効果を奏するということはできない。
したがって、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用例1?4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、引用例1と引用例2?4とでは、技術分野が異なること、引用例2?4では、粘着力を測定する対象及び数値範囲が異なり、特に引用例4の15g/25mmは比較例であって、本願発明の1?10g/25mmという条件は、各引用例から想定できないことから、本願発明が引用例1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨主張をしている。

しかし、引用例1では剥離可能な保護膜(不透明フィルム)の粘着剤としてアクリル系粘着剤を使用しており、引用例2?4はいずれも、剥離可能な保護膜(保護フィルム)の粘着剤であるアクリル系粘着剤に関するものであるから、両者は技術的な関連があり、技術分野が異なるということはできない。
引用例2?4において、粘着力はステンレス板に対する数値で表されているが、保護フィルムの用途によって好ましい粘着力の範囲は異なることは技術常識であって、引用例発明を実施する際に粘着剤の粘着力が適当な範囲であるか否かを確認することは当業者が普通に行う事項である。また、引用例4における15g/25mmは比較例の数値であるが、上記のとおり本願明細書には粘着力の範囲として「1?100g/25mm、望ましくは1?30g/25mm」(段落[0011])とする根拠は何ら示されておらず、1?10g/25mmとする点についての臨界的意義は何ら記載されていない。
請求人が引用する判決例は、数値限定と特定の効果との関係が明細書に記載されており、本願発明とは事案を異にする。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

5.むすび

以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明についてみるまでもなく、本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-13 
結審通知日 2008-06-24 
審決日 2008-07-08 
出願番号 特願平11-271873
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵野 雅昭  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 横尾 俊一
吉川 康男
発明の名称 光情報記録媒体  
代理人 佐野 忠  

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