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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1183627
審判番号 不服2005-9893  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-26 
確定日 2008-08-28 
事件の表示 特願2000-139990「スクリーン印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月13日出願公開、特開2001-315303〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成12年5月12日の出願であって,平成17年4月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年5月26日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたもので、その請求項1に係る発明は,平成16年12月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「上側ポートと下側ポートを有するシリンダのロッドに結合されたスキージと、エア源から上側ポートと下側ポートに送給されるエアの圧力を個別に制御する空圧制御ユニットとがあり、パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、マスクプレート上にペーストを供給してスキージを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、スキージを高印圧指示値と低印圧指示値によってマスクプレートに押圧するようにし、高印圧指示値による印刷を行う場合は上側ポートにエア圧を加えてこのエア圧とスキージの自重を加えた印圧をマスクプレートに付与するようにし、また低印圧指示値による印刷を行う場合は上側ポートにエア圧を加えるとともに下側ポートにもエア圧を加えてスキージの自重を相殺してマスクプレートに印圧を付与するようにしたことを特徴とするスクリーン印刷方法。」

2.引用刊行物記載の発明
これに対して原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-337844号公報(以下「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

ア.「ワークを位置決めする位置決めテーブルと、この位置決めテーブルに位置決めされたワークの上方に配置されるスクリーンマスクと、
スクリーンマスク上を摺動することによりスクリーンマスクに開孔されたパターン孔を通してワークにクリーム半田を塗布するスキージと、
スキージのスクリーンマスクに対する押し付け力を制御する押し付け力制御機構とを備え、この押し付け力制御機構が、その下端部にスキージが結合される垂直なロッドを有するシリンダと、シリンダの上室に流体を送り込むことによりシリンダのロッドに下向きの力を加える第1の圧力制御部と、シリンダの下室に流体を送り込むことによりシリンダのロッドに上向きの力を
加える第2の圧力制御部と、この第1の圧力制御部およびまたは第2の圧力制御部に圧力指令を出力することにより上室と下室における流体の圧力差によってスキージのスクリーンマスクに対する押し付け力を制御する制御部とを備えたことを特徴とするクリーム半田のスクリーン印刷装置。」(【請求項1】)

イ.「スキージの下端部をスクリーンマスクの上面に着地させて押し付ける押し付け力が小さいと、クリーム半田はパターン孔に完全に充てんされず、印刷不良となる。また押し付け力が大きすぎると、クリーム半田はパターン孔からスクリーンマスクの下面に回り込み、にじみを生じて印刷不良となる。このにじみは、基板の電極がファインピッチになる程、深刻な問題となる。以上のことから、スキージの押し付け力は最適になるように調整されねばならない。
そこで、押し付け力の微妙な調整を可能とする方法が提案されている(特開平7-164615号)。この方法は、圧縮ねじリコイルばねによりスキージを浮き上らせる方向のばね力を付与することによりスキージのスクリーンマスクに対する押し付け力を小さくし、必要な押し付け力をシリンダにより付与するようにしたものである。したがってこの方法によれば、殊に基板のファインピッチの電極に対しては、押し付け力をスキージの重量以下に減殺して、きわめて小さな押し付け力により電極上にクリーム半田をにじみなく印刷できる利点がある。」(【0003】-【0004】)

ウ.「基板3上にはスクリーンマスク4が重ねられている。スクリーンマスクには、基板3の上面の電極に対応するパターン孔が開孔されている。10はスキージユニットであって、スキージホルダ11に第1のシリンダ12Aと第2のシリンダ12Bが左右2個備えられている。第1のシリンダ12Aと第2のシリンダ12Bはエアー等の流体の圧力によって作動する。各々のシリンダ12A,12Bのロッド13にはスキージ14が結合されている。シリンダ12A,12Bのロッド13が突没すると、スキージ14は上下動する。図1の場合には、左側のスキージ14は下降してスクリーンマスク4に着地しており、右側のスキージ14は上昇位置に退去している。
この状態でスキージ14を右方へ摺動させることにより、スクリーンマスク4を介して基板3の電極上にクリーム半田5を塗布し、次いで基板3をスクリーンマスク4から分離することにより、クリーム半田5は基板3の電極上に印刷される。左右のスキージ14は、交互にスクリーンマスク4上に着地し、スクリーンマスク4上を交互に逆方向へ摺動することにより、クリーム半田5の印刷が行われる。 」(【0019】-【0020】)

エ.「次に、図2を参照して、左右のスキージ14に押し付け力を付与するための押し付け力制御機構について説明する。第1のシリンダ12Aと第2のシリンダ12Bの制御系は同じである。21は制御部であり、ロードセル15A,15Bから荷重データが入力される。シリンダ12A,12Bは、それぞれ切替バルブ22A,22Bを介して制御部21により制御される。切替バルブ22A,22Bは、それぞれ第1路aと、第2路bを有している。シリンダ12A,12Bの内部は、ピストン27により上室Aと下室Bに分割されており、切替バルブ22A,22Bは各々の上室Aに通じている。 制御部21には、第1の圧力制御部23と第2の圧力制御部24が接続されており、これら第1の圧力制御部23及び第2の圧力制御部24は制御部21からの圧力指令に基づく指令圧力をシリンダ22A,22Bへ加える。第1の圧力制御部23は電空レギュレータであり、各切替バルブ22A,22Bの第2路b側に接続されている。また第2の圧力制御部24は圧力調整レギュレータであり、各シリンダ12A,12Bの下室Bに通じている。第2の圧力制御部24は、ロッド13、スキージ14、ピストン27等のスキージ14と共に昇降する昇降部を上方へ押し上げるのに十分な大きさの圧力を下室Bに常時送り込んでいる。
第1の圧力制御部23及び第2の圧力制御部24は配管を通じて図外の圧力源に接続されている。25は排気時の消音用サイレンサである 。」(【0023】-【0025】)

オ.「本発明によれば、基板にクリーム半田をスクリーン印刷するのに必要なスキージの最適押し付け力を正確に決定することができるものであり、殊にスキージの自重よりも小さな押し付け力が要求されるファインピッチの電極に対するクリーム半田の印刷にその長所を発揮する。また押し付け力は客観的なデータに基づいて決定されるので、オペレータによる個人差を解消できる。さらには、シリンダの特性は、ピストンとシリンダ内面の摺接摩擦力の変動のために変化しやすいものであるが、本発明によれば押し付け力の決定を適宜行ってデータを修正することにより、シリンダの特性変化に対応して最適押し付け力を設定することもできる。」(【0037】)

カ.図2より、シリンダ12A(12B)の上室A,下室B各々が、流体を送り込まれるポートを備えていることが看取できる。

上記ア.の「シリンダの上室に流体を送り込むことによりシリンダのロッドに下向きの力を加える第1の圧力制御部と、シリンダの下室に流体を送り込むことによりシリンダのロッドに上向きの力を加える第2の圧力制御部」との記載によれば、シリンダの上室と下室に送り込まれる流体の圧力は、第1と第2の圧力制御部によって個別に制御されている。

上記ア.の「この第1の圧力制御部およびまたは第2の圧力制御部に圧力指令を出力することにより上室と下室における流体の圧力差によってスキージのスクリーンマスクに対する押し付け力を制御する」との記載によれば、スキージは圧力指令によってスクリーンマスクに押圧されるものである。

上記ウ.の記載及び図1によれば、パターン孔が設けられたスクリーンマスク4が基板3に当接させられ、スクリーンマスク4上にクリーム半田5を供給してスキージ14を摺動させることで、スクリーンマスク4のパターン孔を介して基板3にクリーム半田が印刷されている。

上記ウ.には「・・エアー等の流体の圧力によって作動する。」と記載されており、「流体」としてエアーを採用するものである。

上記オ.によれば、スキージの自重よりも小さい押し付け力をスクリーンマスクに付与して印刷を行うことが可能である。

上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「上室と下室に各々ポートを備えるシリンダのロッドに結合されたスキージと、圧力源から各ポートを介して上室と下室に送り込まれるエアの圧力を個別に制御する第1と第2の圧力制御部があり、
パターン孔が設けられたスクリーンマスク4を基板3に当接させ、スクリーンマスク4上にクリーム半田5を供給してスキージ14を摺動させることで、スクリーンマスク4のパターン孔を介して基板3にクリーム半田を印刷するスクリーン印刷方法であって、スキージ14を圧力指令によってスクリーンマスク4に押圧するようにし、スキージの自重より小さい押し付け力をスクリーンマスクに付与して印刷を行うスクリーン印刷方法。」

3.対比
本願発明と刊行物記載の発明とを比較すると
刊行物記載の発明の「上室と下室に各々ポートを備えるシリンダ」、「圧力源から」、「各ポートを介して上室と下室に送り込まれるエアの圧力」、「第1と第2の圧力制御部」、「スクリーンマスク4」、「クリーム半田」は、本願発明の「上側ポートと下側ポートを有するシリンダ」、「エア源から」、「上側ポートと下側ポートに送給されるエアの圧力」、「空圧制御ユニット」、「マスクプレート」、「ペースト」にそれぞれ相当する。
また、刊行物記載の発明の「スキージ14を圧力指令によってスクリーンマスク4に押圧するようにし、スキージの自重より小さい押し付け力をスクリーンマスクに付与して印刷を行う」と、本願発明の「スキージを高印圧指示値と低印圧指示値によってマスクプレートに押圧するようにし、高印圧指示値による印刷を行う場合は上側ポートにエア圧を加えてこのエア圧とスキージの自重を加えた印圧をマスクプレートに付与するようにし、また低印圧指示値による印刷を行う場合は上側ポートにエア圧を加えるとともに下側ポートにもエア圧を加えてスキージの自重を相殺してマスクプレートに印圧を付与する」とは、スキージを印圧指示によってマスクプレートに押圧して印刷を行う点で共通である。
よって両者は、
「上側ポートと下側ポートを有するシリンダのロッドに結合されたスキージと、エア源から上側ポートと下側ポートに送給されるエアの圧力を個別に制御する空圧制御ユニットとがあり、パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、マスクプレート上にペーストを供給してスキージを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、スキージを印圧指示によってマスクプレートに押圧するようにして印刷を行うスクリーン印刷方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点)
スキージを印圧指示によってマスクプレートに押圧して印刷を行う点に関し、本願発明は「スキージを高印圧指示値と低印圧指示値によってマスクプレートに押圧するようにし、高印圧指示値による印刷を行う場合は上側ポートにエア圧を加えてこのエア圧とスキージの自重を加えた印圧をマスクプレートに付与するようにし、また低印圧指示値による印刷を行う場合は上側ポートにエア圧を加えるとともに下側ポートにもエア圧を加えてスキージの自重を相殺してマスクプレートに印圧を付与するようにした」と特定するのに対して、刊行物記載の発明はそのように特定されていない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
先ず、スクリーン印刷を行うにあたり、基板等、印刷対象に応じて最適な印圧があり、高い印圧から低い印圧まで、適宜設定する必要があることは、刊行物の上記イ.の他、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-205397号公報(【0008】-【0012】)等でも示されるように周知である(本願明細書中【0003】も参照)。そして、刊行物に記載の如く上側ポートと下側ポートを有するシリンダを利用する場合は、スキージの自重がエア圧に加算されれば印圧が高くなり、スキージの自重が相殺される方向のエア圧が加えられれば印圧が低くなることは、シリンダの構造からも当業者にとって明らかともいえ、スキージの自重が加算されて高い印圧で印刷が行われることは、例えば原査定の拒絶の理由に引用された実願昭61-167876号(実開昭63-178137号)のマイクロフィルム(第4頁)等に、またスキージの自重が相殺されて低い印圧で印刷が行われることは、例えば前述した特開平7-205397号公報等にも示されている。
ここで、本願発明においては「高印圧指示値と低印圧指示値によって・・」、「高印圧指示値による・・」、「低印圧指示値による・・」と記載されるが、指示の発生も伝達も特定されず、制御機構として指示を出力する制御系や指示を伝達する電気回路系を備えるものなのか、或いは、指示が人の思考の内にて生じて手動にて操作が為されるものなのかも区別されない。すると上記相違点に係る特定は、 例えば「スキージを高い印圧或いは低い印圧によってマスクプレートに押圧するようにし、高い印圧による印刷を行う場合は上側ポートにエア圧を加えてこのエア圧とスキージの自重を加えた印圧をマスクプレートに付与するようにし、また低い印圧による印刷を行う場合は上側ポートにエア圧を加えるとともに下側ポートにもエア圧を加えてスキージの自重を相殺してマスクプレートに印圧を付与するようにした」程度の特定であり、そしてこのような特定は、スクリーン印刷を行うについて、上述した周知事項の範囲内で、スキージの自重の印圧への寄与に応じて単に場合分けして記載した程度であるから、格別な技術的意義をもたらすものにならない。
そして、本願発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり
、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきもので
ある。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-30 
結審通知日 2008-07-01 
審決日 2008-07-15 
出願番号 特願2000-139990(P2000-139990)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 裕子  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 酒井 進
佐藤 宙子
発明の名称 スクリーン印刷方法  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  
代理人 岩橋 文雄  

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