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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1183638 |
審判番号 | 不服2005-17993 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-20 |
確定日 | 2008-08-28 |
事件の表示 | 特願2002-138393「ゲーム環境におけるキャラクタのメニュー方式音声制御システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月18日出願公開、特開2003- 47768〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年5月14日(パリ条約による優先権主張、2001年5月14日、米国)を出願日とする出願であって、平成17年6月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月20日に拒絶査定不服の審判が請求され、その後、当審からの平成19年11月2日付けの拒絶理由通知に対して平成20年3月10日に手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の各請求項に係る発明は、平成20年3月10日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項21に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のものである。 「視覚的に動的な対話式のゲーム環境における、少なくとも1のキャラクタの視覚的動作を制御するためのシステムであって、 コマンドアイテムは、階層的に定められた、予め定められた、完結したコマンド組合せに対応し、 当該システムは、 利用可能なコマンドアイテムのメニューをユーザに対して表示する手段と、 表示したコマンドアイテムのメニューからの、利用可能なコマンドアイテムに該当する、発せられた言葉を認識する手段と、 ゲーム環境の状況に関連した情報を受信する手段と、 前記状況を決定し、かつ、発せられた前記言葉の認識に応じて、前記状況において要求された場合に利用可能なコマンドアイテムの新たなメニューをユーザに対して表示する手段と、 新たに表示したコマンドアイテムのメニューからの、利用可能なコマンドアイテムに該当する、発せられた言葉を認識する手段と、 認識した複数の言葉が、前記予め定められた、完結した1つのコマンドに対応する場合に、前記予め定められた、完結したコマンドに対応する動作を少なくとも1の第1キャラクタに行わせる手段と、 を備え、 前記予め定められた、完結したコマンドは、前記複数の、コマンドアイテムのメニューのうちの少なくとも2つのメニューからのコマンドアイテムの予め定められた組合わせであるシステム。」 3.引用例 (1)引用例1 (ア)平成19年11月2日付けの拒絶理由通知(以下、「本件拒絶理由通知」という。)に引用された、本願の出願前に頒布された国際公開98/02223号パンフレット(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。 「技術分野 この発明は、入力された音声を認識する音声認識装置、音声認識方法及びこれを用いたゲーム機に関するものである。」 (第1頁第3行から第5行) 「形態1. 図1はこの発明の実施の形態に係る音声認識装置を用いたビデオゲーム機の外観図である。この図において、ビデオゲーム機本体1は略箱型をなし、その内部にはゲーム処理用の基板等が設けられている。また、ビデオゲーム機本体1の前面には、2つのコネクタ2aが設けられており、これらのうちの一方のコネクタ2aにはゲーム操作用のPAD2bがケーブル2cを介して接続されている。他方のコネクタ2aには音声認識部6が接続されている。音声認識部6には、PAD2bとともに遊戯者の音声を聞き取るためのマイク7が接続されている。2人の遊戯者がゲームを楽しむ場合には、2つのPAD2bが使用される。図1のマイク7はヘッドセット型であるが、他の形式のマイクでもよい。なお、2つのコネクタ2aの両方に音声認識部6を接続することもできる。 ビデオゲーム機本体1の上部には、ゲームプログラム、音声認識動作が記憶された記憶媒体としてのROMカートリッジ接続用のカートリッジI/F1a、CD-ROM読み取り用のCD-ROMドライブ1bが設けられている。ビデオゲーム機本体1の背面には、図示されていないが、ビデオ出力端子およびオーディオ出力端子が設けられている。このビデオ出力端子はケーブル4aを介してTV受像機5のビデオ入力端子に接続されるとともに、オーディオ出力端子はケーブル4bを介してTV受像機5のオーディオ入力端子に接続されている。このようなビデオゲーム機において、ユーザがPAD2bを操作することにより、TV受像機5に映し出された画面を見ながらゲームを行うことができる。」 (第6頁第2行から第21行) 「・ワードコネクション機能 連続で発声した2単語を1組として認識の結果を出力する機能である。1単語目の類似度と2単語目の類似度の合計が高いものを出力する。この場合、予め2単語の結合データを辞書に入れておく必要がある。 例えば、辞書に、猿、攻撃、雉、防御、犬、魔法、鬼、逃げる、桃太郎の語彙が存在し、さらに、結合データとして、猿-攻撃、猿-防御、猿-逃げる、雉-攻撃、雉-防御、雉-逃げる、犬-攻撃、犬-防御、犬-逃げる、が格納されているとする。このように、辞書内において、単語とこれらの結合データが格納されている。 この場合において、ユーザーが「猿、攻撃」(間を若干開けること)と発声したとすれば、この時の音声認識部6の動作は(9語から3語を選んでの順列*2通りのうちの)例えば次のケースのようになる。」 (第17頁第14行から第18頁第2行) 「発明の実施の形態5. 以上の実施の形態において音声認識部を中心に説明したが、この音声認識部を用いて行うゲームについて説明する。 (1)動物調教アシストアクションゲーム 音声認識を使用し、犬、ネコ、馬などの動物達とのコミュニケーションを楽しむゲームである。 一つのキャラクターだけではなく、複数のキャラクターを直接的または間接的に操作できるという音声認識ならではのゲームである。この種のゲームをボタン操作で行うと味気なく、実際と同様に「声をかける」という操作が適している。 また、実際の調教において動物がなかなか言うことを聞かないことがある。音声認識がうまくいかないことがあっても、このときのもどかしさ自体もゲーム性に含まれるので、面白さが却って増加する。呼び掛けたときのキャラクターのリアクションの多彩さが面白い。 あるいは、プレーヤーがお供にしている猿、雉、犬等の動物達が勝手に動きまわるアクションゲームも考えられる。桃太郎物語のように、プレーヤーはフィールド上にいる動物達に実際に話し掛けることで仲間にすることができる。たとえば、動物を仲間にするには仲間にしたい動物がプレーヤーのキャラクタを見ているときに何でも良いから呼び掛ける。例えば、犬だったら「ぽち! ぽち! ぽち!」というように何度も呼び掛けているとその声に反応するようになる。そこで、餌をやるとその動物はプレーヤーの仲間になってくれる。」 (第26頁第16行から第27頁第12行) (イ)これらの記載より、引用例1には、 「TV受像器5と、音声認識部6と、を有するビデオゲームにおいて、 予め2単語の結合データを格納した辞書を有し、 結合データとしては、猿-攻撃、猿-防御、猿-逃げる、雉-攻撃、雉-防御、雉-逃げる、犬-攻撃、犬-防御、犬-逃げる、等が格納され、 音声認識部6は、ユーザが発声した2単語を結合データとして認識し、 ユーザが発声した音声に応じて、猿、雉、犬等のキャラクターが操作されるビデオゲーム。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 (2)引用例2 (ア)また、本件拒絶理由通知に引用された、本願の出願前に頒布された特開2000-229172号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0054】上述したアクションカウンタ131は味方パーティ110に属するすべてのキャラクタについて表示される。プレイヤーの操作対象として設定されたキャラクタのアクションカウントが最大値に達すると、そのキャラクタに対するコマンド選択ウインドウ140がゲーム画面100上に表示される(図2参照)。コマンド選択ウインドウ140は、プレイヤーが選択可能な行動を階層的に表示したものである。最上位の階層では、キャラクタの行動の最上位の分類として「とくぎ」、「まほう」等が表示される。」 「【0055】プレイヤーがコントローラ14の十字キー14aを上下方向に操作するとカーソル140aが上下に移動し、十字キー14aを右に操作するとその時点でカーソル140aにて囲まれた種類に属する選択肢を表示したウインドウが右方に開かれる。その状態で再度十字キー14aを右に操作すると、その時点でカーソル140bにて囲まれた種類に属する選択肢を表示したウインドウがさらに右方に開かれる。最下位の階層までウインドウを開き、十字キー14aを上下に操作して希望する行動にカーソル140cを合わせて所定の決定ボタンを操作すると、その行動が選択される。十字キー14aを左に操作するとその時点での最下位の階層のウインドウが閉じる。最上位のウインドウのみが開かれている状態で十字キー14aを左に操作するとコマンド選択ウインドウ140が閉じ、当該キャラクタに関する行動の選択がキャンセルされる。このキャンセル操作は、例えば複数のキャラクタが操作対象として存在し、かつ同時に2以上のキャラクタのアクションカウントが最大値のとき、キャラクタの順序を入れ替える場合等に行われる。」 4.対比 (1)本願発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明は「ユーザが発声した音声に応じて、猿、雉、犬等のキャラクターが操作されるビデオゲーム」であるから、本願発明と同様に「視覚的に動的な対話式のゲーム環境における、少なくとも1のキャラクタの視覚的動作を制御するためのシステム」である。 (イ)引用発明における辞書に格納された「猿-攻撃」などの「結合データ」は、本願発明の「コマンドアイテム」に相当し、また、同コマンドアイテムと同様に、「階層的に定められた、予め定められた、完結したコマンド組合せ」となっている。 (ウ)引用発明の「音声認識部6」は、ユーザが発声した2単語を結合データとして認識するものであるから、本願発明の「利用可能なコマンドアイテムに該当する、発せられた言葉を認識する手段」に相当する。 (エ)引用発明においては、ユーザが発声した2単語を結合データとして認識されると、それに応じて、猿、雉、犬等のキャラクターが操作されるのであるから、引用発明は、本願発明の「認識した複数の言葉が、前記予め定められた、完結した1つのコマンドに対応する場合に、前記予め定められた、完結したコマンドに対応する動作を少なくとも1の第1キャラクタに行わせる手段」を備えている。 (オ)引用発明の「結合データ」は、上記(イ)で述べた点に加え、「複数の、コマンドアイテムのメニューのうちの少なくとも2つのメニューからのコマンドアイテムの予め定められた組合わせ」ともなっている。 (2)以上をまとめると、本願発明と引用発明とは、 「視覚的に動的な対話式のゲーム環境における、少なくとも1のキャラクタの視覚的動作を制御するためのシステムであって、 コマンドアイテムは、階層的に定められた、予め定められた、完結したコマンド組合せに対応し、 当該システムは、 利用可能なコマンドアイテムに該当する、発せられた言葉を認識する手段と、 認識した複数の言葉が、前記予め定められた、完結した1つのコマンドに対応する場合に、前記予め定められた、完結したコマンドに対応する動作を少なくとも1の第1キャラクタに行わせる手段と、 を備え、 前記予め定められた、完結したコマンドは、前記複数の、コマンドアイテムのメニューのうちの少なくとも2つのメニューからのコマンドアイテムの予め定められた組合わせであるシステム。」 である点で一致し、以下の点において相違している。 (ア)本願発明は、「ゲーム環境の状況に関連した情報を受信する手段」を有しているのに対して、引用発明は、同様の手段を有しているのかが不明である点(以下、「相違点1」という。)、 (イ)本願発明は、「利用可能なコマンドアイテムのメニューをユーザに対して表示する手段」と、「前記状況を決定し、かつ、発せられた前記言葉の認識に応じて、前記状況において要求された場合に利用可能なコマンドアイテムの新たなメニューをユーザに対して表示する手段」と、を有しているのに対して、引用発明のTV受像器5では結合データ(コマンドアイテム)の表示を行っているとは認められない点(以下、「相違点2」という。)、 (ウ)本願発明は、発せられた言葉を認識する手段において、「新たに表示したコマンドアイテムのメニューからの」コマンドアイテムを認識するのに対して、引用発明の音声認識部6では、コマンドアイテムの表示等をすることなく、ユーザが発声した音声から結合データ(コマンドアイテム)を認識していると認められる点(以下、「相違点3」という。)。 5.判断 (1)相違点1について 一般に、引用発明のようなキャラクターを操作するビデオゲームにおいては、キャラクターの操作のために様々なコマンド(例えば、引用発明における「攻撃」、「防御」、「逃げる」、等)が用意されているものであるが、ゲームの進行状況に応じて選択できるコマンドを変化させていくこと(例えば、「猿」が選択されたときは、猿の行動に関するコマンドのみを選択可能とする、等)は、常套手段であると認められる。 そして、そのような場合であれば、ビデオゲームに「ゲーム環境の状況に関連した情報(例えば、現在どのキャラクターが選択されているか、等)」を監視する手段が設けられるのは必然的なことである。 してみれば、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、当業者であれば容易に想到することができたといえる。 (2)相違点2について 引用発明では、2単語の結合データ(例えば、「猿-攻撃」)をユーザに自らの記憶に基づいて発声させるように構成することも可能と考えられることから、必ずしも、認識可能な単語をTV受像器5等に表示させることを要するものではないと認められる。 しかし、キャラクターを操作するビデオゲームにおいて、 -キャラクターを操作するための選択可能な複数のコマンドを画面上に表示させ、 -表示された複数のコマンドの中から1をユーザに選択させ、 -1のコマンドが認識されると、逐次、その下位の階層にある選択可能な複数のコマンドを画面上に表示させていく、 ことは、周知慣用の技術であると認められる(上記「引用例2」を参照)。 そして、画面に表示させたコマンドを選択する場合には、引用例2で用いられているカーソルを用いたものに限られず、引用発明のように音声で行うことができることは自明である。 また、選択可能なコマンドをゲームの進行状況に応じて変化させていくことは、上記(1)で既に述べたように、キャラクターを操作するビデオゲームにおける常套手段である。 そうすると、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、当業者であれば容易に想到することができたといえる。 (3)相違点3について 上記(2)で既に述べたように、キャラクターを操作するためのコマンドを階層ごとに表示させることは、引用発明のようなキャラクターを操作するビデオゲームにおける周知慣用の技術である。 してみれば、相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、当業者であれば容易に想到することができたといえる。 (4)そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知慣用の技術から当業者が予測できる範囲内のものである。 (5)以上をまとめると、本願発明は引用発明及び周知慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-03-28 |
結審通知日 | 2008-04-01 |
審決日 | 2008-04-15 |
出願番号 | 特願2002-138393(P2002-138393) |
審決分類 |
P
1
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121-
WZ
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松川 直樹 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
濱田 聖司 森内 正明 |
発明の名称 | ゲーム環境におけるキャラクタのメニュー方式音声制御システムおよび方法 |
代理人 | 三品 岩男 |