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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B08B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B08B
管理番号 1183662
審判番号 不服2006-9544  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-11 
確定日 2008-08-28 
事件の表示 平成11年特許願第146539号「基板処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月5日出願公開、特開2000-334399〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年5月26日の出願であって、平成18年4月7日付けで拒絶査定がなされ(発送:4月11日)、これに対し、同年5月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年5月19日に手続補正がなされたものである。

第2.平成18年5月19日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月19日付け手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成18年5月19日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。

「【請求項1】
CMP装置とのインターフェース部分を有し、基板に所定の処理を行う基板処理装置であって、
表面が加工処理された基板を洗浄するための洗浄部と、
前記洗浄部に基板を搬送する前に、前記インターフェース部分に設けられCMP処理が終了した直後の基板を一旦載置させる載置部と、
前記載置部に進入し基板を取り出してから前記洗浄部へ基板を搬送する搬送手段とを備え、
前記載置部は、
基板を載置し支持するピンによる支持手段と、
前記支持手段によって支持された基板の表面に処理液を供給する基板表面中心部上方に設けられたノズルを備えた第1処理液供給手段と、
前記支持手段によって支持された基板の裏面に処理液を供給する同心円状に配置された複数のノズルを備えた第2処理液供給手段とを有することを特徴とする基板処理装置。」
本件補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「支持手段」に関し「ピンによる」との限定を、また、「第1処理液供給手段」に関し「基板表面中心部上方に設けられたノズルを備えた」との限定を、さらに、「第2処理液供給手段」に関し「同心円状に配置された複数のノズルを備えた」との限定を付加するもので、本件補正に係る事項は、新規事項を含むものでなく、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由にて引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-69550号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】
ワ-クを洗浄部へ供給して洗浄する前に待機させる待機装置において、
容器と、この容器内に設けられ上記ワ-クを保持する保持部材と、
この保持部材に形成され上記ワ-クの被洗浄面に向けてこの被洗浄面の乾燥を防止する流体を供給するための供給路とを具備してなることを特徴とするワ-クの洗浄装置。」(【特許請求の範囲】)

イ.「枚葉方式によって半導体ウエハを洗浄する場合、洗浄中のワ-クの洗浄作業が終了するまで、前工程において処理された半導体ウエハを待機させておかなければならないということがある。
前工程で処理された半導体ウエハを待機させる場合、その待機中に上記半導体ウエハが乾燥してしまうということがある。半導体ウエハが乾燥してしまうと、その半導体ウエハに残留するパ-テイクルが強固に付着してしまうので、洗浄工程で除去しにくくなるということが生じる。とくに、前工程がCMP(chemicalmechanical polishing )の場合、半導体ウエハの面には多量のスラリ-が付着しているこがあるから、そのスラリ-が乾燥してしまうと、洗浄工程では非常に落ちにくくなるということがある。」(段落【0003】?【0004】)

ウ.「上記曲面23aの高さ方向中途部には、図2と図3に示すように段部24が上記曲面23aの全長にわたって形成されている。上記支持ブロック23には上記洗浄部1で洗浄される前の半導体ウエハUが図示しないスカラ-ロボットによって上方から落とし込む状態で供給され、径方向両端部が上記支持ブロック23に形成された段部24に係合されて保持される。つまり、半導体ウエハUは洗浄部1に供給される前に待機させられる。
上記支持ブロック23に保持された半導体ウエハUは後述する受け渡しロボット31によって上記待機部2から洗浄部1へ適時に受け渡される。上記一対の支持ブロック23のうちの一方には供給路25が形成されている。この供給路25は、上記支持ブロック23の長手方向ほぼ全長にわたって形成されているとともに一端を上記ブロック23の長手方向の一方の端面に開放させた主流路25aと、この主流路25aから分岐され先端を上記曲面23aの上記段部24の部分に開口させた複数の分岐流路25bとからなる。つまり、上記分岐流路25bは、図3に示すように上記段部24に周辺部を係合させた半導体ウエハUの上面と下面とにわたって開口するようになっている。
上記主流路25aの開口端には供給チュ-ブ26の一端が接続される。この供給チュ-ブ26の他端は図示しない純水の供給源に接続されている。この供給源は純水を所定の圧力で上記供給チュ-ブ26に供給するようになっている。供給チュ-ブ26に供給された純水は上記主流路25aから複数の分岐流路25bに分岐され、上記曲面23aに開放した先端開口から流出する。それによって、純水は上記段部24に保持された半導体ウエハUの上面と下面とに沿って流れるから、待機中の上記半導体ウエハUの上面と下面とが乾燥するのが防止される。」(段落【0022】?【0024】)

エ.「上記取付体44には一対の連結ピン46が垂設されている。これら連結ピン46の下端にはL字状のア-ム47の一端が連結されている。このア-ム47の他端部は、上記水平スライダ33が図1に示す後退位置にあるときに、上記一対の支持ブロック23間に位置している。
図3に示すように上記ア-ム47が下降位置にあるとき、このア-ム47の上面は上記支持ブロック23の段部24に保持された半導体ウエハUの下面よりも低い位置にある。上記ア-ム47が上記上下シリンダ45によって上昇方向に駆動されれば、上記ア-ム47の上面は、上記洗浄部1の駆動ロ-ラ4に形成された係合段部5よりもわずかに高い位置になるよう設定されている。
上記ア-ム47の先端部上面には上記一対の支持ブロック23の離間方向と直交する方向に離間して一対の円弧状の受け部材48が設けられている。受け部材48には図2に示すように段部48aが形成されている。
上記水平スライダ33が後退位置にあり、しかもア-ム47が下降位置にある状態から上記上下シリンダ45が作動してア-ム47が上昇方向に駆動されれば、上記支持ブロック23の段部24に周辺部を係合保持された半導体ウエハUを、上記ア-ム47の先端部に設けられた一対の受け部材48の段部48aに周辺部を係合させて取り出すことができるようになっている。」(段落【0032】?【0035】)

以上を総合すると、引用刊行物には、
「CMP処理部との間に待機部2を有し、半導体ウエハUに洗浄処理を行う半導体ウエハ洗浄装置であって、
CMP処理された半導体ウエハUを洗浄するための洗浄部1と、
前記洗浄部1に半導体ウエハUを受け渡す前に、前記待機部2に設けられCMP処理が終了した直後の半導体ウエハUを一旦保持させる一対の支持ブロック23と、
前記一対の支持ブロック23間に予め位置し半導体ウエハUを取り出してから前記洗浄部1へ半導体ウエハUを受け渡す受け渡しロボット31とを備え、
前記支持ブロック23は、
半導体ウエハUを保持する段部24と、
前記段部24によって保持された半導体ウエハUの表裏面に純水を供給する複数の分岐流路25bとを有する半導体ウエハ洗浄装置。」の発明(以下、「引用刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.発明の対比
本願補正発明と引用刊行物記載の発明を対比するに、引用刊行物記載の発明の「CMP処理部」は本願補正発明の「CMP装置」に相当し、同様に、「待機部2」は「インターフェース部分」に、「半導体ウエハU」は「基板」に、「洗浄処理」は「所定の処理」に、「半導体ウエハ洗浄装置」は「基板処理装置」に、「一対の支持ブロック23」は「載置部」に、「純水」は「処理液」に、各々相当する。
また、引用刊行物記載の発明の「CMP処理された」は本願補正発明の「表面が加工処理された」と同義であり、同様に、「受け渡す」は「搬送する」と、「保持させる」は「載置させる」と、各々同義である。
さらに、引用刊行物記載の発明の「一対の支持ブロック23間に予め位置し半導体ウエハUを取り出してから前記洗浄部1へ半導体ウエハUを受け渡す受け渡しロボット31」は、載置部より基板を取り出してから洗浄部へ搬送する搬送手段ということができ、同様に、「半導体ウエハUを保持する段部24」は、基板を載置し支持する支持手段といえ、「段部24によって保持された半導体ウエハUの表裏面に純水を供給する複数の分岐流路25b」は、支持手段によって支持された基板の表裏面に処理液を供給する処理液供給手段ということができる。

したがって、両者の一致点と相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「CMP装置とのインターフェース部分を有し、基板に所定の処理を行う基板処理装置であって、
表面が加工処理された基板を洗浄するための洗浄部と、
前記洗浄部に基板を搬送する前に、前記インターフェース部分に設けられCMP処理が終了した直後の基板を一旦載置させる載置部と、
前記載置部より基板を取り出してから前記洗浄部へ基板を搬送する搬送手段とを備え、
前記載置部は、
基板を載置し支持する支持手段と、
支持手段によって支持された基板の表裏面に処理液を供給する処理液供給手段とを有する基板処理装置。」

[相違点1]
洗浄部へ基板を搬送する搬送手段が、本願補正発明では、載置部に進入し基板を取り出してから洗浄部へ搬送するものであるのに対し、引用刊行物記載の発明では、予め載置部間に位置し基板を取り出してから洗浄部へ搬送するものである点。

[相違点2]
基板を載置し支持する支持手段が、本願補正発明ではピンであるのに対し、引用刊行物記載の発明では段部である点。

[相違点3]
基板の表裏面に処理液を供給する処理液供給手段として、本願補正発明が、基板の表面に処理液を供給する基板表面中心部上方に設けられたノズルを備えた第1処理液供給手段と、基板の裏面に処理液を供給する同心円状に配置された複数のノズルを備えた第2処理液供給手段とを有しているのに対し、引用刊行物記載の発明は、基板の表裏面に処理液を供給する複数の分岐通路を有している点。

4.当審の判断
以下、各相違点につき検討する。
[相違点1について]
載置部より基板を取り出してから洗浄部へ基板を搬送する搬送手段としては、多種多様な手段、例えば、載置部に進入し基板を取り出すもの、予め載置部間に位置し基板を取り出すもの等が考えられ、その何れを採用するかは、当業者が、適宜選択すべき事項である。
また、当該搬送手段として、何れの搬送手段を採用したとしても、効果上、格別な差異は認められない。
したがって、相違点1とした採用されている搬送手段の型式の違いは、当業者が、適宜選択すべき設計的事項にすぎない。

[相違点2について]
基板と支持手段の接触面積を小さくして裏面の洗い残し部を少なくするために、基板を載置し支持する支持手段としてピンを用いることは、例えば、原査定の拒絶理由にて引用された特開平9-146079号公報(円筒状突起6参照)や、特公平4-69420号公報(支持ピン3参照)記載のように、従来より周知の技術手段である。
よって、引用刊行物記載の発明において支持手段としてピンを採用することは、前記周知の技術手段に倣って、当業者が、容易に想到し得た事項である。

[相違点3について]
基板表裏面に処理液を供給する手段として、基板表面側には基板表面中心部上方にノズル(第1処理液供給手段)を設けるとともに、基板裏面側には複数のノズル(第2処理液供給手段)を設けることは、従来より周知の技術手段である[必要ならば、原査定の拒絶理由にて引用された特開平9-146079号公報(図4のノズル3、5参照)や実公平3-9328号公報(洗浄液供給ノズル3、上方に向けて開口する複数の噴出孔5aを形成した裏面用洗浄ノズル5参照)]。
したがって、引用刊行物記載の発明において、基板表裏面に処理液を供給する手段である複数の分岐通路に代えて、基板の表面に処理液を供給する基板表面中心部上方に設けられたノズルを備えた第1処理液供給手段と、基板の裏面に処理液を供給する複数のノズルを備えた第2処理液供給手段を採用することは、前記周知の技術手段に倣って、当業者が容易に想到し得た事項である。
そして、基板裏面にノズルで処理液を供給するについて、裏面においては表面と異なり、処理液が均一に供給できず、その均一化を図ることは自明の課題であり、その課題解決のために、ノズルを同心円上に配置することは周知の技術手段[例えば、特開平7-176471号公報、特開平8-141521号公報(図5、6)参照]であるから、基板裏面において、複数のノズルを備えた第2処理液供給手段を採用するに際し、ノズルを同心円状配置とすることに格別な困難性は認められない。

また、本願補正発明により得られる効果も、引用刊行物記載の発明及び周知の技術手段から、当業者であれば、予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物記載の発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成18年5月19日付け手続補正は上記のとおり却下されたので 、本願の請求項1?7に係る発明は、平成17年3月10日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 CMP装置とのインターフェース部分を有し、基板に所定の処理を行う基板処理装置であって、
表面が加工処理された基板を洗浄するための洗浄部と、
前記洗浄部に基板を搬送する前に、前記インターフェース部分に設けられCMP処理が終了した直後の基板を一旦載置させる載置部と、
前記載置部に進入し基板を取り出してから前記洗浄部へ基板を搬送する搬送手段とを備え、
前記載置部は、
基板を支持する支持手段と、
前記支持手段によって支持された基板の表面に処理液を供給する第1処理液供給手段と、
前記支持手段によって支持された基板の裏面に処理液を供給する第2処理液供給手段とを有することを特徴とする基板処理装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物とその記載事項は、前記の「第2.2」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「支持手段」に関し「ピンによる」との限定を、また、「第1処理液供給手段」に関し「基板表面中心部上方に設けられたノズルを備えた」との限定を、さらに、「第2処理液供給手段」に関し「同心円状に配置された複数のノズルを備えた」との限定を省いたものである。
本願発明と引用刊行物記載の発明を対比すると、両者は結局 、「第2.3」に記載した相違点1でのみ相違し、その相違点1についての判断は、「第2.4」で述べたとおりである。
そうすると、本願発明も、本願補正発明につき述べたのと同様の理由により、引用刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-24 
結審通知日 2008-07-01 
審決日 2008-07-14 
出願番号 特願平11-146539
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B08B)
P 1 8・ 121- Z (B08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗山 卓也  
特許庁審判長 岡 千代子
特許庁審判官 会田 博行
前田 仁
発明の名称 基板処理装置  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉田 茂明  
代理人 吉竹 英俊  

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