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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03F |
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管理番号 | 1183670 |
審判番号 | 不服2006-11842 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-06-08 |
確定日 | 2008-08-28 |
事件の表示 | 特願2002-111061「信号増幅回路」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 6日出願公開、特開2002-353753〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年12月11日に出願した特願平8-331255号の一部を平成14年4月12日に新たな特許出願としたものであって、平成17年8月25日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月31日付けで手続補正がなされたが、平成18年4月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成17年10月31日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「入力信号のピーク値を保持するピーク検出回路と、入力信号のボトム値を保持するボトム検出回路とを有し、 該ピーク検出回路からの該ピーク値と該ボトム検出回路からの該ボトム値との所定分圧値を閾値とする自動閾値設定部と、 該入力信号と該自動閾値設定部からの閾値とを入力として差動増幅を行なう自動利得制御増幅部と、 該ピーク値と該ボトム値とのレベル差から振幅情報を検出して、該入力信号の振幅に応じた利得制御信号をフィードフォワード信号として該自動利得制御増幅部へ供給する利得制御部と、をそなえ、 かつ、 該自動閾値設定部が、該閾値をフィードフォワードの信号として該自動利得制御増幅部へ出力するとともに、 該利得制御部が、該ピーク検出回路からの該ピーク値とボトム検出回路からの該ボトム値とを入力として差動増幅を行なって、該利得制御信号に変換し、フィードフォワードの信号として該自動利得制御増幅部へ供給する差動増幅回路をそなえたことを特徴とする、信号増幅回路。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-310967号公報(以下、「引用例1」という。)、特開昭62-132411号公報(以下、「引用例2」という。)、特開平1-286655号公報(以下、「引用例3」という。)、及び特開昭60-192433号公報(以下、「引用例4」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。 (引用例1) A.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、光受信回路の電圧増幅回路の入力信号が広いレベルで変動したときに、オフセット電圧と利得との補償を瞬時に行い、一定の出力振幅を安定に出力し続けることができる電圧増幅回路に関する。」 B.「【0020】 【実施例】図1は、本発明の一実施例である基本回路BC1を示す回路図であ。 【0021】基本回路BC1は、自動閾値設定回路(ATC:Automatic Threshold Controll)10と、振幅制限増幅回路40とで構成され、入力端子Tiと出力端子Toとを有する。 【0022】自動閾値設定回路10は、入力波形のピーク値とボトム値とを検出・保持し、ピーク値とボトム値とのほぼ中間の値を閾値として出力する閾値設定回路の一例であり、ピーク値検出・保持回路20と、ボトム値検出・保持回路30と、ピーク値検出・保持回路20の出力端子とボトム値検出・保持回路30の出力端子との間に直列接続された抵抗R1、R2とを有する。ピーク値検出・保持回路20は、保持容量21と増幅回路22とを有し、入力端子Tiにおける入力信号の波形のピーク値を検出し保持する回路であり、ボトム値検出・保持回路30は、保持容量31と増幅回路32とを有し、入力端子Tiにおける入力信号の波形のボトム値を検出し保持する回路である。 【0023】なお、ピーク値検出・保持回路20は、その入力信号がハイであるときに、保持容量21を充電し、その入力信号がローであるときは、増幅回路22の出力インピーダンスを高くすることによって放電パスを断ち、波形のピーク値検出・保持を行うものである。一方、ボトム値検出・保持回路30は、逆にその入力信号がローであるときに、保持容量31を充電し、その入力信号がハイであるときは、増幅回路32の出力インピーダンスを高くすることによって放電パスを断ち、波形のボトム値の検出・保持を行うものである。 【0024】振幅制限増幅回路40は、入力端子Tiからの入力信号と、この入力信号を線形領域で動作させる閾値とを受け、所定の入力信号レベル範囲で一定の出力振幅を出力する振幅制限増幅回路の例であり、入力端子aと出力端子bと閾値(オフセット電圧)設定端子dとを有する。 【0025】また、振幅制限増幅回路40の入力端子と自動閾値設定回路10の入力端子とに基本回路BC1の入力端子Tiが接続され、自動閾値設定回路10の出力端子が振幅制限増幅回路40の閾値制御端子dに接続され、振幅制限増幅回路40の出力端子bに基本回路BC1の出力端子Toが接続されている。 【0026】次に、上記実施例の動作について説明する。 【0027】まず、ピーク値検出・保持回路20、ボトム値検出・保持回路30によって、それぞれ入力信号波形のピーク値、ボトム値を抽出し、ピーク値とボトム値との中点の電位が抵抗R1、R2の抵抗分割から求められ、この中点の電位を振幅制限増幅回路40の閾値(オフセット電圧値)として与えることによって、オフセット補償動作を行う。 【0028】振幅制限増幅回路40を用いて、ある入力信号レベル範囲で出力振幅を制限することによって、利得補償動作を実現している。 【0029】上記実施例は、図12に示す従来例と比較すると、負帰還ループを用いていないので、ループ応答の遅れによるオフセット補償、利得補償の応答時間が制限されない。上記実施例において、応答時間は、ピーク値検出・保持回路20、ボトム値検出・保持回路30の時定数に制限されるが、この時定数をある程度小さく設定しても、図12に示す従来例のように全体回路が不安定になることがない。したがって、上記実施例においては、信号の1ビット以内の時間で、オフセット補償と利得補償とを同時に実現できる。」 C.「【0030】図2は、上記実施例における入出力波形のシュミレーション結果を示す図である。なお、0.8μmのMOS集積回路技術を想定してシュミレーションを行い、入力信号として与えた信号の符号速度は32Mb/sである。 【0031】図2(1)において、入力端子Tiにおける信号波形51と、ピーク値検出・保持回路20の出力信号波形52と、ボトム値検出・保持回路30の出力信号波形53と、自動閾値設定回路10の出力信号波形54とが記載されている。図2(2)において、振幅制限増幅回路40の出力信号波形55が示されている。なお、自動閾値設定回路10の出力信号波形54は、振幅制限増幅回路40の閾値制御端子dに印加される信号の波形であり、振幅制限増幅回路40の出力信号波形55は、基本回路BC1の出力信号の波形である。 【0032】上記実施例において、入力信号レベルが小振幅から大振幅に遷移すると同時に、ピーク値検出・保持回路20の出力信号波形52とボトム値検出・保持回路30の出力信号波形53とが追従し、データの1ビット以内で、自動閾値設定回路10の出力信号波形54である閾値を瞬時に設定していることがわかる。 【0033】振幅制限増幅回路40は、入力信号と閾値電圧とを受けて、出力振幅を制限する増幅動作を行う。この場合、入力信号波形41の中点に閾値が設定されているので、振幅制限増幅回路40の出力信号波形55(つまり基本回路BC1の出力波形)は、図2(2)に示すように、波形ひずみ、デューティ変動をほとんど生じることなく、一定振幅の信号を出力し続けることができる。」 上記A?Cの記載及び関連する図面を参照すると、次のことがいえる。 (あ)上記Bの段落【0027】に、「ピーク値とボトム値との中点の電位が抵抗R1、R2の抵抗分割から求められ、この中点の電位を振幅制限増幅回路40の閾値(オフセット電圧値)として与えることによって、オフセット補償動作を行う。」と記載されており、上記記載において、抵抗R1、R2の抵抗分割から求められるピーク値とボトム値との中点の電位は、ピーク値とボトム値との「所定分圧値」であるということができる。 (い)上記Cの記載及び図2の波形図を見ると、図2(1)における「入力端子Tiにおける信号波形51」が「自動閾値設定回路10の出力信号波形54」を上回った部分の、対応する図2(2)における「振幅制限増幅回路40の出力信号波形55」は、略1.20Vとなり、図2(1)における「入力端子Tiにおける信号波形51」が「自動閾値設定回路10の出力信号波形54」を下回った部分の、対応する図2(2)における「振幅制限増幅回路40の出力信号波形55」は、略3.0Vとなっていることが見て取れる。すなわち、「信号波形(入力信号波形)51」-「出力信号波形(閾値波形)54」が正の場合の出力が「略1.20V」、「信号波形(入力信号波形)51」-「出力信号波形(閾値波形)54」が負の場合の出力が「略3.0V」となっており、「信号波形(入力信号波形)51」と「出力信号波形(閾値波形)54」との「差」に応じた増幅出力を得ているので、「振幅制限増幅回路40」は、入力信号の「差動増幅」を行っている回路であるということができる。 (う)図1において、「自動閾値設定回路10」は、「入力端子Ti」からの入力信号を受けて「振幅制限増幅回路40」の「閾値制御端子d」に対して「閾値」をフィードフォワードの信号として出力する回路であるということができる。 上記(あ)?(う)の事項を踏まえると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。) 「入力信号のピーク値を保持するピーク値検出・保持回路と、入力信号のボトム値を保持するボトム値検出・保持回路とを有し、 該ピーク値検出・保持回路からの該ピーク値と該ボトム値検出・保持回路からの該ボトム値との所定分圧値を閾値とする自動閾値設定回路と、 該入力信号と該自動閾値設定回路からの閾値とを入力として差動増幅を行なう振幅制限増幅回路と、をそなえ、 かつ、 該自動閾値設定回路が、該閾値をフィードフォワードの信号として該振幅制限増幅回路へ出力する、電圧増幅回路。」 (引用例2) D.「特許請求の範囲 利得可変増幅器の出力信号の振幅値および、直流レベルを検出し、該検出信号により、前記利得可変増幅器の利得及びオフセット電圧を制御する利得・オフセット制御回路において、出力正相信号の最大値及び最小値と出力逆相信号の最大値及び最小値の4つの信号の内、いずれかの3つの信号を検出する回路と、該3つの検出信号のうち最大値同志あるいは最小値同志の差(第1の差信号)を検出する回路と最大値と最小値の差(第2の差信号)を検出する回路と、前記第2の差信号とあらかじめ設けられた基準信号との差(第3の差信号)を検出する回路とを具備し、前記第1の差信号により前記利得可変増幅器のオフセットを制御し、また前記第3の差信号により前記利得可変増幅器の利得を制御することを特徴とする利得・オフセット制御回路。」(第1頁左下欄第3?19行) E.「〔発明の実施例〕 以下、本発明の一実施例による利得・オフセット制御回路を第3図により説明する。第3図において、1,2,3,4は第1図と同じ内容を示す記号であり、又13は、上記2及び3の出力信号の差信号を検出する差動増幅器、14は、該差動増幅器13の出力信号と、あらかじめ設定された基準電圧(Vref=b)との差信号を検出する差動増幅器、15は、前記2及び4の出力信号の差信号を検出する差動増幅器である。 次に、第2図を用いて、本実施例の動作原理を説明する。本回路方式は、利得可変増幅器の正負出力相補信号の最大値、最小値の情報V1?V4のうち、いずれか3つの情報を演算することにより制御信号を生成するものである。第3図の実施例は、正相出力の最大値(審決注:この記載は、明らかに「最小値」の誤記であると認められる。)V1、最大値V2と、逆相出力の最大値V3の3つを検出した場合の実施例である。 今、次の2つの演算を定義する。 A=V3-V2=Δa B=V2-V1=b+Δb (2) まず、差動増幅器15で(2)式のA信号を生成し、利得可変増幅器1の入力端子に帰還し、A=Δa→0とする帰還制御系でオフセット電圧のみを制御する。次に、差動増幅器13で、(2)式のB信号を生成し、差動増幅器14で(B-b)信号を生成し、利得可変増幅器1の利得可変端子に帰還し、B-b=Δb→0とする帰還制御系で利得制御誤差のみを独立に抑圧するものである。」(第2頁左下欄末行?第3頁左上欄第8行) 上記Eの記載において、「差動増幅器13」は、「利得可変増幅器1」の出力信号の最大値と最小値を入力して差動増幅を行う回路であるということができ、また、「差動増幅器14」は、差動増幅器13の出力信号である「B信号」を、利得可変増幅器1に対する利得制御信号である「B-b=Δb」信号に変換する回路であるということができる。 よって、引用例2の第3図に記載のものにおける「最大値検出回路2」、「最小値検出回路3」、「差動増幅器13」、及び「差動増幅器14」よりなる帰還制御系は、実質的に、「出力信号の最大値と最小値とを入力として差動増幅を行なって、利得制御信号に変換し、フィードバック信号として利得可変増幅器へ供給する差動増幅回路」を備えるということができる。 したがって、上記D,Eの記載及び関連する図面を参照すると、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の発明」という。) 「出力信号の最大値と最小値とのレベル差から振幅情報を検出して、該出力信号の振幅に応じた利得制御信号をフィードバック信号として利得可変増幅器へ供給する帰還制御系が、上記出力信号の最大値と最小値とを入力として差動増幅を行なって、上記利得制御信号に変換し、フィードバック信号として上記利得可変増幅器へ供給する差動増幅回路をそなえるようにすること。」 (引用例3) F.「本発明の光受信回路の構成を第1図によって説明する。 本発明の光受信回路は、受光素子1、電流電圧変換部2、平均値ホールド部3、ピーク値ホールド部4、差動増幅部5、コンパレータ6よりなる。 ・・・(中略)・・・ (4)ピーク値ホールド部4は、電流電圧変換部2の出力Uのピーク値(上限値又は下限値)を検出しこれを保持する。 信号Uの大きさは、光信号の大小によって変動する。光信号の大小は、ピーク値Pを求める事によって分る。ピーク値Pというのは光信号の大小を表わすものである。 増幅された信号Uは、本質的には、矩形波であって、HレベルとLレベルの電圧信号よりなる。これをU_(h)、U_(l)と書く。実際には波形がなまるので、矩形波より正弦波に近いものとなっているが、本質的には二値レベルよりなる。 正パルス、負パルスを扱う場合によって異なるが、U_(h)>U_(l)とすると、振幅は(U_(h)-U_(l))である。 ピーク値PはU_(h)である。 平均値Qは(U_(h)+U_(l))/2である。 (5)差動増幅部5は、電流電圧変換部2の信号Uと、平均値Qの差を増幅する。UはU_(h)とU_(l)の集合であり、QはU_(h)とU_(l)の平均であるから、これらを差動増幅すると、U_(h)とU_(l)を的確に分ける事ができる。 つまり、U=U_(h)であれば、 U-Q=(U_(h)-U_(l))/2 (4) となり、U=U_(l)であれば、 U-Q=-(U_(h)-U_(l))/2 (5) となる。ところが、振幅(U_(h)-U_(l))は光信号の大小によって変化するので、(4)、(5)式の結果は一定値でない。 差動増幅部5の出力レベルが、光信号の大小によらないようにするため、増幅率Aを、ピーク値Pの値によって変える。ピーク値Pは光信号の大きさを表わしている。 光信号の大小の影響を除くため、Pが大きい時に、増幅率Aを小さくする。 Pが小さい時には、Aを大きくする。 このようにすると、差動増幅器5の出力は、光信号の大小に拘わらずほぼ一定とする事ができる。 つまり、差動増幅部5は、自動利得制御回路と同様の働きをしているのである。 こうするためには、差動増幅部5のバイアス電流をピーク値Pによって制御するようにする。」(第3頁左上欄第17行?第4頁左上欄末行) 上記Fの記載及び第1図に示される光受信回路において、「ピーク値ホールド部4」は、「入力信号の振幅に応じた利得制御信号をフィードフォワード信号として自動利得制御回路へ供給する利得制御部」として機能しているということができる。 (引用例4) G.「従来技術 デジタル信号を伝送する光通信システムにおける光受信回路は、従来、一般に、第1図または第2図に示す如く補助機能を有するように構成されている。・・・(中略)・・・ 第2図の回路においては、受光素子1を含む光電変換回路2から出力される電気信号は、可変利得増幅器4に入力される一方、抵抗RとコンデンサCとからなる平滑回路にも入力される。電気信号はその平滑回路で平滑されて直流平均電圧とされて直流増幅器5に入力される。その直流増幅器5の出力は、可変利得増幅器4の利得制御入力に結合される。かくして、電気信号の直流平均電圧に従って可変利得増幅器4が自動利得制御され、その自動利得制御により安定した出力レベルの信号が可変利得増幅器4から信号出力として出力される。」(第2頁左上欄第1行?右上欄第9行) 上記Gの記載及び第2図に示される光受信回路において、「抵抗RとコンデンサCとからなる平滑回路」によって得られる「直流平均電圧」は、「可変利得増幅器4」への入力信号の振幅に応じた信号となっているということができる。 よって、上記「平滑回路」は、「入力信号の振幅に応じた利得制御信号をフィードフォワード信号として可変利得増幅器へ供給する利得制御部」として機能しているということができる。 4.対比 本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、まず、引用例1記載の発明における「ピーク値検出・保持回路」、「ボトム値検出・保持回路」、「自動閾値設定回路」、「電圧増幅回路」は、それぞれ、本願発明における「ピーク検出回路」、「ボトム検出回路」、「自動閾値設定部」、「信号増幅回路」に相当する。 また、引用例1記載の発明における「振幅制限増幅回路」と本願発明における「自動利得制御増幅部」とは、ともに「増幅部」である点で共通する。 よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また相違する。 (一致点) 本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、 「入力信号のピーク値を保持するピーク検出回路と、入力信号のボトム値を保持するボトム検出回路とを有し、 該ピーク検出回路からの該ピーク値と該ボトム検出回路からの該ボトム値との所定分圧値を閾値とする自動閾値設定部と、 該入力信号と該自動閾値設定部からの閾値とを入力として差動増幅を行なう増幅部と、をそなえ、 かつ、 該自動閾値設定部が、該閾値をフィードフォワードの信号として該増幅部へ出力する、信号増幅回路。」 である点。 (相違点) 本願発明においては、「増幅部」が「自動利得制御増幅部」であって、「ピーク値とボトム値とのレベル差から振幅情報を検出して、入力信号の振幅に応じた利得制御信号をフィードフォワード信号として自動利得制御増幅部へ供給する利得制御部」をそなえるものであり、かつ、該「利得制御部」が「ピーク検出回路からのピーク値とボトム検出回路からのボトム値とを入力として差動増幅を行なって、利得制御信号に変換し、フィードフォワードの信号として自動利得制御増幅部へ供給する差動増幅回路」をそなえるものであるのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなものではない点。 5.当審の判断 そこで、上記相違点について検討する。 上記したように、引用例2には、「出力信号の最大値と最小値とのレベル差から振幅情報を検出して、該出力信号の振幅に応じた利得制御信号をフィードバック信号として利得可変増幅器へ供給する帰還制御系が、上記出力信号の最大値と最小値とを入力として差動増幅を行なって、上記利得制御信号に変換し、フィードバック信号として上記利得可変増幅器へ供給する差動増幅回路をそなえるようにする」発明が記載されている。 上記引用例2記載の発明における利得制御の方式は、出力信号の振幅に応じた利得制御信号をフィードバック信号として利得可変増幅器へ供給するフィードバック方式のものであるが、利得制御の方式として、入力信号の振幅に応じた利得制御信号をフィードフォワード信号として自動利得制御回路へ供給するフィードフォワード方式は、上記引用例3,4に見られるような周知技術にすぎない。 よって、引用例2記載の発明の技術を、フィードフォワード方式のものに変更して引用例1記載の発明に対して適用することは、上記周知技術を参酌すれば、当業者が適宜になし得ることにすぎない。 したがって、引用例1記載の発明において、上記引用例2記載の発明及び上記引用例3,4に見られる周知技術を参酌して、「増幅部」を「自動利得制御増幅部」とし、「ピーク値とボトム値とのレベル差から振幅情報を検出して、入力信号の振幅に応じた利得制御信号をフィードフォワード信号として自動利得制御増幅部へ供給する利得制御部」をそなえるものとし、かつ、該「利得制御部」を「ピーク検出回路からのピーク値とボトム検出回路からのボトム値とを入力として差動増幅を行なって、利得制御信号に変換し、フィードフォワードの信号として自動利得制御増幅部へ供給する差動増幅回路」をそなえるものとすることは、当業者が適宜になし得ることである。 そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1,2に記載の発明及び上記周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-25 |
結審通知日 | 2008-07-01 |
審決日 | 2008-07-14 |
出願番号 | 特願2002-111061(P2002-111061) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H03F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉村 博之、畑中 博幸 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
菅原 浩二 飯田 清司 |
発明の名称 | 信号増幅回路 |
代理人 | 真田 有 |