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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1183779
審判番号 不服2005-19583  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-11 
確定日 2008-08-28 
事件の表示 平成 7年特許願第506478号「顕微鏡検査プローブ」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 2月16日国際公開、WO95/05000、平成 9年 2月25日国内公表、特表平 9-502018〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件出願は、平成5年8月8日に出願されたイスラエル国出願(106,613)に基づく優先権を主張し、日本国を指定国として、平成6年8月5日に出願された国際出願である。
本件出願について、平成15年5月6日(発送日)に拒絶理由が通知され、それに対して同年10月9日付けで手続補正がなされたものの、平成17年7月12日に前記手続補正による補正の却下の決定とともに拒絶査定の謄本の発送がなされ、この査定に対し、同年10月11日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年11月8日付けで手続補正がなされた。
その後、当審において、平成19年8月14日(発送日)に拒絶理由が通知され、これに対して、平成20年2月14日付けで意見書ならびに手続補正書が提出された。

II.本願発明について
1.本願発明
本件出願に係る発明は、平成20年2月14日付け手続補正書によって補正された、特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「石英のマイクロピペット又は石英の光学的繊維から形成される超微細な石英プローブであって、
上記石英プローブの先端で、10ナノメータの直径まで引っ張られ先細りした端部を有する先端と、
上記先端において上記先細りの端部から数十マイクロメータにて屈曲した部分と、を備え、
上記プローブは、屈曲したプローブ構造を形成する片持ちはりとして装備され、
上記片持ち構造の偏位を監視するため、上記先端の上記屈曲した部分に形成され光学的に平らな研磨された領域である反射面をさらに備えたことを特徴とする石英プローブ。」

2.引用刊行物の記載事項
当審において通知された拒絶の理由で引用された、本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献1、3、4には、それぞれ以下の事項が記載されている。
(2-1)引用文献1(Shmuel Shalom, Klony Lieberman, Aaron Lewis, Sidney R. Cohen「A micropipette force probe suitable for near-field scanning optical microscopy」Review of Scientific Instruments,1992年9月,Vol.63, No.9,pp.4061-4065 )
なお、以下の摘記箇所の邦訳は当審で行ったものである。
(ア)第4061頁左欄第20?24行
「この論文で、我々は、グラス・マイクロピペットから信頼性の高い力プローブを生産するための単純な技術を示します。グラス・マイクロピペットは近視野走査光学顕微鏡(NSOM)の光のサブ波長スポットを作るために広範囲に使用されている。」
(イ)第4061頁右欄第31行?第4062頁右欄第31行
「この技術および提案された組み合わせは、第1図に概略が示されている。色素を埋設したプラスチックプラグがピペットの内側に形成され、その後、レーザービームがこのチップに指向されて色素から非常に強い蛍光を発生する。この方法によって非常に強い光源を受ける他に、励起は走査プローブとは結合されず、ピペットの幾何学的形状に影響を受けない。このことは、カンチレバー構造のピペットをNSOMに使用することを許し、一方、第1図に示されているように、力顕微鏡の標準的な方法で垂直および横方向の表面力によるカンチレバーの撓みを同時に測定することを許す。第2図はこのような小さいミラーを取り付け、色素を埋没したプラスチックを先端に充填した力検出屈曲ピペットを示す。
II.実験方法
A.先端の準備
先端はアルミノ珪酸塩ガラスの細管で作る。工程を第3図に示す。電気生理学で使用されるガラスマイクロ電極の重力引き伸ばし装置(Narishige Scientific Instruments Laboratory)のチャックで、細管は長手軸が垂直になるように向きを合わせられる。細管は直径1mmのニッケル-コンスタンタン線でできた直径6.5mmのコイルの中心に置かれる。ここで、マイクロ電極引き伸ばし装置の2つのチャックは細管の2つの端部に結合される。コイル状のフィラメントは抵抗加熱され(コイル長10mmに対して10A,110V)、ピペットは、軟化するにつれて、コイルの中心部分の領域で伸び始める。元の長さ1cmが約10cmまで伸びたところで、下方のチャックが落下してマイクロスイッチを起動し、加熱を停止させる。同時に細管は中央部で分離され、各々の端部に小さな孔を有し2つの長くて細い部分を持つマイクロピペットが残る。これらは、力センサーを作るのに使われる先端である。下方と上方のチャックにある微小ピペットの構造は異なっており、上方の先端の円錐の角度が下方のものより大きくなっている。
先端/表面の軸に沿う方向の力を検出することを可能にする曲げを作るために、マイクロピペットの先端は、ピペット端部を上方に曲げる、小さなブンゼン炎による加熱エアー上を短時間通過させられる。始めに、カンチレバーは検出のために反射法を用いた走査型力顕微鏡で試験されるので、ミラーをカンチレバーに取り付けることが必要である。カバーガラスの小片にアルミコートし、これを割って、ミラーの小さな部品(50μm×100μm×100μm)を作る。これらの部品は、その後カンチレバーに接着される。」
(ウ)第4063頁左欄第18?33行
「A.マイクロピペットプローブ特徴
ピペットは、走査電子顕微鏡 (SEM)により広く特徴づけられた。図4は、異なる先端幾何条件で生産されたピペット力センサー先端のSEM顕微鏡写真を示している。図4(a)には、先端近傍の10μmの先端プロフィールは、上方部分に比べ、はるかに小さな円錐角を持っていることを示している。我々は、図4(a)に示された先端の円錐角は約5度未満であり、一方、先端の上部では、約20度(顕微鏡写真では見えていない)と推測する。これらの固有の特性は、この図で見られた先端を作成するために使用された重力引き伸ばし装置に起因する。熱源としてCO2レーザーを備えた水平引き伸ばし装置を使用して引き伸ばされたピペットは、NSOMにふさわしい先端口径7.5nmのサイズで生産されることができる。これらのピペットは、一般的なAFM適用に、より良い特性を示すに違いない。」
(エ)第4065頁左欄第11?17行
「高い水平分解能が非常に鋭い先端を要求する表面の力像分析の観点からすると、上記された方法によって、現在まで形成された最も鋭いピペット先端は7.5nmの外径を有しており、電子線堆積ならびに集中イオンビーム方法を使用して生産された最良の曲率半径と比肩し得る。」
(オ)第4062頁には、以下の脚注とともに図面が図示されている。
「第1図 カンチレバー構造のマイクロピペットを近視野顕微鏡及び光検出に同時に使用することを可能にする反射励起技術の概略表示。先端からの蛍光放射は光画像を作るために用いられ、一方、ピペットの撓みは力像のためにモニターされる。」
「第2図 微小ミラーを取り付け、色素を充填した屈曲マイクロピペットの蛍光顕微鏡写真。色素は内部を完全に充填し、小さい蛍光プラグを形成するために先端にある孔の中に達しているのを見ることができる。」
「第3図 ガラスのマイクロピペットを作るために用いられる工程の概略。フィラメントは抵抗加熱されてガラス細管を軟化させ、下方のチャックはガラスを2つのピペットに分離するまで引っ張るのに十分な重量を有する。」

これらの記載からして、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「アルミノ珪酸塩ガラスのマイクロピペットから形成されたプローブであって、
前記プローブの先端で、最細7.5ナノメータの直径まで引き伸ばされて先細りした端部を有する先端と、
上記先端に、垂直および横方向の撓みを同時に測定可能にする曲げが形成され
上記プローブは、屈曲形状のカンチレバーとして使用され
上記カンチレバーの撓みを測定するため、上記曲げ部分に小さいミラーが取り付けられたプローブ。」

(2-2)引用文献3(特開平5-187862号公報)
(カ)【特許請求の範囲】の欄
「【請求項1】試料に対し、この試料との間で原子間力が働く間隔に配置されたレバーと、このレバーの2次元の変位量を検出する変位検出手段と、この変位検出手段により検出された2次元の変位量から少なくとも前記試料に対する前記レバーの摩擦係数を求める解析手段とを具備したことを特徴とする表面解析装置。」
(キ)段落【0013】
「図1は表面解析装置の構成図である。試料10の上方には2次元レバー11が配置されている。この2次元レバー11は、タングステンの四角柱(1辺が1?100μm、長さ 0.1?数mm)の先端を折り曲げ、かつその先端を電解エッチングにより鋭利に加工し、先端の半径を数nm?数 100nmに形成したものである。」
(ク)段落【0032】
「又、上記一実施例では回転ミラー12bを設けたが、図5に示すように2次元レバー32における折り曲げた部分に表面粗さの小さい平坦部分33を形成し、この平坦部分33をミラーとして使用してもよい。」
(ケ)【図5】
「レバーの折り曲げられた部分に平坦面が形成され、その平坦面にレーザー光が照射されること」が図示されている。

(2-3)引用文献4(特表平4-505653号公報)
(コ)請求の範囲の欄
「1.表面上の標本領域に対応する情報を発生させる方法にして、前記表面に隣接する光の近視野であって、前記表面に対して垂直でかつ前記表面に向けた方向に強さが増し、前記表面に対して概ね平行な面内にて概ね一定の強さを有する近視野を形成する段階と、標本領域に隣接する近視野の特性を測定して出力情報を発生させる段階とを備えることを特徴とする方法。」
(サ)第2頁左下欄第22行?同右下欄第7行
「本発明は近視野光学顕微鏡検査法を行うための方法およびその装置を提供するものである。この方法は、近視野内の光子の標本変調トンネル現象を利用してその標本に関する情報を得るものである。…
近視野の好適な発生源は全内反射(TIR)光ビームである。好適な実施例において、この光ビームはプリズム内面から反射させる。これは、強さが標本表面に対して直角に指数関数的に低下する一時的視野を形成する。プローブをこの一時的視野内にて動かし、かかるプローブは尖鋭な石英光ファイバであることが望ましい。このプローブは波長以下(即ち、約500nm以下)の小さい寸法まで尖鋭にした先端を備えている。」

3.対比
本願発明と、引用発明とを対比する。
引用発明の「プローブの先端で、最細7.5ナノメータの直径まで引き伸ばされて先細りした端部を有する」ことは、本願発明の「超微細なプローブ」に相当する概念であることは明らかであって、さらに、本願発明の「10ナノメータの直径まで引っ張られ先細りした端部を有する」ことを包含するものである。
また、引用発明の「プローブは、屈曲形状のカンチレバーとして使用され」ることは、引用文献1の図1ならびに当業者の技術常識を勘案すれば、本願発明の「屈曲したプローブ構造を形成する片持ちはりとして装備され」ることと実質的に同義であることは明らかである。
そうすると、引用発明の「カンチレバーの撓みを測定する」ことは、本願発明の「片持ち構造の偏位を監視する」ことと、実質的に同義である。
そして、引用発明の「曲げ部分に小さいミラーが取り付けられ」ることと、本願発明の「屈曲した部分に形成され光学的に平らな研磨された領域である反射面をさらに備え」ることとは、「屈曲した部分に設けられた反射面をさらに備え」る点で共通している。

してみると両者は、
「マイクロピペットから形成される超微細なプローブであって、
上記プローブの先端で、10ナノメータの直径まで引っ張られ先細りした端部を有する先端と、
上記先端において屈曲した部分と、を備え、
上記プローブは、屈曲したプローブ構造を形成する片持ちはりとして装備され、
上記片持ち構造の偏位を監視するため、上記先端の上記屈曲した部分に設けられた反射面をさらに備えたプローブ。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)「プローブ」が、
本願発明は「石英のマイクロピペット」から形成されるのに対し、引用発明は「アルミノ珪酸塩ガラスのマイクロピペット」から形成されたものである点。
(相違点2)「屈曲した部分」が、
本願発明は「先細りの端部から数十マイクロメータにて」とされているのに対し、引用発明は明示がない点。
(相違点3)「屈曲した部分に設けられた反射面」が、
本願発明は「屈曲した部分に形成され光学的に平らな研磨された領域」であるのに対し、引用発明は「曲げ部分に小さいミラーが取り付けられた」ものである点。

4.検討・判断
そこで、上記各相違点について検討する。
(4-1)相違点1について
引用文献4について行った前記摘記(サ)からして、本願発明プローブの用途の1つとして明細書に例示されている近視野光学顕微鏡用のプローブを「石英」で形成することは、従来からよく知られた事項にすぎない。
また、「石英のマイクロピペット」先端の微細化が、引き伸ばしによって可能なことは、例えば、「Aaron Lewis and Klony Lieberman“The Optical Near Field and Analytical Chemistry”ANALYTICAL CHEMISTRY,1991年6月1日,Vol.63, No.11,pp.625-638」の第626頁中央欄第12?27行(我々は適切なサブ波長口径の金属コートしたグラス・マイクロピペットを開発した。… 現在では、Sutter Instruments(Novato, CA)によって開発されたレーザー引き伸ばし装置により、先端直径<100Åの石英ピペットを生産することができる。)にも記載されているとおり、本件出願の優先権主張の日前に当業者によく知られた事項にすぎない。
してみると、引用発明の「アルミノ珪酸塩ガラスのマイクロピペット」に代え、従来から近視野光学顕微鏡用のプローブ素材として知られている「石英」からなる「石英のマイクロピペット」を採用する点に格別の困難性を見出すことはできない。
(4-2)相違点2について
試料とプローブとの間に発生する力を検出して画像化する原子間力顕微鏡において、プローブを屈曲させて片持ちはり構造としたプローブの屈曲部を先端から数十マイクロメータとすることは、プローブ自体の剛性や加工性等を考慮して当業者が適宜選定し得る常識的な範囲内の事項にすぎない。
そして、本願発明の「屈曲」が、垂直力検出のために片持ち構造を付与するために行われたこと(本件出願明細書第3頁第28行?第4頁18行参照)を勘案すると、試料とプローブとの間に発生する力による「片持ち構造の偏位を監視する」ため、屈曲した部分をプローブの「先細りの端部から数十マイクロメータ」とすることは、上記原子間力顕微鏡の場合と同様に、当業者が適宜選定し得る常識的な範囲内の事項にすぎず、また、そのように限定することに格別な臨界的意義も見出せない。
してみると、相違点2は当業者が適宜選定し得る範囲の常識的な事項にすぎず、この点に格別の創作性を見出すことはできない。
(4-3)相違点3について
引用文献3について行った前記摘記(カ)?(ケ)からして、原子間力顕微鏡の屈曲したレバーの変位量を検出するための光反射面をレバーに設けるに際し、レバーにミラーを取り付ける態様に代え、レバーの屈曲部自体に平坦面を形成して光反射面とすることは、本件出願の優先権主張の日前に公知の事項にすぎない。
ここで、本願発明の「プローブ」は、試料とプローブとの間に発生する力による「片持ち構造の偏位を監視する」という範囲において、前記レバーと同等の機能を果たすものである。
そうすると、引用発明において、プローブの偏位を検出するために「曲げ部分に小さいミラーを取り付ける」構成に代え、「屈曲した部分に光学的に平らな領域を形成する」よう構成する程度のことは、当業者が格別の困難を伴うことなくなし得る事項である。
そして、光ファイバを所望形状に加工する手法として、「研磨」による手法は、例えば(a)特開昭59-97832号公報、(b)特開昭64-29809号公報、(c)特開昭64-71659号公報にも記載されているように、非常によく知られた周知の手法にすぎず、さらに前記(b)には、石英を研磨加工することも記載されている。
してみると、引用発明の「曲げ部分に小さいミラーを取り付ける」構成に代え、「屈曲した部分に光学的に平らな領域を形成」するとともに、その領域を「研磨」によって形成するよう構成することは、引用文献3ならびに前記周知の手法に基づいて当業者が容易に想到し得た事項であり、相違点3にも格別の進歩性を見出すことはできない。

そして、本願発明が奏する作用効果も、引用文献1、および、引用文献3,4ならびに周知事項から当業者が想定可能な作用効果を超えるものでもない。
してみると、本願発明は、引用発明、および、引用文献3,4に記載された技術的事項ならびに周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである。

5.むすび
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-25 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2008-04-14 
出願番号 特願平7-506478
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 洋平秋田 将行山口 剛小野 忠悦  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 黒田 浩一
田邉 英治
発明の名称 顕微鏡検査プローブ  
代理人 青山 葆  

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