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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1183866
審判番号 不服2007-8297  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-22 
確定日 2008-09-04 
事件の表示 特願2005-183216「半透過型液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月11日出願公開、特開2007- 3778〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成17年6月23日の出願であって、平成18年10月4日及び平成19年1月12日に手続補正がなされ、同年2月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月22日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに同年4月11日に手続補正がなされたものである。



II.平成19年4月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年4月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成19年4月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1を、以下のように補正することを含むものである。
「【請求項1】
透過領域を形成する透過画素電極と、反射領域を形成する反射画素電極とを有する第1基板と、
色材を用いて形成されるカラーフィルタと、前記カラーフィルタの周囲に設けられた遮光膜とを有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とに挟持された液晶とを備える半透過型液晶表示装置であって、
前記第2基板は、
前記反射領域の前記色材に設けられ、少なくとも二辺が前記色材よりも仕上がり寸法精度の高い前記遮光膜上に構成される開口部と、
前記開口部を埋めつつ、前記透過領域と前記反射領域とで前記液晶層の厚みが変わるように前記色材を覆うように成膜される樹脂膜と、
前記遮光膜が配置されている位置の前記樹脂膜上に柱状スペーサをさらに備え、
前記開口部の少なくとも二辺をなす前記遮光膜の形状が前記色材によって異なり、前記開口部の面積が変化していることを特徴とする半透過型液晶表示装置。」(以下「本願補正発明」という。)


2.独立特許要件
本件補正は、補正前の請求項1の「遮光膜」が、「前記色材よりも仕上がり寸法精度の高い」ものであるとの限定、同じく「遮光膜」及び「開口部」について、「前記開口部の少なくとも二辺をなす前記遮光膜の形状が、前記色材によって異なり、前記開口部の面積が変化している」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められるところ、以下に述べるとおり、本願補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

1〕刊行物記載の発明
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2000-29012号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【請求項2】 液晶層を挟んで互いに対向して貼り合わされる一対の基板のうちの一方側の基板上には、外光を反射する反射部と背面光源からの光を透過する透過部とを1画素内に構成する画素電極が形成され、該一対の基板のうちの他方側の基板上には、カラーフィルターが形成されてなる液晶表示装置において、
前記他方側の基板上における前記反射部に対応する領域は、カラーフィルターが形成された領域とカラーフィルターが形成されていない領域とにより構成されてなり、
前記カラーフィルターは、前記画素電極領域と前記カラーフィルター形成領域との貼り合わせずれが発生した際も、該カラーフィルターが形成されていない領域の面積が一定となるように形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】 前記他方側の基板上における前記透過部に対応する領域は、カラーフィルターが形成された領域により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】 前記カラーフィルタが形成された領域と、前記カラーフィルタが形成されていない領域との境界に、ブラックマスクが形成されていることを特徴とする請求項1および2に記載の液晶表示装置。」
(イ)「【0014】本発明は、上述したような反射型または透過反射両用型の液晶表示装置におけるカラーフィルターの形成に関する問題点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、反射型または透過反射両用型の液晶表示装置におけるカラーフィルターを従来の液晶表示装置におけるカラーフィルターと比べてプロセスを増加させることなく形成し、画素電極領域とカラーフィルター領域との貼り合わせずれが発生した場合であっても、色純度が高く明るいカラー表示を実現した液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の液晶表示装置は、液晶層を挟んで互いに対向して貼り合わされる一対の基板のうちの一方側の基板上には、反射電極が形成され、該一対の基板のうちの他方側の基板上には、カラーフィルターが形成されてなる液晶表示装置において、前記他方側の基板上における前記反射電極に対応する領域は、カラーフィルターが形成された領域とカラーフィルターが形成されていない領域とにより構成されてなり、前記カラーフィルターは、前記反射電極領域と前記カラーフィルター形成領域との貼り合わせずれが発生した際も、該カラーフィルターが形成されていない領域の面積が一定となるように形成されていることを特徴としており、そのことにより、上記目的は達成される。
【0016】また、本発明の液晶表示装置は、液晶層を挟んで互いに対向して貼り合わされる一対の基板のうちの一方側の基板上には、外光を反射する反射部と背面光源からの光を透過する透過部とを1画素内に構成する画素電極が形成され、該一対の基板のうちの他方側の基板上には、カラーフィルターが形成されてなる液晶表示装置において、前記他方側の基板上における前記反射部に対応する領域は、カラーフィルターが形成された領域とカラーフィルターが形成されていない領域とにより構成されてなり、前記カラーフィルターは、前記画素電極領域と前記カラーフィルター形成領域との貼り合わせずれが発生した際も、該カラーフィルターが形成されていない領域の面積が一定となるように形成されていることを特徴としており、そのことにより、上記目的は達成される。
【0017】なお、このとき、前記他方側の基板上における前記透過部に対応する領域は、カラーフィルターが形成された領域により構成されていることが望ましい。
【0018】また、このとき、前記カラーフィルタが形成された領域と、前記カラーフィルタが形成されていない領域との境界に、ブラックマスクが形成されていることが望ましい。
【0019】以下、本発明の作用について簡単に説明する。
【0020】本発明によれば、液晶層を挟んで互いに対向して貼り合わされる一対の基板のうちの一方側の基板上には、反射電極が形成され、該一対の基板のうちの他方側に基板上における該反射電極に対応する領域には、カラーフィルターが形成された領域とカラーフィルターが形成されていない領域とが形成されてなる液晶表示装置において、このカラーフィルターは、前記反射電極領域とカラーフィルター形成領域との貼り合わせずれが発生した際も、カラーフィルターが形成されていない領域の面積が一定となるように形成されていることを特徴としていることにより、カラーフィルター作成時におけるカラーフィルターエッジ部の仕上がりのばらつきやパネル作成時における基板の貼り合わせずれが発生した際でも、液晶表示装置の明るさや色調などの光学特性のばらつきを最小限にすることが可能となっている。
【0021】なお、外光を反射する反射部と背面光源からの光を透過する透過部とを1画素内に構成する画素電極が形成された液晶表示装置においては、前記他方側の基板上における前記透過部に対応する領域をカラーフィルターが形成された領域により構成することで、色純度の高い表示を行うことが可能となる。
【0022】また、前記カラーフィルタが形成された領域と前記カラーフィルタが形成されていない領域との境界に、カラーフィルターエッジ部の仕上がりのばらつきよりも広い線幅のブラックマスクを形成することで、カラーフィルターエッジ部における仕上がりにばらつきが生じた際でも、色純度やコントラストなどの表示特性のばらつきを最小限にすることが可能となる。
【0023】
・・・(略)・・・。
【0024】(比較例1)本発明の実施の形態の説明を容易にするため、まず本発明の比較例1における液晶表示装置について図面を用いて説明する。図1(a)は、本発明の比較例1における反射型液晶表示装置の画素電極部分を示した拡大平面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA-A´線の断面を示した拡大断面図である。
【0025】・・・(略)・・・。
【0026】なお、図1および図2においては、カラーフィルター11A、11B、11Cと画素電極である反射電極3以外の構成については省略している。また、反射電極3の形状については、図示するような長方形でなくても構わない。
【0027】・・・(略)・・・。
【0028】・・・(略)・・・。
【0029】・・・(略)・・・。
【0030】・・・(略)・・・。
【0031】・・・(略)・・・。
【0032】ここで、本発明の比較例1について図1を用いて説明する。図1(a)および図1(b)に示すように、下側基板1上には反射電極3が所定の形状に形成されており、それに対向するカラーフィルター基板2上にはカラーフィルター11A、11B、11Cおよび透明電極4がそれぞれ形成されている。この下側基板1およびカラーフィルター基板2上に形成された反射電極3および透明電極4との間には液晶層5が挟持されている。
【0033】この比較例1は、図1(a)に示すように、上述したような従来のカラーフィルターの材料や膜厚などを調節する方法に替わって、カラーフィルター基板2上の反射電極3に対応する領域に、色純度の高い透過型液晶表示装置用のカラーフィルターを形成するとともに、カラーフィルターを形成しない領域(B)を設けていることを特徴としている。そして、このカラーフィルターが形成されていない領域(B)により白を表示させ、色純度の高いカラーフィルターと混色することにより、反射型の液晶表示装置や透過反射両用型の液晶表示装置における反射領域に必要な明るい表示を実現することが可能となっている。
【0034】なお、ここでは画素電極3を全て反射領域とした反射型の液晶表示装置を比較例1として説明したが、例えば図3に示すような画素電極の一部に透過領域8と反射領域3とを有するような透過反射両用型の液晶表示装置の場合についても同様である。」
(ウ)引用刊行物1に記載された「画素電極」の「外光を反射する反射部」及び「光を透過する透過部」(上記摘記事項(ア)【請求項2】参照。)は、それぞれ「反射電極」及び「透明電極」といえるから、引用刊行物1には、「一方側の基板には、背面光源からの光を透過する透過領域を形成する透明電極と、外光を反射する反射領域を形成する反射電極とを1画素内に構成する画素電極が形成されている」ことが記載されている。
(エ)引用刊行物1のブラックマスクは、カラーフィルターが形成された領域とカラーフィルターが形成されていない領域との境界に形成されるから(上記摘記事項(ア)【請求項4】及び同(イ)【0022】参照。)、引用刊行物1の図3に示された透過反射両用型液晶表示装置において、前記ブラックマスクは、反射電極に対応する領域であって、前記カラーフィルターが形成されない領域の二つの辺に設けられる、といえる。

したがって、上記記載事項を総合すると、引用刊行物1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている、と認められる。

「背面光源からの光を透過する透過領域を形成する透明電極と、外光を反射する反射領域を形成する反射電極とを1画素内に構成する画素電極が形成された一方側の基板と、
カラーフィルターが形成された他方側の基板と、
前記一方側の基板と前記他方側の基板とが、液晶層を挟んで互いに対向して貼り合わされた透過反射両用型液晶表示装置であって、
前記他方側の基板は、
前記反射電極に対応する領域に、色純度の高い透過型液晶表示装置用のカラーフィルターを形成するとともに、カラーフィルターが形成されていない領域を設け、前記カラーフィルターが形成されない領域の二つの辺にブラックマスクを設ける透過反射両用型液晶表示装置。」


また、本願の出願前に頒布され、同じく原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2004-157273号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(オ)「【0029】
(実施形態1)
図1および図2は、本発明の実施形態1に係る透過反射両用型液晶表示装置の液晶パネルにおける要部の構成を模式的に示しており、この液晶表示装置は、透過表示モードと反射表示モードとを併用して表示するようにしたものである。尚、図1は、図2のI-I線断面を示しており、図2は、画素電極基板側から見た対向電極基板の平面を示している。
【0030】
本液晶表示装置の液晶パネルは、画素毎に反射用画素電極部21および透過用画素電極部22を有する画素電極基板としてのTFT基板20と、対向電極部11を有していて、該対向電極部11がTFT基板の反射用画素電極部21および透過用画素電極部22に対向するように配置された画素電極基板としてのカラーフィルタ基板10(以下、CF基板という)とを備えている。対向電極部11は、複数の画素に跨るように設けられており、反射用画素電極部21は画素の略中央に、また透過用画素電極部22は、反射用画素電極部21を取り囲むように配置されている。これら両基板10,20間には、液晶層40が配置されている。この液晶パネルは、電界により液晶分子40aの配列を変化させ、そのときの液晶層40の複屈折性を利用して入射光の通過/遮断を制御するようにしたECB(Electrically Controlled Birefringence )モードのものである。
【0031】
TFT基板20は、ガラスなどの絶縁性透明材からなる透明基板23を有する。この透明基板23上には、複数本の信号配線24と複数本の走査配線25とが互いに交差するマトリクス状に配置されている。信号配線24と走査配線25との各交点近傍には、ソース電極26a,ドレイン電極26bおよびゲート電極26cを有するTFT26(Thin Film Transistor)が設けられている。ソース電極26a,ドレイン電極26bと、ゲート電極26cとの間には、ゲート絶縁膜26dが配置されている。そして、ソース電極26aには信号配線24が、またゲート電極26cには走査配線25がそれぞれ接続されている。また、TFT26のドレイン電極26bは、画素の略中央部まで延設されているとともに、保護層27により覆われている。
【0032】
信号配線24、走査配線25およびTFT26上には、絶縁層27が積層されており、反射用画素電極部21および透過用画素電極部22は、その絶縁層27上に配置されている。反射用画素電極部21の略中央に対応する絶縁層27の部位には、該絶縁層27を層厚方向に貫通するコンタクトホール27aが形成されており、反射用画素電極部21は、このコンタクトホール27aを経由してTFT26のドレイン電極26bに接続されている。また、絶縁層27の基板23側には、画素電極部21,22との各間にそれぞれ信号蓄積用の付加容量Csを形成するための容量電極配線29が走査配線25に対し平行に延びるように配置されている。この容量電極配線29上には、TFT26のゲート絶縁膜26dが延設されている。
【0033】
反射用画素電極部21は、例えばアルミニウム(Al)など、光反射機能と電極機能とを具備する金属反射膜からなっており、この反射用画素電極部21に対応する液晶層40の領域は、反射表示モードに用いられる反射領域Rとされている。一方、透過用画素電極部22は、例えばITO(Indium Tin Oxide)など、光透過機能と電極機能とを具備する透明導電膜からなっていて、その内側の端面において反射用画素電極部21である金属反射膜の端面に接続している。この透過用画素電極部22に対応する液晶層40の領域は、透過表示モードに用いられる透過領域Tとされている。尚、本実施形態では、反射用画素電極部21の金属反射膜と透過用画素電極部22の透明導電膜とを端面同士が突き合わされた状態に接続するようにしているが、金属反射膜の端部と透明導電膜の端部とを重ね合わせて接続するようにしてもよい。さらには、透明導電膜を反射領域Rにも配置し、その透明導電膜の反射領域部分の上層に金属反射膜を配置して、それら透明導電膜の反射領域部分と金属反射膜とで反射用画素電極部21を構成するようにしてもよいし、上記透明導電膜の反射領域部分の下層に、少なくとも光反射機能を具備する反射膜を配置して、それら透明導電膜の反射領域部分と反射膜とで反射用画素電極部21を構成するようにしてもよい。
【0034】
反射用画素電極部21および透過用画素電極部22上には、所定の方向にラビング処理してなる配向膜30が設けられており、これにより、液晶層40におけるTFT基板20の界面近傍の液晶分子40aを該TFT基板20に対し平行にかつ所定の方向(図示せず)に配向させるようになっている。
【0035】
一方、CF基板10も、ガラスなどの絶縁性透明材からなる透明基板12を有する。この透明基板12の液晶層40側には、カラーフィルタ層13が画素毎に設けられている。その際に、反射用画素電極部21の略中央に対応するカラーフィルタ層13の部位には、該カラーフィルタ層13を層厚方向に貫通する無着色部としての開口部13aが設けられている。対向電極部11は、このカラーフィルタ層13上に設けられている。この対向電極部11も、透過用画素電極部22の場合と同じくITOなどの透明導電膜からなっている。また、対向電極部11上には、図1および図2にそれぞれ矢印で示す方向にラビング処理してなる配向膜14が設けられており、これにより、液晶層40におけるCF基板10との界面近傍の液晶分子40aを該CF基板10に対し平行にかつ所定の方向に配向させるようになっている。
【0036】
そして、本実施形態では、CF基板10は、反射領域Rにおける液晶層40の層厚Rdが、透過領域Tにおける液晶層40の層厚Tdよりも小さく(Rd<Td)なるように設けられた凸部15を有する。
【0037】
具体的には、カラーフィルタ層13の反射領域部分と、対向電極部11の反射領域部分との間には、対向電極部11の反射領域部分をTFT基板20の反射用画素電極部21に向かって隆起させるように透明層16が設けられており、上記の凸部15は、この透明層16により形成されている。また、カラーフィルタ層13の開口部13aには、透明層16の一部が充填されている。このような透明層16を形成する方法としては、例えば、ネガ型透明アクリル樹脂系感光材からなる膜を透明基板12上に形成し、それを活性光により所定形状にパターン露光した後、アルカリ現像液での現像および水洗を行って未露光部分を除去し、しかる後、熱処理を行うことが挙げられる。尚、エッチングによるパターニングや、印刷,転写などによって設けることもできる。」
(カ)引用刊行物2の液晶表示装置の液晶パネルにおいて、前記反射用画素電極部の略中央に対応するカラーフィルタ層の部位に設けられた開口部を埋めつつ、前記透過用画素電極部と前記反射用画素電極部とで液晶層の厚みが変わるように前記カラーフィルタ層を覆うように透明層が設けられること、が図1から見て取れる。

したがって、上記記載事項を総合すると、引用刊行物2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている、と認められる。

「透過用画素電極部と反射用画素電極部とを有するTFT基板と、カラーフィルタ層を有するカラーフィルタ基板とを備えた、透過反射両用型液晶表示装置の液晶パネルにおいて、前記反射用画素電極部の略中央に対応するカラーフィルタ層の部位に設けられた開口部を埋めつつ、前記透過用画素電極部と前記反射用画素電極部とで液晶層の厚みが変わるように前記カラーフィルタ層を覆うように透明層を設けたもの。」


2〕対比
本願補正発明と引用発明1を対比する。
a)引用発明1の「背面光源からの光を透過する透過領域」、「透明電極」、「反射領域」、「反射電極」、「一方側の基板」、「カラーフィルター」、「他方側の基板」、「透過反射両用型液晶表示装置」、「カラーフィルターが形成されていない領域」、「二つの辺」及び「ブラックマスク」は、それぞれ本願補正発明の「透過領域」、「透過画素電極」、「反射領域」、「反射画素電極」、「第1基板」、「カラーフィルタ」、「第2基板」、「半透過型液晶表示装置」、「開口部」、「二辺」及び「遮光膜」に相当する。
b)引用発明1の「カラーフィルター」が、色材を用いて形成されるものであることは当業者に自明である。
c)引用発明1の「前記一方側の基板と前記他方側の基板とが、液晶層を挟んで互いに対向して貼り合わされた透過反射両用型液晶表示装置」なる事項は、本願補正発明の「前記第1基板と前記第2基板とに挟持された液晶とを備える半透過型液晶表示装置」なる事項に相当する。
d)引用発明1の「前記反射電極に対応する領域に、色純度の高い透過型液晶表示装置用のカラーフィルターを形成するとともに、カラーフィルターが形成されていない領域を設け」なる事項は、本願補正発明の開口部が「前記反射領域の前記色材に設けられ」なる事項に相当する。

したがって、両者は、
「透過領域を形成する透過画素電極と、反射領域を形成する反射画素電極とを有する第1基板と、
色材を用いて形成されるカラーフィルタとを有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とに挟持された液晶とを備える半透過型液晶表示装置であって、
前記第2基板は、
前記反射領域の前記色材に設けられる開口部を備える半透過型液晶表示装置。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

相違点
〔相違点1〕:本願補正発明は、第2基板のカラーフィルタの周囲に遮光膜が設けられるのに対し、引用発明1は、カラーフィルタの周囲に遮光膜が設けられるかどうか不明な点。
〔相違点2〕:本願補正発明は、反射領域の色材に設けられる開口部の少なくとも二辺が遮光膜上に構成され、遮光膜が開口部の少なくとも二辺をなすのに対し、引用発明は、開口部の二辺に遮光膜が設けられる点。
〔相違点3〕:本願補正発明の遮光膜は、色材よりも仕上がり寸法精度の高いもので構成されるのに対し、引用発明1の遮光膜は、その仕上がり寸法精度が色材より高いかどうか不明な点。
〔相違点4〕:本願補正発明は、反射領域の色材に設けられた開口部を埋めつつ、透過領域と前記反射領域とで前記液晶層の厚みが変わるように前記色材を覆うように樹脂膜が成膜されるのに対し、引用発明1は、そのような樹脂膜がない点。
〔相違点5〕:本願補正発明は、遮光膜が配置されている位置の樹脂膜上に柱状スペーサを備えるのに対し、引用発明1は、そのような柱状スペーサがない点。
〔相違点6〕:本願補正発明は、遮光膜の形状が色材によって異なり、前記開口部の面積が変化しているのに対し、引用発明1は、遮光膜の形状が色材によって異ならず、開口部の面積も異なっていない点。

3〕判断
上記相違点につき検討する。
〔相違点1〕及び〔相違点2〕について
液晶表示装置において、カラーフィルタを備えた基板の該カラーフィルタを囲って遮光膜を設けることは本願出願前に周知であり(必要なら、特開平7-294722号公報(図4、図1とその説明。)、特開平7-325298号公報(【0019】、図1、図2)、特開昭62-269928号公報(第2頁左上欄第2?7行、第2図)、特開平2-10319号公報(第2頁左上欄第13行?同頁右上欄第1行、第1図)等参照。)、この周知技術を引用発明1に採用し、第2基板に遮光膜を設け、この遮光膜の上にカラーフィルタを設け、カラーフィルタ及び開口部の周囲を遮光膜が囲むようになして、上記〔相違点1〕及び〔相違点2〕に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。
〔相違点3〕について
クロム等の金属膜をフォトリソグラフィー法によりパターニングすることにより、高精度の遮光膜を製造することは本願出願前に周知であり(必要なら、特開2000-284720号公報(【0003】)、特開平9-244014号公報(【0026】、【0027】、【0033】)、特開平5-232313号公報(【0004】)、特開平8-166508号公報(【0003】)、特開平5-281410号公報(【0005】)等参照。)、この周知技術を引用発明1に適用して、開口部の遮光膜を色材よりも仕上がり寸法精度の高いもので構成するようになすことは、当業者が容易になし得ることである。
〔相違点4〕について
「透過用画素電極部と反射用画素電極部とを有するTFT基板と、カラーフィルタ層を有するカラーフィルタ基板とを備えた、透過反射両用型液晶表示装置の液晶パネルにおいて、前記反射用画素電極部の略中央に対応するカラーフィルタ層の部位に設けられた開口部を埋めつつ、前記透過用画素電極部と前記反射用画素電極部とで液晶層の厚みが変わるように前記カラーフィルタ層を覆うように透明層を設けたもの」の発明(引用発明2)は引用刊行物2において知られており、この引用発明2を引用発明1に適用して、上記〔相違点4〕に係る本願補正発明の技術的事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
〔相違点5〕について
遮光膜が配置されている位置の樹脂膜上に柱状スペーサを備える液晶表示装置は本願出願前に周知であり(例えば、特開2001-13487号公報(【0039】?【0044】、図2)、特開平11-212099号公報(【0016】?【0020】、図1)等参照。)、この点については格別のものとはいえない。
〔相違点6〕について
半透過型のカラー液晶表示装置において、カラーフィルターの開口部の形状を色材によって異ならせ、該開口部の面積を変化させるものは本願出願前に周知であり(例えば、特開2003-121833号公報(【0022】?【0027】、図2)、特開2003-215560号公報(【0036】、図15)、特開2004-258367号公報(【0067】、図9)等参照。)、この周知技術を引用発明1に適用して、上記〔相違点6〕に係る本願補正発明の技術的事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明によってもたされる効果は、引用刊行物1、2に記載された発明及び各周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4〕むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



III.本願発明について
1.本願発明
平成19年4月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成19年1月12日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載されたものであるところ、その請求項1は次の事項によって特定されるものである。

「【請求項1】
透過領域を形成する透過画素電極と、反射領域を形成する反射画素電極とを有する第1基板と、
色材を用いて形成されるカラーフィルタと、前記カラーフィルタの周囲に設けられた遮光膜とを有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とに挟持された液晶とを備える半透過型液晶表示装置であって、
前記第2基板は、
前記反射領域の前記色材に設けられ、少なくとも二辺が前記遮光膜上に構成される開口部と、
前記開口部を埋めつつ、前記透過領域と前記反射領域とで前記液晶層の厚みが変わるように前記色材を覆うように成膜される樹脂膜と、
前記遮光膜が配置されている位置の前記樹脂膜上に柱状スペーサをさらに備えることを特徴とする半透過型液晶表示装置。」(以下「本願発明」という。)

2.刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用刊行物1、2及び引用発明1、2は、前記II.2.1〕において記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記II.で検討した本願補正発明において、「遮光膜」が、「前記色材よりも仕上がり寸法精度の高い」ものであるとの限定、及び、「遮光膜」及び「開口部」についての「前記開口部の少なくとも二辺をなす前記遮光膜の形状が、前記色材によって異なり、前記開口部の面積が変化している」との限定を省いたものである。そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記II.2.で検討したとおり、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-04 
結審通知日 2008-07-08 
審決日 2008-07-23 
出願番号 特願2005-183216(P2005-183216)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02F)
P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 知喜福島 浩司  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 小牧 修
岩本 勉
発明の名称 半透過型液晶表示装置  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 吉田 茂明  

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