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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
管理番号 1183886
審判番号 不服2004-26257  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-24 
確定日 2008-09-04 
事件の表示 特願2000- 87010「無機質塗装板」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月 2日出願公開、特開2001-270025〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成12年3月27日の出願であって、平成16年3月3日付けで拒絶理由が通知され、同年5月28日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年1月24日付けで手続補正書が提出され、その後、平成19年4月12日付けで審尋がなされ、同年6月15日に回答書が提出され、同年10月25日付けで平成17年1月24日付けの手続補正が却下されるともに拒絶理由が通知され、平成19年12月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の発明は、平成16年5月28日付け及び平成19年12月27日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明は、以下のとおりである。
「無機質基板の表面に防水シーラー層を介して層内の最上部に無機塗膜を有する化粧層が形成され、この化粧層の上に光触媒機能を有する顔料を含む分散体による最上層が形成されている無機質塗装板であって、化粧層は、有機塗料から形成された着色層と、着色層の上の層内の最上部であって紫外線吸収剤を含有する無機塗料から形成されたクリアー層とから構成されていることを特徴とする無機質塗装板。」(以下、「本願発明」という。)

3 当審の拒絶理由の概要
当審で通知した拒絶理由は、本出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。



(引用刊行物)
引用例1:特開平11-115093号公報
引用例2:実願昭63-36508号(実開平1-141025号)の
マイクロフィルム
引用例3:特開平11-198282号公報
引用例4:特開平9-225389号公報
引用例5:特開平10-264283号公報

4 引用刊行物の記載事項
上記引用刊行物には以下の事項が記載されている。
a 引用例1(特開平11-115093号公報)
a-1 「【請求項1】 基材上の印刷層と、有機物を分解する光触媒活性物質を含む分解機能層と、両層間に配置され、前記光触媒活性物質の前記印刷層への作用を遮断する遮断層とを含む、化粧シート。
・・・
【請求項9】 前記印刷層と前記遮断層との間に配置された有機高分子コート層を含む、請求項1に記載の化粧シート。」(特許請求の範囲)
a-2 「本発明は、建築物の内装材又は外装材の製造・・・に使用される化粧シート及びその製造方法に関する。」(段落【0001】)
a-3 「本発明は、・・・紫外線の照射を受けて光触媒活性を示し有機物を分解する光触媒活性物質を化粧シートの表層に配することを基本構想とするものである。」(段落【0004】)
a-4「本発明にかかる化粧シート10は、全体に、基材12と、有機バインダーを含むインキを使用して基材12上に順次印刷されたベタ刷り層14a及び絵柄層14bから成る印刷層14と、化粧シートの表面物性を補強するための有機高分子コート層16と、表層である、有機物を分解する光触媒活性物質を含む分解機能層18と、前記コート層と前記分解機能層との間に配置され、前記光触媒活性物質の前記有機コート層及び印刷層への作用を遮断する遮断層20とを含む。」(段落【0010】)
a-5 「基材12は、化粧紙用として一般的に使用されている薄葉紙、ラテックスその他の樹脂を含浸した含浸紙、塩化ビニルのような自己支持性のプラスチックフィルム、蒸着フィルム、アルミ箔のような金属箔、不織布、合成紙のいずれでもよい。」(段落【0011】)
a-6 「分解機能層18は酸化チタンを含む被膜から成り、この被膜は・・・光触媒用アナターゼ型酸化チタン超微粒子を含む水分散ゾル液からゾル・ゲル法によって形成した・・・薄膜である。」(段落【0012】)
a-7 「印刷層14と分解機能層18との間に、・・・印刷層の保護のために設けられる遮断層20は、酸化チタンの分解作用が主として有機化合物に働くことから、無機化合物から成ることが好ましい。そこで、遮断層20を酸化珪素ゲルまたは多孔性アルミナで構成する。」(段落【0014】)
a-8 「【実施例】基材12として60g/ のラテックス含浸紙を使用し、塩ビ-酢ビ共重合体をバインダーとした印刷インキを使用し、基材12上にベタ刷り層14a及び絵柄層14bを印刷して印刷層14を設けた。次いで、2液硬化型ウレタンを固形分が6g/ となるようにグラビヤ印刷機で絵柄層14b上に塗布し、有機高分子コート層16を設けた。次いで、このコート層上に、オルガノアルコキシシラン系コーティング剤を、SiO2・Al2O3を含む被膜の固形分が6g/ となるようにグラビヤ印刷機で塗布して遮断層20を設けた。その後、遮断層20の上に、加水分解性オルガノアルコキシシラン系コーティング剤100部に対し、アナターゼ型酸化チタン超微粒子を40部添加したものを固形分が0.1g/ となるようにグラビヤ印刷機で塗布して分解機能層18を設けた。」(段落【0019】)

b 引用例2(実願昭63-36508号(実開平1-141025号)のマイクロフィルム)
b-1 「シーラーを塗布した表面多孔性無機質基材の表面にオルガノアルコキシシランの縮合物を主成分とする塗膜が形成された無機質構造体」(実用新案登録請求の範囲)
b-2 「本考案は、無機質構造体に関し、さらに詳細には建築物の内壁材、外壁材および屋根材などに有用な不燃性の無機質構造体に関する。」(明細書1頁10?12行)
b-3 「これらのシーラー3となる塗料は、表面多孔質基材への吸い込みによる塗膜性能の低下、該基材上に付着した汚染物によるはじきや汚染物の塗膜表面へのにじみ、基材中のアルカリ成分の析出による白化現象などを防ぐためのもので・・・ある。」(明細書4頁末行?5頁6行)

c 引用例3(特開平11-198282号公報)
c-1 「無機質系基材の面に、シーラー層、熱硬化性樹脂層、絵柄印刷形成層、硬化性樹脂層が積層された・・・無機質系化粧板。」(特許請求の範囲請求項1)
c-2 「【発明の属する技術分野】本発明は、建築内装材、・・・に用いられる、良好な耐火性、耐汚染性等を有する無機質系化粧板及びその製造方法に関するものである。」(段落【0001】)
c-3 「シーラー層3は、無機質系基材2からのアルカリ成分溶出の防止を目的として設けられるもので・・・ある。」(段落【0014】)

d 引用例4(特開平9-225389号公報)
d-1 「部材の表層域に、紫外線によって励起される光半導体を含む層を配するとともに、該光半導体の光酸化還元反応に伴う部材劣化を防止する処置を施し、該部材表面を親水化するとともに該光半導体によって部材に当る紫外線を吸収することを特徴とする部材の親水化兼紫外線劣化防止方法。」(特許請求の範囲請求項1)
d-2 「上記部材を、基材と、この基材上に形成された光酸化還元反応防護機能を有する中間層と、この中間層上に形成された光半導体を含む表面層と、から構成する請求項1又は2記載の部材の親水化兼紫外線劣化防止方法。」(特許請求の範囲請求項3)
d-3 「上記中間層に、紫外線吸収剤及び/又は遮断剤を混合する請求項3記載の部材の親水化兼紫外線劣化防止方法。」(特許請求の範囲請求項4)
d-4 「本発明の適用できる商品例としては、樹脂製パイプ、ゴムホース、玩具用プラスチック、自動車用プラスチック、送電線の被覆樹脂、タイヤ、樹脂により化粧された建材(積層鋼板、塩ビ鋼板、塗装板等)を挙げることができる。」(段落【0014】)

e 引用例5(特開平10-264283号公報)
e-1 「〈1〉(注:公報上は丸数字1、以下同様)支持体、〈2〉接着樹脂層、〈4〉バリヤー層、〈3〉少なくとも光反応性半導体を含有してなる光触媒層を順次積層した構造を有する耐久性貼り合わせ型光触媒シート。」(特許請求の範囲請求項2)
e-2 「〈1〉支持体、〈2〉接着樹脂層、〈5〉紫外線吸収剤を含有してなる保護層、〈3〉少なくとも光反応性半導体を含有してなる光触媒層を順次積層した構造を有する耐光性貼り合わせ型光触媒シート。」(特許請求の範囲請求項3)
e-3 「第二の本発明に係わる耐久性貼り合わせ型光触媒シートは、・・・光触媒層で生じた光反応生成物(反応活性種)が接着樹脂層や支持体に達し、その劣化を引き起こすことを防止する目的で、光触媒層と接着樹脂層との間に光反応性半導体を含有しないバリヤー層を設ける。バリヤー層を構成する成分は、先述の皮膜形成性無機物やコロイダルシリカ複合熱可塑性高分子エマルジョンなどを主成分としたもの・・・である。」(段落【0040】)
e-4 「第三の本発明に係わる耐光性貼り合わせ型光触媒シートは、・・・光反応生成物(反応活性種)の接着樹脂層および支持体内への溶解/拡散/移動による劣化を防止するだけでなく、光触媒層と接着樹脂層との間に紫外線吸収剤を含有してなる保護層を設けることによって、太陽光、室内照明などの光源から発生する紫外線および紫外線により引き起こされる化学反応による接着樹脂層および支持体の劣化を防止している。保護層を構成する成分は、先述の皮膜形成性無機物やコロイダルシリカ複合熱可塑性高分子エマルジョンなどを主成分とし、紫外線吸収剤として以下に示す物質を適当な濃度で混合して用いることができる。」(段落【0041】)

5 対比・判断
(1)引用発明
引用例1の特許請求の範囲の請求項9は、請求項1を引用するものであるから、同引用例には、「基材上の印刷層と、有機物を分解する光触媒活性物質を含む分解機能層と、両層間に配置され、前記光触媒活性物質の前記印刷層への作用を遮断する遮断層とを含む、化粧シートであって、前記印刷層と前記遮断層との間に配置された有機高分子コート層を含む、化粧シート。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(摘記a-1)。

(2)本願発明と引用発明との対比
本願発明の無機質塗装板は、「無機質基板の表面に防水シーラー層を介して層内の最上部に無機塗膜を有する化粧層が形成され、この化粧層の上に光触媒機能を有する顔料を含む分散体による最上層が形成されている無機質塗装板であって、化粧層は、有機塗料から形成された着色層と、着色層の上の層内の最上部であって紫外線吸収剤を含有する無機塗料から形成されたクリアー層とから構成されている」ものである。
ここにおける「層内の最上部に無機塗膜を有する化粧層」は、「有機塗料から形成された着色層と、着色層の上の層内の最上部であって紫外線吸収剤を含有する無機塗料から形成されたクリアー層とから構成されている」ものであるから、前者の「層内の最上部に無機塗膜」は、後者の「着色層の上の層内の最上部であって紫外線吸収剤を含有する無機塗料から形成されたクリアー層」であり、「無機塗膜」は、「紫外線吸収剤を含有する無機塗料から形成されたクリアー層」であると認められる。
そうすると、本願発明の無機質塗装板は、基板から表面方向に、「無機質基板」、「防水シーラー層」、「有機塗料から形成された着色層」を含み「着色層の上の層内の最上部」に「紫外線吸収剤を含有する無機塗料から形成されたクリアー層」を有する「化粧層」及び「光触媒機能を有する顔料を含む分散体による最上層」からなる塗装板であるということができる。
これに対して、引用発明の化粧シートは、基材から表面方向へ「基材」、「印刷層」、「光触媒活性物質の前記印刷層への作用を遮断する遮断層」、「有機物を分解する光触媒活性物質を含む分解機能層」を含むものであって、印刷層、遮断層、分解機能層は、いずれも印刷又は塗布されるものであるから(摘記a-8)、塗装板であるということができる。
ここで、本願発明の無機質塗装板と引用発明の化粧シートとは次のような対応関係にある。
(ア)本願発明の「無機質基板」及び「防水シーラー層」と引用発明の「基材」とは、いずれもその上に装飾を目的とする層を設けているものであることから、両者はいずれも基材であるといえる。
(イ)本願発明の「化粧層」における、「有機塗料から形成された着色層」は、基板の表面を美麗に仕上げるための層であって(本願明細書段落【0011】)装飾を目的とするのであるところ、引用発明の「印刷層」は、ベタ刷り層及び絵柄層から成るもので(摘記a-4)、装飾を目的とするものであり、「塩ビ-酢ビ共重合体をバインダーとした印刷インキを使用し」印刷したもの(摘記a-8)である。塩ビ-酢ビ共重合体をバインダーとした印刷インキは有機塗料であるから、引用発明の「印刷層」は、本願発明の「有機塗料から形成された着色層」に相当する。
また、本願発明の「化粧層」における、「無機塗膜」、すなわち、「紫外線吸収剤を含有する無機塗料から形成されたクリアー層」は、光触媒機能を有する物質による酸化作用の内部進入を防止し、化粧層の劣化を抑制するものである(本願明細書段落【0015】)。
一方、引用発明の「光触媒活性物質の前記印刷層への作用を遮断する遮断層」は、有機高分子コート層と分解機能層との間に配置され、光触媒活性物質の有機コート層及び印刷層への作用を遮断するために設けられているものである(摘記a-4)。そして、引用発明の同遮断層は、摘記a-7の「遮断層20は、酸化チタンの分解作用が主として有機化合物に働くことから、無機化合物から成ることが好ましい。そこで、遮断層20を酸化珪素ゲルまたは多孔性アルミナで構成する。」との記載からみて、無機塗料からなるものであり、さらには、同遮断層は、装飾を目的とする印刷層の表面側にあるもの(摘記a-7、a-8)であることから、印刷層を透視できるもの、すなわち、クリアー層であると認められる。
したがって、引用発明の「光触媒活性物質の前記印刷層への作用を遮断する遮断層」は、本願発明の「無機塗膜」、すなわち、「紫外線吸収剤を含有する無機塗料から形成されたクリアー層」に対応するものである。
そうすると、引用発明の「基板」と「分解機能層」の層間の「印刷層」を含み「光触媒活性物質の前記印刷層への作用を遮断する遮断層」までの層は、本願発明の「化粧層」に相当するといえる。
(ウ)本願発明の最上層は光触媒機能を有する顔料を含む分散体によるものであるが、引用発明の分解機能層も光触媒機能を有する白色顔料である酸化チタンの分散液から形成されたもの(摘記a-6)であり、最上層である表層にあるから、引用発明の「有機物を分解する光触媒活性物質を含む分解機能層」は、本願発明の「光触媒機能を有する顔料を含む分散体による最上層」に相当するものである。

以上の記載及び認定を踏まえて、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「基材上に、層内の最上部に無機塗膜を有する化粧層が形成され、この化粧層の上に光触媒機能を有する顔料を含む分散体による最上層が形成されている塗装体であって、化粧層は、有機塗料から形成された着色層と、着色層の上の層内の最上部であって無機塗料から形成されたクリアー層とから構成されているものである塗装体」である点で一致し、
(i)本件発明における「基材」が、無機質基板の表面に防水シーラー層を設けたものであるのに対し、引用発明では「基材」として無機質基板の表面に防水シーラー層を設けたものを採用するものではない点(相違点1)
(ii)本願発明における「無機塗膜」、すなわち、「着色層の上の層内の最上部であって紫外線吸収剤を含有する無機塗料から形成されたクリアー層」は、紫外線吸収剤を含有させたものであるのに対し、引用発明の「光触媒活性物質の前記印刷層への作用を遮断する遮断層」は、紫外線吸収剤の有無について不明である点(相違点2)、及び、
(iii)塗装体が本願発明では、「無機質塗装体」であるのに対して、引用発明では、「化粧シート」である点(相違点3)
で相違している。

(3)相違点についての判断
(i)相違点1及び3について
引用発明の化粧シートは、建築物の内装材又は外装材の製造に使用されるものであり(摘記a-2)、引用例2及び3に記載されているように、建築物の内装材又は外装材において無機質系基材を採用することは通常行われることである(摘記b-1?b-3、c-1?c-3)。また、無機質系基材を採用するにあたり、前記各引用例には、「シーラー3となる塗料は、・・・基材上に付着した汚染物によるはじきや汚染物の塗膜表面へのにじみ、基材中のアルカリ成分の析出による白化現象などを防ぐためのもので・・・ある」(摘記b-3)、及び、「シーラー層3は、無機質系基材2からのアルカリ成分溶出の防止を目的として設けられるもので・・・ある。」(摘記c-3)と記載されているように、シーラー層を設けることも通常行われることにすぎず、アルカリ成分は、水溶液として溶出するものであるから、アルカリ成分の溶出防止は防水に他ならず、該シーラー層は防水シーラー層であるものと認められる。
そうしてみると、引用発明の化粧シートにおいて、基材として無機質基板を選択し、更に防水シーラー層を設けたものを採用し、「無機質塗装体」とすることは当業者が容易に想到し得ることといえる。

(ii)相違点2について
引用例4、5には、光半導体を含む層の下に中間層、バリヤー層を設け、光半導体の影響により下層の基材、接着樹脂層の劣化を引き起こすこと防止することが記載され(摘記d-1、d-2、e-1、e-3)、さらに、紫外線の影響をも排除するため中間層、バリヤー層に紫外線吸収剤を含有させることが記載されている(摘記d-3、e-2、e-4)。また、引用例4には、適用できる商品として「樹脂により化粧された建材(積層鋼板、塩ビ鋼板、塗装板等)」(摘記d-4)が挙げられており、樹脂により化粧された層への光半導体の影響、紫外線の影響を紫外線吸収剤を含有させた中間層により排除することが教示されている。引用例4における中間層、樹脂により化粧された層は、引用発明における遮断層、印刷層に相当するものである。
そうしてみると、表面に配置された有機物を分解する光触媒活性物質を機能させるために紫外線を必要とする引用発明の化粧シート(摘記a-3)において、下層への紫外線の影響を排除するために「光触媒活性物質の前記印刷層への作用を遮断する遮断層」に紫外線吸収剤を含有させることは、引用例4、5の記載から当業者が容易に想到し得ることである。

(4)本願発明の効果
本願発明は、従来技術における、「外壁材や屋根材、さらに天井材として使用される無機質塗装板に対してそのような表面酸化により表面に親水性を持たせることは難しい。それと言うのも、無機質塗装板に形成された化粧層が、光触媒機能を有する物質の酸化作用によりダメージを受けるからである。例えば、化粧層として設けられた着色層は次第に変褪色する。」(本願明細書段落【0003】)という課題を、本願発明の構成を採用することにより解決し、「化粧層が劣化することなく、表面の汚染性が改善された無機質塗装板・・・を提供する」(同段落【0004】)ものであり、さらに、「紫外線が化粧層の内部に進入するのを防止し、化粧層の着色層の変褪色がより確実に防止される。」(同段落【0015】)という効果を奏するものである。
しかし、表面の汚染性の改善、及び、光触媒機能を有する物質の酸化作用による化粧層の劣化防止は、引用発明においてもその構成に基づき奏される効果であり、また、紫外線による化粧層の着色層の変褪色の防止は引用例4、5に記載された発明から予想される効果にすぎず、紫外線吸収剤の含有により本願発明において特に予期し得ない効果を奏するものでもない。
さらに、本願発明において、引用発明における基材として無機質基板の表面に防水シーラー層を設けたものを選択することにより、引用発明における効果と相違する格別の効果を奏するものではない。

(5)まとめ
したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、請求項2に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-02 
結審通知日 2008-07-08 
審決日 2008-07-22 
出願番号 特願2000-87010(P2000-87010)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浅見 節子  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 唐木 以知良
橋本 栄和
発明の名称 無機質塗装板  
代理人 西澤 利夫  

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