• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1183925
審判番号 不服2006-1708  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-27 
確定日 2008-09-04 
事件の表示 特願2002-224909「磁気記録媒体の磁化パターン形成方法及び製造方法、磁化パターン形成装置、磁気記録媒体、並びに磁気記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 5874〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年8月1日の出願(優先権主張平成13年8月7日、同年10月24日、同年11月9日、平成14年4月1日)であって、平成17年8月1日付けで手続補正がなされ、その後平成17年12月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年1月27日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成18年1月27日付け手続補正(以下「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成18年1月27日付け手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前の
(a)「磁性層を有してなる磁気記録媒体に対し、第1の外部磁界を印加し磁性層を所望の方向に均一に磁化したのち、磁性層を局所的に加熱すると同時に第2の外部磁界を印加し加熱部を該所望の方向とは逆向きに磁化することにより磁化パターンを形成する方法であって、
前記第2の外部磁界は、前記磁気記録媒体の室温における動的保磁力より小さな磁力のパルス状の磁界成分を有することを特徴とする磁化パターン形成方法。」を、
(b)「磁性層を有してなる磁気記録媒体に対し、第1の外部磁界を印加し磁性層を所望の方向に均一に磁化し、
前記磁性層の加熱部と非加熱部とがパターニングされたマスクを前記磁気記録媒体上に装着し、
パルス状エネルギー線によって、前記磁性層の加熱部を加熱し、前記パルス状エネルギー線の照射周期に対して1/2以下の周期を持つ第2の外部磁気磁界を印加し、前記加熱部を前記所望の方向とは逆向きに磁化し、その際に、前記第2の外部磁界は、前記磁気記録媒体の室温における動的保磁力より小さな磁力のパルス状の磁界成分を有することを特徴とする磁化パターン形成方法。」(なお、下線は補正箇所について当審が付与した。)
と補正するものである。
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の「磁性層を局所的に加熱すると同時に第2の外部磁界を印加し加熱部を該所望の方向とは逆向きに磁化すること」について、「前記磁性層の加熱部と非加熱部とがパターニングされたマスクを前記磁気記録媒体上に装着し、」「パルス状エネルギー線によって、前記磁性層の加熱部を加熱し、前記パルス状エネルギー線の照射周期に対して1/2以下の周期を持つ第2の外部磁気磁界を印加し」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。(なお、「第2の外部磁気磁界」は「第2の外部磁界」の誤記であることが明らかであるから、以下「第2の外部磁界」と記載する。)
ところで、本件補正の、「第2の外部磁界」が「パルス状エネルギー線の照射周期に対して1/2以下の周期を持つ第2の外部磁界」である構成は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されていない。
請求人が根拠とする明細書の段落25等について以下に検討する。
(1)明細書には、
「【0025】(略)ここで、磁界のパルス幅は半値幅を指す。
局所加熱にパルス状エネルギー線を使用する場合は、第2外部磁界のパルス幅はパルス状エネルギー線のパルス幅以上とする。これ以下であると、局所加熱中に磁界が変化してしまうので磁化パターンが良好に形成されないためである。
またパルス状エネルギー線とパルス状の第2外部磁界を同期させ、同時に印加するのが好ましい。この様に印加することにより、エネルギー線で加熱され、一旦保磁力の低下した領域が冷却され保磁力が回復する前に、効果的に逆方向磁化に必要な磁界を印加することができるからである。
通常、エネルギー線のパルス幅より磁界のパルス幅のほうが長いと考えられるため、磁界パルスを印加中にエネルギー線パルスを印加すればよい。中でも第2外部磁界のパルスを印加し、磁界が最大になる前、または最大になる時にエネルギー線パルスを印加するのがより効果的で好ましい。(略)最も好ましくは、第2外部磁界のパルスを印加し、磁界が最大になるところでエネルギー線のパルスが印加されるよう制御する。(略)
一つの磁気記録媒体に対して、複数回にわたりエネルギー線パルスを照射して磁化パターン形成を行う場合には、エネルギー線パルスの照射周期に対して、第2外部磁界のパルス幅は通常1/2倍以下が好ましい。より好ましくは1/10倍以下、さらに好ましくは1/100倍以下とする。(略)
図8は前述したように、減磁または逆方向磁化されるに必要な磁界強度の、処理時間との関係を表す片対数グラフである。例えばエネルギー線の照射周期を100msecとした時、印加する第2外部磁界のパルス幅を同じ100msecで印加した場合には、印加できる第2外部磁界の強さの範囲(マージン)は約1/3目盛分しかない。しかし、エネルギー照射周期の1/100倍のパルス幅である1msecの第2外部磁界を印加した場合には、印加できる第2外部磁界の強さの範囲(マージン)は約1目盛分に広がる。(略)」
との記載があるのみで、「第2の外部磁界」の「周期」については記載されていない。
また、パルスの「周期」とは、一定周期で繰り返されるパルスとパルスの間隔のことであり、「パルス幅」とは、「磁界のパルス幅は半値幅を指す。」と本願明細書で定義されている(上記段落25参照)ように半値幅を指すものであるから、上記第2の外部磁界のパルス幅が、「エネルギー線パルスの照射周期に対して、1/2倍以下が好ましい」という記載から、第2の外部磁界の周期が「エネルギ線パルスの照射周期に対して、1/2倍以下が好ましい」ことが自明であるとはいえない。
(2)当初明細書等の特許請求の範囲の請求項8の「前記パルス状エネルギー線の照射周期に対して、前記第2外部磁界のパルス幅が1/2倍以下である」や段落25以外においても、第2の外部磁界の「パルス幅」について記載はあるが、「周期」については何も記載されていない。
(3)「第2の外部磁界」として「パルス状エネルギー線の照射周期に対して1/2以下の周期を持つ第2の外部磁界」を用いる構成及びその作用効果について、当初明細書等に何ら記載も示唆もない。
よって、「第2の外部磁界」が「パルス状エネルギー線の照射周期に対して1/2以下の周期を持つ第2の外部磁界」である構成は、当初明細書等に記載した事項の範囲内であるということはできない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2.
なお、本件補正が、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としているとき、補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「補正後の発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-34744号公報(以下「引用例1」という。)には、光磁気または磁気ディスクの製造方法に関し、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与したものである。)
(ア)「記録層に垂直方向に第1の外部磁場を印加することにより上記記録層の磁化の方向を上記第1の外部磁場の方向にそろえた後、上記記録層に上記第1の外部磁場と逆方向の第2の外部磁場を印加した状態で記録すべき信号に対応した開口が形成されたマスクを用いて上記記録層にレーザ光を選択的に照射してこの照射部の上記記録層の磁化を反転させることにより信号を記録するようにした光磁気または磁気ディスクの製造方法。」(公報1頁左下欄5行?13行、特許請求の範囲)
(イ)「〔作用〕
上述のように構成された本発明の光磁気または磁気ディスクの製造方法によれば、記録層(2)に垂直方向に第1の外部磁場(H_(1))を印加してこの記録層(2)の磁化の方向を第1の外部磁場(H_(l))の方向にそろえることにより、初期化が行われる。次に、記録層(2)に第1の外部磁場(H_(1))と逆方向の第2の外部磁場(Hw)を印加した状態で記録すべき信号に対応した開口(3a)が形成されたマスク(3)を用いて記録層(2)にレーザ光(5)を選択的に照射することにより、この照射部の記録層(2)が選択的に加熱される。そして、このようにして選択的に加熱された部分の記録層(2)の磁化は、第1の外部磁場(H_(l))と逆方向に印加された第2の外部磁場(Hw)により反転し、これによって信号が記録される。」(公報2頁右上欄11行?左下欄7行)
(ウ)「第1図A?Dは本発明の一実施例による光磁気または磁気ディスクの製造方法を工程順に示す断面図であり、第2図A?Dはそれぞれ第1図A?Dに対応する平面図である。
第1図A及び第2図Aに示すように、まず基板1上に垂直磁化膜から成る記録層2が形成された光磁気または磁気ディスクに垂直方向に初期化用の外部磁場H_(l)を印加する。この場合、記録層2の保磁力をHcとすると、H_(l)>Hcである。(略)なお、記録層2中の矢印は磁化を示す(以下同様)。
次に、第1図B及び第2図Bに示すように、記録すべき信号に対応した多数の開口3aが形成されたマスク3(第3図参照)を記録層2上に載せる。ここで、このマスク3は、後述のレーザ光5が透過しない材料により形成され、例えばこのレーザ光5が透過しない材料の膜をリソグラフィー及びエッチング技術を用いてパターニングすることにより形成される。
次に、第1図C及び第2図Cに示すように、例えば半導体レーザチップ(図示せず)を複数個ライン状に並べた半導体レーザアレイ4によりディスク径よりも幅の大きいライン状のレーザ光5を形成し、記録層2上にマスク3が載せられた上述の光磁気または磁気ディスクをこの半導体レーザアレイ4の下側を例えばレーザ光5の長手方向に垂直方向に移動させることにより、マスク3の全面にレーザ光5を照射する。ここで、このレーザ光5の照射は、外部磁場H_(l)と逆方向の外部磁場Hwを記録層2に印加した状態で行う。この場合には、レーザ光5の照射により熱アシストが行われることから、Hw<Hcでよい。このようにしてマスク3の全面にレーザ光5を照射することにより、このマスク3の開口3aを通過したレーザ光5により照射された部分の記録層2が選択的に加熱されてこの部分の温度が上昇する。そして、外部磁場H_(l)と逆方向に印加された外部磁場Hwにより、この温度が上昇した部分の記録層2の磁化が反転し、これによって信号が記録される(第4図参照)。
このようにして、第1図D及び第2図Dに示すように、信号が記録された光磁気または磁気ディスクが製造される。」(公報2頁左下欄16行?3頁左上欄末行、実施例の項)

(2)対比
補正後の発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
上記(1)で摘示した記載事項、特に(ア)(下線部参照)によれば、引用例1には、
「記録層に垂直方向に第1の外部磁場を印加することにより上記記録層の磁化の方向を上記第1の外部磁場の方向にそろえた後、上記記録層に上記第1の外部磁場と逆方向の第2の外部磁場を印加した状態で記録すべき信号に対応した開口が形成されたマスクを用いて上記記録層にレーザ光を選択的に照射してこの照射部の上記記録層の磁化を反転させることにより信号を記録するようにした光磁気または磁気ディスクの製造方法。」
の発明が記載されている。

引用例1に記載された発明の「記録層」「磁気ディスク」「レーザ光」「磁場」は、それぞれ補正後の発明の「磁性層」「磁気記録媒体」「エネルギー線」「磁界」に相当している。
引用例1に記載された発明は、「記録層の磁化の方向」を「第1の外部磁場の方向にそろえた」ので、補正後の発明の「磁性層を所望の方向に均一に磁化し」に相当する構成を備えている。
引用例1に記載された発明の「マスク」は、「記録すべき信号に対応した開口が形成されたマスクを用いて上記記録層にレーザ光を選択的に照射」するものであり、「このマスク3の開口3aを通過したレーザ光5により照射された部分の記録層2が選択的に加熱されてこの部分の温度が上昇する」(上記(ウ)参照)ので、補正後の発明の「磁性層の加熱部と非加熱部とがパターニングされたマスク」に相当する構成を実質的に備えている。
また、引用例1に記載された発明の「マスク」は、「記録層上にマスクが載せられた」(上記(ウ)参照)と例示されているから、補正後の発明の「マスクを磁気記録媒体上に装着し」に相当する構成を備えている。
引用例1に記載された発明の「第2の外部磁場」は、「第1の外部磁場と逆方向」であり、引用例1に記載された発明は、「記録層にレーザ光を選択的に照射してこの照射部の上記記録層の磁化を反転させることにより信号を記録するようにした」ものであるから、補正後の発明の「第2の外部磁界を印加し」、「加熱部を所望の方向とは逆向きに磁化し」に相当する構成を備えている。
また、引用例1に記載された発明において、記録すべき信号に対応した開口を通して選択的に照射された加熱部は磁化が反転されるから、「磁化パターン」が形成されたといえるので、引用例1に記載された発明の「この照射部の上記記録層の磁化を反転させることにより信号を記録するようにした光磁気または磁気ディスクの製造方法」は、補正後の発明の「磁化パターン形成方法」に実質的に相当している。

よって、補正後の発明と引用例1に記載された発明は、
「磁性層を有してなる磁気記録媒体に対し、第1の外部磁界を印加し磁性層を所望の方向に均一に磁化し、
前記磁性層の加熱部と非加熱部とがパターニングされたマスクを前記磁気記録媒体上に装着し、
エネルギー線によって、前記磁性層の加熱部を加熱し、第2の外部磁界を印加し、前記加熱部を前記所望の方向とは逆向きに磁化する、磁化パターン形成方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1) 「エネルギー線」と「第2の外部磁界」について、補正後の発明は、「エネルギー線」として「パルス状エネルギー線」を用い、「第2の外部磁界」として、「磁気記録媒体の室温における動的保磁力より小さな磁力のパルス状の磁界成分を有する」ものを用いることを特定しているのに対して、引用例1に記載された発明は、そのように特定していない点。
(相違点2) 「第2の外部磁界」について、補正後の発明は、「パルス状エネルギー線の照射周期に対して1/2以下の周期を持つ第2の外部磁界」と特定しているのに対して、引用例1に記載された発明は、そのように特定していない点。

(3)相違点についての判断
(相違点1について)
磁気記録媒体にレーザ光等のエネルギー線を照射して加熱した領域に外部磁界を印加することにより磁化パターンを形成する際に、エネルギー線と外部磁界とをそれぞれパルス状とすることは、原審で引用された特許2669532号公報(以下「引用例2」という。)に記載されている(公報第3頁右欄27行?45行、4頁右欄9行?14行、第2図及び第3図参照)。
そうすると、引用例1に記載された発明の、選択的に加熱して外部磁界を印加する際に、エネルギー線と外部磁界として、パルス状のエネルギー線とパルス状の外部磁界を用いることは引用例2に記載された発明に基いて当業者が適宜なし得ることである。
そして、第2の外部磁界の大きさについて、引用例1には、熱アシストが行われるから、Hw(第2の外部磁場)<Hc(保磁力)でよい旨(上記(ウ)参照)が記載されている。ここで引用例1に記載されている記録層の保磁力Hcは、本願でいう静的保磁力に相当するところ、磁気記録媒体の静的保磁力より動的保磁力が大きいことが一般的に知られているから(例えば原査定において例示された国際公開第01/22407号パンフレット(2001年3月29日国際公開、9頁16行)参照)、引用例1に記載された発明のエネルギー線と外部磁界として、パルス状のエネルギー線及びパルス状の外部磁界を用いる際に、パルス状磁界を含む第2の外部磁界の大きさを、室温における静的保磁力より小とすることは引用例1の示唆により最も普通であり、よって静的保磁力より大きい動的保磁力よりも小であることが明白である。
なお、請求人は、本願の作用効果について、第2の外部磁界がパルス状の磁界成分を有するので、たとえ室温の静的保磁力より大きい磁界であっても、周囲の非加熱領域に影響を与えることがない(本願の明細書の発明の効果の項及び平成17年3月22日付け意見書参照)と主張している。しかしながら、補正後の発明は、「磁気記録媒体の室温における動的保磁力より小さな」と上限のみを特定するものであって、「室温の静的保磁力より大きい磁界」と特定するものでもないから、引用例1に記載された静的保磁力と第2の外部磁界との関係から当業者であれば最も普通に採用する大小関係であるといわざるを得ない。
また、引用例1及び引用例2に記載された、磁気記録媒体にレーザ光等のエネルギー線を照射して加熱した領域に外部磁界を印加することにより磁化パターンを形成する技術において、加熱領域に印加する外部磁界は、非加熱領域を磁化しない大きさに選定すべきであることは当業者にとって技術常識であって、パルス状磁界を印加する際には室温における動的保磁力より小さいものとすることは、当業者が容易に想到しうることである。
また、請求人は、引用例2のパルス磁界とは、書き込みパターンに対応して磁化反転を行うことをパルスと呼んでいるのであって、本願の、加熱部の大きな動的保磁力と非加熱部の静的保磁力との差を利用するためにパルス状であるのとは異なると主張している(平成17年3月22日付け意見書参照)が、請求の範囲の記載に基づかない主張であり採用できない。

(相違点2について)
引用例1に記載された発明のエネルギー線と外部磁界として、パルス状のエネルギー線及びパルス状の外部磁界を用いる際、エネルギー線のパルスの周期、外部磁界のパルスの周期は、当業者が実施に当たり適宜設定する事項にすぎない。そして、本願の明細書を検討しても、補正後の発明のように「パルス状エネルギー線の照射周期に対して1/2以下の周期を持つ第2の外部磁界」と限定することについては、その構成や作用効果について記載がなく、上記相違点2により格別の効果を奏するものでもない。

補正後の発明の効果は、引用例1及び2に記載された発明から当業者であれば予測される範囲内であるので、上記相違点1及び2は、当業者が容易に想到し得たものである。

なお、請求人は、請求の理由において、「本願発明の「レーザパルス幅は、磁界印加パルス幅より小さくする」という構成」(請求の理由「3.引用文献との対比」参照)に基いて主張しているが、当該主張は、補正後の発明に基づかない主張であり採用できない。また、「レーザパルス幅は、磁界印加パルス幅より小さくする」という構成は、引用例2(第3図)に記載されている事項であるから、請求人の主張は失当である。
なお、請求人が、請求の理由で、補正後の発明の補正の根拠として示している段落25及び補正前の請求項8の「前記パルス状エネルギー線の照射周期に対して、前記第2外部磁界のパルス幅が1/2倍以下である」を意図して補正しようとしたものであったとしても、エネルギー線のパルスの周期、外部磁界のパルス幅は、当業者が適宜設定する事項にすぎず、外部磁界のパルス幅を、エネルギー線のパルス幅より大きい程度(引用例2(第3図)参照)であって、パルス状エネルギー線の照射周期より十分小(パルス状エネルギー線の照射周期に対して1/2倍以下)であるようにすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。

(4)むすび
以上のとおり、補正後の発明は、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成18年1月27日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年8月1日付け手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された上記「第2の1の(a)」のとおりである。

1.引用例
原審の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記「第2の2(1)」に記載されたとおりである。

2.対比判断
本願発明は、上記「第2の2」で検討した補正後の発明から、「磁性層を局所的に加熱すると同時に第2の外部磁界を印加し加熱部を該所望の方向とは逆向きに磁化すること」についての限定事項である「前記磁性層の加熱部と非加熱部とがパターニングされたマスクを前記磁気記録媒体上に装着し、」「パルス状エネルギー線によって、前記磁性層の加熱部を加熱し、前記パルス状エネルギー線の照射周期に対して1/2以下の周期を持つ第2の外部磁界を印加し」という構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後の発明が、上記「第2の2(2)、(3)」に記載したとおり、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-02 
結審通知日 2008-07-08 
審決日 2008-07-24 
出願番号 特願2002-224909(P2002-224909)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 561- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富澤 哲生  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 吉川 康男
横尾 俊一
発明の名称 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法及び製造方法、磁化パターン形成装置、磁気記録媒体、並びに磁気記録装置  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ