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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1183942
審判番号 不服2006-9927  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-15 
確定日 2008-09-04 
事件の表示 平成 8年特許願第 75400号「感圧接着性フォーム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月16日出願公開、特開平 9-240173〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

特許出願 平成 8年 3月 6日
拒絶理由通知 平成17年 4月22日
意見書及び手続補正書(明細書)提出 平成17年 6月20日
拒絶査定 平成18年 4月14日
審判請求 平成18年 5月15日
手続補正書(明細書)提出 平成18年 6月 9日
手続補正書(理由補充書)提出 平成18年 8月 2日

第2 平成18年6月9日付け明細書についての手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年6月9日付け明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正における特許請求の範囲についての補正は、
補正前(平成17年6月20日付け手続補正書参照)に
「【請求項1】少なくとも片面に、感圧接着層形成領域と感圧接着層未形成 領域とからなる感圧接着性フォームにおいて、前記感圧接着層未形成領域ミシン目が設けられ、該ミシン目の片側に0.5mm以上の感圧接着層未形成領域を有することを特徴とする感圧接着性フォーム。
【請求項2】上記該ミシン目の片側に1.0mm以上の上記感圧接着層未 形成領域を有し、上記感圧接着層未形成領域の少なくとも一部が、再剥離時の剥離のきっかけとなる剥離部とすることを特徴とする請求項1記載の感圧接着性フォーム。
【請求項3】上記再剥離時の剥離のきっかけとなる剥離部を、コーナー部 に設け、該コーナー部の感圧接着層未形成領域を三角形状とすることを特 徴とする請求項1?2のいずれかに記載の感圧接着性フォーム。」
とあったものを、
「【請求項1】少なくとも片面に、感圧接着層形成領域と感圧接着層未形成領域とを有する感圧接着性フォームにおいて、前記感圧接着層未形成領域にミシン目が設けられ、前記ミシン目の両側にそれぞれ0.5mm以上の感圧接着層未形成領域を有し、かつ、コーナー部のミシン目の両側にそれぞれ1.0mm以上の感圧接着層未形成領域を有し、当該感圧接着層未形成領域を再剥離時の剥離のきっかけとなる剥離部とすることを特徴とする感圧接着性フォーム。
【請求項2】上記コーナー部の感圧接着層未形成領域を三角形状とすることを特徴とする請求項1記載の感圧接着性フォーム。」
と補正するものである。

つまり、本件補正は、特許請求の範囲についての以下の補正事項を含む。
〈補正1〉補正前の請求項1を削除する補正。
〈補正2〉補正前の請求項2を補正後の請求項1とすると共に、補正前の請求項2の感圧接着層未形成領域に関し「ミシン目の両側にそれぞれ0.5mm以上の感圧接着層未形成領域を有し、かつ、コーナー部のミシン目の両側に それぞれ1.0mm以上の感圧接着層未形成領域を有し、当該感圧接着層未形成領域を再剥離時の剥離のきっかけとなる剥離部とする」とする補正。
〈補正3〉補正前の請求項3を補正後の請求項2とする補正前の請求項3に係る「上記再剥離時の剥離のきっかけとなる剥離部を、コーナー部に設け」なる特定は、前記補正2により補正後の請求項1において既に特定されていることから、当該請求項1を引用する補正後の請求項2から削除して表現を改めた補正。

2.本件補正の適否
〈補正1〉について
補正1は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的としたものと認める。
〈補正2〉について
補正2は、補正前の請求項2における「感圧接着層未形成領域」を、補正後の請求項1において「ミシン目の両側にそれぞれ0.5mm以上の感圧接着層未形成領域を有し、かつ、コーナー部のミシン目の両側に それぞれ1.0mm以上の感圧接着層未形成領域を有し、当該感圧接着層未形成領域を再剥離時の剥離のきっかけとなる剥離部とする」と限定するものである。
よって補正2は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。
〈補正3〉について
補正3は、明りょうでない記載の釈明を目的とした補正に相当する。

すると、補正1乃至補正3を含む本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしているといえる。

3.独立特許要件について
以上のとおり、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしており、同条第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含んでいるので、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かについて検討する。

(3-1)本願補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】少なくとも片面に、感圧接着層形成領域と感圧接着層未形成領域とを有する感圧接着性フォームにおいて、前記感圧接着層未形成領域にミシン目が設けられ、前記ミシン目の両側にそれぞれ0.5mm以上の感圧接着層未形成領域を有し、かつ、コーナー部のミシン目の両側にそれぞれ1.0mm以上の感圧接着層未形成領域を有し、当該感圧接着層未形成領域を再剥離時の剥離のきっかけとなる剥離部とすることを特徴とする感圧接着性フォーム。」

(3-2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-81276号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の〈ア〉乃至〈キ〉の記載が図示とともにある。
〈ア〉「【特許請求の範囲】
【請求項1】複数枚の帳票片を折りミシン目を介して連接し、表面の所定の位置に印刷領域と粘着領域を有し、裏面の所定の位置に粘着領域を有する連続フォームであって、該折りミシン目で交互に反対方向に折り返して、加圧することにより封止されることを特徴とする冊子状折り重ねフォーム。
【請求項2】前記連続フォームの表面においては、連接する前記帳票片の1つおきに、また裏面においては、連接する総ての該帳票片において、少なくとも表裏それぞれの側からみて山折りとなる折りミシン目と該帳票片の両端縁に沿った位置に前記粘着領域が設けられ、該粘着領域は表面では、再剥離可能な粘着剤により、裏面では再剥離不可能な粘着剤によりそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の冊子状折り重ねフォーム。」(1欄1乃至16行)
〈イ〉「【0011】
【実施例】以下図面に従って本発明を詳細に説明する。図1は本発明による冊子状折り重ねフォーム21の表面の平面図であり、図2は裏面の平面図である。帳票片1,2,3?nは折りミシン目m1,m2,m3?mnを介して連接されており、左右にはマージナルパンチ11と縦ミシン目12が設けられている。それぞれの帳票片の表面の中央部は情報印字領域1a?naを形成している。図1で示すように、本発明による冊子状折り重ねフォームは、折り目線m1?m(n+1)で切断されて各個人宛の冊子状折り重ねフォーム22となり、次に折り目線m1?mnで折り返され、圧着されて、各個人宛の封書を形成する。図1において、帳票片1,nにはそれぞれ顧客の宛名、差出人名等を、2a?(n-1)aにはそれぞれ親展情報を印字する。また親展情報に限定されることなく広告文、マンガ、塗り絵等の情報であってもよい。また、罫線、図形、説明文等の固定の情報は適宜印刷してあってもよい。図1において、1つおきの帳票片2、4、6?nの表面には、山折りとなる折りミシン目m2,m4?mnとそれぞれの該帳票片の両端縁、すなわち縦ミシン目12に沿って、コの字形に粘着領域2b,4b?nbが設けられていて、該粘着領域は紙面と圧着された後再剥離が可能な弱粘着剤で形成されている。・・・・・
前記粘着領域における粘着層のパターンは図1、・に示すような斜線で示すコの字のベタ状でもよく、破線状あるいは円形状のドットの連続したものでもよい。」(3欄38乃至4欄18行)
〈ウ〉「【0011】・・・なお、表面の粘着領域は、図1における位置が1つずれて3、5?n-1の帳票片にあっても差し支えない。図3は本実施例の粘着領域をさらに詳しく説明する図1A-A’断面図である。表面は再剥離可能な粘着層を帳票の1つおきに設け、しかも紙面との粘着で弱接着を目的としているのに対し、裏面は粘着層同士の粘着で一端加圧して粘着させると剥離を困難にすることを目的としている。従って、図4のようにプレスで封止された連続フォームを比較的軽い力で表面のみを剥離させて、図5に示す冊子状に開封できるようにしたものである。もし、隠蔽性をより完全にするのであれば、裏面と同じく粘着領域同士対向するようにし、しかも再剥離性が残るように粘着剤の成分をコントロールすればよい。図1において、山折りとなる折り目線m2,m4?mn上には孔13、14、---が横方向の位相をずらして穿孔されている。これは、図4で示す圧着された連続フォームを図5のような冊子状に開封するときに開けやすくするのに有効であり、帳票数の少ない時には、図1、図2で示すコーナーカット15でもよい。」(4欄20乃至38行)
〈エ〉「【0013】本発明に使用する再剥離性粘着剤は粘着層同士で粘着し、再剥離が可能であることが特徴である。本発明で使用する用紙は一般に44?70g/m^(2) の上質紙を用いることができ、その上に粘着層を図1、2で示す粘着領域に印刷するには、ゴム凸版を用いたフレキソ印刷方式が好適に利用可能である。前述のように、連続フォーム21の裏面は強粘着される結果として、最終の形態である冊子においては、図5で示すように2枚重ねとなるので、薄手の用紙を用いる方が冊子状になってから違和感がなくて好ましい。(5欄12行乃至6欄7行)
〈オ〉【0011】〔粘着主剤〕粘着主剤は、天然ゴム(NR)、エステル化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられ、または、これらの混合物が挙げられる。これらの粘着主剤の混合にあたっては、その混合割合を適宜調整することによって、感圧粘着剤同士の自着性を保持しつつ、基材との密着性を自着性より大きくすることができる。好ましくは、加圧によって感圧粘着剤同士の自着性を発現する性質の高い天然ゴムに、基材との密着性、即ちアンカー効果を高める目的でポリメチルメタクリレートやスチレンブタジエンゴムを添加したものが挙げられる。ポリメチルメタクリレートは単独で用いるより、他の粘着主剤と混合して用いるとよい。このような粘着主剤は、通常粒径0.1μm?3μm程度の微粒状のものが使用される。(5欄29行乃至5欄44行)
〈カ〉「【0016】このような感圧粘着剤の塗布量は、乾燥後で0.1g/m^(2 )?10g/m^(2) 、好ましくは1.0g/m^(2) ?3.0g/m^(2) が好ましい。この範囲内であれば、感圧粘着剤上から印刷あるいは印字することが可能である。この場合、インキは感圧粘着剤中を透過し、基材にまで到達させることができ、剥離した場合の印字層の転移を防止できる。本発明では、印刷領域と粘着領域がフォーム設計段階で区分されているので粘着層の上に印字することはないが、対向する帳票片同士の粘着力を高めて隠蔽性を良好にするためには、粘着領域を広げる必要があり、印刷領域と重なる可能性もでてくるが、前記粘着剤を使用する限り、この重なりによるトラブルは生じない。また、上述した粘着剤に限定されることなく、表面を剥離可能に、裏面を剥離不能にできればいかなる接着剤、粘着剤を用いてもよい。」(7欄26行乃至40行)
〈キ〉図1において、冊子状折り重ねフォームの表面展開図であって、1a?naからなる表面の印刷領域、コの字形の粘着領域である2b,4b?nbからなる表面の粘着領域、山折りとなる折りミシン目m2,m4?mn、縦ミシン目12が記載されており、前記「山折りとなる折りミシン目m2,m4?mnと縦ミシン目12と」が、前記感圧接着層形成領域である「粘着領域2b,4b?nbからなる表面の粘着領域」と近い距離を保って重ならず、前記感圧接着層形成領域である「粘着領域2b、4b?nbからなる表面の粘着領域」の外側を囲む様に、感圧接着層未形成領域が設けられ、前記感圧接着層未形成領域にミシン目が設けられていることが、一見看取できる。
上記摘記事項〈ア〉乃至〈キ〉及び図1の記載を含む引用例1には、次のような発明が記載されていると認めることができる。
「複数枚の帳票片を折りミシン目を介して連接し、表面の所定の位置に印刷領域と粘着領域を有し、裏面の所定の位置に粘着領域を有する連続フォームであって、該折りミシン目で交互に反対方向に折り返して、加圧することにより封止される冊子状折り重ねフォームであって、
前記連続フォームの表面においては、連接する前記帳票片の1つおきに、また裏面においては、連接する総ての該帳票片において、少なくとも表裏それぞれの側からみて山折りとなる折りミシン目と該帳票片の両端縁、すなわち縦ミシン目12に沿った位置に前記粘着領域が設けられ、該粘着領域は表面では、再剥離可能な粘着剤により、裏面では再剥離不可能な粘着剤によりそれぞれ形成されている前記冊子状折り重ねフォーム。」(以下、「引用発明」という。)

(3-3)対比
a.引用発明の「折りミシン目」及び「縦ミシン目12」は、本願補正発明の「ミシン目」に相当する。
b.引用発明の「粘着領域を有する帳票片表面」では粘着領域が再剥離可能な粘着剤により、引用発明の「粘着領域を有する帳票片裏面」では再剥離不可能な粘着剤により、それぞれ形成されている一方、本願補正発明は「感圧接着層形成領域」を有し、当該「感圧接着層形成領域」は再剥離可能であることから、本願補正発明の「片面」と引用発明の「粘着領域を有する帳票片表面」とは「再剥離」可能である点で一致する。
してみれば、引用発明の「粘着領域を有する帳票片表面」は、本願補正発明の「片面」に相当することは明らかである。
c.引用発明の「帳票片表面」の「粘着領域」は、上記摘記事項〈エ〉より、再剥離性粘着剤からなる粘着層より形成され、上記摘記事項〈ア〉「加圧することにより」及び上記摘記事項〈オ〉乃至〈カ〉「感圧接着剤」との記載より、前記再剥離性粘着剤は感圧接着剤であることは明らかであって、感圧接着剤からなる感圧接着層より形成されている。
してみれば、引用発明の「帳票片表面」の「粘着領域」は、本願正発明の「感圧接着層形成領域」に相当する
d.引用発明の「帳票片表面の粘着領域」は、上記摘記事項〈イ〉及び〈キ〉及び図1を参照するに、連接する帳票片の1つおきに有り、前記「帳票片表面の粘着領域」の形状は、当該帳票片の内、折りミシン目mnと山折り目線m(n+1)と縦ミシン目12とにより囲まれた領域のうち、前記折りミシン目mnと縦ミシン目12とに沿って、コの字形である一方、本願補正発明の「片面の感圧接着層形成領域」の形状は、本願図1(a)を参照するに、横ミシン目と縦ミシン目とにより囲まれた領域のうち、前記横ミシン目と縦ミシン目を含む感圧接着層未形成領域を除いた長方形である。
ここで、引用発明の「帳票片表面の粘着領域」の形状は、前記コの字形であって、帳票片nと帳票片(n+1)とは全面が重なって接着する一方、引用発明の「帳票片表面の粘着領域」の別の形状として、前記コの字形とその余白部分を埋め合わせ長方形とした場合も前記コの字形の場合と同じく帳票片nと帳票片(n+1)とは全面が重なって接着することから、前記「帳票片表面の粘着領域」の形状が前記コの字形と前記長方形とで異なる場合においても所期の目的は達成される。
してみれば、引用発明の「帳票片表面の粘着領域」の形状が「コの字形」である場合と本願補正発明の「片面の感圧接着層形成領域」の形状が横ミシン目と縦ミシン目とにより囲まれた領域のうち、前記横ミシン目と縦ミシン目を含む感圧接着層未形成領域を除いた「長方形」である場合とで、両者は隣り合った片同士が全面で重なり接着することから、前記「コの字形」と前記「長方形」とで形状が異なる場合においても所期の目的は達成される。
したがって、引用発明の「帳票片表面の粘着領域」は、本願補正発明の「感圧接着層形成領域」に相当することとなる。
e.上記d.に照らしてみれば、引用発明の「帳票片表面の粘着領域」を除く「当該帳票片表面部分」は、本願補正発明の「感圧接着層未形成領域」に相当する。
f.引用発明の「冊子状折り重ねフォーム」は、本願補正発明の「感圧接着性フォーム」に相当することは明らかである。

してみれば、本願補正発明と引用発明とは、
「少なくとも片面に、感圧接着層形成領域と感圧接着層未形成領域とを有する感圧接着性フォームにおいて、ミシン目が設けられた感圧接着性フォーム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点1〉本願補正発明では「感圧接着層未形成領域にミシン目が設けられ、前記ミシン目の両側にそれぞれ0.5mm以上の感圧接着層未形成領域を有し」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。
〈相違点2〉本願補正発明では「かつ、コーナー部のミシン目の両側にそれぞれ1.0mm以上の感圧接着層未形成領域を有し、当該感圧接着層未形成領域を再剥離時の剥離のきっかけとなる剥離部とする」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

(3-4)判断
〈相違点1〉について
引用例1の摘記事項〈イ〉「図1において、1つおきの帳票片2、4、6?nの表面には、山折りとなる折りミシン目m2,m4?mnとそれぞれの該帳票片の両端縁、すなわち縦ミシン目12に沿って、コの字形に粘着領域2b,4b?nbが設けられていて、該粘着領域は紙面と圧着された後再剥離が可能な弱粘着剤で形成されている。」の記載について、
「沿って」とは、 [株式会社岩波書店 広辞苑第五版](1998年11月11日発行)、第1538頁によれば、
『そ・う【沿う・添う・副う】
線条的なもの、または線条的に移動するものに、近い距離を保って離れずにいる意。』を意味するから、
前記「山折りとなる折りミシン目m2,m4?mnとそれぞれの該帳票片の両端縁、すなわち縦ミシン目12と」が、前記「粘着領域2b,4b?nb」と、近い距離を保って形成されていることを意味する。
つまり、「山折りとなる折りミシン目m2,m4?mnと縦ミシン目12と」が、前記感圧接着層形成領域である「粘着領域2b、4b?nb」と近い距離を保って重ならず、前記感圧接着層形成領域である「粘着領域2b、4b?nbからなる表面の粘着領域」の外側を囲む様に、感圧接着層未形成領域が設けられ、前記感圧接着層未形成領域にミシン目が設けられていると解される。そして、この点は、引用例1の図1からも看取できる。

また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-231197号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の〈ケ〉の記載が図示とともにある。
〈ケ〉「〔従来の技術〕
近年、シート上に接着剤を塗布したものを塗布面同士で対向させ、強圧下で接合させることによって、葉書、封筒、伝票等に加工するタイプの感圧接着シートの需要が増加している。
こうしたタイプの感圧接着シートは、通常、接合の前工程で印刷が行われる。しかし、電子写真方式のプリンターを印刷に用いる場合は、感圧接着シートが潜像を顕像化するトナーの定着段階で発熱体による加熱を受けるため、接着剤層が可塑化され、給紙ロール等に接着し易く、ミスフィードや祇詰り等のトラブルの発生原因となる難点がある。
また、感圧接着シートを第1図のようにZ折り加工してフォーム用紙として用いる場合に、重ねられた用紙の重さによって、接着剤含有層同士が、ミシン目やマージナル付近において接合する所謂ブロッキングを生じ易い。
このようなシートをプリンターにかけた場合、ブロッキングした複数枚が重なった状態で機械に入るため、シートのロスとなり、また、プリンターの故障等になり易い。」(1頁左下欄下から5行乃至右下欄下から5行)
上記摘記事項〈ケ〉の記載より、接着剤含有層を有する重ねられた用紙のミシン目付近に当該接着剤含有層があると、不具合が生じることは課題として知られている。
してみれば、引用発明において、上記摘記事項〈ケ〉及び周知の技術事項より、引用例1に記載の「ミシン目」と当該ミシン目に沿って設けられた「感圧接着層未形成領域」とが、上記引用例2に記載の「接着剤含有層同士が、ミシン目やマージナル付近において接合する所謂ブロッキング」を生じないよう、
感圧接着層未形成領域にミシン目が設けられ、前記ミシン目の両側にそれぞれ0.5mm以上の感圧接着層未形成領域を有する構成となすことは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

したがって、相違点1に係る本願補正発明の特定事項は、引用発明並びに引用例1乃至2及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

[ちなみに、シートカット用紙のミシン目のバリにより、セレンドラムの表面に欠く傷、或いは凹凸等を生ずると、いわゆるダブルフィールド、或いは印字が乱れる等の不都合の要因となることは、例えば、実願昭60-187034号(実開昭62-102571号公報)のマイクロフィルムの1乃至2頁<<考案の背景>>欄に記載の如く、周知の技術事項である。]

〈相違点2〉について
再剥離時の剥離のきっかけとなる剥離部を、コーナー部に設けること、又、該コーナー部の感圧接着層未形成領域を三角形状とすることは、例えば、実願平5-18604号(実開平6-71148号公報)のCD-ROM、特に【0013】及び図1「14C」、実願昭63-49657号(実開平1-153264号公報)のマイクロフィルム、特に、8頁11乃至15行「また、・・・前記非粘着処理剤3について、・・表面基材1の隅角部位に設けることにより表面基材1の円滑な剥離性を高めることが期待できる。」及び第1図「3」及び第4図「3」並びに実願平2-125341号(実開平4-81775号公報)のマイクロフィルム、特に、6頁[作用]欄及び第3図「14A」に記載の如く、周知の技術事項であり、
引用例1の図1,図2において、感圧接着層未形成領域に縦ミシン目12と折りミシン目が設けられ、上記摘記事項〈ウ〉「【0011】・・・なお、表面の粘着領域は、図1における位置が1つずれて3、5?n-1の帳票片にあっても差し支えない。」を参照するに、当該縦ミシン目12と当該折りミシン目との各交差点近傍は、感圧接着性フォームのコーナー部に相当することから、引用発明において、前記感圧接着性フォームのコーナー部に相当する交差点近傍のミシン目の両側にそれぞれ1.0mm以上の感圧接着層未形成領域を有し、当該感圧接着層未形成領域を再剥離時の剥離のきっかけとなる剥離部となすことは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

したがって、相違点2に係る本願補正発明の特定事項は、引用発明並びに引用例1及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

〈まとめ〉
このように、相違点1乃至相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明並びに引用例1乃至2及び周知の技術事項に基づいて当業者が想到容易な事項であり、これらの発明特定事項を採用したことによる本願補正発明の効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明並びに引用例1乃至2及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3-5)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。

4.本件補正についてのむすび
前記「第2 3.」に記載のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
平成18年6月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年6月20日付けで補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 少なくとも片面に、感圧接着層形成領域と感圧接着層未形成領域とからなる感圧接着性フォームにおいて、前記感圧接着層未形成領域にミシン目が設けられ、該ミシン目の片側に0.5mm以上の感圧接着層未形成領域を有することを特徴とする感圧接着性フォーム。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1は、前記「第2 3.(3-2)」に記載のとおりである。

3.対比・判断
引用発明と本願発明との対比は、前記「第2 3.(3-3)」中の「a.乃至e.」に記載のとおりである。
してみれば、本願発明と引用発明とは、
「少なくとも片面に、感圧接着層形成領域と感圧接着層未形成領域とを有する感圧接着性フォームにおいて、ミシン目が設けられた感圧接着性フォーム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点A〉本願発明では「前記感圧接着層未形成領域にミシン目が設けられ、該ミシン目の片側に0.5mm以上の感圧接着層未形成領域を有する」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

〈相違点A〉について
〈相違点A〉に係る本願発明の特定事項は、前記「第2 3.(3-3)」記載した〈相違点1〉に係る本願補正発明の特定事項である「かつ、コーナー部のミシン目の両側にそれぞれ1.0mm以上の感圧接着層未形成領域を有し、当該感圧接着層未形成領域を再剥離時の剥離のきっかけとなる剥離部とする」を削除するとともに、同〈相違点1〉に係る本願補正発明の特定事項である「ミシン目の両側にそれぞれ0.5mm以上の感圧接着層未形成領域を有する」を「ミシン目の片側に0.5mm以上の感圧接着層未形成領域を有する」としたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加するものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3.(3-4)」に記載したとおり、引用発明並びに引用例1乃至2及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る程度のことであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明並びに引用例1乃至2及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに引用例1乃至2及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-30 
結審通知日 2008-07-01 
審決日 2008-07-14 
出願番号 特願平8-75400
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B42D)
P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 七字 ひろみ
菅野 芳男
発明の名称 感圧接着性フォーム  
代理人 金山 聡  

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