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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1183977
審判番号 不服2006-24937  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-02 
確定日 2008-09-04 
事件の表示 特願2001-47753「ガスバリヤ性、耐熱性に優れた合成樹脂製容器およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年9月11日出願公開、特開2002-255231〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年2月23日の出願であって、平成18年6月6日付け(発送日)拒絶理由通知に応答して、平成18年7月19日付けで明細書を対象とする手続補正がなされたが、平成18年10月3日付け(発送日)で拒絶査定され、平成18年11月2日に審判請求がなされるとともに平成18年11月30日に明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

第2 平成18年11月30日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年11月30日付け手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。
[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、平成18年7月19日付けで補正された明細書をさらに次のとおり補正するものである。
〈補正1〉
補正前の【特許請求の範囲】の請求項1に、「前記母相はポリエチレンテレフタレート樹脂であり、前記ガスバリヤ材はメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂、非晶質ポリエステル樹脂もしくはエチレンナフタレート-エチレンテレフタレート共重合樹脂のうちの何れか1つであり、前記母相は0.5?10mass%の範囲でガスバリヤ材を含有する」という発明特定事項を付加して新たな請求項1とする補正である。
〈補正2〉
補正前の【特許請求の範囲】の請求項2を削除する補正である。
〈補正3〉
補正前の【特許請求の範囲】の請求項3に、「前記母相はポリエチレンテレフタレート樹脂であり、前記ガスバリヤ材はメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂、非晶質ポリエステル樹脂もしくはエチレンナフタレート-エチレンテレフタレート共重合樹脂のうちの何れか1つであり、前記母相は0.5?10mass%の範囲でガスバリヤ材を含有する」という発明特定事項を付加して新たな請求項2とする補正である。
〈補正4〉
補正前の【特許請求の範囲】の請求項4を削除する補正である。
〈補正5〉
補正前の【特許請求の範囲】の請求項5が従属していた補正前の請求項3が、新たに請求項2となったことに伴い、従属関係を修正した補正である。
〈補正6〉
補正前の【特許請求の範囲】の請求項6において、母相に「ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる」という限定、及び、「0.5?10mass%の範囲」でガスバリア材をブレンドするという限定を付加し、ガスバリヤ材に「メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂、非晶質ポリエステル樹脂もしくはエチレンナフタレート-エチレンテレフタレート共重合樹脂のうちの何れか1つ」という限定を付加する補正である。
〈補正7〉
補正前の【特許請求の範囲】の請求項7において、母相の加えるガスバリヤ材の割合として、「0.5?10mass%の範囲」という限定を加えるとともに、従属していた補正前の請求項6が、新たに請求項4となったことに伴い、従属関係を修正した補正である。

2.新規事項追加の有無、補正の目的の適否
上記〈補正1〉?〈補正7〉は、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面の実施例に関する記載を参照すれば、新規事項を追加するものではない。
また、上記補正のうち実質的な補正がされている〈補正1〉、〈補正3〉、〈補正6〉及び〈補正7〉についてまとめて検討する。
母相の材料について特に限定がなかったものを、「ポリエチレンテレフタレート樹脂であ」るとして限定することは、これにより、産業上の利用分野や解決しようとする課題が変更されるものでもない。
また、母相の材料とガスバリヤ材との割合について特に限定がなかったものを、「母相は0.5?10mass%の範囲でガスバリヤ材を含有する」として限定することは、これにより、産業上の利用分野や解決しようとする課題が変更されるものでもない。
さらに、ガスバリヤ材について特に材料が限定されていなかったものを、「ガスバリヤ材はメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂、非晶質ポリエステル樹脂もしくはエチレンナフタレート-エチレンテレフタレート共重合樹脂のうちの何れか1つであり」として限定することも、これにより、同様に産業上の利用分野や解決しようとする課題が変更されるものでもない。
したがって、〈補正1〉、〈補正3〉、〈補正6〉及び〈補正7〉は、補正前の請求項1、3、6及び7に記載された母相やガスバリヤ材に関する構成を限定して特定する補正を含むものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.本願補正発明
補正後の本願の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記「本件補正」において、補正後の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「母相にガスバリヤ材をブレンドしてなる合成樹脂製の容器であって、
前記容器は、加熱処理工程を挟み、1回目のブロー成形において完成品よりも1.2?2.5倍程度のオーバーサイズになるブロー成形品を得る少なくとも2回の2軸延伸ブロー成形工程を経て作製されたものであり、
前記母相はポリエチレンテレフタレート樹脂であり、前記ガスバリヤ材はメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂、非晶質ポリエステル樹脂もしくはエチレンナフタレート-エチレンテレフタレート共重合樹脂のうちの何れか1つであり、前記母相は0.5?10mass%の範囲でガスバリヤ材を含有する、
ことを特徴とするガスバリヤ性、耐熱性に優れた合成樹脂製容器。」

4.引用文献
刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由に引用された本願出願日前に頒布された刊行物である特開平4-62028号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)「本発明は、延伸ブロー成形により成形される容器の製造方法に関し、特に延伸倍率の大きい高延伸ブロー成形容器の製造方法に関する。」(第1頁右欄第18行?第2頁左上欄第1行)
(b)「上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、胴部がポリエステル樹脂とガスバリヤ-性樹脂とのブレンド物からなる予備成形体を高延伸ブロー成形する容器の製造方法において、予備成形体の延伸ブロー成形工程を二段階に分割し、予備成形体の胴部の表面のみを温度調節して、一次の延伸ブロー成形工程を行い、予備成形体の肉厚がある程度減少した時点で、予備成形体全体の温度調整をおこない、その温度調整が終了した時点で二次の延伸ブロー成形をおこなうことにより、予備成形体を、その内部に至るまで厳密に延伸ブロー成形適性温度に調整するために必要とする時間を短縮することができることを発見し、本発明に想到した。」(第3頁右上欄第8行?左下欄第1行)
(c)「まず本発明のガスバリヤ-性を有する高延伸ブロー成形容器の製造方法に用いる予備成形体の胴部を構成する樹脂について説明する。
ポリエステル樹脂としては、飽和ジカルボン酸と飽和二価アルコールとからなる熱可塑性樹脂が使用できる。飽和ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-1,4-又は2,6-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸類、ジフェノキシエタンジエタンジカルボン酸類等の芳香族ジカルボン酸類、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、デカン-1,10-ジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を使用することかできる。また飽和二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール類、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、2,2-ビス(4′-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、その他の芳香族ジオール類等を使用することができる。
好ましいポリエステルは、テレフタル酸とエチレングリコールとからなるポリエチレンテレフタレートである。
次にバリヤー性樹脂としては、酸素、炭酸ガス等のガスバリヤ-性に優れるものとして、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、ハイニトリル樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルとメチルアクリレートとブタジエンとのコポリマー(商品名:バレックス)、ポリ塩化ビニル、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とからなるナイロンMXD6、ポリエチレンイソフタレート系コポリマー、イソフタル酸又はテレフタル酸とエチレングリコールと1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとからなるコポリエステル、ポリ-P-フェニレテレフタルアミド及び各種の液晶ポリエステル(商品名:エコノール、XYDA等)か挙げられる。」(第3頁左下欄第16行?第4頁左上欄第17行)
(d)「本発明の高延伸ブロー成形容器の製造方法を以下の具体的実施例により詳細に説明する。ここで本実施例において、予備成形体の胴部を構成する樹脂は、具体的にポリエチレンテレフタレート樹脂J135 (三井ペット樹脂(株)製)からなるポリエステル樹脂と、ガスバリヤ-性を有する共重合ポリエステル樹脂B010(三井ペット樹脂(株)製)との混合物(重量比9:1)を使用した。」(第6頁第右下欄第15?20行)
(e)「この一次子偏成形体10を、第4図に示す構造の装置の中に挿入し、延伸ブロー成形することにより、第2図に示すh_(1)=165mm 、W_(2)= 3.0mm、φ_(11)=19mm、φ_(12)= 25mm、φ_(1) =22mmの二次予備成形体20を成形した。引続き、この二次予備成形体20を第4図に示す温調された型内にとどめ、約19秒間温度調整し、二次予備成形体20の各部か所望の延伸ブロー成形適性温度95°C?115°Cを得た。次いで、この二次予備成形体20を第6図に示す構造の装置内に挿入し、延伸ブロー成形することにより、上記高延伸ブロー成形30を得た。」(第7頁左上欄第9?20行)
(下線は当審において付与したものである。)

そして、上記各記載、及び第1?6図から次の事項は明白である。
(1)1回目の延伸ブロー成形を行うことにより、一次予備成形体は軸方向のみならず、径方向にも延伸されて、二次予備成形体が形成されること。
(2)2回目の延伸ブロー成形を行うことにより、二次予備成形体は軸方向のみならず、径方向にも延伸し、高延伸ブロー成形30が形成されること。
(3)特に摘示事項(d)より、予備成形体の胴部を構成する樹脂は、ポリエステル樹脂とガスバリヤー性を有する共重合ポリエステル樹脂との混合物により構成されており、その重量比が9:1であるから、この混合比からみてポリエステル樹脂が、この混合物における「母材」といえること。

したがって、刊行物1には次の発明が記載されているものと認められる。
「母材にガスバリヤー性を有する樹脂をブレンドしてなる樹脂製容器であって、
前記容器は、2回の延伸ブロー成形工程を経て作製されたものであり、
前記母材はポリエチレンテレフタレート樹脂であり、前記ガスバリヤー性を有する樹脂は、共重合ポリエステル樹脂であり、前記母材とガスバリヤー性を有する樹脂とは、重量比で9:1の割合であるガスバリヤ性に優れた樹脂製容器。」(以下、この発明を「引用発明」という。)

5.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その文言上の意義、構造及び機能等からみて、引用発明における「母材」は、本願補正発明の「母相」に相当し、以下同様に、「ガスバリヤー性を有する樹脂」は「ガスバリヤ材」に、「樹脂製容器」は「合成樹脂製の容器」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の延伸ブロー成形工程は、予備成形体を軸方向のみならず、径方向にも延伸させる工程であり、2方向延伸、すなわち2軸延伸を行っているから、本願補正発明と同様に2軸延伸ブロー成形工程である。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「母相にガスバリヤー材をブレンドしてなる合成樹脂製の容器であって、
前記容器は、2回の2軸延伸ブロー成形工程を経て作製されたものであり、
前記母相はポリエチレンテレフタレート樹脂であり、前記ガスバリヤー材は、ポリエステル樹脂であり、前記母相に一定割合でガスバリヤー材を含有するガスバリヤ性に優れた樹脂製容器。」
〈相違点1〉
本願補正発明は、「加熱処理工程を挟み、1回目のブロー成形において完成品よりも1.2?2.5倍程度のオーバーサイズになるブロー成形品を得る少なくとも2回の2軸延伸ブロー成形工程を経て作製されたもの」であるに対して、引用発明は、2回の2軸延伸ブロー成形工程を経て作製される容器であるものの、2回の2軸延伸ブロー成形の間に加熱処理工程を挟んでおらず、1回目のブロー成形において得られる成形品を完成品よりオーバーサイズとしていない点。
〈相違点2〉
本願補正発明は、ガスバリヤ材はメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂、非晶質ポリエステル樹脂もしくはエチレンナフタレート-エチレンテレフタレート共重合樹脂のうちの何れか1つであり、母相は0.5?10mass%の範囲でガスバリヤ材を含有しているのに対して、引用発明では、ガスバリヤ材は共重合ポリエステル樹脂であり、母相とガスバリヤ材の重量比は9:1の割合である点。

6.判断
(1)相違点1について
本願補正発明の相違点1に係る構成の技術的意義について
本願の明細書の段落【0003】、【0004】、【0015】、【0016】、【0030】、【0031】には、本願補正発明の目的、作用効果として次のように記載されている。

「合成樹脂製の容器は、容器本体を通して酸素や炭酸ガスが透過するのが避けられないため、内容物の品質を保持できる期間、いわゆる、シェルフライフがガラス製の容器に比較した場合に短い欠点がある。」(段落【0003】)
「また、この種の容器は、熱に対する強度も小さく、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)からなる容器では、85?87℃程度が限界であって、とくに、内容物としてかかる温度を超えるようなものを充てんする場合においては熱収縮による形状変形が避け難く、用途範囲を拡大するにも限界がある。」(段落【0004】)
「【発明が解決しようとする課題】 本発明の課題は、合成樹脂製の容器における上述のような従来の問題を解消できる新規な容器とその製造方法を提案するところにある。」(段落【0005】)
「かかる容器は、母相1aに対してガスバリヤ材gをブレンドして射出成形や押出し成形等を経て得られた図2に示すようなプリフォームP(口元を結晶化(白化)したもの)を用い、これを延伸効果を発現できる例えば70?130℃、より好ましくは90?120℃程度に加熱し、50?230℃、より好ましくは70?180℃、延伸表面積倍率4?22倍(より好ましくは6?15倍、容量で完成品よりも1.2?2.5倍程度のオーバーサイズ)とする条件下に1回目の2軸延伸によるブロー成形を行い、次いで、得られたブロー成形品に110?255℃、より好ましくは130?200℃のもとで、完成品より0.60?0.95倍程度まで収縮させる強制的な加熱処理を施して内部の残留応力を除去し、さらに、60?170℃、より好ましくは80?150℃の温度域で2回目の2軸延伸によるブロー成形を行うことにより得ることができる。」(段落【0015】)
「上記のように、加熱処理を挟む少なくとも2回の2軸延伸ブロー成形を経て製造された容器は、その本体部分における残留応力が極めて軽減され、かつ、樹脂の密度が上昇するため、外部からの熱に対する強度が高められる(耐熱性の改善)とともに、ガスバリヤ性がより一層改善される。」(段落【0016】)
「耐熱性については、シングルブローによるものでは、内容物の温度が85?87℃程度で形状変形が生じたのに対して、本発明に従う容器においては、90?93℃程度までは形状変形が生じることはなく耐熱性に関しても著しい改善が見られた。」(段落【0030】)
「【発明の効果】 本発明によれば、耐熱性は勿論のこと、ガスバリヤ性を高めることができるので、容器の用途の拡大を図ることができるだけでなく、内容物の品質を長期にわたった保持できる。」(段落【0031】)

これらの記載からみて、本願補正発明の相違点1に係る構成の技術的意義は、合成樹脂製容器において、1回目のブロー成形により完成品よりオーバーサイズの成形品を得た後、完成品よりもやや小さなサイズに収縮させる強制的な加熱処理を行うことにより、成形時に発生する容器本体の残留応力を除去するとともに樹脂の密度を上昇させて、容器の耐熱性とガスバリヤ性を改善することにあると解することができる。

しかしながら、樹脂製容器の耐熱性を向上させるために、1回目のブロー成形により完成品よりオーバーサイズの成形品を得た後、完成品よりもやや小さなサイズに収縮させる強制的な加熱処理を行い、次に2回目のブロー成形により完成品を作製することは、特開平6-39910号公報、特開平4-161304号公報、特開平9-314650号公報に記載された如く、本願出願前に周知な技術である。
また、1回目のブロー形成により、どの程度完成品よりオーバーサイズの成形品を得るかは、樹脂の種類や、容器の形状、肉厚などを踏まえて、残留応力の除去や樹脂密度の上昇により容器の耐熱性の向上が期待できる範囲で当業者が適宜定めるものであり、また、本願の明細書の記載を参酌しても1回目のブロー成形において成形品を完成品よりも1.2?2.5倍程度のオーバーサイズとする数値的な限定も、容器の耐熱性やガスバリヤ性に関して臨界的な意味を有すると認めることはできず、さらに、上記特開平6-39910号公報の【0008】に「本発明は、予め成形したパリソンを加熱した金型内に入れ、延伸ロッドを前記パリソンの底部に接触させ、延伸ロッドを前進させて縦軸方向に延伸し、かつ前記パリソンの口頸部にブロー成形用のマンドレルを内挿して該マンドレルに設けた圧力流体通路より圧縮された流体を噴出させて横軸方向に延伸させ、最終成形体中空容器の1.2?2.5倍の中空容器中間体を成形して加熱室で熱処理して前記中空容器中間体を収縮させた後、再度ブロー成形して樹脂製中空容器をブロー成形する方法」(下線は当審において付与)と記載されており、1回目のブロー成形により得られる成形品のサイズを完成品の「1.2?2.5倍程度」に数値範囲によって具体的に設定すること自体にも困難性を認めることはできない。
そして、本願の出願時点においては、引用発明のような合成樹脂製の容器に加熱処理された高温の飲料などを充填することも通常行われており、合成樹脂製容器のガスバリヤ性を向上させるだけでなく、耐熱性を向上させることも周知な技術的課題であるから、本願出願前において、刊行物1に接した当業者が、引用発明の耐熱性を向上させるために、上記周知技術を適用して本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは容易になし得ることである。
また、1回目のブロー成形において成形品を完成品よりオーバーサイズにする際に、その割合を1.2?2.5倍程度と設定することによる効果も当業者の予測の範囲を超えるものではない。

(2)相違点2について
樹脂製容器のガスバリヤ性を高めるために、母材にメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂などのガスバリヤ材を一定の割合でブレンドすることは、特開2000-168017号公報に記載された如く周知な技術である。
また、引用発明の母相とガスバリヤ材との重量比は9:1であるから、ガスバリヤ材は母相に対して10mass%であり、本願補正発明の母相とガスバリヤ材の重量比の範囲内である。
そして、本願の明細書の記載を参酌しても、ガスバリヤ材の母相に対する割合を0.5?10mass%とすることによって臨界的な効果を奏するとする技術的根拠も認められず、ガスバリヤ材の割合を母相に対してどの程度に設定すべきかは、ガスバリヤ材の種類や容器本体の肉厚、成形容易性などを踏まえて、容器として要求されるガスバリヤ性を実現すべく当業者が適宜設定するものであるから、引用発明において、上記周知技術を適用して、本願補正発明の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
また、母相に含有されるガスバリヤ材の範囲を0.5?10mass%とすることによる効果も当業者の予測の範囲を超えるものではない。

(3)相違点についてのまとめ
本願補正発明を全体構成でみても、引用発明及び周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものではない。
したがって、本願補正発明は、上記刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7.補正却下についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、平成18年7月19日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1は以下のとおりのものである。
「母相にガスバリヤ材をブレンドしてなる合成樹脂製の容器であって、
前記容器は、加熱処理工程を挟み、1回目のブロー成形において完成品よりも1.2?2.5倍程度のオーバーサイズになるブロー成形品を得る少なくとも2回の2軸延伸ブロー成形工程を経て作製されたものである、ことを特徴とするガスバリヤ性、耐熱性に優れた合成樹脂性容器。」(以下、この発明を「本願発明」という)

第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、及びその記載事項は、前記第2、「4.引用文献」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
上記第2、「1.本件補正の内容」での検討によれば、本願発明は、前記第2、「3.本願補正発明」から、「母相」の限定事項である「母相はポリエチレンテレフタレート樹脂であり」及び「母相は0.5?10mass%の範囲でガスバリヤ材を含有する」との構成を省き、「ガスバリヤ材」の限定事項である「ガスバリヤ材はメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂、非晶質ポリエステル樹脂もしくはエチレンナフタレート-エチレンテレフタレート共重合樹脂のうちの何れか1つであり」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2、「5.対比」及び「6.判断」で検討したように、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願日前に頒布された刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-02 
結審通知日 2008-07-08 
審決日 2008-07-22 
出願番号 特願2001-47753(P2001-47753)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 耕作  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 佐野 健治
遠藤 秀明
発明の名称 ガスバリヤ性、耐熱性に優れた合成樹脂製容器およびその製造方法  
代理人 来間 清志  
代理人 杉村 興作  
代理人 藤谷 史朗  

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