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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1183980
審判番号 不服2006-26429  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-24 
確定日 2008-09-04 
事件の表示 特願2003-105195「金属被覆カーボンブラシ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月 4日出願公開、特開2004-312921〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年4月9日の出願であって、平成18年10月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
本願の請求項1乃至6に係る発明は、明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「平均気孔半径が0.1?2.0μm、累積気孔容積が50?600mm^(3)/gの樹脂結合質系、炭素黒鉛質系、又は電気黒鉛質系の炭素質材料と、前記炭素質材料の表面に被覆された金属とからなる金属被覆カーボンブラシ。」

2.引用例
(2-1)
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開平5-182733号公報 (以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

・「【特許請求の範囲】
【請求項1】カーボンを少なくとも一成分として含む電気機械用カーボンブラシにおいて、ブラシ基材の周囲全面(先端接触部を除く)に、電気良導性金属の外被を施してなる電気機械用カーボンブラシ。」

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電気機械用カーボンブラシに関し、特に抵抗損失が少なく、耐用性の長いカーボンブラシに関するものである。」

・「【0011】
【発明の作用】元来ブラシ基材としては、(イ)黒鉛粉を熱硬化性樹脂などのバインダーで混練し、硬化せしめただけのもの(レジンボンド系)、
【0012】(ロ)黒鉛粉を熱硬化性樹脂又はピッチなどのバインダーで混練し、低温度で焼成して、バインダー成分を炭化したもの(CG系)、
【0013】(ハ)さらに高温で焼成して、炭素成分の少なくとも一部を黒鉛化処理したもの(EG系)がある。
【0014】本発明においては上記(イ)のレジンボンド系の基材が主たる対象とされる。レジンボンド系の基材に於いては、バインダーとして用いた樹脂は、硬化させたままの状態で使用し、これを炭素化又は黒鉛化していないので、電気絶縁性が比較的高い。従って、抵抗が大きく整流性が良好である利点がある。逆に抵抗が大きいことに起因する抵抗損が大きく、結果として発熱が大きい欠点が生じ、高温条件下で長時間の連用により、樹脂が劣化して特性が変化する欠点が併発する。」

・「【0015】このような相反する特性の要求は、ブラシ基材周囲の外表面に、電気の良導性金属、例えばニッケル、銅、金、銀等の被覆を行うことにより、内部の基材の抵抗は高くても、外側の良導膜の作用でみかけの抵抗を下げ、温度上昇を抑え、ブラシの連用による性能変化を防ぐ等、レジンボンド系基材の欠点をことごとく補うことができ、長所と相俟って極めて高性能のブラシを作ることができる。
【0016】本発明に於いて、ブラシ基材の表面に電気良導性の被覆を行う方法としては、メッキによる方法が考えられる。このためメッキの方法としては電解メッキによる方法と化学メッキ(無電解メッキ)による方法とを実施した。何れの方法にても金属被覆を施すことが出来た。」

・「【0017】しかしブラシを実際にモーターに取付けて試験したところ、金属被覆と基材との剥がれにくさの点では、電解メッキよりも無電解メッキの方が優れていた。」

・「【0019】しかし乍ら本発明に於いてはメッキの上記の如き作用もさることながら、実際的には、炭素質部分と樹脂質部分とが混在するこの種ブラシに於いて、無電解メッキ法により、確実に金属被膜を形成出来、しかもブラシ全体の電気抵抗を減じ得られると共に、モーター効率を大きく向上しうるという実際的研究の結果に基づくものである。
【0020】そしてこのような実際的研究結果は、レジンボンド系以外のCG系、EG系の場合にも発揮される。」

・「【0021】さらにレジンボンド系の場合は、一般にメッキ処理前の基材の面が滑らかであるため、メッキ後の製品の表面も比較的平滑となり、商品的にも外見が良好である特徴をも有する。」

これらの記載事項によると、引用例1には、「レジンボンド系、CG系又はEG系の炭素質材料からなる電気機械用カーボンブラシにおいて、ブラシ基材の周囲全面(先端接触部を除く)に、電気良導性金属の外被を施してなる電気機械用カーボンブラシ。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2-2)
又、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-214424号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

・「【0003】ところがこの黒鉛電極は、上記金属電極に比べ良好な特性を有する反面、仕上加工領域における低電極消耗化、被加工物の仕上面粗さの向上等に改善課題があり、特に加工面積の増加にともなう電極と被加工物の間に増加形成されるコンデンサ効果による加工面粗さの悪化を防止する必要がある。」

・「【0011】
【作用】・・・(中略)・・・また、請求項2記載の黒鉛製放電加工用電極にあっては、黒鉛基材の水銀圧入法で測定される微細気孔の占める容積を0.15cc/g以下としていることから、含浸された金属シリコンと黒鉛基材の熱膨張差によるクラックは発生しない。
【0012】請求項3記載の黒鉛製放電加工用電極にあっては、さらに黒鉛基材の水銀圧入法で測定される75?75000オングストロームの径を有する微細気孔の占める容積が0.02?0.15cc/gとしていることから黒鉛基材の気孔内の金属シリコンの一部が入り込んでアンカー効果が生じ、黒鉛基材とシリコン被膜の密着性が高められ、被膜がさらに剥離しにくくなる。また、黒鉛基材に存在する微細気孔の占める容積が0.02cc/g未満では、黒鉛基材の内部或いは表面に形成される金属シリコンが少なく、上記加工時の放電エネルギーの分散効果がやや落ちるのである。」

(2-3)
さらに、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-204936号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。

・「【0012】
【課題を解決するための手段】・・・本発明は、平均気孔半径が0.1乃至3.0μmであって且つ累積気孔容積が10×10^(-2)・m^(3)/Mg以下の黒鉛材料に、電気伝導性の良い金属の被膜を形成させてなる電解加工用黒鉛電極を要旨とする。」

・「【0015】ここで電極素材の物理特性を特定した理由について若干説明する。平均気孔半径が0.1μmよりも小さい黒鉛材料は製造が困難であり、平均気孔半径が3.0μmよりも大きな素材を使用すると、電極表面の気孔を前記金属によって充分に封孔させることができず、電解液が浸透する原因となるため望ましくない。また、累積気孔容積が、10×10^(-2)・m^(3)/Mgよりも多い素材を用いた場合も同様に、前記金属によって気孔を封孔することができないため望ましくない。」

・「【0016】なお、平均気孔半径及び累積気孔容積の測定は水銀圧入法で行い、試料の大きさは直径10mm、長さ40mmの円柱形状とし、最大圧力100MPaまで加圧したときの気孔量を累積気孔容積とし、累積気孔容積の1/2の気孔容積に相当する値を平均気孔半径とした。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「レジンボンド系」は、本願発明の「樹脂結合質系」に相当し、以下同様に、カーボンブラシの技術分野において「CG」は”carbon graphite”の略であることから「CG系」は「炭素黒鉛質系」に、上記分野において「EG」は”electrographite”の略であることから「EG系」は「電気黒鉛質系」に、「電気良導性金属の外被」は「被覆された金属」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は「樹脂結合質系、炭素黒鉛質系、又は電気黒鉛質系の炭素質材料と、前記炭素質材料の表面に被覆された金属とからなる金属被覆カーボンブラシ。」で一致し、本願発明が炭素質材料についてさらに「平均気孔半径が0.1?2.0μm、累積気孔容積が50?600mm^(3)/g」と規定しているのに対し、引用発明ではこのような規定がなされていない点で相違する。

4.判断
上記相違点について検討する。
炭素質材料に多数の気孔が存在し、該炭素質材料の特性を表すために、平均気孔半径(もしくは直径)および累積気孔容積を表示することは周知のことである。
そして、上記引用例2には、放電加工用電極であるが、その電極材料として該炭素質材料の一種である黒鉛基材の表面に金属シリコン被膜を形成する際、微細気孔の占める容積(累積気孔容積に相当)を所定(上限)値(0.15cc/g)以下にすることにより、含浸された金属シリコンと黒鉛基材の熱膨張差によるクラックが発生せず、また、微細気孔の占める容積を上記上限値以下で他の所定(下限)値(0.02cc/g)以上にすることにより、黒鉛基材の微細気孔内に金属シリコンの一部が入り込んでアンカー効果が生じ、黒鉛基材とシリコン被膜の密着性が高められ、被膜がさらに剥離しにくくなる旨記載されている(【0011】、【0012】を参照)。
また、引用例3には、黒鉛材料からなる放電加工用電極に金属の被膜を形成する際、黒鉛材料の平均気孔半径について、該平均気孔半径が所定(下限)値(0.1μm)より小さいと製造困難であり、他の所定(上限)値(3.0μm)より大きいと、電極表面の気孔を金属によって充分に封孔できない旨記載されている(【0015】参照)。
これら引用例2及び3にも記載されるように、黒鉛材料からなる電極に金属被膜を形成する際、黒鉛材料(基材)の平均気孔半径及び累積気孔容積の程度が金属被膜の仕上りに影響を及ぼすことは、周知のことと言える。
一方、引用例1にも、「【0021】・・・(中略)・・・メッキ後の製品の表面も比較的平滑となり、商品的にも外見が良好である」及び「【0017】金属被覆と基材との剥がれにくさの点では、電解メッキよりも無電解メッキの方が優れていた」と記載されている様に、引用発明は、電気機械用カーボンブラシの周囲に施す電気良伝導性金属被覆について、外見の良好さや基材との剥がれにくさ等も意図していることが明らかであるから、引用発明において、その黒鉛材料を含む炭素質材料について、上記周知例の様に、平均気孔半径及び累積気孔容積を金属被覆の形成に良好な範囲に限定することは、当業者が適宜容易に考え得るものと認められる。
なお、引用例2に記載の黒鉛基材の水銀圧入法で測定される微細気孔の径は「75?75000オングストローム」と規定されているが、本願発明の平均気孔半径の単位に換算すると「0.00375?3.75μm」となり、また、同じく微細気孔の占める容積は「0.02?0.15cc/g」と規定されているが、本願発明の累積気孔容積の単位に換算すると、「20?150mm^(3)/g」となり、また、引用例3に記載の黒鉛材料の平均気孔半径は0.1乃至3.0μmと規定され、累積気孔容積が「10×10^(-2)・m^(3)/Mg以下」と規定されているが、この累積気孔容積を本願発明の累積気孔容積の単位に換算すると、「100mm^(3)/g以下」となることは明らかである。
このように、引用例2及び3に用いられている金属被膜を形成するのに適した電極材料としての黒鉛材料の平均気孔半径は、本願発明の平均気孔半径の範囲を包含し、又、累積気孔容積は、50?150mm^(3)/gの範囲で本願発明の累積気孔容積の範囲と重複している。
一般に、炭素質材料の平均気孔半径及び累積気孔容積を具体的にどの程度に設定するかは、材質や用途に応じて適宜選択し得るものであると認められるところ、引用発明と用途が若干異なるが電流を供給するための電極という点で近接した技術分野に属する引用例2,3のものにおいても、本願発明とほぼ同様な範囲の数値を用いているのであるから、引用発明においても、その炭素質材料の平均気孔半径及び累積気孔容積の数値を、本願発明と同様な数値範囲に設定して、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び引用例2、3に記載の技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、請求人は、平成20年5月21日付けの上申書を提出し、本願発明の実施品と従来例との外観を対比した参考資料を提示して、本願発明の顕著な効果を主張するが、この参考資料を参照しても、上記の判断を覆す理由は認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2,3に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-01 
結審通知日 2008-07-08 
審決日 2008-07-23 
出願番号 特願2003-105195(P2003-105195)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牧 初  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 田中 秀夫
谷口 耕之助
発明の名称 金属被覆カーボンブラシ  
代理人 梶 良之  

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