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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1184019
審判番号 不服2005-9786  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-25 
確定日 2008-09-10 
事件の表示 平成7年特許願第47233号「光データ記録ディスクの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成7年11月14日出願公開、特開平7-302442〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成7年(1995年)3月7日(パリ条約による優先権主張 1994年3月8日 米国)の出願であって、拒絶理由通知に対して応答がなく、平成17年2月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされた。
当審から平成19年7月20日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成20年1月22日付けで手続補正がされた。

本願の請求項1乃至5に係る発明は、平成20年1月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】データを表わしている物理的表面特性を有するマスター記録ディスクから光データ記録ディスクを製造する方法において、
ポリマーの液体溶液を製造し、
前記溶液を、回転しているマスター記録ディスクの上に回転被覆し、
前記回転しているマスター記録ディスクの上の前記溶液を乾燥し、そして
前記回転を停止した後マスター記録ディスクの上の前記溶液の乾燥から形成されたポリマーフィルムを剥離する
諸工程から成り、かつ前記剥離されたフィルムは、マスター記録ディスクの前記表面に具体化されている前記データに相応する物理的表面特性を有している、前記の光データ記録ディスクの製造方法。」

2.引用例
(1) 当審が通知した拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開昭60-159014公報(以下、「引用例1」という。)には、「精密成形品」に関して図面とともに、以下の事項が記載されている。(なお、下線は、当審で付加した。)

ア.「1.平滑な表面に微細な凹凸模様を有する鋳型の上に、ポリシロキサン系硬質皮膜を与えるモノマー又はそのオリゴマーを主成分とする塗布液を塗布し、硬化させた後、離型させて得られるポリシロキサン系硬質表面層(A)と基板(B)からなる精密成型品。」(特許請求の範囲)
イ.「従って、本発明の目的は光学式ビデオディスクやデジタルオーディオディスクのように平滑な表面に微細な凹凸模様を有する精密成型品であって、凹凸模様を有する表面層が高い転写精度、高い硬度及び垂直磁化膜に対する高い密着性を有するものを提供することにある。」(2頁右上欄11?16行)
ウ.「本発明に使用されるポリシロキサン系硬質皮膜を与えるモノマーとしては、一般式:<式は省略した>で表される有機ケイ素化合物が好ましい。
<中略>
これらのモノマーは、酢酸、塩酸、硫酸などを用いて部分加水分解縮合することにより予めオリゴマーにしておいてもよい。
前記モノマーまたはそのオリゴマーを溶解する溶媒としては、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが使用される。」(2頁左下欄4行?右下欄14行)
エ.「こうして調整された塗布液を鋳型表面に塗布するのであるが、塗布方法としては、ハケ塗り、スプレーコート、バーコート、流し塗り、ディッピング、ロールコート、スピンコート、等が用いられる。」(3頁左上欄12?16行)
オ.「塗布後、必要に応じて予備乾燥して成膜した後、一般に50?250℃に加熱することにより硬化させ、ポリシロキサン系硬質表面層(A)を得る。」(3頁17?19行)
カ.「こうして得られた表面層(A)は、鋳型から離型させた後又は離型させる前に基板(B)に接着させ、本発明の精密成型品とする。」(3頁右上欄3?5行)
キ.「本発明の精密成型品は、凹凸模様に応じて、光学式ビデオディスク及びデジタルオーディオディスク、光磁気ディスク用基板、位相型フレネルゾーンプレートレンズ、回折格子などに使用される。」(3頁右上欄下7?下4行)
ク.「(実施例)
ガラス原盤から電鋳法により作製したニッケル製の鋳型を用意する。
この鋳型は直径180mm厚さ10mm(台座を含む)の円板で、外周付近に巾35mmにわたって、第1図に示す如く、高さ700Å、巾0.8ミクロン、ピッチ2.5ミクロンの突条が渦巻状に形成されている。市販されている勝田化工株式会社製のNIKCOAT(商品名)の主剤A-430の100重量部と触媒z-102の7重量部とを混合した後、混合液を上述の鋳型の表面にスピンコート法(回転数1000rpm)によりコートし、30分間室温で自然乾燥させた後、80℃で1時間その後更に100℃で1時間焼成し硬化させた。
得られた膜厚約10μのポリシロキサン系硬質被膜(A)を鋳型から剥がして、これを直径180mm厚さ1.2mmの硬質アクリル樹脂製基板(B)にエポキシ系接着剤を用いて貼り付け、光磁気ディスク用基板を作成した。」(3頁右上欄下2行?左下欄下4行)

上記記載事項によれば、引用例1には、
「ガラス原盤から電鋳法により作製したニッケル製の鋳型から精密成型品を製造する方法において、ポリシロキサン系硬質皮膜を与えるモノマー又はオリゴマーを主成分とする塗布液を調整し、平滑な表面に微細な凹凸模様を有する鋳型の上に、塗布液をスピンコート法によって塗布し、乾燥後硬化させた後、得られたポリシロキサン系硬質表面層を離型する工程からなる、精密成型品を製造する方法」の発明(以下「引用例発明」という。)が記載されている。

(2) 同じく、拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開昭63-108036号公報(以下、「引用例2」という。)には、「セルロースエステル薄膜の製造方法及びその製造方法により得たフォトマスク保護用光学薄膜」に関して図面とともに、以下の事項が記載されている。

ケ.「本発明者等は、セルロースエステルの有機溶媒溶液から回転製膜法により薄膜を製造するに際し、回転製膜操作に先立って、セルロースエステル溶液から分別沈澱法により高分子量のものを予め除去しておくときには、生成する薄膜の膜厚の分布が均一となり、且つ光学的特性も顕著に向上することを見出した。
本発明者等は更に、セルロースエステルとしてニトロセルロースを使用し、且つ有機溶媒としてメチルイソブチルケトンを使用するときには、他の組み合わせに比して濾過性及び製膜性の良好な溶液が得られ、この溶液から優れたフォトマスク保護用光学薄膜、即ちペリクルが得られることを見出した。」(3頁左上欄8行?右上欄1行)

3.対比
引用例発明の「精密成型品」は、光学式ビデオディスクやデジタルオーディオディスクとして用いられるものであるから、本願発明の「光データ記録ディスク」に相当し、「平滑な表面に微細な凹凸模様」は、本願発明の「物理的表面特性」に相当する。
また、引用例発明において、ガラス原盤から原盤のデータに対応する凹凸模様に対応する凹凸を有する鋳型が作製され、該鋳型の上に被膜形成用の塗布液を被覆して硬質表面層を形成しており(上記ア、ク)、一方、本願発明において「マスター記録ディスク」の上にポリマー溶液を回転被覆してマスター記録ディスクの物理的表面特性を転写したポリマーフィルムを製造するのであるから、引用例発明の「鋳型」は、本願発明の「データを表わしている物理的表面特性を有するマスター記録ディスク」に相当する。
そして、ポリシロキサンはポリマーの一種であるから引用例発明の「ポリシロキサン系硬質皮膜を与えるモノマー又はオリゴマーを主成分とする塗布液」、「ポリシロキサン系硬質表面層」は、それぞれ、本願発明の「液体溶液」、「ポリマーフィルム」に相当する。
引用例発明の「スピンコート法」とは回転している基材の上に塗料溶液を被覆する方法であり、引用例発明の「硬質表面層」はマスター記録ディスクの表面に具体化されているデータに相応する物理的表面特性を有しているものであることは自明である。

そこで、本願発明と引用例発明とを比較すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
「データを表わしている物理的表面特性を有するマスター記録ディスクから光データ記録ディスクを製造する方法において、
液体溶液を製造し、
前記溶液を、回転しているマスター記録ディスクの上に回転被覆し、
前記回転しているマスター記録ディスクの上の前記溶液を乾燥し、そして
前記回転を停止した後マスター記録ディスクの上の前記溶液の乾燥から形成されたポリマーフィルムを剥離する
諸工程から成り、かつ前記剥離されたフィルムは、マスター記録ディスクの前記表面に具体化されている前記データに相応する物理的表面特性を有している、前記の光データ記録ディスクの製造方法。」である点。

[相違点]
本願発明は、ポリマーの溶液を使用し、乾燥によりポリマーフィルムを形成するのに対し、引用例発明では、モノマー又はオリゴマーの溶液を用い、乾燥及び硬化によってポリマーフィルムを形成する点。

4.判断
以下、相違点について検討する。

光学的特性にすぐれたポリマーフィルムの製法として、ポリマー溶液をスピンコーティングし乾燥する方法は、上記引用例2の記載事項(上記ケ)等に示されるように周知の方法であるから、引用例発明における「モノマー又はオリゴマーの溶液を用い、乾燥後に硬化させる方法」に代えて、ポリマーの溶液を使用し、乾燥によってポリマーフィルムを形成する方法を採用することは当業者が容易に想到しうる事項にすぎない。

請求人は、意見書において各引用例は本願発明と技術分野が異なる旨主張しているが、引用例1は「光学式ビデオディスクやデジタルオーディオディスク」の基板の製造にも関連する技術であり、引用例2は光学的特性が要求されるポリマーフィルムの製造方法に関する技術であって、本願発明と関連性の深い技術であるから、請求人の主張を採用することはできない。

そして、上記相違点について総合的に検討しても、本願発明の効果が引用例1及び引用例2から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願請求項1に係る発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-16 
結審通知日 2008-04-18 
審決日 2008-04-30 
出願番号 特願平7-47233
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵野 雅昭橘 均憲  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 横尾 俊一
漆原 孝治
発明の名称 光データ記録ディスクの製造方法  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 歌門 章二  

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