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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1184060
審判番号 不服2006-3990  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-03 
確定日 2008-09-08 
事件の表示 平成10年特許願第292458号「膜形成装置および膜形成基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月28日出願公開、特開2000-121400〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年10月14日の出願であって、平成18年1月19日付け(同年2月1日発送)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
なお、平成17年12月19日付けの手続補正は、拒絶査定と同日付け(平成18年1月19日付け)の補正却下の決定により却下された。

第2 平成18年3月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年3月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正の内容は、特許請求の範囲の請求項1の記載を補正前の、
「液相材料を液滴として吐出する複数のノズルを有する流量制御バルブと、
前記複数のノズルの少なくともいずれかから吐出された前記液滴を気化し、気化ガスを生成する液滴気化装置と、を備え、
前記液滴気化装置から前記気化ガスを供給することを特徴とする膜形成装置。」
から、補正後の、
「液相材料を液滴として吐出する複数のノズルを有する流量制御バルブと、
前記複数のノズルの少なくともいずれかから吐出された前記液滴に、該液滴の飛翔中に光を照射して気化し、気化ガスを生成する液滴気化装置と、を備え、
前記液滴気化装置から前記気化ガスを供給することを特徴とする膜形成装置。」(なお、アンダーラインは補正箇所を示すために当審において付したものである。)
と補正する補正事項を含むものである。
上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「液滴を気化し、」を、「液滴に、該液滴の飛翔中に光を照射して気化し、」と補正することにより気化する手段を具体的に限定したものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定にする特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「補正後第1発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)補正後第1発明を改めて掲載すると、次のとおりである。
「液相材料を液滴として吐出する複数のノズルを有する流量制御バルブと、
前記複数のノズルの少なくともいずれかから吐出された前記液滴に、該液滴の飛翔中に光を照射して気化し、気化ガスを生成する液滴気化装置と、を備え、
前記液滴気化装置から前記気化ガスを供給することを特徴とする膜形成装置。」

(2)刊行物
本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-168802号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
ア 「〔産業上の利用分野〕本発明は、液体原料の気化装置に関し、特に化学気相成長法による薄膜堆積装置に好ましく適用できる装置に関する。」(段落【0001】)
イ 「【実施例】以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施例を説明する。
【0016】本発明は、液体原料を液体状態で輸送し、反応室内で加熱されたガス中に噴出させ、加熱されたガス中に飽和蒸気圧分を完全に含ませるものである。
【0017】図1は、液体原料の噴出部と気化させる部分を模式的に示したものである。4は先端が絞られたノズルであり、流量の制御された液体原料2が輸送される。8は圧電振動子でノズル4の先端に振動を与える。このような構成で、ノズル先端に振動を与えつつ液体原料をノズル先端へ導くと、ノズル先端からノズルの振動に供なって直径10μm?50μm程度の大きさの液滴状になって液体原料は噴出する。
【0018】ノズルの先端方向には小孔40が開口している板30が設けられている。板30には図示を省略したヒータが埋め込まれており加熱されている。ノズル周囲からは、不活性ガスもしくはH_(2)ガスあるいはそれらの混合ガス31が小孔に向けて流れ込む。
【0019】この時、空間Aの圧力は760Torr?500Torr、空間Bは反応室であり、その圧力は堆膜の堆積圧力である。例えば、空間Bの圧力は0.1ないし10Torrである。小孔40の中では空間Aから空間Bへ向けて圧力勾配が生じている。空間Bは排気装置(図示せず)で排気され、所定の圧力を保っている。・・・このような空間A,小孔,空間Bに、図1のように液滴50がノズルから噴出すると、液滴50は小孔40内で気化され、気体となって空間Bへ導入される。」(段落【0015】?【0019】)
ウ 「【0021】図2は、図1に示す気化器を設けた化学気相成長装置の一例を示す模式図である。
【0022】図2において1は液体原料の容器、2は液体原料である。ガス導入口11から加圧用のガスがバルブ10を通して印加される。加圧する圧力は、圧力計9で調整する。加圧用ガスは、液体原料と反応しないガスであれば良い。・・・ガス導入口11からガス圧が加えられると、サイホンの原理で液体は液体流量計3に導かれる。液体流量計としては、市販の液体マスフローコントローラを用い得る。液体流量が正確に測定できるならば、何を用いても良い。液体流量計を通った液体原料はノズル4?7へ導かれる。
【0023】図2では、ノズルの数は4つしか描かれていないが、4つより少なくても多くても良い。・・・各ノズル4?7には、それぞれ圧電振動子8が取りつけられており、ノズル先端から液滴を噴出する。図1,図2の実施例では、圧電振動子の振動を利用してノズル先端から液体原料が液滴状に噴出させているが、直径10?100μmの液滴を噴出できるならば、圧電振動子以外の手段を用いても良い。空間20は、ほぼ大気圧程度の圧力に、空間21は所望の堆積膜堆積に適当な圧力0.1?10Torrに設定する。空間20と空間21の圧力差はバッフル板30に設けた小孔40で作られる。バッフル板30の小孔40は、各ノズルの前面に配置される。・・・図1でも述べたように、バッフル板30はヒータ(図示せず)により加熱されており、ノズル4?7から噴出された液滴はバッフル板30に設けられた小孔40内で気化する。
【0024】バッフル板30は、金属製であっても良いし、絶縁物であっても良い。・・・バッフル板30の厚さは、ノズル4?7から噴出された液滴が小孔40内の加熱された空間で気化するに必要な長さがあれば良い。」(段落【0021】?【0024】)
エ 「【0025】図1に一例を示した本発明に係る気化装置および図2に一例を示した薄膜堆積装置は、液体原料を用いるすべての化学気相成長装置に用いることができる。」(段落【0025】)

上記ウの記載「液体流量計としては、市販の液体マスフローコントローラを用い得る。」によれば、液体流量計3として、液体マスフローコントローラ液体流量計3を用いたものが読み取れる。

したがって、刊行物1には次のとおりの発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。
【刊行物発明】
「圧電振動子8の振動を利用してノズル先端から液体原料を液滴として噴出するノズル4?7を有する、液体原料を前記ノズル4?7に導く液体マスフローコントローラ液体流量計3と、前記ノズル4?7から噴出された前記液滴を、小孔40内の加熱された空間で気化し、気体を生成するための、前記小孔40を有し、ヒータにより加熱されるバッフル板30とを備え、前記小孔40内の加熱された空間で前記液滴が気化した気体を反応室へ導入する薄膜堆積装置。」

(3)対比
補正後第1発明と刊行物発明を対比する。
ア 刊行物発明の「液体原料」、「液滴」、「噴出」、「ノズル4?7」は、それぞれ、補正後第1発明の「液相材料」、「液滴」、「吐出」、「複数のノズル」に相当する。
イ 刊行物発明の「液体原料を前記ノズル4?7に導く液体マスフローコントローラ液体流量計3」は、補正後第1発明の「流量制御バルブ」に相当し、また、刊行物発明の「薄膜堆積装置」は、補正後第1発明の「膜形成装置」に相当する。
ウ 刊行物発明では、液滴を、小孔40内の加熱された空間で気化するのであるから、液滴が、小孔40内の加熱された空間を飛翔中に気化するものと解される。したがって、刊行物発明の「液滴を、小孔40内の加熱された空間で気化し、気体を生成する」ことと、補正後第1発明の「液滴に、該液滴の飛翔中に光を照射して気化し、気化ガスを生成する」こととは、共に、「液滴を、該液滴の飛翔中に気化し、気化ガスを生成する」ことで共通する。
エ 刊行物発明の「小孔40を有し、ヒータにより加熱されるバッフル板30」は、補正後第1発明の「液滴気化装置」に相当する。
オ 刊行物発明の「前記小孔40内の加熱された空間で前記液滴が気化した気体を反応室へ導入する」は、補正後第1発明の「前記液滴気化装置から前記気化ガスを供給する」に相当する。

したがって、以上ア?オの考察から、両者は、次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
「液相材料を液滴として吐出する複数のノズルを有する流量制御バルブと、前記複数のノズルから吐出された前記液滴を、該液滴の飛翔中に気化し、気化ガスを生成する液滴気化装置と、を備え、前記液滴気化装置から前記気化ガスを供給する膜形成装置。」
【相違点】
液滴の飛翔中に気化し、気化ガスを生成する手段として、補正後第1発明では、液滴に、光を照射して気化しているのに対して、刊行物発明では、液滴を、ヒータにより加熱されるバッフル板30に設けられた小孔40内の加熱された空間で気化している点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
本願の出願時の技術水準を示すものとして、例えば、以下の刊行物2、3には次のような記載がある。
ア 刊行物2:特開平7-171552号公報
「【請求項1】アルカリ可溶性樹脂とケイ酸塩とを含有する廃液を気化した後に凝縮と分離とを行い、水溶液、水不溶性液体及び固形物の三者に分離する装置であって、上記気化の手段として光線の発生装置を有し、該光線によって上記気化を行うことを特徴とする廃液処理装置。」(【特許請求の範囲】)
「【実施例】図1は請求項1に係る処理装置の一例の概略構成を示す図である。図1において、1は廃液タンク、2は廃液タンク1中の廃液を気化装置10へ送るポンプである。気化装置10は、上部がドーム型に形成された円筒形の炉壁11で囲繞された炉12、炉壁11の一部を形成する遠赤外線ヒータ13、炉12の底面を形成し、炉12内で廃液が加熱され気化成分が気化した残りの固形物が沈降してその内部に堆積できる構造の固形分回収器14、断熱材16、炉12内へ廃液を噴霧状に噴出する噴出ノズル17、及び炉12内で気化した気化物を凝縮・分離装置40へ送る配管19から主として構成されている。」(段落【0009】)
「【0013】次に、図1及び図2に示す装置の動作について説明する。
【0014】気化装置10の遠赤外線ヒータ13に通電して遠赤外線を発生させた状態で、廃液タンク1中の廃液をポンプ2で所定の流量で炉12内に噴出ノズル17から噴出させる。噴出した噴霧状の廃液中の気化し得る成分は遠赤外線により加熱されて気化し、気化物は配管19を通って凝縮・分離装置40の凝縮器41へ吸引される。」(段落【0013】【0014】)
「請求項1に係る発明において、廃液の気化手段に好ましく用いられる光線は赤外線であり、特に好ましくは遠赤外線である。」(段落【0018】)
イ 刊行物3:特開昭63-12920号公報
「2.特許請求の範囲 検出器の光路に遠赤外線を照射し、該光路内の霧滴を加熱し、気化させることを特徴とする検出器光路の霧滴除去方法。」(1頁左下欄4?7行)
「本発明においてはこの検出光路2に遠赤外線を照射し光路2に漂う霧滴を加熱気化させる。この実施例では検出器1の近傍に遠赤外線スポット加熱器3を配置させここから遠赤外線を照射している。・・・この遠赤外線スポット加熱器3からの遠赤外線は照射範囲4の空間に漂う霧滴に吸収されて、霧滴を加熱気化させる。遠赤外線の波長は3μm-10μmであり、一方霧滴を構成する水や油の有機材料の殆どは3-25μm位の波長域に多くの吸収スペクトルを有しているため、熱吸収効率は極めて高く、ほぼ連続的に検出光路2内に侵入する霧状の粒子を完全に帰化(当審注:「気化」の誤記と認める。)し検出光路2の霧をはらすことができる。」(2頁左上欄20行?右上欄16行)

上記刊行物2、3の記載によれば、液滴を気化させる際に、飛翔中の液滴に光線を照射して気化させることは周知技術にすぎない。
したがって、刊行物発明の小孔40内の加熱された空間で気化することに代えて上記刊行物2、3記載の周知技術を採用し、補正後第1発明のごとく液滴の飛翔中に光を照射して気化する構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

そして、補正後第1発明の奏する効果は、刊行物1?3の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別なものとはいえない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、補正後第1発明は、刊行物発明及び刊行物2、3記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成18年3月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成17年9月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は次のとおりである。
「液相材料を液滴として吐出する複数のノズルを有する流量制御バルブと、
前記複数のノズルの少なくともいずれかから吐出された前記液滴を気化し、気化ガスを生成する液滴気化装置と、を備え、
前記液滴気化装置から前記気化ガスを供給することを特徴とする膜形成装置。」

第4 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-239652号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
1 「【請求項1】反応室と、該反応室内を排気する排気手段と、該反応室内に基体を保持する為の基体保持手段と、該反応室内に原料ガスを導入する導入手段と、を具備する化学気相堆積装置において、前記導入手段は液体状の原料物質の供給量を制御する制御手段と、前記制御手段により下流側に設けられ、液体状の前記原料物質を気化させ反応室内に導入する気化手段と、を有することを特徴とする化学気相堆積装置。」(【特許請求の範囲】)
2 「【産業上の利用分野】本発明は半導体装置又は光磁気ディスク等の記憶装置或いはフラットパネルディスプレイ等に用いられる金属膜、半導体膜或いは絶縁膜等の各種堆積膜を形成する為の化学気相堆積法及び装置に関し、特に液体状の原料を用いる化学気相堆積法及び装置に関する。」(段落【0001】)
3 「本発明によれば、有機金属などの常温で液体状態にある原料物質を、液体状態の段階で計量して供給量を制御した後、振動子やベンチュリ手段などを用いて粒子又は気化させ、反応前に加熱して、反応室に気体として送り込む構成にすることにより、原料物質の飽和蒸気圧の変動に影響されることなく、高精度でキャリアガスや他の反応ガスとの混合比を制御することが可能となる。」(段落【0050】)
4 「本発明に用いられる気化手段のより好ましい構成について説明する。気化手段に導入されてきた液体状の原料物質は気化手段でほぼ100%気化させることが望ましく、その為にはまず液体を液滴(ここで言う液滴とはミストのような液体の微粒子をも含む)としての気化手段の気化室内に導入する。」(段落【0062】)
5 「【実施例】
(実施例1)図1は本発明の実施例1によるCVD装置を示す模式図である。
【0078】101は液体状の原料物質を収容する容器であり、一方の導管はArやN2等の加圧用のガスを封入したボンベ114に圧力コントローラー116を介して接続されている。
【0079】他方の導管は液体流量を検知して流量を高精度で制御できる制御器102を介して反応室106の上流側に接続されている。
【0080】反応室106の上流側には別に気体流量制御器としてのマスフローコントローラ103を介して、ガスボンベ113に接続されている。
【0081】更に反応室106の上流側には加熱手段が設けられており、該加熱手段は穴の開いた石英板109と、加熱器105と加熱コントローラ115とを含んでいる。そして、反応室106内は基板107を複数保持する基板ホルダー108が設けられている。ここで基板ホルダー108は基板107を加熱する為の抵抗加熱器を含んでいる。
【0082】反応室106の下流側には排気装置112が設けられており、原料物質の供給量と排気量とを制御することにより反応室内部を所望の圧力に保持する。
【0083】図2は図1の反応室106の上流側の気化器(エバポレーター部)を拡大した模式図であり、複数の開口120が設けられた石英板109が複数並んで配されている。その上流には液体原料物質の導入手段としての、ピエゾ振動子104が設けられた導入ヘッド121が配設されている。図3は該導入ヘッド121の模式的断面図である。
【0084】ガラス製の導入管118は、接続体117によって反応室106の上流の壁122に接続されている。そのまわりには、ピエゾ振動子104が設けられ、駆動回路111からのパルス信号電圧により振動する。供給量が制御されつつ高圧で供給されてきた液体原料物質は開口部123より吐出されて吐出途中でピエゾ振動子104より受けた振動エネルギーにより液滴に分断される。この原理は周知のインクジェット技術と同様である。
【0085】こうして噴射された原料物質の液滴は、加熱器105により加熱され、更には石英板109に当たって気化する。加熱温度や石英板109と開口123の距離や位置、またはボンベ113より導入されるガスの圧力や流量は、最も効率よく液滴が気化するように調整される。又、119はオペレーションパネル、メモリー及びマイクロコンピュータを含む制御回路であり、液体流量制御器102、マスフローコントローラー103、加熱コントローラー115の動作を制御する。従って、操作者はこの制御回路119を操作することにより最適の堆積条件を容易に設定することができる。」(段落【0077】?【0085】)

したがって、引用例1には次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
【引用発明】
「液体状の原料物質を液滴として吐出する導入ヘッド121を有する、液体状の原料物質を前記導入ヘッド121へ供給し、液体流量を検知して流量を高精度で制御できる液体流量制御器102と、前記導入ヘッド121から吐出された前記液滴を気化する気化器(エバポレータ部)とを備え、前記気化器(エバポレータ部)から気化した原料物質を反応室106内へ導入する化学気相堆積装置。」

第5 対比
本願第1発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「液体状の原料物質」、「液滴」、「吐出」、「導入ヘッド121」、「化学気相堆積装置」は、それぞれ、本願第1発明の「液相材料」、「液滴」、「吐出」、「ノズル」、「膜形成装置」に相当する。
2 引用発明の「液体状の原料物質を前記導入ヘッド121へ供給し、液体流量を検知して流量を高精度で制御できる液体流量制御器102」は、補正後第1発明の「流量制御バルブ」に相当する。
3 引用発明の気化器(エバポレータ部)は、導入ヘッド121から吐出された液滴を気化するものであるから、引用発明の「気化器(エバポレータ部)」は、補正後第1発明の「液滴気化装置」に相当する。
4 引用発明の「前記気化器(エバポレータ部)から気化した原料物質を反応室106内へ導入する」は、本願第1発明の「前記液滴気化装置から前記気化ガスを供給する」に相当する。
したがって、以上1?4の考察から、両者は、次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
「液相材料を液滴として吐出するノズルを有する流量制御バルブと、前記ノズルから吐出された前記液滴を気化し、気化ガスを生成する液滴気化装置と、を備え、前記液滴気化装置から前記気化ガスを供給する膜形成装置。」
【相違点】
液相材料を液滴として吐出するノズルの数が、本願第1発明では、「複数」であるのに対して、引用発明では、複数なのか不明である点。

第6 判断
上記相違点について検討するに、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-75825号公報(「ノズル15a?15g」、「ノズル35a?35i」、「ノズル45a?45f」参照。以下、「引用例2」という。)、前掲刊行物1:特開平5-168802号公報(4個のノズル「ノズル4?7」参照)に記載されているごとく、膜形成のための液相原料を液滴として吐出する複数のノズルは周知技術にすぎない。
したがって、引用発明の導入ヘッド121に上記引用例2及び刊行物1記載の周知技術を適用して導入ヘッド121のノズル数を複数とし、本願第1発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。
そして、本願第1発明の奏する効果は、引用例1、2及び刊行物1の記載事項から、当業者であれば予測し得る範囲内のものにすぎず、格別なものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願第1発明は、引用発明並びに上記引用例2及び刊行物1記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願第1発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2?9に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-15 
結審通知日 2008-07-16 
審決日 2008-07-29 
出願番号 特願平10-292458
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01F)
P 1 8・ 121- Z (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 正治岸 智史松浦 久夫  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 山川 雅也
岡田 卓弥
発明の名称 膜形成装置および膜形成基板の製造方法  
代理人 田中 克郎  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大賀 眞司  

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