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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04H
管理番号 1184092
審判番号 不服2004-14433  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-09 
確定日 2008-09-11 
事件の表示 特願2000- 21237「メディア送信の自動追跡を提供するためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月29日出願公開、特開2000-236306〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年1月31日(パリ条約による優先権主張1999年2月3日、米国)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年7月9日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

【請求項1】
通信されるべき情報の自動追跡を提供する方法であって、前記通信されるべき情報は、前記通信されるべき情報の供給元から、前記通信されるべき情報の供給元と前記通信されるべき情報の供給先との間に配置される複数の位置にあるディストリビュータの少なくとも1つを介して前記通信されるべき情報の供給先へ送信され、前記複数のディストリビュータの夫々がディストリビュータに固有の識別子を有し、前記通信されるべき情報は、ビデオ、オーディオ、画像、テキスト又はアニメーションを含み、
前記方法は、
前記通信されるべき情報に対して少なくとも1つの通信されるべき情報の識別子を用意するステップと、
少なくとも1つの前記識別子を含む前記通信されるべき情報を送信するステップと、
前記複数のディストリビュータのうちの1つにおいて、前記少なくとも1つの前記識別子を含む前記通信されるべき情報を受信するステップと、
前記通信されるべき情報を受信したディストリビュータにおいて、少なくとも1つの受信識別子を自動的に生成するステップであって、前記受信識別子は、前記受信した前記通信されるべき情報の前記識別子と、前記通信されるべき情報を受信したディストリビュータに固有の識別子とを含む、前記生成するステップと
を含む、方法。

2.刊行物
(1)刊行物1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特表平8-505500号公報(平成8年6月11日出願公表、以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

発明の背景
本発明は、とくに、記録の形で蓄わえられ施設内部を伝送されているテレビジョン番組、および施設によって受信および送信されている番組を追跡するための、テレビジョン施設の管理に関する。
テレビジョン番組は、放送またはケーブル・システムを介した伝送の前に、テレビジョン施設内あるいは複数のテレビジョン施設の間の様々な経路に沿って伝送される。現在に至るまで、そのような番組の流れを実時間で確実にモニタするためのシステムや手続は実用化されていない。その結果、そのような施設の管理者は、大抵の場合、全ての操作員が、番組を要求された方法で所定経路に沿って伝送するために必要な手順に従っている、という仮定に頼らなければならなかった。現在のところ、何が実際に放送されたか、またはケーブル・システムによって配給されたかを決定するための最も可能な手続の1つは、視聴者に放送または配給された全ての番組のオフ・エア記録(off air recording:放送以外による録画)を行うことである。すなわち、この手続は、その要求される判定をオフラインで、すなわち非実時間で行うことを可能にするだけである。
(6頁3-18行)

発明の概要
本発明の主な目的は、テレビジョン番組又はその要素のテレビジョン施設内又はテレビジョン施設間における伝送を自動的にモニタすることにより、各テレビジョン番組又はその要素がたどった経路の記録及び各テレビジョン番組又はその要素が伝送経路の各分配ポイントに到達した時刻の記録の自動生成を可能にすることである。
本発明のより具体的な目的は、各番組のビデオ信号に対し、その番組を識別(同定)するための情報であってコンピュータ・システムに供給される形に復号できる情報を与えるすることにより、テレビジョン施設の実時間管理を行えるようにすることである。
本発明の別の具体的な目的は、上記のごとき番組識別情報を、ビデオ信号の領域のうち、画像情報を含んでいるが家庭用受像機によるその識別情報に対応する番組の視聴の妨害とならない領域に加えることである。
上記目的およびその他の目的は、番組配給システムにテレビジョン番組の流れを追跡する装置を設けることによって、本発明に従って達成される。ここで、各番組はテレビジョン画像を生成するための情報を有するビデオ信号を含んでおり、番組配給システムはテレビジョン番組が流れる複数の装置を含んでいる。そして、前記テレビジョン番組流れ追跡装置は、前記システム内に接続された第1の信号処理手段であって、以下アイコンと呼ぶ記号のパターンを、当該記号がテレビジョン画像の所定の位置に配置されかつ複数の連続するパターンが番組を一意的に識別するためのコードを構成するようにテレビジョン画像に加えるために、当該番組のビデオ信号に信号要素を加える第1の信号処理手段と、前記システム内に接続される第2の信号処理手段であって、ビデオ信号に以前に加えられた前記信号要素を検出し、その検出に応じて、当該ビデオ信号を含んでいた番組の識別を行う第2の信号処理手段と、を備える。
また、本発明の目的は、テレビジョン番組が流れる複数の装置を含んでいる番組配給システム内部の、テレビジョン画像を発生する情報を含むビデオ信号を含んでいるテレビジョン番組の流れを追跡する方法であって、システム内に接続される第1の信号処理手段によって、以下アイコンと呼ぶ記号がテレビジョン画像の所定の場所に配置されるように、かつそれらの記号のパターンの複数の連続するパターンが番組を一意に識別するコードを構成するように、それらのパターンをテレビジョン画像に加え、システム内で接続される第2の信号処理手段によって、ビデオ信号に加えられている信号要素を検出し、その検出に応じて当該ビデオ信号を含んでいた番組の識別を行うという方法によって達成される。
(7頁5行-8頁10行)

図1に示すシステムは、衛星受信機102、ビデオテープレコーダ104、およびこの産業においてブレイク・スタジオ(break studio)として知られているテレビジョン信号処理・制御エリア106、などのテレビジョン信号処理コンポーネントを含む。衛星受信機102は受信アンテナ112に接続され、衛星からダウンロードされた番組を受信する。受信機102に到達した番組はルーター(router:経路指定器)114を経由して、コンポーネント104や106などの、システムの他のコンポーネントへ送られる。このようにして、ダウンリンクを介して受信機102に到達した番組を、レコーダ104で記録でき、または直ちに制御装置106を介して空中に送り出すことができる。あるいは、以前にテープに録画された番組をVTR104からルーター114を介して制御装置106へ送ることもできる。
これまで説明してきたシステムは、簡単な構成ではあるが使用することができるテレビジョン放送局を表している。本発明に従って、特別に設計されたノード120が、各接続部、すなわちテレビジョン番組信号が局に入る接続部、局から出ていく接続部、または局内部に送られる際の接続部などの各接続部に接続される。以下に詳しく説明するように、それらのノード120の各々を制御することにより、それを通る各テレビジョン番組または送信を識別すること、及び/または識別標識をそのような各送信に挿入すること、ができる。
(12頁7-24行)

局はエンジニヤリング・ネットワークをも含む。そのエンジニヤリング・ネットワークは、局によって取り扱われる各番紺の識別結果(identification)を蓄積する装置140と、受信されおよび送信される番組の画像内容および音声内容の技術的な質に関連するデータを蓄積する装置142と、様々な作業を遂行する装置144と、局によって受信されあるいは放送される番組に関連する関連データの更新記録を保持するファイル・サーバを構成する装置146と、一方の装置130?136と他方の装置140?146との間の情報交換を行えるようにする装置148とで構成される。
(13頁9-16行)
なお、「各番紺」は「各番組」などの誤記と認められる。

図2は本発明のノード120の一具体例を示すブロック図である。このノードは、ノードをケーブル122に接続するインタフェース202を含む。インタフェース202は、Standard Microsystems Corp.によって型名COM20020の下に市販されているインタフェースなどのローカル・エリア・ネットワーク・コントローラとすることができる。インタフェース202は、制御バス204とアドレス/データバス206を介して、CPU210、システムメモリ212、及び実時間クロック214に接続される。CPU210は、マスタ/スレーブ制御バス220を介して1つまたは複数のモジュール222、224、226および228に接続される。
モジュール222は、「アイコン」などの識別標識をビデオ信号に挿入するため、またはビデオ信号に以前に挿入されたアイコンを読み取るために、構成され、制御される。モジュール222はアナログ部とデジタル部を含む。デジタル部は、アナログ部で処理されたビデオ信号のなかからアイコンを表すデジタル信号を得ることができる。アイコンのセットが特定のノードを通る時刻は、クロック214から読み取ることができ、番組およびそのアイコンセットが通ったノードを識別するためのデータと共に記憶される。
(13頁25-14頁11行)

モジュール226はデジタル・オーディオ・アイコン・インタフェースである。このデジタル・オーディオ・アイコン・インタフェースは、番組のビデオ信号に加えられモジュール222で復号された情報に従って、そのテレビジョン番組のオーディオ部分を修正することができる。モジュール228は局時刻リーダー(読取り器)であって、現在の時刻を表す入力を受け、時刻表示すなわちタイムスタンプを、モジュール222から得た各データセットにそれぞれ関連付ける。
(14頁18-23行)

本発明の1つの態様に従って、ノードは、送信機の入力側に配置され、テレビジョン信号中に含まれている識別情報を読出し、テレビジョン施設の中央データ処理装置に対して、識別された番組の放送が開始されたことを同時的かつ確実に指示する。この情報は、送信開始時刻の指示と一緒に記憶される。
更に、読出しの後で、記憶されている情報を送信前にテレビジョン信号から削除することもできる。また、このかわりに、識別情報すなわちアイコンを放送・送信時にテレビ信号中に残し、たとえば番組の視聴率を知るためなど、個々のテレビジョン受像機の視聴パターンを決定するのに使用することもできる。この目的のために、モニタ対象の各テレビジョン受像機には、図2のノードの適切な部分を含み、受像機チューナーの出力端子に接続され、外部チューナーを形成するデコーダが設けられる。受像機が選択した各番組に含まれている識別データは、時刻指示(表示)と一緒に蓄積でき、電話線を介して管理データ収集ポイントに対しておそらく瞬時に送ることができる。その結果、番組視聴率をほぼ瞬時に決定できる。
本発明の識別データを視聴パターン決定に使用する場合には、例えば、番組の途中でのチャネル切り替えパターンをモニタするために、各番組中のたとえば5分間という固定された期間、各コマーシャルの開始時、及び各コマーシャルの後に、そのデータを送ることが望ましい。視聴パターンをモニタするためのその技術は、番組を見ている視聴者による不正確な報告の結果として生ずる視聴率誤差をなくす。
(23頁7-26行)

機械で読み取り可能なコマーシャル位置情報も容易に提供することができる。スポーツ試合などの生放送中は、コマーシャルは特定の時間に放送されることはなく、番組本体の中のあちこちで放送される。番組を放送する全ての局の自動コマーシャル挿入装置を起動、すなわちトリガするために、番組の出発点にてアイコンを挿入することできる。このようにすれば、ネットワークのすべてのローカル・系列局またはケーブル発信元は、生番組との同期を維持することができる。
アイコンは、番組及び/またはコマーシャルに識別情報を埋め込むために使用できる。完成した番組またはコマーシャルにアイコンを埋め込むことにより、それらのアイコンをオフ・エア・レシーバー(off air reciever:放送を介さずに受信する受信機)によってモニタして、実際に放送された番組材料と放送が予定されていた番組とを対比したログを作成できる。また、広告主への請求書(目録:bill)を自動的に作成することもできる。
(27頁7-19行)

図1には、テレビジョン番組の流れを追跡するノードを、衛星受信機102の出力とルータ114の入力との間、ルータ114の出力とVTR104の入力との間、VTR104の出力とブレイク・スタジオ106の入力との間、ブレイク・スタジオ106の出力と送信機の入力との間に、接続することが記載されている。

以上の記載から、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されていると認められる。

放送又はケーブル・システムを介した伝送の前に、複数のテレビジョン施設の間の様々な経路に沿って伝送されるテレビジョン番組について、テレビジョン施設内又はテレビジョン施設間における伝送を自動的にモニタし、各テレビジョン番組がたどった経路の記録及び各テレビジョン番組が伝送経路の各分配ポイントに到達した時刻の記録の自動生成をし、記憶して、テレビジョン施設によって受信及び送信されているテレビジョン番組の流れを追跡する複数のノード、を有する番組供給システムにおいて、
テレビジョン番組は、ビデオ信号とオーディオ部分とを含み、
前記ノードは、テレビジョン施設の各接続部に接続されるものであって、「アイコン」などの番組を一意的に識別するための識別情報をビデオ信号に挿入するため、またはビデオ信号に以前に挿入された識別情報を読み取るために、構成され、制御され、識別情報が特定のノードを通る時刻は、番組およびそのアイコンセットが通ったノードを識別するためのデータと共に記憶し、また、テレビジョン信号中に含まれている識別情報を読出し、テレビジョン施設の中央データ処理装置に対して、識別された番組の放送が開始されたことを同時的かつ確実に指示し、この情報を、送信開始時刻の指示と一緒に記憶し、
前記テレビジョン施設は、衛星受信機を含み、ダウンリンクを介して衛星受信機に到達したテレビジョン番組を、制御装置を介して空中に送り出すものであって、前記識別情報を含むテレビジョン番組を送り出す、
番組配給システム。

(2)刊行物2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭53-11515号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

1. 通信回路網に介入した各自標準テレビジヨン受像機を有する加入者にテレビジヨン番組を提供するために、所定番組を構成するテレビジヨン信号を符号化し、前記番組を表す番組識別番号を前記テレビジヨン信号中に予定の瞬時に挿入し、該番組識別番号が挿入された符号化テレビジヨン信号を送信する符号化送信装置を設け、
各加入者に対しては、送信されたテレビジヨン信号を受信する受信装置と、前記番組識別番号を検出し、対応する検出した番組識別信号を発生する検出装置と、前記加入者の操作により前記加入者が前記番組を受け取ることを表わす受取信号を発生する受取信号発生装置と、前記番組識別番号を記憶する第1組の記憶位置と加入者識別番号を記憶する第2組の記憶位置を有する主記憶装置と、前記検出装置及び前記受取信号発生装置に接続され、前記検出した番組識別信号を前記受取信号を受けた時のみ前記第1記憶位置に記録して、前記加入者が受け取つた番組を表わす番組識別番号のみを該第1組の記憶位置に記憶する記録装置と、前記主記憶装置と前記通信回路網との間に介挿され、前記加入者識別番号及び前記番組識別番号を読み取り、対応するそれぞれの加入者及び番組識別信号を発生し、これら信号を前記通信回路網に供給する読取装置と、前記通信回路網に接続され、前記加入者識別信号及び番組識別信号を受信し、これら信号に応答して加入者の受け取つた番組に対する料金を計算する中央計算装置を設けたことを特徴とする有料テレビジヨンシステム。
(1頁左欄5行-同頁右欄17行)

(3)刊行物3の記載
丹野興一、ほか、特集論文 ディジタル放送コーデック、三菱電機技報、三菱電機エンジニアリング株式会社、1998年8月25日、第72巻、第8号、31-37頁には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

31頁の図「ディジタル放送コーデックの位置づけと内部の構成」には、放送が、現場から、現場と家庭の間にあるキー局及びローカル局を介して、家庭に送信されることが、図示されている。

(4)刊行物4の記載
岡進、ほか、特集論文 ディジタル放送モデルステーション、三菱電機技報、三菱電機エンジニアリング株式会社、1998年8月25日、第72巻、第8号、10-16頁には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

10頁の図「ディジタル放送モデルステーション」及び11頁の図1ディジタル放送のシステム構成」には、移動局からの番組が、移動局から、移動局と家庭の間にあるキー局、ローカル局、ケーブル局を介して、家庭に伝送されることが、図示されている。

3.対比
本願発明と刊行物1記載発明とを対比すると、刊行物1記載発明の伝送されビデオ信号とオーディオ部分とを含む「テレビジョン番組」は、本願発明の「ビデオ又はオーディオを含む通信されるべき情報」といえる。

刊行物1記載発明の「テレビジョン施設の各接続部に接続される複数のノード」は、本願発明の「通信されるべき情報の供給元と通信されるべき情報の供給先との間に配置される複数の位置にあるディストリビュータ」といえる。
そして、刊行物1記載発明の「テレビジョン番組」は、テレビジョン施設に到達し、少なくとも1つのノードを通ってテレビジョン施設から送り出されるから、「通信されるべき情報の供給元から、通信されるべき情報の供給元と通信されるべき情報の供給先との間に配置される複数の位置にあるディストリビュータの少なくとも1つを介して通信されるべき情報の供給先へ送信される、通信されるべき情報」といえる。

刊行物1記載発明の「ノードを識別するためのデータ」は、本願発明の「ディストリビュータに固有の識別子」に相当する。
よって、刊行物1記載発明は、「複数のディストリビュータの夫々がディストリビュータに固有の識別子を有」するといえる。

刊行物1記載発明の「テレビジョン番組を一意的に識別するための識別情報」は、本願発明の「通信されるべき情報の識別子」に相当する。
刊行物1記載発明の「ノード」は、テレビジョン番組のビデオ信号に番組を一意的に識別するための識別情報を挿入するにあたり、少なくとも1つの番組を一意的に識別するための識別情報を用意することは明らかであるから、「通信されるべき情報に対して少なくとも1つの通信されるべき情報の識別子を用意する」といえる。

刊行物1記載発明は、ノードが識別情報を挿入したテレビジョン番組を出力し、また、識別情報を挿入されたテレビジョン番組を放送・送信するから、「少なくとも1つの識別子を含む通信されるべき情報を送信」しているといえる。

刊行物1記載発明の「複数のノード」は、入力されたテレビジョン番組のビデオ信号に以前に加えられた識別情報を読み取るから、本願発明の「複数のディストリビュータのうちの1つにおいて、少なくとも1つの識別子を含む通信されるべき情報を受信する」といえる。

刊行物1記載発明の「ノードに入力されるテレビジョン番組に挿入されている識別情報」が、本願発明の「受信した通信されるべき情報の識別子」といえる。
そして、刊行物1記載発明のテレビジョン施設内又はテレビジョン施設間における伝送を自動的にモニタし、各テレビジョン番組がたどった経路の記録及び各テレビジョン番組が伝送経路の各分配ポイントに到達した時刻の記録の自動生成をし、記憶して、テレビジョン施設によって受信及び送信されているテレビジョン番組の流れを追跡する複数のノード、を有する番組供給システムにおいて、ノードが、ビデオ信号に以前に挿入された識別情報を読み取り、識別情報が特定のノードを通る時刻を、番組およびそのアイコンセットが通ったノードを識別するためのデータと共に記憶し、また、テレビジョン施設の中央データ処理装置に対して、識別された番組の放送が開始されたことを同時的かつ確実に指示し、この情報を、送信開始時刻の指示と一緒に記憶することは、「通信されるべき情報の追跡を提供する方法」といえる。

すると、本願発明と刊行物1記載発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
通信されるべき情報の追跡を提供する方法であって、前記通信されるべき情報は、前記通信されるべき情報の供給元から、前記通信されるべき情報の供給元と前記通信されるべき情報の供給先との間に配置される複数の位置にあるディストリビュータの少なくとも1つを介して前記通信されるべき情報の供給先へ送信され、前記複数のディストリビュータの夫々がディストリビュータに固有の識別子を有し、前記通信されるべき情報は、ビデオ又はオーディオを含み、
前記方法は、
前記通信されるべき情報に対して少なくとも1つの通信されるべき情報の識別子を用意するステップと、
少なくとも1つの前記識別子を含む前記通信されるべき情報を送信するステップと、
前記複数のディストリビュータのうちの1つにおいて、前記少なくとも1つの前記識別子を含む前記通信されるべき情報を受信するステップと、
を含む、方法。

[相違点]
・相違点1
本願発明では、「通信されるべき情報を受信したディストリビュータにおいて、少なくとも1つの受信識別子を自動的に生成するステップであって、前記受信識別子は、前記受信した前記通信されるべき情報の識別子と、前記通信されるべき情報を受信したディストリビュータに固有の識別子とを含む、前記生成するステップ」を含み、「通信されるべき情報の自動追跡を提供する」のに対して、刊行物1記載発明では、そのような受信識別子を自動的に生成するステップを含み、自動追跡を提供するのか明らかではない点。

・相違点2
通信されるべき情報が、本願発明では、ビデオ、オーディオ、画像、テキスト又はアニメーションを含むのに対して、刊行物1記載発明では、ビデオ又はオーディオを含むものである点。

4.判断
(1)相違点1について
本願発明には、「通信されるべき情報の自動追跡を提供する」と記載されているが、自動追跡を提供することが、何を意味しているのか必ずしも明確ではない。
この点、本願発明に従属する、平成16年7月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4に「少なくとも1つの前記受信識別子を少なくとも1つの集積ポイントに送信するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。」と記載されているから、本願発明の「通信されるべき情報の自動追跡を提供する方法」は、少なくとも1つの受信識別子を自動的に生成するステップを備えるが、集積ポイントに送信するステップを備えない方法を包含することは明らかである。

刊行物2には、通信されるべき情報を受信した装置が、受信した前記通信されるべき情報の識別子と、前記通信されるべき情報を受信した装置に固有の識別子とを含む受信識別子を生成する(対応するそれぞれの加入者及び番組識別信号を発生し、これら信号を前記通信回路網に供給する)通信されるべき情報の自動追跡を提供する方法が記載されている。(以下、「刊行物2記載発明」という。)

よって、刊行物1記載発明の「通信されるべき情報の追跡を提供する方法」において、刊行物2のような自動追跡を提供できるように、「通信されるべき情報を受信したディストリビュータにおいて、少なくとも1つの受信識別子を自動的に生成するステップであって、前記受信識別子は、前記受信した前記通信されるべき情報の識別子と、前記通信されるべき情報を受信したディストリビュータに固有の識別子とを含む、前記生成するステップ」を付加し、「通信されるべき情報の自動追跡を提供する方法」とすることは、当業者が容易に為し得たことである。

(2)相違点2について
刊行物1記載発明において、「テレビジョン番組」にビデオ、オーディオだけでなく、画像、テキスト又はアニメーションを含めることは、設計事項である。また、本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

5.補足
本願の平成16年7月9日付け手続補正書により補正された発明の詳細な説明に、【0010】の「テレビジョンネットワークといったディストリビュータ」、【0037】の「ケーブル供給システムにおいては、ケーブル集配局が、ディストリビュータ(230B)であり、このディストリビュータは、チャンネル(図示せず)を介してまたディストリビュータ(230A)であるTVネットワークから番組を受信する。」と記載されているので、「ディストリビュータ」を、「テレビジョンネットワークやケーブル集配局といったディストリビュータ」に限定して解釈した場合について、次に検討する。

刊行物1記載発明においては、テレビジョン施設間における伝送も自動的にモニタし、「テレビジョン施設」が、本願発明の「テレビジョンネットワークやケーブル集配局といったディストリビュータ」に相当している。また、刊行物3、4などに記載されているように、通信されるべき情報を、通信されるべき情報の供給元から、通信されるべき情報の供給元と通信されるべき情報の供給先との間に配置される複数の位置にあるディストリビュータの少なくとも1つを介して通信されるべき情報の供給先へ送信することは、本願出願時、周知技術である
そして、刊行物1記載発明において、各接続部にノードが接続されたテレビジョン施設間における伝送を前記周知技術のようにして、通信されるべき情報が、通信されるべき情報の供給元と通信されるべき情報の供給先との間に配置される複数の位置にあるディストリビュータの少なくとも1つを介して前記通信されるべき情報の供給先へ送信されるようにして、本願発明のようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-17 
結審通知日 2008-04-18 
審決日 2008-05-01 
出願番号 特願2000-21237(P2000-21237)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丸山 高政  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 深津 始
坂東 博司
発明の名称 メディア送信の自動追跡を提供するためのシステム及び方法  
代理人 市位 嘉宏  
復代理人 松井 光夫  
代理人 坂口 博  
復代理人 五十嵐 裕子  

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