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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03B |
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管理番号 | 1184099 |
審判番号 | 不服2005-3264 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-02-24 |
確定日 | 2008-09-11 |
事件の表示 | 特願2002-137842「発振器」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月21日出願公開、特開2003-332842〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成14年5月13日の特許出願であって、平成17年1月27日付けで拒絶査定され、これに対して同年2月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月25日に手続補正書が提出されたものである。 そして、当審において、平成20年4月15日付けで平成17年3月25日付け手続補正を却下する旨の決定がなされるとともに同日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成20年6月23日に手続補正書とともに意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成20年6月23日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という)。 「【請求項1】 共振回路と帰還回路とを有する発振器において、 前記帰還回路はコレクタ端子とベース端子とエミッタ端子とを有するトランジスタを含み、 前記共振回路内の主共振素子回路の出力電圧を分圧して前記帰還回路内の前記トランジスタの前記ベース端子に出力する分圧回路を備え、 前記主共振素子回路は一端と他端を有し、 前記帰還回路は前記トランジスタの前記エミッタ端子と前記ベース端子とを結合する第1のコンデンサと、前記トランジスタの前記エミッタ端子と前記コレクタ端子とを結合する第2のコンデンサとを含み、 前記分圧回路は、前記主共振素子回路の一端と前記ベース端子とを結合する第3のコンデンサと、前記主共振素子回路の他端と前記ベース端子とを結合する第4のコンデンサとを含み、 前記第3のコンデンサの容量値は、前記第1のコンデンサまたは前記第2のコンデンサの容量値よりも小さく、 前記主共振素子回路の前記他端と前記トランジスタの前記コレクタ端子とは接地されていることを特徴とする発振器。」 3.引用例 (1)これに対し、当審で通知した拒絶理由に引用した特開2001-177342号公報(以下、「引用例1」という)には、 ア 「図1は本発明の発振器をコレクタ接地型で構成したものであり、発振トランジスタ1のベースとエミッタとにはバイアス抵抗2、3、4によってそれぞれ所定のバイアス電圧が与えられる。また、電源電圧(Vb)が印加されるコレクタは直流カットコンデンサ5によって高周波的に接地される。そして、ベースとエミッタとの間、及びエミッタとグランドとの間にそれぞれ帰還コンデンサ6、7が接続され、さらに、ベースとグランドとの間に共振回路8が設けられる」(3頁左欄12?20行) イ 「共振回路8はクラップコンデンサ8a、第一のコンデンサ8b、第二のコンデンサ8c、スイッチダイオード8d、第三のコンデンサ8e、インダクタンス素子8f、バラクタダイオード8g等を有している」(3頁左欄21?24行) が記載され、また、図面第1図には、第二のコンデンサ8c、スイッチダイオード8d、第三のコンデンサ8e、インダクタンス素子8f、バラクタダイオード8gの他端がそれぞれ接地され、クラップコンデンサ8aの一端をコレクタ接地の発振トランジスタ1のベースに接続した発振器が記載されている。 これらの記載ア,イ及び図面第1図によれば、引用例1には、 「発振トランジスタ1には、コレクタに直流カットコンデンサ5を接続して高周波的に接地し、ベースとエミッタとの間、及びエミッタとグランドとの間にそれぞれ帰還コンデンサ6、7を接続し、共振回路8内の第一のコンデンサ8b、第三のコンデンサ8e、インダクタンス素子8f、バラクタダイオード8gのそれぞれの一端の出力はクラップコンデンサ8aを介して発振トランジスタ1のベースに出力され、共振回路8内の第二のコンデンサ8c、スイッチダイオード8d、第三のコンデンサ8e、インダクタンス素子8f、バラクタダイオード8gの他端は接地されている発振器」 の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されている。 (2)また、当審で通知した拒絶理由に引用した特開昭62-173805号公報(以下、「引用例2」という)には、 ウ 「第1のコンデンサ12のばらつきに基づく不安定性を解消するために、第2のコンデンサ14が基準電位との間に接続されている。すなわち、第2のコンデンサ14は、第1のコンデンサ12とトランジスタ13のコレクタ端子との間において、基準電位に接続されている」(第2頁左下欄13?19行) が記載され、また、図面第1図には、共振手段11の一端は第1のコンデンサ12を介して発振のためのトランジスタ13のコレクタに結合されたベース接地の発振器が記載されている。 上記ウの記載及び図面第1図によれば、引用例2には、 「第1のコンデンサ12を介して共振手段11と発振のためのトランジスタ13のコレクタが結合されたベース接地の発振器において、第1のコンデンサ12のばらつきに基づく不安定性を解消するために、第1のコンデンサ12に第2のコンデンサ14を直列に接続し、共振手段11の出力電圧は前記直列に接続された第1のコンデンサ12と第2のコンデンサ14により分圧されて前記トランジスタ13のコレクタ端子に出力する発振器」 の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されている。 4.対比 そこで、本願発明と引用発明1とを比較すると、引用発明1の「発振トランジスタ1」、「帰還コンデンサ6」、「帰還コンデンサ7」、「共振回路8からクラップコンデンサ8aを除いた回路」は、それぞれ本願発明の「トランジスタ」、「第1のコンデンサ」、「第2のコンデンサ」、「主共振素子回路」に相当している。 また、引用発明1の発振トランジスタ1と発振トランジスタ1に接続された帰還コンデンサ6及び7からなる回路は、本願発明の「帰還回路」に相当している。 さらに、引用発明1の「クラップコンデンサ8a」は、共振回路8内の第一のコンデンサ8b、第三のコンデンサ8e、インダクタンス素子8f、バラクタダイオード8gのそれぞれの一端を発振トランジスタ1のベースに結合するものであるから、本願発明の「第3のコンデンサ」に相当している。 したがって、本願発明と引用発明1は、 「共振回路と帰還回路とを有する発振器において、 前記帰還回路はコレクタ端子とベース端子とエミッタ端子とを有するトランジスタを含み、 前記共振回路内の主共振素子回路の出力電圧を前記帰還回路内の前記トランジスタの前記ベース端子に出力する回路を備え、 前記主共振素子回路は一端と他端を有し、 前記帰還回路は前記トランジスタの前記エミッタ端子と前記ベース端子とを結合する第1のコンデンサと、前記トランジスタの前記エミッタ端子と前記コレクタ端子とを結合する第2のコンデンサとを含み、 前記出力する回路は、前記主共振素子回路の一端と前記ベース端子とを結合する第3のコンデンサを含み、 前記主共振素子回路の前記他端と前記トランジスタの前記コレクタ端子とは接地されていることを特徴とする発振器。」の点で一致し、以下の点で相違する。 (1)相違点1 本願発明の「出力する回路」は、共振回路内の主共振素子回路の出力電圧を分圧して帰還回路内のトランジスタのベース端子に出力する分圧回路であり、主共振素子回路の一端とベース端子とを結合する第3のコンデンサと、主共振素子回路の他端とベース端子とを結合する第4のコンデンサとを含ませた構成であるのに対し、引用発明1の「出力する回路」は、主共振素子回路の一端とベース端子とを結合するクラップコンデンサ8aにより構成されている点。 (2)相違点2 本願発明では、第3のコンデンサの容量値は第1のコンデンサまたは第2のコンデンサの容量値よりも小さいとされているが、引用発明1では、クラップコンデンサ8aの容量値についての限定はされていない点。 5.当審の判断 以下、相違点について検討する。 (1)相違点1について 共振回路と発振のためのトランジスタをコンデンサにより結合する発振器において、結合のためのコンデンサのばらつきに基づく不安定性を解消するために、結合のためのコンデンサにコンデンサを直列に接続し、共振回路の出力電圧は前記直列に接続された2つのコンデンサにより分圧されて発振のためのトランジスタに出力することは、前記引用発明2に記載されている。 また、引用発明2は発振のためのトランジスタがベース接地の発振器に係るものであるが、高周波発振器の分野の技術常識に基づけば、上記分圧構成による結合のためのコンデンサのばらつき改善は、発振のためのトランジスタがベース接地以外の接地においても適用可能であると認められる。 そして、本願発明の相違点1の構成による作用効果は、引用発明1、引用発明2に記載されている事項から予測される範囲内のものと認められる。 してみると、引用発明1においても結合のためのコンデンサであるクラップコンデンサ8aのばらつきに基づく問題が存在することは引用発明2から当業者が普通に予測できるものであり、このばらつきに基づく不安定性を解消するために、引用発明1の「出力する回路」として、「共振回路内の主共振素子回路の出力電圧を分圧して帰還回路内のトランジスタのベース端子に出力する分圧回路であり、主共振素子回路の一端とベース端子とを結合する第3のコンデンサと、主共振素子回路の他端とベース端子とを結合する第4のコンデンサとを含ませた構成」とすることは、引用発明2から当業者ならば容易に想到しうるものである。 (2)相違点2について 可変周波数発振器では、周知な課題として発振周波数の広帯域化があり、クラップ発振器において発振周波数の広帯域化のためにクラップコンデンサの容量を帰還コンデンサの容量より小さくすることは、例えば、特開平10-242752号公報の段落2に、「広帯域で発振周波数を可変できるようにする場合には、クラップ型電圧制御発振器が良く用いられる」、段落5に、「周波数可変比を大きくするためには、共振回路の合成容量の可変比を大きくする必要がある。このためには、可変容量ダイオードCVの容量を、コンデンサC1,C2の容量に対して小さくする」と記載されているように周知なものである。 そして、上記引用発明1も、バラクタダイオード8gを備えているので、発振周波数が可変なクラップ発振器であることを鑑みれば、引用発明1において、「第3のコンデンサの容量値は第1のコンデンサまたは第2のコンデンサの容量値よりも小さい」とすることは、当業者ならば容易に想到しうるものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例1乃至2に記載された発明及び上記周知技術に基いて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について、検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-07-08 |
結審通知日 | 2008-07-15 |
審決日 | 2008-07-29 |
出願番号 | 特願2002-137842(P2002-137842) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 正明 |
特許庁審判長 |
田口 英雄 |
特許庁審判官 |
多賀 実 飯田 清司 |
発明の名称 | 発振器 |
代理人 | 片山 修平 |