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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1184116
審判番号 不服2006-1950  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-03 
確定日 2008-09-11 
事件の表示 平成11年特許願第 67110号「インクジェットプリンタ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月26日出願公開、特開2000-263768〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年3月12日の特許出願であって、第1回目の拒絶理由通知に応答して平成17年2月4日付けで手続補正がされ、第2回目の拒絶理由通知後に同年12月28日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成18年2月3日付けで審判請求がされるとともに、同年2月24日付けで明細書についての手続補正がされたものである。

第2 平成18年2月24日付けの手続補正について
(1)本件補正の内容
平成18年2月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)における特許請求の範囲についての補正は、
補正前(平成17年2月4日付け手続補正書参照)に
「【請求項1】
インク滴吐出用ノズルを連続的に配設した印字ヘッドと、少なくとも2つ以上の前記印字ヘッドを配設するためのヘッドフレームと、該ヘッドフレームを介して前記印字ヘッドを搭載するためのメカフレームとを有したインクジェットプリンタにおいて、
前記印字ヘッドの主構成材の熱膨張係数とほぼ同じ熱膨張係数の材質で前記ヘッドフレームを形成することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
インク滴吐出用ノズルを連続的に配設した印字ヘッドと、少なくとも2つ以上の前記印字ヘッドを長手方向に配設するためのヘッドフレームと、該ヘッドフレームを介して前記印字ヘッドを搭載するためのメカフレームとを有したインクジェットプリンタにおいて、
前記ヘッドフレームは前記メカフレームに対して一端は固定取り付けとし、他端は長手方向に熱膨張収縮の逃げが可能となるよう自由取り付けとしたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項2記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記印字ヘッドを配設した前記ヘッドフレームは、前記長手方向と垂直方向に複数個配列するように前記メカフレームに装着され、かつ前記ヘッドフレームの夫々の固定取り付け側を同一側にしたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
インク滴吐出用ノズルを連続的に配設した印字ヘッドと、2つの前記印字ヘッドを長手方向に配設するためのヘッドフレームと、該ヘッドフレームを介して前記印字ヘッドを搭載するためのメカフレームとを有し、前記2つの印字ヘッドの各々一端を前記ヘッドフレームに固定取り付けにすると共に、他端は長手方向に位置調整ができるように自由支持取り付けとし、且つ前記印字ヘッドの固定取り付け側同士が互いに隣接するように配置することを特徴とするインクジェットプリンタ。」
とあったものを、
「【請求項1】
インク滴吐出用ノズルを連続的に配設した印字ヘッドと、2つの前記印字ヘッドを長手方向に配設するためのヘッドフレームと、このヘッドフレームを介して前記印字ヘッドを搭載するためのメカフレームとを有し、前記2つの印字ヘッドの各々一端を前記ヘッドフレームに固定取り付けにするとともに、他端は長手方向に位置調整ができるように自由支持取り付けとし、かつ、前記印字ヘッドの固定取り付け側同士が互いに隣接するように配置することを特徴とするインクジェットプリンタ。」
と補正するものである。

つまり、本件補正には、特許請求の範囲の補正として以下の補正事項を含む。
補正事項(1)
補正前の請求項1?3を削除する。
補正事項(2)
補正前の請求項4における「該ヘッドフレーム」、「共に、」、「且つ、」との記載を、補正前の請求項4に対応する補正後の請求項1においては、それぞれ「このヘッドフレーム」、「ともに」、「かつ」と補正する。

(2)本件補正の目的
補正事項(1)は請求項の削除である。
補正事項(2)は、同意語への置き換え、句点の削除、漢字の平仮名への置き換え、であって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の第1号から第4号のいずれをも目的としているとはいえないが、実質的には補正前後の請求項の内容を変えていないので、補正事項(2)の補正の適否は問わないこととする。

(3)むすび
したがって、本件補正における特許請求の範囲の補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的としたものと認められる。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

第3 本願に係る発明について
1.本願発明の認定
上記のとおり、本件補正は適法であるので、本願に係る発明は、平成18年2月24日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
インク滴吐出用ノズルを連続的に配設した印字ヘッドと、2つの前記印字ヘッドを長手方向に配設するためのヘッドフレームと、このヘッドフレームを介して前記印字ヘッドを搭載するためのメカフレームとを有し、前記2つの印字ヘッドの各々一端を前記ヘッドフレームに固定取り付けにするとともに、他端は長手方向に位置調整ができるように自由支持取り付けとし、かつ、前記印字ヘッドの固定取り付け側同士が互いに隣接するように配置することを特徴とするインクジェットプリンタ。」(以下、「本願発明」という。 )

2.引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭62-55145号公報(以下、「引用例」という。)には図示と共に次の記載事項がある。

記載事項1
「[全体構造]
一方、上述した流路系を備えたカラーのインクジェットプリンタの全体を第2図及び第3図に示す。
図示の例はバブルジェット方式を採用し、オンデマンド型のプリンタとして例示してある。
図において符号20で示すものは上部ユニットで、後述するようにヘッドユニットが収容されている。」(第3頁左上欄第5?13行)

記載事項2
「また、上部ユニット20がヘッドユニットの収容体となっており、その上部にはバブルジェットアセンブリ(以下BJAと略称する)33が着脱可能に取り付けられている。」(第3頁左下欄第1?4行)

記載事項3
「[BJAの構造]
BJA33は第4図に示すような構造を有する。
即ち、BJA33は強固なフレーム34を基準として組立られており上部ユニット20の上部空間に着脱自在に取り付けられている。
フレーム34にはその前面側に向って4個のバブルジェットユニット(以下BJUと略称する)35?38が着脱可能に取り付けられている。
これらBJU35?38は本例の場合上から順にブラック、シアン、マゼンタ、イエローの配置となっている。
各BJU35?38は夫々複数個のヘッドエレメント1を有し、各ヘッドエレメント1は例えば128個という多数のノズル(図示省略)を有する。」(第3頁左下欄第7行?第3頁右下欄第2行)

引用例の第4図からは、それぞれヘッドエレメント1が長手方向に配設された4個のバブルジェットユニット(BJU35?38)がフレーム34上に配置されていることが看取される。

してみるに、引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。
「多数のノズルを有するヘッドエレメント1と、複数個の前記ヘッドエレメント1を長手方向に配設するための4個のバブルジェットユニットと、これら4個のバブルジェットユニットを介して前記エレメント1を搭載するためのフレーム34と、を有するインクジェットプリンタ。」(以下、引用発明という。)

3.対比
本願発明と引用発明とを比較する。

引用発明の「ノズル」は、上記記載事項1でオンデマンド型のバブルジェット方式のものが例に挙げられているように、印字媒体にインク滴を吐出するノズルであるから、本願発明の「インク滴吐出用ノズル」に相当する。

上記記載事項3には「各ヘッドエレメント1は例えば128個という多数のノズル(図示省略)を有する。」とあり、引用発明の「ヘッドエレメント1」においても、ノズルが連続的に配設されているといえる。
したがって、引用発明の「ヘッドエレメント1」は、本願発明の「印字ヘッド」に相当する。

引用発明の「バブルジェットユニット」と本願発明の「ヘッドエレメント」とは、複数個の印字ヘッドが配設される点で共通する。

引用発明の「フレーム34」は本願発明の「メカフレーム」に相当する。

すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>
「インク滴吐出用ノズルを連続的に配設した印字ヘッドと、複数個の前記印字ヘッドを長手方向に配設するためのヘッドフレームと、このヘッドフレームを介して前記印字ヘッドを搭載するためのメカフレームとを有するインクジェットプリンタ。」

<相違点>
(i)本願発明は、「2つの前記印字ヘッドを長手方向に配設するためのヘッドフレーム」と特定されているのに対して、引用発明ではヘッドフレーム(「バブルジェットユニット」)に長手方向に配設される印字ヘッド(「ヘッドエレメント1」)が複数個であって2個と限定されていない点。

(ii)本願発明は、印字ヘッドのヘッドフレームへの取り付け方に関して「前記2つの印字ヘッドの各々一端を前記ヘッドフレームに固定取り付けにするとともに、他端は長手方向に位置調整ができるように自由支持取り付けとし、かつ、前記印字ヘッドの固定取り付け側同士が互いに隣接するように配置する」と特定されているのに対して、引用発明は、当該特定を有しない点。

4.判断
相違点(i)について
本願の図1には印字ヘッドが4個の例、本願の図4には印字ヘッドが2個の例が示されているように、一般に、複数個の印字ヘッドを主走査方向に並べて全主走査範囲をカバーする1つのインクジェットヘッドとして機能させる場合にその個数をどうするかは、必要とする印字幅や、長くかつ多数のノズルを密に有する印字ヘッドが高価で製造が難しい点からは短い印字ヘッドを用いることが有利であるが反面その個数が多くなってしまうこと等を勘案して定めるべき設計事項にすぎない。
よって、引用発明において、ヘッドフレーム(「バブルジェットユニット」)に長手方向に配設される印字ヘッド(「ヘッドエレメント1」)を2個とし、本願発明の相違点(i)に係る構成を備えることは、引用例の記載及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点(ii)について
一般に、ある部材を基台に取り付ける際に、部材の長手方向の一端を固定取り付け、他端は長手方向に位置調整ができるように自由支持取り付けとし、熱膨張の影響を逃がすことは周知である。例えば、原査定の拒絶の理由で引用した特開平6-166191号公報(サーマルヘッドの取り付けに関するもの)、及び実願昭62-78637号(実開昭63-191036号)のマイクロフィルム(プリンタ、ファクシミリ等の記録ヘッドの取り付けに関するもの)が挙げられる。

ヘッドフレームに長手方向に配設して取り付ける印字ヘッドを2個とすること自体は設計事項にすぎないことは上記「相違点(i)について」で既に述べたが、2個の印字ヘッドを取り付けるに際して上記周知技術を適用しようとすると、
(a)2個の印字ヘッドの向かい合う端同士を固定取り付けにし、各印字ヘッドの残った端を自由支持取り付けとする。
(b)2個の印字ヘッドの向かい合う端の一方を固定取り付けにし他方を自由支持取り付けとする。各印字ヘッドの残った端は、その印字ヘッドの他端が自由支持取り付けなら固定取り付け、その印字ヘッドの他端が固定取り付けなら自由支持取り付けとする。
(c)2個の印字ヘッドの向かい合う端同士を自由支持取り付けにし、各印字ヘッドの残った端を固定取り付けとする。
の高々3通りの場合しか存在しないのであって、上記(a)の取り付け方を選択することはなんら格別のことではない。そして、そのような取り付け方を選択することは、以下のような周知技術からも裏付けられる。例えば、上記実願昭62-78637号(実開昭63-191036号)のマイクロフィルム記載の記録ヘッドでは、金属ベース(支持基板)11に2個の印刷基板(記録素子であるLEDアレイ6を備えたもの)14A1、14A2を取り付けるに際して、向かい合う端同士を位置決め裸子で固定取り付けにし、他端は板ばねで押さえるだけの自由支持取り付けとしている。
そして、上記(a)の取り付け方を選択した場合の作用効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。例えば、原査定の拒絶の理由で引用した特開平4-141679号公報の第2頁右上欄第14?18行には「第1、第2の固定手段の固定状態形成位置をLEDヘッドの中心とした場合、LEDヘッドの両端は、LED素子の発光による熱膨張の方向に自由に伸縮するが中心は感光体に対しずれない。」とあって、印字ヘッドの中央部を固定取り付け、中央からはずれた位置は自由支持取り付けとすれば、中央部は熱膨張の影響を受けにくい作用効果が生じることが記載されている。
よって、引用発明において、印字ヘッド(「ヘッドエレメント1」)のヘッドフレーム(「バブルジェットユニット」)への取り付けに上記周知技術を適用し、かつ印字ヘッド(「ヘッドエレメント1」)が2個である場合に生じる上記3通りの取り付け方のうちの(a)を選択して、本願発明の相違点(ii)に係る構成を備えることは、引用例の記載及び周知技術、或いは技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

したがって、引用発明において、本願発明の相違点(i)、(ii)に係る構成を備えることは、引用例の記載及び周知技術、或いは技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであり、その作用効果も当業者が予測し得るものにすぎない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例の記載及び周知技術、或いは技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-14 
結審通知日 2008-07-15 
審決日 2008-07-28 
出願番号 特願平11-67110
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 571- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門 良成  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 菅藤 政明
長島 和子
発明の名称 インクジェットプリンタ  
代理人 稲元 富保  

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