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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1184125
審判番号 不服2006-9073  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-08 
確定日 2008-09-11 
事件の表示 平成 9年特許願第319922号「体感モーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月 8日出願公開、特開平11-153949〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年11月20日の出願であって、平成18年4月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月8日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月2日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成18年6月2日付け明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
<本件補正の内容及び目的>
本件補正前後の請求項1の記載を比較すると、本件補正は、補正前の請求項1の「人間に体感モーションを与えて疑似体験をシミュレートさせる体感モーション装置において」とするいわば前提記載と、これの有する「映像検出手段」、「音声検出手段」、「モーション信号生成手段」及び「モーション駆動制御手段」信号に係る特定は維持した上で、補正前の「、前記人間の動きに基づいて、スクリーンの大きさ、または映像の画質の設定を行うことにより、前記映像信号の前記再生効果を制御する再生効果制御手段と、を有する」を、補正後では「を有し、前記モーション信号は、前記映像信号からエッジが検出され、検出された前記エッジから生成される」とする補正事項を含むものである。
ここで、補正後に加えられた「前記モーション信号は、前記映像信号からエッジが検出され、検出された前記エッジから生成される」は、前記「モーション信号生成手段」において行われる「モーション信号生成」を限定するものではあるものの、補正前に存在していた「再生効果制御手段」を削除する補正事項が存在する以上、本件補正は、補正前の請求項1について発明を構成する事項を削除している。
してみると、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえず、誤記の訂正或いは明りようでない記載の釈明を目的とするものともいえないこととなる。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反している。

[補正却下の決定のむすび]
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第4項の規定に違反しているので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件審判請求についての当審の判断

1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、原審において平成18年4月3日付けで補正却下された平成17年12月5日付け手続補正に先だってなされた平成17年7月22日付け手続補正(以下、「本件補正2」という。)により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 人間に体感モーションを与えて疑似体験をシミュレートさせる体感モーション装置において、
映像信号から、映像の動きである動き映像を検出する動き映像検出手段と、
音声信号から、前記動き映像に対応する音声を検出する音声検出手段と、
前記人間の動きを感知する動き感知手段と、
前記動き映像と、前記音声と、前記人間の動きと、からそれぞれモーション信号を生成するモーション信号生成手段と、
前記モーション信号にもとづいて、前記人間が搭乗している搭乗物のモーション駆動を制御するモーション駆動制御手段と、
前記人間の動きに基づいて、スクリーンの大きさ、または映像の画質の設定を行うことにより、前記映像信号の前記再生効果を制御する再生効果制御手段と
を有することを特徴とする体感モーション装置。」

2.原審における平成17年10月4日付け拒絶理由の概要
A.平成17年7月22日付けでした手続補正(本件補正2)は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

請求項1、及び、発明の詳細な説明の段落番号【0011】、【0012】に「前記人間の動きに基づいて、スクリーンの大きさ、または、画質の設定を行うことにより」との補正を行ったが、当初明細書又は図面には、人間の動きに基づいて、スクリーンの大きさ、または、画質の設定を行うことの記載がなされているとは認められず、上記の補正は、当初明細書又は図面の記載から自明な事項であるとは認められない。
(発明の詳細な説明の段落番号【0021】には「臨場感を高める方法としては、例えば「視野の2/3以上を映像で被うと臨場感が高まる。」、「音場がはっきりした方が臨場感が高まる。」などの方法が知られている。これらのことを利用して、音場やスクリーンの大きさや映像の画質をより効果的に設定する。」との記載はあるが、「人間の動きに基づいて」、設定がなされることの記載はなされていない。)

B.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項1に「スクリーンの大きさ、または映像の画質の設定を行う」との記載があるが、実施例との対応が不明瞭であるため、「スクリーンの大きさ」とは具体的に何の大きさであるのかが不明確である。(例えば、物理的なスクリーン自体の大きさとは思われない。)また、同様に実施例との対応が不明瞭であるため、「画質の設定」とは具体的にどのような設定が行われるのか不明確である。
・請求項6に「再生された前記映像の臨場感を高めるように、前記映像信号の再生効果を強める」との記載がなされているが、「映像の臨場感を高めるように」との記載では、映像が具体的にどのようになり、どのように再生効果が強められるのかを明確に把握することができず、結果、発明としての構成を明確に把握することができない。
・請求項7に「前記人間の動きに基づいて音場の設定を行うことにより、前記音声信号の前記再生効果を制御する」との記載がなされているが、実施例との対応が不明瞭であるため、「音場の設定」とは具体的にどのような設定であるのかを明確に把握することができない。同様に、「前記音声信号の前記再生効果を制御する」とは具体的にどのような制御であるのかを明確に把握することができない。
また、上記指摘の請求項を引用する他の請求項も同様に不明確となる。
よって、請求項1?7に係る発明は明確でない。

3.当審の判断
3-1 理由Aについて
理由Aは、当初明細書に「前記人間の動きに基づいて、スクリーンの大きさ、または、画質の設定を行うことにより」との記載が存在しないことを指摘するものであり、理由Bは、前記記載が存在しない故に、請求項1の「スクリーンの大きさ、または映像の画質の設定を行う」との記載が具体的内容を把握できないこと、また、請求項6或いは7における指摘する記載の具体的内容を把握できないことを指摘するものである。

そこで、理由Aで指摘される、当初明細書に「前記人間の動きに基づいて、スクリーンの大きさ、または、画質の設定を行うことにより」との記載があるか否か、または、当初明細書の記載から自明な事項といえるのか否かについて検討する。

当初明細書の特許請求の範囲には、以下の記載がある。
「【請求項1】 人間に体感モーションを与えて疑似体験をシミュレートさせる体感モーション装置において、
映像信号から、映像の動きである動き映像を検出する動き映像検出手段と、
音声信号から、前記動き映像に対応する音声を検出する音声検出手段と、
前記人間の動きを感知する動き感知手段と、
前記動き映像と、前記音声と、前記人間の動きと、からそれぞれモーション信号を生成するモーション信号生成手段と、
前記モーション信号にもとづいて、前記人間が搭乗している搭乗物のモーション駆動を制御するモーション駆動制御手段と、
前記人間の動きから前記映像信号と、前記音声信号と、の再生効果を制御する再生効果制御手段と、
を有することを特徴とする体感モーション装置。
【請求項2】 前記モーション信号生成手段は、前記動き映像から、前記映像の傾きと、前記映像の前後水平垂直方向の動き位置と、前記映像の動き速度と、前記映像の動き加速度と、を表す第1のモーション信号を生成することを特徴とする請求項1記載の体感モーション装置。
【請求項3】 前記モーション信号生成手段は、前記音声から、振動を表す第2のモーション信号を生成することを特徴とする請求項1記載の体感モーション装置。
【請求項4】 前記モーション信号生成手段は、前記人間の動きから、前記人間の動きを助長する動き量を表す第3のモーション信号を生成することを特徴とする請求項1記載の体感モーション装置。
【請求項5】 前記モーション駆動制御手段は、X軸と、Y軸と、Z軸と、前記X軸と前記Z軸との平面内で傾きを表すYaw軸と、前記X軸と前記Y軸との平面内で傾きを表すRoll軸と、前記Y軸と前記Z軸との平面内で傾きを表すPitch軸と、からなる6軸で前記搭乗物のモーション駆動を制御することを特徴とする請求項1記載の体感モーション装置。
【請求項6】 前記再生効果制御手段は、前記人間の動きが大きい場合は、前記映像信号及び前記音声信号の前記再生効果を強めることを特徴とする請求項1記載の体感モーション装置。」

これらの記載には、本願発明である「人間に体感モーションを与えて疑似体験をシミュレートさせる体感モーション装置」が、以下の6つの手段を備えることが記載されている。

「映像信号から、映像の動きである動き映像を検出する動き映像検出手段」
「音声信号から、前記動き映像に対応する音声を検出する音声検出手段」
「前記人間の動きを感知する動き感知手段」
「前記動き映像と、前記音声と、前記人間の動きと、からそれぞれモーション信号を生成するモーション信号生成手段」
「前記モーション信号にもとづいて、前記人間が搭乗している搭乗物のモーション駆動を制御するモーション駆動制御手段」
「前記人間の動きから前記映像信号と、前記音声信号と、の再生効果を制御する再生効果制御手段」

そして、「人間の動き」に係る記載としては、請求項4に、「前記モーション信号生成手段は、前記人間の動きから、前記人間の動きを助長する動き量を表す第3のモーション信号を生成すること」、請求項6に「前記再生効果制御手段は、前記人間の動きが大きい場合は、前記映像信号及び前記音声信号の前記再生効果を強めること」の各記載がある。

これら特許請求の範囲の記載から、「前記人間の動きに基づいて、スクリーンの大きさ、または、画質の設定を行うことにより」なる直接的な記載はない。
しかし、これら特許請求の範囲の記載からは、3つの検出手段である
「映像信号から、映像の動きである動き映像を検出する動き映像検出手段」
「音声信号から、前記動き映像に対応する音声を検出する音声検出手段」
「前記人間の動きを感知する動き感知手段」
で検出された信号に基づいて、
「前記動き映像と、前記音声と、前記人間の動きと、からそれぞれモーション信号を生成するモーション信号生成手段」
で作成された「モーション信号」に、「人間の動き」をも反映させたものとなっており、
「モーション信号にもとづいて前記人間が搭乗している搭乗物のモーション駆動を制御するモーション駆動制御手段」による搭乗物のモーション駆動が行われるのみでなく、
「前記人間の動きから前記映像信号と、前記音声信号と、の再生効果を制御する再生効果制御手段」による、前記映像信号と、前記音声信号と、の再生効果が制御されるものである。
すると、本願発明は、「モーション信号」にもとづいた何らかの「前記映像信号と、前記音声信号と、の再生効果」を行うものである。
しかしながら、当該「前記映像信号と、前記音声信号と、の再生効果」が、具体的に如何なるものであるかを、前記各請求項記載から把握することは困難である。

そこで、さらに、当初明細書の詳細な説明について検討する。
段落【0001】?【0012】及び【0048】の記載では、「発明の属する技術分野」、「従来の技術」、「発明が解決しようとする課題」、「課題を解決するための手段」、及び「発明の効果」を順次説明しているものの、前記「前記映像信号と、前記音声信号と、の再生効果」の詳細に触れるところはない。

次に、段落【0013】?【0047】には、本願発明の体感モーション装置の実施の形態について図面を参照して説明されている。
ここで、段落【0013】?【0018】の記載には、本願発明の原理図とされる図1に示された実施の形態についての説明があるものの、前記特許請求の範囲で検討した以上に、特段の事項は記載されていない。
段落【0019】?【0021】の記載には、本願発明の体感モーション装置の動作処理を示すフローチャートなる図2に基づいた説明があるものの、前記特許請求の範囲で検討した以上に、特段の事項は記載されていない。
段落【0020】には、「映像/音声の再生について説明する。」とあり、再生にあたって臨場感を高くすることが好ましいと指摘され、続く段落【0021】には、臨場感を高める方法として、「視野の2/3以上を映像で被うと臨場感が高まる。」或いは「音場がはっきりした方が臨場感が高まる。」等の方法が知られている、との記載がある。
しかし、これらは、本願発明そのものに係る記載ではなく、周知の技術に係るものであることから、先の「視野の2/3以上を映像で被うと臨場感が高まる。」は、映像再生装置が人間の視野に対して2/3以上の大きさを有するものであること、すなわち、物理的なスクリーン自体を人間の視野に対して2/3以上の大きさとすることを想起させるとしても、それ以上の事項が記載されているものではない。
段落【0022】?【0026】には、人間の反応が如何なるものか、これの計測方法、及び判断内容についての説明があり、続く段落【0027】?【0034】には、映像信号から如何にして動き検出を行うかについて、エッジ抽出を行う手法の説明があり、さらに続く段落【0035】?【0036】には、動き映像に対応する音声を検出する手法の説明があるも、いずれにおいても、人間の動きにもとづいて、映像に係る如何なる再生効果を与えるかの詳細は記載されていない。
段落【0037】?【0040】載には、搭乗者の重心動揺からのモーション信号の作成手法の説明があり、続く段落【0041】?【0044】には、モーション信号にもとづいて搭乗物のモーション駆動を如何に行うかの説明がされているものの、いずれにも、人間の動きにもとづいて、映像に係る如何なる再生効果を与えるかの詳細は記載されていない。
段落【0045】の記載には、それまでの段落記載をまとめて、本願発明の体感モーション装置が、動き映像、音声及び搭乗者の動きからそれぞれモーション信号を生成し、このモーション信号にもとづいて、搭乗物のモーション駆動を制御する構成であることが、前記段落【0007】?【0010】に掲げた課題を達成できるとされ、段落【0047】にも、前記課題への寄与が記載されるが、やはり、人間の動きにもとづいて、映像に係る如何なる再生効果を与えるかの詳細は記載されていない。
残る段落【0046】の記載には、「さらに必要であれば、入力音声の音室や音圧、音場を変えて、より効果的な音声を出力したり、映像の明暗やエンハンスなどを行い、より効果的な映像を出力したりすることもできる。」とある。
ここでは、特段、モーション信号との関係は特定されていないものの、モーション信号自体は、動き映像、音声及び搭乗者の動きから生成された後は、合成された信号として扱われ、搭乗者の動きのみ特段に分離した扱いがされているものでないことから、前記段落【0046】に説明される、「映像の明暗やエンハンスなどを行」うことが、搭乗者の動きにもとづいて制御されるものと解する余地はある。
すると、前記の「前記人間の動きに基づいて、スクリーンの大きさ、または、画質の設定を行うことにより」との記載について、「前記人間の動きに基づいて、画質の設定を行うこと」は、当初明細書の記載範囲にあるものともいい得ることとなる。
他方、これまで検討してきたように、残る「前記人間の動きに基づいて、スクリーンの大きさの設定を行うこと」については、当初明細書に記載も示唆もないものといわざるを得ない。

以上の検討のとおりであるから、当初明細書に「前記人間の動きに基づいて、スクリーンの大きさ、または、画質の設定を行うことにより」との記載も示唆もなく、当初明細書の記載から自明な事項ともいえない以上、平成17年7月22日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
よって、原審における理由Aの判断は妥当なものである。

3-2 理由Bについて
上記で検討したように、当初明細書に「前記人間の動きに基づいて、スクリーンの大きさ、または、画質の設定を行うことにより」との記載はなく、これを示唆するところもない。
してみるに、請求項1に「スクリーンの大きさ、または映像の画質の設定を行う」との記載がされたとしても、実施例との対応が明りようなものとはいえない。
すると、当該明りようでない記載がされた本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないといわざるを得ない。
よって、原審における理由Bの判断も妥当なものである。

したがって、本件補正2は当初明細書に記載した事項の範囲内でされたと認めることができず、本願においては、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされていると共に、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
以上のとおり、本願の平成17年7月22日付け手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、本願は特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないのであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-16 
結審通知日 2008-07-17 
審決日 2008-07-29 
出願番号 特願平9-319922
審決分類 P 1 8・ 55- Z (G09B)
P 1 8・ 537- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安久 司郎  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 坂田 誠
大仲 雅人
発明の名称 体感モーション装置  
代理人 稲本 義雄  

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