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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16H
管理番号 1184143
審判番号 不服2007-1659  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-17 
確定日 2008-09-11 
事件の表示 特願2001-392096「動力取り出し装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 9日出願公開、特開2003-194196〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月25日の出願であって、平成18年11月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月17日に審判請求がなされるとともに、平成19年2月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年2月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年2月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】 駆動源側に連結され且つ入力クラッチ板を設けたインプットシャフトと、出力クラッチ板を設けたアウトプットシャフトと、インプットシャフト及びアウトプットシャフトを支持するケースと、前記入力クラッチ板と出力クラッチ板を押圧して接続するようピストンを液圧により伸縮させるポンプとを備えた動力取り出し装置であって、前記ピストンとポンプの間の液圧の配管を、ケースの外部でアウトプットシャフトの出力側に配置すると共にアウトプットシャフトの軸心の周方向に少なくとも一周するように延在し、液圧の配管を空冷し得るよう、インプットシャフトの回転をアウトプットシャフトに伝達する際にアウトプットシャフトの回転に伴って回転する冷却フィンを備えたことを特徴とする動力取り出し装置。」と補正された。
本件補正は、請求項1についてみると、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「液圧の配管を空冷し得るようアウトプットシャフトの回転に伴って回転する冷却フィンを備えた」という事項について「液圧の配管を空冷し得るよう、インプットシャフトの回転をアウトプットシャフトに伝達する際にアウトプットシャフトの回転に伴って回転する冷却フィンを備えた」という事項に減縮するものであって、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用例
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-35305号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(あ)「【発明の属する技術分野】本発明は、コンバイン等の作業機の伝動装置に係り、詳しくは、ベルト無段変速機構付きミッションに関する。」(段落【0001】参照)
(い)「図1に示すように、ミッション2は、ベルト無段変速機構1の従動軸6に連動される入力軸10を備え、PTO軸11J、PTOプーリ11、PTO油圧クラッチ(第1PTOクラッチに相当)Cp、前後進切換機構A、高低3段の副ギヤ変速機構12、左右のサイドクラッチ・ブレーキ13,13、左右の車軸14,14等を備えている。前後進切換機構Aは、前進用油圧クラッチCfと、後進用油圧クラッチCbとを備えて構成され、いずれか一方を択一的に選択して入り操作するものである。
前後進切換機構Aは、前述した前進及び後進用の各油圧クラッチCf,Cb、前進用の入力及び出力ギヤ25a,25b、後進用の入力及び出力ギヤ26a,26b等から構成されている。前進用油圧クラッチCfをONにすると、入力軸10の動力が前進用の各ギヤ25a,25bを介して副ギヤ変速機構12の入力ギヤ27に伝動する前進状態が現出され、後進用油圧クラッチCbをONにすると、入力軸10の動力が前進用入力ギヤ25a、後進用の各ギヤ26a,26b介して副ギヤ変速機構12の入力ギヤ27に伝動する後進状態が現出されるようになる。
ベルト無段変速機構1はHSTのように正逆転の切換えや伝動中立状態の現出が行えないものであるため、油圧クラッチ式の前後進切換機構Aとして、これを中立操作していずれの油圧クラッチCf,Cbも切りとすることで中立状態を出すものである。そして、この走行中立状態ではPTOクラッチCpも切りとなるように連係されており、機体停止状態で刈取部が駆動される状態が生じないように制御されている。但し、移動走行等では刈取部は停止で、かつ、走行部は伝動状態にすることが必要になるので、ミッション2外部にベルトテンション式の刈取クラッチ(第2PTOクラッチに相当)15を設けてある。
図3に油圧回路図が示されており、16は油圧ポンプ、17はオイルクーラー、18は前後進切換用の第1制御弁、19は操向用の第2制御弁、20はネガティヴブレーキ用のアキュムレータ、39はフロープライオリティー弁である。各油圧機器の作動油とミッションオイルとは兼用されており、図2に示すように、油圧ポンプ16の吐出油はミッションケース2a側面に外装されたバルブユニット21に供給され、その戻り油はミッションケース2a内部に排出される。そして、ミッションケース2a下部に装備された油出口22からの排油はオイルクーラー17で冷やされてから油圧ポンプ16に戻る閉じた循環経路Lに構成されている。
アキュムレータ20は、第1制御弁18が中立位置にあると作動せず、第1制御弁18が中立以外の位置にあると作動するよう油圧回路工夫によって連係され、作動しないときは内装したバネ20aによってピストンロッド20bを退入移動させるように機能する。そのピストンロッド20bは、左右のサイドクラッチ・ブレーキ13,13のアーム13aにワイヤー連係されており、アキュムレータ20の非作動時には両サイドクラッチ・ブレーキ13,13が制動作動状態になり、かつ、アキュムレータ20の作動時には制動解除状態となるものであり、これによって、走行時にはブレーキ解除され、機体を停止させるべく第1制御弁18を中立操作すると、自動的に左右の走行装置3,3にブレーキが掛かるネガティヴブレーキが構成されているのである。
図1、図2に示すように、ベルト無段変速機構1のベルトケース1aとミッションケース2aとは、従動軸6(入力軸10)部分において比較的広い面積でもって接触するように連結一体化されており、ベルト無段変速機構1で生じた熱が比較的容易にミッションケース2aに熱伝導されるようにしてある。そして、ミッションケース2aに伝えられた熱は作動油に伝導され、前述した循環経路Lで主にオイルクーラー17で効率的に冷却されるとともに、油出口22からバルブユニット21への金属製の外部配管a,b,cが備えられ、これら外部配管a,b,cの自然放熱作用も期待できるのである。従って、ベルト無段変速機構1の発熱を作動油の循環経路Lを利用して効率良く冷却できるのである。」(段落【0017】?【0022】参照)
以上の記載事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ミッション2は入力軸10、PTO油圧クラッチCp、PTOプーリ軸11Jを備え、
各油圧機器の作動油とミッションオイルとは兼用されており、油圧ポンプ16の吐出油はミッションケース2a側面に外装されたバルブユニット21に供給され、その戻り油はミッションケース2a内部に排出され、
ミッションケース2a下部に装備された油出口22からバルブユニット21への金属製の外部配管a,b,cが備えられ、油出口22からの排油はオイルクーラー17で冷やされてから油圧ポンプ16に戻る閉じた循環経路Lに構成されているコンバイン等の作業機の伝動装置。」
(2-2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-101334号公報(以下、「引用例2」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(か)「【発明の属する技術分野】本発明は、ハイドロスタティックトランスミッション(以下HST)を収容したハウジング内のオイルの冷却構造に関する。」(段落【0001】参照)
(き)「ハウジング内部には潤滑油及びHSTの作動油となるオイルを充填するための油溜めXを形成し、この中に油圧ポンプPと油圧モータMと両者を流体的に接合するセンタセクション5、デフギア装置、及び油圧モータMのモータ軸4よりデフギア装置へ動力を伝達する動力伝達機構が収容されている。
前記油溜めX内のハウジングに固着されたセンタセクション5は、水平部と垂直部を有し、水平部の上面にポンプ付設面50が形成され、ポンプ付設面50にシリンダブロック16が回転自在に配置されている。シリンダブロック16の複数のシリンダ孔内に付勢バネを介してピストン12・12・・・が往復動自在に嵌合され、ピストン12・12・・・の頭部は可動斜板11に当接され、ポンプ軸を兼ねた入力軸3がシリンダブロック16の回転軸心上に一体的に配置されて油圧ポンプPを構成している。入力軸3の上部は上部ハウジング1の上壁より上方へ突出して、その上端に冷却ファン24付きの入力プーリー23を固設している。」(段落【0008】?【0009】参照)
(く)「本発明に係るハウジングの油溜めX内のオイルの冷却構造について説明する。図3、図4、及び図5に示すように、第一管継手30はその内部にL字状の油路30aを有し、その下端部を上部ハウジング1の上面の開口1bに挿入して、油路30aの一端をハウジング内の油溜めXに連通させる。そして第一管継手30の側面に開口する油路30aの他端には、冷却パイプ33の一端が接続される。
冷却パイプ33は熱伝動率の高い金属パイプ等で構成し、冷却ファン24の冷却エリア内に配設されるようにする。図1及び図2の実施例では、上部ハウジング1の上面と、上部ハウジング1の上方に配設される冷却ファン24下端との間に冷却パイプ33を配置している。この冷却パイプ33は、その外周に多数のフィンを備えるものとしてもよい。冷却パイプ33は入力軸3を周回するように延設され、その他端は、上下ハウジング1上端部における入力軸3の軸受部の周囲に配設された第二管継手31に接続される。」(段落【0012】?【0013】参照)
(け)「以上のような構成において、入力プーリー23に動力が伝達されて入力軸3が回転すると、冷却ファン24が回転し、冷却風が冷却パイプ33及びハウジングに当たって、これらの中のオイルが冷却される。特に、冷却パイプ33内のオイルは、ハウジングを介して冷却される油溜めX内に比して、冷却ファン24からの冷却風を直接的に受け、十分に冷却される。更に、入力軸3とともに動圧発生器40が回転することにより、冷却パイプ33内の冷却ずみオイルは第二管継手31を介して油溜めX内に流入する。このオイル流入にて冷却パイプ33内が負圧になることによって、油溜めX内のオイルは、第一管継手30を介して冷却パイプ33内に吸引される。こうして、入力軸3が回転している間は、油溜めX内のオイルが略間断なく第一管継手30より抽出されて、冷却パイプ33内を流動し、第二管継手31より再び油溜めX内に戻されて強制循環するものであり、冷却パイプ33内の流動中にオイルは冷却ファン24にて冷却され、冷却されたオイルが略間断なく油溜めX内に充填され、油溜めX内が強制冷却されるので、HST等、油溜めX内に収容される各種部材の作動効率を高めるのである。」(段落【0016】参照)
以上の記載事項及び図面からみて、引用例2には、次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ハウジング内部に潤滑油及びHSTの作動油となるオイルを充填するための油溜めXを形成し、この中に油圧ポンプPと油圧モータMと両者を流体的に接合するセンタセクション5、デフギア装置、及び油圧モータMのモータ軸4よりデフギア装置へ動力を伝達する動力伝達機構を収容し、
ポンプ軸を兼ねた入力軸3の上部は上部ハウジング1の上壁より上方へ突出していて、その上端に冷却ファン24付きの入力プーリー23を固設し、
第一管継手30のL字状の油路30aの下端部を上部ハウジング1の上面の開口1bに挿入して、油路30aの一端をハウジング内の油溜めXに連通させ、第一管継手30の側面に開口する油路30aの他端には冷却パイプ33の一端を接続し、冷却パイプ33は入力軸3を周回するように延設され、その他端は上部ハウジング1上端部における入力軸3の軸受部の周囲に配設された第二管継手31に接続されているハイドロスタティックトランスミッションを収容したハウジング内のオイルの冷却構造。」
(3)対比
本願補正発明1と引用例1発明とを比較すると、後者の「入力軸10」は前者の「インプットシャフト」に相当し、以下、同様に、「PTOプーリ軸11J」は「アウトプットシャフト」に、「油圧ポンプ16」は「ポンプ」に、「伝動装置」は「動力取り出し装置」にそれぞれ相当する。
また、引用例1の図1等を参照すると、入力軸10及びPTOプーリ軸11Jは実質的にミッションケース2aに支持されていること、及び、PTO油圧クラッチCpは実質的に入力軸10に設けられた入力クラッチ板とPTOプーリ軸11Jに設けられた出力クラッチ板を備えていることが看取される。
以上より、本願補正発明1の用語に倣って整理すると、両者は、
「駆動源側に連結され且つ入力クラッチ板を設けたインプットシャフトと、出力クラッチ板を設けたアウトプットシャフトと、インプットシャフト及びアウトプットシャフトを支持するケースと、ポンプとを備えた動力取り出し装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明1は、「ポンプ」が「前記入力クラッチ板と出力クラッチ板を押圧して接続するようピストンを液圧により伸縮させるポンプ」であるのに対し、引用例1発明は、「油圧ポンプ16」がそのようなポンプかどうか、明確でない点。
[相違点2]
本願補正発明1は、「前記ピストンとポンプの間の液圧の配管を、ケースの外部でアウトプットシャフトの出力側に配置すると共にアウトプットシャフトの軸心の周方向に少なくとも一周するように延在し、液圧の配管を空冷し得るよう、インプットシャフトの回転をアウトプットシャフトに伝達する際にアウトプットシャフトの回転に伴って回転する冷却フィンを備えた」という事項を具備するのに対し、引用例1発明は、そのような事項を具備していない点。
(4)判断
[相違点1]について
「入力クラッチ板と出力クラッチ板を押圧して接続するようピストンを液圧により伸縮させる」ようなクラッチは周知であり、引用例1の「油圧ポンプ16」をそのような作用をするためのポンプとすることは当業者が容易に想到し得たものと認められる。
[相違点2]について
引用例2発明は、ハウジング内部に形成された潤滑油及びHSTの作動油となるオイルを充填するための油溜めXに一端と他端が接続された冷却パイプ33がポンプ軸を兼ねた入力軸3を周回するように延設されており、ハウジングの上壁より上方へ突出した入力軸3の上端に冷却ファン24付きの入力プーリー23を固設されているオイルの冷却構造を備えている。引用例1発明に引用例2発明の上記事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものと認められる。その際、引用例1発明のどこに冷却パイプを延設し、どの軸に冷却ファンを取付けるかは適宜の設計事項にすぎない。ここで、ミッションケース2aから突出する軸について引用例1の図1の記載を参照し、また、上記に摘記したとおり引用例1にはベルト無段変速機構1で熱が生じることが記載されていることを合わせ考えると、冷却ファンをPTOプーリ軸11Jに取付けるとともに、それに相応して外部配管a,b,cをPTOプーリ軸11Jを周回するように延設することは、上記のような適宜の設計の一例として当業者が容易に想到し得たものと認められる。このようにしたものが、実質的に、「前記ピストンとポンプの間の液圧の配管を、ケースの外部でアウトプットシャフトの出力側に配置すると共にアウトプットシャフトの軸心の周方向に少なくとも一周するように延在し、液圧の配管を空冷し得るよう、インプットシャフトの回転をアウトプットシャフトに伝達する際にアウトプットシャフトの回転に伴って回転する冷却フィンを備えた」という事項を具備することは明らかである。
そして、出力軸にファンを取付けたものは例えば特開昭10-131985号公報(特に段落【0010】、図2参照)に示されているように周知であると認められることも参酌すると、本願補正発明1の作用効果は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が予測し得た程度のものである。

なお、審判請求人は審判請求の理由において「刊行物2の実施例は、入力軸23(入力側)に冷却ファン24が取り付けられているため、入力軸23が回転する限りには常に冷却ファン24が回転し、液圧の上昇等に全く無関係に冷却するものである。一方、本願発明は、アウトプットシャフト(出力側)に冷却ファンが備えられるため、インプットシャフトの回転がアウトプットシャフトに伝達しない際には、冷却ファンが回転せず、インプットシャフトの回転がアウトプットシャフトに伝達する際には、初めて冷却ファンが回転するため、必然的にインプットシャフトからアウトプットシャフトに回転を伝達するためのクラッチ押圧時、すなわち、ピストン液圧が高い場合に、最大限の効果を上げることができ、結果的にエネルギーロスを最小限に抑え、充分な冷却効果を上げるという顕著な効果を有するものである。」、及び、「刊行物2の構成は、入力軸34に冷却ファン24を配置するために入力プーリ等の影響を受け、空冷効率が落ちるものであり、本願発明の如く、アウトプットシャフトに冷却ファンを配置した場合には、入力プーリ等の影響を受けることがなく、このような問題は生じない。」と主張しているが、引用例1発明に引用例2発明の上記事項を採用し、冷却ファンをPTOプーリ軸11Jに取付けるとともに、それに相応して外部配管a,b,cをPTOプーリ軸11Jを周回するように延設することは当業者が容易に想到し得たものと認められること、また、本願補正発明1の作用効果は引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が予測し得た程度のものであることは上記のとおりである。

したがって、本願補正発明1は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)むすび
本願補正発明1について以上のとおりであるから、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に違反するものであり、本件補正における他の補正事項を検討するまでもなく、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成19年2月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成18年8月28日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 駆動源側に連結され且つ入力クラッチ板を設けたインプットシャフトと、出力クラッチ板を設けたアウトプットシャフトと、インプットシャフト及びアウトプットシャフトを支持するケースと、前記入力クラッチ板と出力クラッチ板を押圧して接続するようピストンを液圧により伸縮させるポンプとを備えた動力取り出し装置であって、前記ピストンとポンプの間の液圧の配管を、ケースの外部でアウトプットシャフトの出力側に配置すると共にアウトプットシャフトの軸心の周方向に少なくとも一周するように延在し、液圧の配管を空冷し得るようアウトプットシャフトの回転に伴って回転する冷却フィンを備えたことを特徴とする動力取り出し装置。」

3-1.本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)について
(1)本願発明1は上記のとおりである。
(2)引用例
引用例1、2、その記載事項、及び周知技術は上記「2.平成19年2月7日付けの手続補正についての補正却下の決定」に記載したとおりである。
(3)対比・判断
本願発明1は実質的に、上記「2.平成19年2月7日付けの手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明1においてその「液圧の配管を空冷し得るよう、インプットシャフトの回転をアウトプットシャフトに伝達する際にアウトプットシャフトの回転に伴って回転する冷却フィンを備えた」という事項を「液圧の配管を空冷し得るようアウトプットシャフトの回転に伴って回転する冷却フィンを備えた」という事項に拡張したものである。
そうすると、本願発明1の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、上記「2.平成19年2月7日付けの手続補正についての補正却下の決定」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-09 
結審通知日 2008-07-15 
審決日 2008-07-28 
出願番号 特願2001-392096(P2001-392096)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16H)
P 1 8・ 575- Z (F16H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高吉 統久鈴木 充  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 礒部 賢
溝渕 良一
発明の名称 動力取り出し装置  
代理人 大塚 誠一  
代理人 山田 恒光  

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