• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1184148
審判番号 不服2007-5500  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-22 
確定日 2008-09-11 
事件の表示 特願2003-101558「蓄電池劣化判定回路付無停電給電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月 4日出願公開、特開2004-312849〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成15年4月4日の出願であって、平成19年1月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月22日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年8月18日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「交流電源に繋がる交直変換器から蓄電池に浮動充電しながら負荷に給電する無停電給電装置において、該交直変換器の出力電圧を制御する制御回路、および蓄電池の劣化判定回路を有し、該制御回路が該交直変換器の出力電圧を定常状態より下げることで該蓄電池が定格放電電流よりも制限された電流で放電して該負荷に対する給電の一部を供給し、該制御回路が該交直変換器の出力電圧を定常状態に復帰させて該蓄電池が充電される時間により該劣化判定回路が該蓄電池の劣化判定することを特徴とする蓄電池劣化判定回路付無停電給電装置。」

2.引用文献
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-233475号公報(以下「引用例1」という。)には、電源装置に関して図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、蓄電池等のエネルギ蓄積手段とインバータ等の電力変換手段とを有する電源装置に関し、特にそのエネルギ蓄積手段を点検することができるシステムに関するものである。」

・「【0003】図12は、例えば「無停電電源装置(UPS)導入実験ガイド」(1989年2月25日株式会社電気書院発行)58頁第2・8図に示された従来の無停電電源装置を示す構成図である。図において、1は無停電電源に交流電力を供給する交流電源、2は交流電源1の電力を直流電力に変換する交流-直流変換器、3は変換された直流電力を安定した交流電力に逆変換する直流-交流変換器、4は2つの変換器2と3との間の直流回路に接続された蓄電池、5は直流-交流変換器3の出力側に接続された出力スイッチ、6は直送(バイパス)回路、7は直送回路6に接続された交流(AC)スイッチ、8は出力スイッチ5および交流スイッチ7の共通接続点に接続される無停電電源装置の交流負荷である。
【0004】次に動作について説明する。交流電源1が正常なときは、交流電源1の交流電力が交流-直流変換器2により直流電力に変換され、蓄電池4を浮動(フロート)充電すると共に直流-交流変換器3により安定した交流に逆変換され、出力スイッチ5を介して交流負荷8に給電される。交流電源1が停電した場合には、蓄電池4が直流電力を放電し、その直流電力を直流-交流変換器3に供給することにより、交流負荷8への電力供給を継続する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の無停電電源装置は以上のように構成されているので、運転(浮動充電)中に蓄電池4に異常(故障)が発生してもそれを検出することができず、無停電電源装置が必要な入力停電の状態になって初めて故障が顕在化して交流負荷8を連続給電することができなくなるという、無停電電源装置としては致命的な不具合があった。」

・「【0020】
【実施例】実施例1.図1はこの発明の実施例1による電源装置を示す構成図であり、1?4、8は従来と同様のものである。さらに、10は交流-直流変換器2の制御装置、11は直流-交流変換器3の制御装置、12は蓄電池4の放電電流を計測する電流センサ、13は蓄電池4の電圧を計測する電圧センサ、14は両センサ12,13による計測値から蓄電池4の異常を検出し異常信号を送出する蓄電池異常検出装置、15は蓄電池点検時に制御装置10、11、蓄電池異常検出器14に指令信号を送る点検制御装置である。
【0021】次に動作について説明する。電源装置の本来の動作、即ち、交流電源1からの交流電力を交流-直流変換器2により一旦直流電力に変換し、更に、直流-交流変換器3により安定した交流電力に逆変換して交流負荷8に供給する動作は従来と同様である。そして、この時、蓄電池4は浮動充電の状態にある。」

・「【0024】実施例2.次に、蓄電池4の放電を一定の条件に制御して、異常検出をより安定確実に行い得るようにした実施例2について説明する。全体構成は先の図1で示したものと同様であるので説明を省略する。
【0025】次に動作について説明する。直流-交流変換器3の運転中に、点検制御装置15からの点検指令信号により、交流-直流変換器の制御装置10は交流-直流変換器2を制御し蓄電池4が所定制御電流値で放電するように制御する。このとき、蓄電池4が正常であれば所定時間後(時刻t1)に電圧センサ13で計測される蓄電池電圧は電流センサ12で計測される蓄電池電流に応じた値になるはずであるが、蓄電池4が故障していたり何らかの原因で充分に充電されていなかった場合には、蓄電池電圧は正常な特性よりも低い値となり、蓄電池異常検出器14が異常を検出し、異常信号を発信する。
【0026】図3は、このような蓄電池を一定電流で放電させたときの放電時間と蓄電池電圧との関係を示した特性図であり、蓄電池の容量が低下してくると放電開始後の蓄電池電圧の低下が著しく大きくなる。蓄電池異常検出器14は、放電制御を開始してから所定時間後の蓄電池電流と蓄電池電圧との計測値から、蓄電池の放電状態を検出し蓄電池の容量が正常範囲にあるか否かを判定することにより、蓄電池異常を検出することができる。このように、所定電流値に制御して放電を行わせることにより、蓄電池異常検出器14での異常有無判別条件が画一化されその動作もより安定確実なものとなる。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「交流電源1に繋がる交流-直流変換器2から蓄電池4を浮動充電しながら負荷8に給電する無停電電源装置において、該交流-直流変換器の制御装置10、および蓄電池異常検出器14を有し、該制御装置が該交流-直流変換器を該蓄電池が所定電流値で放電するように制御し、所定時間後の蓄電池電流と蓄電池電圧との計測値から、該蓄電池異常検出器が該蓄電池の異常を検出する蓄電池異常検出器付無停電電源装置。」

(2-2)引用例2
同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-52033号公報(以下「引用例2」という。)には、バッテリの劣化判定装置に関して、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気自動車のバッテリの劣化判定装置に関する。」

・「【0013】まず、本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置の構成について説明すると、図2は本バッテリの劣化判定装置を電気自動車のバッテリ充電に適用した場合のシステム構成図である。図2に示すように、本バッテリの劣化判定装置は、充電装置1にそなえられた電圧検出手段2,電流検出手段3,劣化判定手段4,記憶手段5,タイマ6,制御手段7と、電気自動車11にそなえられた温度センサ13とにより構成されている。
【0014】充電装置1と電気自動車11とは、互いのコネクタ18,19を接続することにより接続されるようになっており、充電装置1にそなえられたプラグ17を図示しないACコンセント(一般の商用電源)に接続して得られた電流がサイリスタ8により電圧・電流調整され、バッテリ12に充電されるようになっている。この電圧・電流の調整量は操作パネル10により設定できるようになっており、制御手段7を介してサイリスタ8を調整するようになっている。なお、電気自動車11の走行時にはバッテリ12からモータ制御装置14へ電源が供給され、モータ制御装置14はインバータ15を介してモータ16の駆動制御をするようになっている。
【0015】電圧検出手段2,電流検出手段3は、このサイリスタ8からバッテリ12への充電回路上に設けられ、電圧検出手段2は充電時のバッテリ12の端子電圧を検出し、電流検出手段3は充電時のバッテリ12の充電電流を検出して制御手段7に入力するようになっている。・・・」
【0016】制御手段7に入力されたこれらの端子電圧,充電電流,温度の各情報は劣化判定手段4に入力されるようになっている。そして、劣化判定手段4ではこれらの各情報とタイマ6より入力された計測時間情報とから得られるバッテリ12の充電特性を、記憶手段5に記憶されている劣化測定用の充電特性と比較することによりバッテリ12の劣化の度合いを判定するようになっている。」

・「【0021】そこで、本装置では、図1に示すように、バッテリの端子電圧が、予め設定された第1の電圧値V_(1)から第2の電圧値V_(2)まで達するのに要する充電時間ttをタイマ6で検出して、この充電時間ttに基づいてバッテリの劣化を判定している。」

・また、第4図には、バッテリの充電特性とバッテリの劣化の度合いとの関係がグラフに示されている。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「交流-直流変換器2」は本願発明の「交直変換器」に相当し、以下同様に、「無停電電源装置」は「無停電給電装置」に、「制御装置10」は「制御回路」に、それぞれ相当している。
また、引用発明の「蓄電池異常検出器」と本願発明の「蓄電池の劣化判定回路」とは、「劣化」も「異常」の一つの態様といえるから、「蓄電池の異常検出手段」との概念で共通する。
また、引用発明の「蓄電池異常検出器付無停電電源装置」と本願発明の「蓄電池劣化判定回路付無停電給電装置」とは、「蓄電池の異常検出手段付無停電給電装置」との概念で共通する。
また、引用発明の制御装置10は、交流-直流変換器を蓄電池が所定電流値で放電するように制御するものであるから、交流-直流変換器の出力電圧を制御する機能を有することは明らかである。
また、引用発明の「制御装置10が交流-直流変換器2を蓄電池4が所定電流値で放電するように制御」する態様と、本願発明の「制御回路が交直変換器の出力電圧を定常状態より下げることで、蓄電池が定格放電電流よりも制限された電流で放電して負荷に対する給電の一部を供給」する態様とは、「制御回路が交直変換器を蓄電池が放電するように制御」するとの概念で共通する。
また、引用発明の「所定時間後の蓄電池電流と蓄電池電圧との計測値から、蓄電池異常検出器が蓄電池の異常を検出する」態様と、本願発明の「制御回路が交直変換器の出力電圧を定常状態に復帰させて蓄電池が充電される時間により、劣化判定回路が該蓄電池の劣化判定する」態様とは、「異常検出手段が蓄電池の異常を検出する」との概念で共通する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「交流電源に繋がる交直変換器から蓄電池に浮動充電しながら負荷に給電する無停電給電装置において、該交直変換器の出力電圧を制御する制御回路、および蓄電池の異常検出手段を有し、該制御回路が該交直変換器を該蓄電池が放電するように制御し、該異常検出手段が蓄電池の異常を検出する、蓄電池の異常検出手段付無停電給電装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1
制御回路が交直変換器を蓄電池が放電するように制御する構成に関し、本願発明では、制御回路が交直変換器「の出力電圧を定常状態より下げることで蓄電池が定格放電電流よりも制限された電流で放電して負荷に対する給電の一部を供給」する構成であるのに対し、引用発明では、かかる構成が特定されていない点。

・相違点2
蓄電池の異常検出手段について、本願発明では「蓄電池の劣化判定回路」であるのに対し、引用発明では「蓄電池の異常検出器」である点。

・相違点3
蓄電池の異常を検出する(または劣化判定する)手法に関し、本願発明では「制御回路が交直変換器の出力電圧を定常状態に復帰させて蓄電池が充電される時間により」「劣化判定する」のに対し、引用発明では「(蓄電池の放電開始後)所定時間後の蓄電池電流と蓄電池電圧との計測値から」「異常を検出する」点。

4.判断
上記各相違点について検討する。
・相違点1について
引用発明は、制御装置が交流-直流変換器を蓄電池が所定電流値で放電するように制御するものであるが、蓄電池の放電電流を所定電流値に制御するためには、交流-直流変換器の出力電圧を蓄電池電圧との関係に基づいて制御し、交流-直流変換器から負荷電流の一部を供給しつつ、蓄電池からも負荷電流の一部として所定電流値を放電させているものと解される。
そして、この時に、制御装置が、それまで交流-直流変換器から全ての負荷電流を供給していたのに対し、蓄電池からも所定電流値で放電するように制御するのであるから、交流-直流変換器の出力電圧を定常状態よりも下げる必要のあることは、当業者にとって明らかな事項であり、また、その時の蓄電池の放電電流を定格放電電流よりも制限された電流とすることは、制御性(制御の容易さ)や蓄電池の寿命への影響等を考慮して、当業者が適宜容易に採用し得る手段に過ぎない。
したがって、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。

・相違点2について
引用例2には、蓄電池の劣化判定装置が記載されており、蓄電池の「劣化」も「異常」の一態様といえることを考慮すれば、引用発明において、蓄電池の異常を検出する異常検出器に、異常状態の一つである蓄電池の劣化を判定する機能を持つ劣化判定回路を設けることは、当業者が容易になし得る事項である。
よって、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。

・相違点3について
引用例2には、バッテリを充電する際の充電時間により、バッテリの劣化を判定することが開示されている。
そして、引用例2のものも、バッテリの劣化を判定する点で、バッテリの異常を検出する引用発明と近接した技術分野に属するものといえるから、引用発明において、蓄電池を放電させた後充電させて、この時の充電時間により蓄電池の劣化を判定するように構成することは、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、この時、蓄電池を充電させるために、制御装置が交流-直流変換器の出力電圧を定常状態に復帰させるべく制御するよう構成することも、充電の目的を考慮すれば、当業者が適宜容易に採用し得る程度の事項に過ぎない。
したがって、引用発明において、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、引用例2に開示された発明に基づいて、当業者が容易になし得るものである。

そして、本願発明の全体構成により奏される効果も、引用発明及び引用例2に開示された発明から当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に開示された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-08 
結審通知日 2008-07-15 
審決日 2008-07-28 
出願番号 特願2003-101558(P2003-101558)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢島 伸一  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 谷口 耕之助
田良島 潔
発明の名称 蓄電池劣化判定回路付無停電給電装置  
代理人 小宮 良雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ