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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B05B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05B |
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管理番号 | 1184181 |
審判番号 | 不服2006-1717 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-01-30 |
確定日 | 2008-09-12 |
事件の表示 | 特願2001-383132「屈曲風洞を備えた塗装ブース」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 2日出願公開、特開2003-181343〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成13年12月17日の出願であって、平成16年12月24日付けで拒絶理由が通知され、平成17年3月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月13日付けで拒絶理由が再度通知され、同年9月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月28付けで拒絶査定がなされ、同年1月30日に同拒絶査定に対して審判請求がなされ、平成18年2月27日に手続補正書が提出された明細書の補正がなされたものである。 第2.平成18年2月27日付けの明細書を補正する手続補正についての補正の却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成18年2月27日付けの手続補正を却下する。 〔理 由〕 1.本件補正の内容 平成18年2月27日付けの手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成17年9月22日に提出された手続補正書により補正された)下記の(ロ)に示すものを下記の(イ)に示すものと補正するものである。 (イ)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 排気ファンによる吸込気流によって塗装室の前面下部の吸い込み口より塗料ミストを吸引し、吸込気流通路中に水洗シャワー用の噴射ノズルを配設してミスト処理を行い、清浄空気流を排気ファンより外部に排気する塗装用ブースにおいて、前記吸込気流通路内に塗装室前面の壁面とは別の壁面で構成され、後部下方に傾斜する平面状の壁面で囲まれた通路を形成し、さらに該傾斜する通路に続いて通路全域において、平面状の壁面に衝突して前部に通路方向を転換する壁面で形成される屈曲する通路を経て前記塗装室の前面下部の吸い込み口に至る風洞の流路を形成し、前記噴射ノズルは前記後部下方に傾斜する通路に沿って該通路全域に噴射する位置に配置してなる屈曲風洞を備えた塗装ブース。 【請求項2】 排気ファンによる吸込気流によって塗装室の前面下部の吸い込み口より塗料ミストを吸引し、吸込気流通路中に水洗シャワー用の噴射ノズルを配設してミスト処理を行い、清浄空気流を排気ファンより外部に排気する塗装用ブースにおいて、前記吸込気流通路は、塗装室の前面を構成する壁面と隔離した別の壁面を構成するガイド板の後部に形成し、かつ前面下部の吸い込み口に対して傾斜させ平面状の壁面で囲まれた通路で形成され、該通路が直線的に少なくも1回の通路方向を転換する屈曲部を経て前記吸い込み口に至る通路を形成し、前記噴射ノズルは前記屈曲通路のうち前記吸い込み口から離れた側の傾斜する通路に沿って該通路全域に噴射する位置に配置してなる屈曲風洞を備えた塗装ブース。 【請求項3】 塗装ブース天井部に配置した排気ファンの吸い込み通路直前に、該通路の全面積を遮蔽し、その周囲にのみ迂回通路を形成して遮蔽板21を設けてなる請求項1又は請求項2に記載の塗装ブース。」 (ロ)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 排気ファンによる吸込気流によって塗装室の前面下部の吸い込み口より塗料ミストを吸引し、吸込気流通路中に水洗シャワー用の噴射ノズルを配設してミスト処理を行い、清浄空気流を排気ファンより外部に排気する塗装用ブースにおいて、前記吸込気流通路内に塗装室前面の壁面とは別の壁面で構成され、後部下方に傾斜する通路を形成し、さらに該傾斜する通路に続いて前部に屈曲する通路を経て前記塗装室の前面下部の吸い込み口に至る風洞の流路を形成し、前記噴射ノズルは前記後部下方に傾斜する通路に沿って該通路全域に噴射する位置に配置してなる屈曲風洞を備えた塗装ブース。 【請求項2】 排気ファンによる吸込気流によって塗装室の前面下部の吸い込み口より塗料ミストを吸引し、吸込気流通路中に水洗シャワー用の噴射ノズルを配設してミスト処理を行い、清浄空気流を排気ファンより外部に排気する塗装用ブースにおいて、前記吸込気流通路は、塗装室の前面を構成する壁面と隔離した別の壁面を構成するガイド板の後部に形成し、かつ前面下部の吸い込み口に対して傾斜させ、少なくも1回の屈曲部を経て前記吸い込み口に至る通路を形成し、前記噴射ノズルは前記屈曲通路のうち前記吸い込み口から離れた側の傾斜する通路に沿って該通路全域に噴射する位置に配置してなる屈曲風洞を備えた塗装ブース。 【請求項3】 塗装ブース天井部に配置した排気ファンの吸い込み通路直前に、周囲に迂回通路を形成して遮蔽板21を設けてなる請求項1又は請求項2に記載の塗装ブース。」 2.本件補正の目的 請求項2に関する上記補正は、本件補正前の「前記吸込気流通路は、塗装室の前面を構成する壁面と隔離した別の壁面を構成するガイド板の後部に形成し、かつ前面下部の吸い込み口に対して傾斜させ、少なくも1回の屈曲部を経て前記吸い込み口に至る通路を形成し、」を、「前記吸込気流通路は、塗装室の前面を構成する壁面と隔離した別の壁面を構成するガイド板の後部に形成し、かつ前面下部の吸い込み口に対して傾斜させ平面状の壁面で囲まれた通路で形成され、該通路が直線的に少なくも1回の通路方向を転換する屈曲部を経て前記吸い込み口に至る通路を形成し、」と補正しようとするものであって、本件補正前の請求項2に記載された発明特定事項にさらに限定を加えるものであるから、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.本件補正の適否 上記2.で検討したように、請求項2に関する上記補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、次に、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-267469号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 (a)「本発明は塗料吹付時に発生する塗料ミストの飛散防止の捕集装置に関する。」(第1頁左下欄19、20行) (b)「本発明を図面にもとづいて説明すると、塗装室A内に設置された塗装機1は上部に断面円弧形の風向板2,水流板3,オーバフロー槽4,下部水槽5よりなる第1次捕集装置Bと、前記水流板3の裏側に設けられたノズル6,7、斜向水流板8,9を設けた第2次捕集装置Cと、その上部に設けられる排気フアン(図示せず)よりなるものであつて、」(第1頁右下欄15行?第2頁左上欄2行) (c)「すなわち、水流板3を幕状をなして流下した水によつて大部分のミストを捕集された塗料は、前記水流板3の裏側に開口径Dを広く、奥行きを狭く絞つて流路D′となした所謂V型構造Vを経て、完全にミストを除去するものであつて、流路D′の上、下に噴射口を対向し、互いの噴射口を千鳥状に互い違いに横方向に所定間隔を置いて配列した上、下ノズル6,7とV型構造Vをなす斜向上、下水流板8,9より形成された第2次ミスト捕集装置Cには、前記第1次捕集装置Bを経た塗料は、排気フアンの吸引によつて第2次捕集装置Cへと導かれ、当初、開口径の広いDを緩い速度で上昇しつゝ、狭く絞つた流路D′において速度を増し乍ら上昇する過程において、上、下ノズル6,7により互いに噴射面積をダブつて形成された水の膜により残余の塗料ミストは水膜に強制的に付着、吸収され、斜向水流板8,9の面上を流下し、下部水槽5内へと捕集されることとなるのである。」(第2頁右上欄3行?同頁左下欄1行) 上記記載事項(a)?(c)及び第1図記載事項によると、引用例には次の事項が記載されている。 (イ)上記記載事項(a)?(c)及び第1図記載事項によると、「排気フアンによる吸込気流によって塗装室Aの前面下部の吸い込み口より塗料ミストを吸引し、吸込気流通路中に水洗シャワー用のノズル6,7を配設してミスト処理を行い、清浄空気流を排気フアンより外部に排気する塗装機1」の事項、 (ロ)上記記載事項(b)における「水流板3の裏側に設けられたノズル6,7、斜向水流板8,9」の記載、上記記載事項(c)における「V型構造Vをなす斜向上、下水流板8,9」の記載及び第1図記載事項によると、「吸込気流通路は、塗装室Aの前面を構成する水流板3の壁面と隔離した別の壁面を構成する斜向水流板8の後部に形成し」の事項、 (ハ)上記記載事項(c)における「水流板3の裏側に開口径Dを広く、奥行きを狭く絞つて流路D′となした所謂V型構造Vを経て」及び「V型構造Vをなす斜向上、下水流板8,9」の記載並びに第1図記載事項によると、「吸込気流通路は、V型構造Vをなす平面状の壁面で囲まれた通路で形成され」の事項及び (ニ)上記記載事項(c)における「流路D′の上、下に噴射口を対向し、互いの噴射口を千鳥状に互い違いに横方向に所定間隔を置いて配列した上、下ノズル6,7」及び「上、下ノズル6,7により互いに噴射面積をダブつて形成された水の膜により」の記載並びに第1図記載事項によると、「ノズル6,7は通路全域に噴射する位置に配置してなる」の事項 そうすると、引用例には、 「排気フアンによる吸込気流によって塗装室Aの前面下部の吸い込み口より塗料ミストを吸引し、吸込気流通路中に水洗シャワー用のノズル6、7を配設してミスト処理を行い、清浄空気流を排気フアンより外部に排気する塗装機1において、前記吸込気流通路は、塗装室Aの前面を構成する水流板3の壁面と隔離した別の壁面を構成する斜向水流板8の後部に形成し、かつV型構造Vをなす平面状の壁面で囲まれた通路で形成され、前記ノズル6、7は通路全域に噴射する位置に配置してなる塗装機1。」 の発明(以下、「引用例に記載された発明」という。)が記載されている。 (2)対比 本願補正発明と引用例に記載された発明を対比すると、引用例に記載された発明における「排気フアン」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「排気ファン」に相当し、以下同様に、「塗装室A」は「塗装室」に、「ノズル6、7」は「噴射ノズル」に、「塗装機1」は「塗装用ブース」又は「塗装ブース」に、「斜向水流板8」は「ガイド板」に、それぞれ相当する。 してみると、両者は、 「排気ファンによる吸込気流によって塗装室の前面下部の吸い込み口より塗料ミストを吸引し、吸込気流通路中に水洗シャワー用の噴射ノズルを配設してミスト処理を行い、清浄空気流を排気ファンより外部に排気する塗装用ブースにおいて、前記吸込気流通路は、塗装室の前面を構成する壁面と隔離した別の壁面を構成するガイド板の後部に形成し、かつ平面状の壁面で囲まれた通路で形成され、前記噴射ノズルは通路全域に噴射する位置に配置してなる塗装ブース。」 の点で一致し、次の[相違点]でのみ相違している。 [相違点] 本願補正発明においては、「吸込気流通路」が「前面下部の吸い込み口に対して傾斜させ平面状の壁面で囲まれた通路で形成され、該通路が直線的に少なくも1回の通路方向を転換する屈曲部を経て前記吸い込み口に至る通路を形成し」た「屈曲風洞」とすると共に「噴射ノズルは前記屈曲通路のうち前記吸い込み口から離れた側の傾斜する通路に沿って配置してなる」のに対し、引用例に記載された発明においては、「吸込気流通路」が「V型構造V」をなす通路であって屈曲風洞でなく、したがって、「ノズル6、7」は吸い込み口から離れた側の傾斜する通路に沿って配置してなるものでもない点。 (3)当審の判断 上記[相違点]について検討する。 塗装ブースにおいて、「吸込気流通路」を「前面下部の吸い込み口に対して傾斜させ平面状の壁面で囲まれた通路で形成され、該通路が直線的に少なくも1回の通路方向を転換する屈曲部を経て前記吸い込み口に至る通路を形成し」た「屈曲風洞」とすると共に「噴射ノズル」を「前記屈曲通路のうち前記吸い込み口から離れた側の通路に沿って配置してなる」ことは、周知技術(例えば、特公平7-63661号公報(【図1】【図3】【図4】参照),特公昭56-42970号公報(Fig.5参照),特開平5-245417号公報(【図1】参照),特開平4-227088号公報(【図2】【図3】参照),実願昭63-42699号(実開平1-148723号)のマイクロフィルム(第1図参照)参照。)である。 ここで、音の進行方向を屈曲させることによりその下流域での騒音レベルを低下させることは、種々の技術分野で慣用される技術であり、音源が噴霧ノズルからの噴霧液の発生音や水飛散音である場合に限ってみても、特公平6-51140号公報(第6図従来例参照)や特開平5-146727号公報(段落【0027】、【図2】参照)に示されている。 してみると、上記周知技術の塗装ブースの構造であれば、塗装室側への噴射ノズルの噴射音や噴射水が壁面に衝突する音やその水が流れる音を抑制し得ることは、明らかである。 そうすると、引用例に記載された発明において、塗装室側への噴射ノズルの噴射音や噴射水が壁面に衝突する音やその水が流れる音を抑制することを目的として、上記周知技術を適用し、もって、上記[相違点]に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。 よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明の内容 平成18年2月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、平成17年3月11日に提出された手続補正書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、上記[2]の〔理 由〕の1.(ロ)の請求項2に記載されたとおりである。 2.引用文献 原査定の拒絶理由に引用された引用例の記載事項は、上記第2.の〔理 由〕の3.(1)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記第2.の〔理 由〕の3.で検討した本願補正発明における発明を特定するために必要と認める事項である「前記吸込気流通路は、塗装室の前面を構成する壁面と隔離した別の壁面を構成するガイド板の後部に形成し、かつ前面下部の吸い込み口に対して傾斜させ平面状の壁面で囲まれた通路で形成され、該通路が直線的に少なくも1回の通路方向を転換する屈曲部を経て前記吸い込み口に至る通路を形成し」から、「平面状の壁面で囲まれた通路で形成され、該通路が直線的に」及び「通路方向を転換する」の点を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明を特定するために必要と認める事項を全て含む本願補正発明が、上記第2.の〔理 由〕の3.で検討したとおり、引用文献記載の発明及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-27 |
結審通知日 | 2008-07-08 |
審決日 | 2008-07-22 |
出願番号 | 特願2001-383132(P2001-383132) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B05B)
P 1 8・ 121- Z (B05B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 寺川 ゆりか |
特許庁審判長 |
深澤 幹朗 |
特許庁審判官 |
柳田 利夫 森藤 淳志 |
発明の名称 | 屈曲風洞を備えた塗装ブース |