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審決分類 審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する C08G
管理番号 1184676
審判番号 訂正2008-390064  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2008-06-05 
確定日 2008-09-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3437957号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3437957号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第3437957号の明細書を、審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、同請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、特許請求の範囲の請求項23を削除することからなるものである。

2.当審の判断
2-1.訂正の目的について
本件訂正は、請求項23を削除するものであることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
2-2.新規事項、特許請求の範囲の拡大又は変更の有無について
本件訂正は、2-1.で述べたとおりのものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
2-3.独立特許要件について
本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする理由を発見しない。

3.むすび
したがって、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同条第3項、第4項及び第5項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
チオール官能基を有するポリオルガノシロキサン(POS)の製造方法、この方法によって得ることができるPOS及びその特にゴム材料の分野における使用
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】アルコキシル極性官能基及びチオール基SHを含有する官能基を有する、下記の平均式(I)の線状ランダム、序列又はブロックコポリマーである多官能化ポリオルガノシロキサン(POS)の製造方法であって、
1種以上の遊離基開始剤化合物を基とする触媒の存在下で周囲温度(23℃)?150℃の範囲内の温度において下記の式(II)の線状ランダム、序列又はブロックコポリマーに対して硫化水素を反応させることから成ることを特徴とする、前記製造方法:
【化1】

[ここで、記号Rは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1?6個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基又はフェニル基を表わし、
記号Xは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1?15個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルコキシル基を表わし、
記号Yは同一であっても異なっていてもよく、それぞれエチレン系不飽和基を含み且つSi-C結合によって珪素原子に結合した鎖R’
{ここで、鎖R’は2?30個の炭素原子を有し且つ随意に1個以上の酸素化ヘテロ原子を有し、
R’のエチレン系不飽和基は
・次式:
【化2】

(ここで、記号R^(1)、R^(2)及びR^(3)は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は1?3個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基を表わす)
のタイプの鎖末端として存在するもの
又は
・次式:
【化3】

(ここで、記号R^(4)及びR^(5)は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は1?3個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基を表わす)
のタイプの中間位置に存在するもの(この中間位置のものは、5?12員の1個以上の環から成る鎖R’の環状又は多環状部分上にあることもできる)
である}
を表わし、
記号Zは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ結合したSH基を含有し且つSi-C結合によって珪素原子に結合した鎖R”
{ここで、鎖R”は、前記の鎖Rからそのエチレン系不飽和基の二重結合によって互いに結合した炭素原子の一方又は他方上にそれぞれ水素原子又はSH基を付加させることによって得られたものであり、
SH基は
・次式:
【化4】

(ここで、記号R^(1)、R^(2)及びR^(3)は前記の通りである)
のタイプの鎖末端として存在するもの
又は
・次式:
【化5】

(ここで、記号R^(4)及びR^(5)は前記の通りである)
のタイプの中間位置に存在するもの(この中間位置のものは、5?12員の1個以上の環から成る鎖の環状又は多環状部分上にあることもできる)
である}
を表わし、
記号Wは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ連鎖-R”-(S)_(i)-R”-Si≡
(ここで、iは1以上の整数であり、
右の記号Si≡は別のポリオルガノシロキサン鎖又は同じポリオルガノシロキサン鎖に属する珪素原子を表わす)
を表わし、
記号m、n、p及びqはそれぞれ整数又は分数であり、
m+n+p+qは2?300の範囲内であり、
mは1?150の範囲内であり、
n+p+qは1?150の範囲内であり、
nは0?85の範囲内であり、
pは1?100の範囲内であり、
qは0?25の範囲内であり、
記号A及びBは末端基を表わし、
Aは次式:
【化6】

の単独の基(i)、(2i)若しくは(3i)又は基(i)と基(2i)及び(若しくは)(3i)及び(若しくは)(4i)との混合物であり、
Bは次式:
【化7】

の単独の基(5i)、(6i)若しくは(7i)又は基(5i)と基(6i)及び(若しくは)(7i)及び(若しくは)(8i)との混合物であり、
ここで、記号R及びXは前記の通りである];
【化8】

(ここで、記号A、B、R、X及びYは式(I)について前記した通りであり、
記号a及びbはそれぞれ整数又は分数であり、
aは式(I)について前記したmと同じ定義を満たし、
bはn+p+qであり、n、p及びq並びにそれらの合計は式(I)について前記した定義を満たすものであり、
a+bは式(I)について前記したm+n+p+qと同じ定義を満たす)。
【請求項2】式(II)において
記号Rがメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル又はn-ブチル基を表わし、
記号Xが1?6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルコキシル基を表わし、
記号A及びBがそれぞれ単独の基(i)、(2i)若しくは(3i)又は基(i)と基(2i)及び(若しくは)(3i)及び(若しくは)(4i)とから成る混合物並びに単独の基(5i)、(6i)若しくは(7i)又は基(5i)と基(6i)及び(若しくは)(7i)及び(若しくは)(8i)との混合物である末端基を表わし、
ここで、記号R及びXは前の2つの段落に規定された通りであり、
これら2つの末端基のモル組成は、
・全末端基の0?100モル%が式(i)及び(又は)(5i)の基によって提供される(R)_(3)Si単位から成り、
・全末端基の0?100モル%が式(2i)及び(又は)(6i)の基によって提供される(R)_(2)XSi単位から成り、
・全末端基の0?100モル%が式(3i)及び(又は)(7i)の基によって提供されるR(X)_(2)Si単位から成り、且つ
・全末端基の0?20モル%が式(4i)及び(又は)(8i)の基によって提供される(X)_(3)Si単位から成り、
・各場合における基の合計が100モル%である
ものであり、
記号Yが以下のもの:
【化9】

【化10】

{ここで、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はメチル基を表わし、
R^(6)は二価基-(CHR^(8))_(j)-
(ここで、R^(8)は水素原子又はメチル基であり、
jは1?6の範囲の整数であり、
各CHR^(8)単位は同一であっても異なっていてもよい)
を表わし、
R^(7)は水素原子又はメチル基を表わす}
から選択され、
a及びbは、a+bが10?100の範囲内であって、aが1?50の範囲の数であり、bが1?50の範囲の数である
POSに対して硫化水素を反応させることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】H_(2)Sと式(II)のPOSとの間の反応においてアゾ-有機化合物及び有機ペルオキシドの類に属する少なくとも1種の遊離基開始剤化合物を触媒として用いることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】H_(2)Sと式(II)のPOSとの間の反応温度を50℃?120℃の範囲とすることを特徴とする、請求項1?3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】H_(2)Sと式(II)のPOSとの間の反応を密閉反応器中で5×10^(5)?20×10^(5)Paの範囲内の圧力において実施することを特徴とする、請求項1?4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】H_(2)Sと式(II)のPOSとの間の反応をPOS(II)及び触媒に対して共通の溶媒又は溶媒混合物を添加することによって均質媒体中で実施することを特徴とする、請求項1?5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】クロルベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン及びデカンより成る群から選択される非プロトン系非極性溶媒を用いることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】請求項1?7のいずれかに記載の方法によって得られる、アルコキシル極性官能基及びチオール基SHを含有する官能基を有する多官能化ポリオルガノシロキサンであって、下記の平均式(I)の線状ランダム、序列又はブロックコポリマーであることを特徴とする、前記多官能化ポリオルガノシロキサン:
【化11】

[ここで、記号Rは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1?6個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基又はフェニル基を表わし、
記号Xは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1?15個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルコキシル基を表わし、
記号Yは同一であっても異なっていてもよく、それぞれエチレン系不飽和基を含み且つSi-C結合によって珪素原子に結合した鎖R’
{ここで、鎖R’は2?30個の炭素原子を有し且つ随意に1個以上の酸素化ヘテロ原子を有し、
R’のエチレン系不飽和基は
・次式:
【化12】

(ここで、記号R^(1)、R^(2)及びR^(3)は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は1?3個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基を表わす)
のタイプの鎖末端として存在するもの
又は
・次式:
【化13】

(ここで、記号R^(4)及びR^(5)は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は1?3個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基を表わす)
のタイプの中間位置に存在するもの(この中間位置のものは、5?12員の1個以上の環から成る鎖R’の環状又は多環状部分上にあることもできる)
である}
を表わし、
記号Zは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ結合したSH基を含有し且つSi-C結合によって珪素原子に結合した鎖R”
{ここで、鎖R”は、前記の鎖Rからそのエチレン系不飽和基の二重結合によって互いに結合した炭素原子の一方又は他方上にそれぞれ水素原子又はSH基を付加させることによって得られたものであり、
SH基は
・次式:
【化14】

(ここで、記号R^(1)、R^(2)及びR^(3)は前記の通りである)
のタイプの鎖末端として存在するもの
又は
・次式:
【化15】

(ここで、記号R^(4)及びR^(5)は前記の通りである)
のタイプの中間位置に存在するもの(この中間位置のものは、5?12員の1個以上の環から成る鎖の環状又は多環状部分上にあることもできる)
である}
を表わし、
記号Wは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ連鎖-R”-(S)_(i)-R”-Si≡
(ここで、iは1以上の整数であり、
右の記号Si≡は別のポリオルガノシロキサン鎖又は同じポリオルガノシロキサン鎖に属する珪素原子を表わす)
を表わし、
記号m、n、p及びqはそれぞれ整数又は分数であり、
m+n+p+qは2?300の範囲内であり、
mは1?150の範囲内であり、
n+p+qは1?150の範囲内であり、
nは0?85の範囲内であり、
pは1?100の範囲内であり、
qは0?25の範囲内であり、
さらに、記号nが0である場合には記号qが0以外の数を表わし、
記号nが0以外の数を表わす場合には記号qが0又は0以外の数を表わし、
記号A及びBは末端基を表わし、
Aは次式:
【化16】

の単独の基(i)、(2i)若しくは(3i)又は基(i)と基(2i)及び(若しくは)(3i)及び(若しくは)(4i)との混合物であり、
Bは次式:
【化17】

の単独の基(5i)、(6i)若しくは(7i)又は基(5i)と基(6i)及び(若しくは)(7i)及び(若しくは)(8i)との混合物であり、
ここで、記号R及びXは前記の通りである]。
【請求項9】シリコーン組成物中に有効量で使用される、請求項1?7のいずれかに記載の方法によって得られた式(I)の少なくとも1種の多官能化POS及び(又は)請求項8記載の少なくとも1種の多官能化POSから成る粘着防止調整剤。
【請求項10】充填シリコーン組成物中に白色充填剤を使用するのを助成するため及び得られるシリコーン製品の補強を可能にするために有効量で使用される、請求項1?7のいずれかに記載の方法によって得られた式(I)の少なくとも1種の多官能化POS及び(又は)請求項8記載の少なくとも1種の多官能化POSから成る白色充填剤コーティング剤。
【請求項11】補強用充填剤として白色充填剤を含有する1種以上の天然又は合成エラストマーのエラストマー製物品製造用組成物中に有効量で使用される、請求項1?7のいずれかに記載の方法によって得られた式(I)の少なくとも1種の多官能化POS及び(又は)請求項8記載の少なくとも1種の多官能化POSから成る白色充填剤-エラストマーのカップリング剤。
【請求項12】選択されるPOSが、請求項2記載の方法によって得られたものから選択される式(I)において記号Zが同一であっても異なっていてもよく、それぞれ第2級性状のSH基が結合された鎖R”を表わすPOSであることを特徴とする、請求項11記載のカップリング剤。
【請求項13】請求項1?7のいずれかに記載の方法によって得られた式(I)の少なくとも1種の多官能化POS及び(又は)請求項8記載の少なくとも1種の多官能化POSを有効量で使用することによって得られる、補強用白色充填剤を含有する1種以上のエラストマーの組成物。
【請求項14】選択されるPOSが、請求項2記載の方法によって得られたものから選択される式(I)において記号Zが同一であっても異なっていてもよく、それぞれ第2級性状のSH基が結合された鎖R”を表わすPOSであることを特徴とする、請求項13記載の組成物。
【請求項15】・エラストマー100重量部、
・エラストマー100重量部当たりに100重量部の補強用白色充填剤
及び
・補強用白色充填剤100重量部当たりに15重量部のPOS
を含有することを特徴とする、請求項13又は14記載の組成物。
【請求項16】白色充填剤がシリカ、アルミナ又はこれら2種の混合物から成ることを特徴とする、請求項13?15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】シリカが慣用の又は高分散性の、450m^(2)/g以下のBET比表面積を有する沈降シリカであり、
アルミナが高分散性の、30?400m^(2)/gの範囲のBET比表面積及び高いAl-OH表面反応性官能基含有率を有するアルミナである
ことを特徴とする、請求項16記載の組成物。
【請求項18】用いるエラストマーが、
(1)4?22個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られたホモポリマー;
(2)2種以上前記共役ジエン同士の共重合又は1種以上の前記共役ジエンと次の群:
・8?20個の炭素原子を有する芳香族ビニルモノマー、
・3?12個の炭素原子を有するビニルニトリルモノマー
及び
・アクリル酸若しくはメタクリル酸と1?12個の炭素原子を有するアルカノールとから誘導されたアクリルエステルモノマー
から選択される1種以上のエチレン系不飽和モノマーとの共重合によって得られたコポリマー;
(3)エチレンと3?6個の炭素原子を有するα-オレフィンとの共重合によって得られたコポリマー;
(4)エチレン及び3?6個の炭素原子を有するα-オレフィンと6?12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとの共重合によって得られた三元コポリマー;
(5)天然ゴム;
(6)イソブテンとイソプレンとの共重合によって得られたコポリマー(ブチルゴム)及びそのハロゲン化体;
(7)前記の(1)?(6)の複数のエラストマー同士の混合物;
(8)クロルスルホン化ポリエチレン;
(9)弗素化炭化水素;
並びに
(10)エピクロルヒドリン-エチレンオキシド又はポリエピクロルヒドリンタイプのエラストマー:
から選択されることを特徴とする、請求項13?17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン-ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)(水素化された形又は水素化されていない形)、ポリ(スチレン-ブタジエン-イソプレン)、(エチレン-プロピレン-非共役ジエンモノマー)ターポリマー、天然ゴム及びブチルゴムから選択される1種以上のエラストマーを使用することを特徴とする、請求項18記載の組成物。
【請求項20】エラストマー及びゴム組成物の分野において通常用いられるその他の補助用成分及び添加剤をさらに含有することを特徴とする、請求項13?19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】以下の群:
(1)次式のα,ω-(ジヒドロキシ)ポリジオルガノシロキサンオイル:
【化18】

{ここで、rはこのオイルに25℃において5?1000mPa・sの動粘度を与えるのに充分な数であり、
有機基R^(9)はメチル、エチル、プロピル及び(又は)フェニル基である};
(2)次式のポリアルキレングリコール:
【化19】

(ここで、sは式(IV)の化合物に100?30000の範囲の数平均分子量を与えるのに充分な数であり、
R^(10)は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1?4個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキレン基を表わす);
(3)次式の加水分解性シラン:
【化20】

(ここで、記号R^(11)はそれぞれC_(1)?C_(8)直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基、C_(5)?C_(8)シクロアルキル基、C_(6)?C_(12)アリール基又はC_(6)?C_(12)のアリール部分とC_(1)?C_(4)のアルキル部分とを有するアルアルキル基を表わし、
記号Eは加水分解性基であり、それぞれC_(1)?C_(10)アルコキシ基、C_(6)?C_(12)アリールオキシ基、C_(1)?C_(13)アシルオキシ基又はC_(1)?C_(8)ケチミノキシ基を表わす);
(4)請求項1に式(II)の説明において与えた定義を満たす式(II)のPOS又は次式:
【化21】

(ここで、記号A、B、R、X、a及びbは、請求項1に式(II)の説明において与えた定義を満たすものであり、
記号Y’は同一であっても異なっていてもよく、それぞれC_(7)?C_(30)直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を表わす)
の類似のPOSのいずれかから成るコーティング用ポリオルガノシロキサン;
並びに
(5)前記の(1)?(4)の少なくとも2種の混合物:
から選択される加工助剤をさらに含有することを特徴とする、請求項20記載の組成物。
【請求項22】請求項13?21のいずれかに記載の組成物から成る本体を有することを特徴とする、エラストマー製物品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の第一の主題は、シリコーン、特に線状のポリオルガノシロキサン(以下、ポリオルガノシロキサンをPOSと略記する)の官能化にある。
本発明の範疇において特に興味深い官能化POSは、アルコキシル極性官能基及びそれぞれがチオール基SHを含有する官能基を有する多官能化線状ポリオルガノシロキサンである。
【0002】
これらの官能基は、POSに、それらを例えばシリコーン組成物中の粘着防止調整剤として又は充填シリコーン組成物中に充填剤を使用するのを助成するため及び得られるシリコーン製品の補強を可能にするための白色充填剤(特に珪質物質)のコーティング剤として用いることができるようにする特定の性質を付与する。これらの多官能化POSはまた、白色充填剤(特に珪質物質)を補強用充填剤として含むゴム組成物中に白色充填剤-エラストマーのカップリング剤(即ち、白色充填剤とエラストマーとの結合性を改善するための添加剤)として用いることもできる。
【0003】
POS多官能化の原理は、本出願人の名における国際公開第WO96/16125号パンフレットに記載されている。この文献には、例えば、≡Si-(O-アルキル)官能性単位及び≡Si-(硫黄含有基(特にSH基)を有する鎖)官能性単位を含むPOSの製造が開示されている。それによれば、好適なポリヒドロゲノオルガノシロキサン中に-(O-アルキル)官能基源であるアルコール(-(O-アルキル)官能基が誘導される源となるアルコール)を用いた脱水素縮合反応(この工程においては、出発≡SiH基の一画分がアルコキシル官能基で置換される)によって-(O-アルキル)官能基が導入され、次いで残りの≡SiH基によって前記硫黄含有基を有するオレフィンのヒドロシリル化を実施することによって-(硫黄含有基(特にSH基)を有する鎖)官能性単位が導入される。
【0004】
この技術分野において研究を続け、本出願人はここに、触媒の存在下でSH基をもたらす特定の反応性基を含有する多官能化POS前駆体に対して硫化水素を反応させることによってSH基を含有する官能基を提供することができるということを見出した。これが本発明の第一の主題を構成するものである。この反応性基は、鎖の末端又は珪素原子に結合した鎖中に存在するエチレン系不飽和基である。
【0005】
先行技術には、エチレン系不飽和有機基をH_(2)Sで官能化することが記載された多くの文献がある。しかしながら、本出願人が知る限り、好適な官能化POSを原料として用いた前記の反応は決して話題に上っておらず、従って本発明の新規性となっている。
【0006】
本発明は、第一の主題において、アルコキシル極性官能基及びチオール基SHを含有する官能基を有する、下記の平均式(I)の線状ランダム、序列又はブロックコポリマーである多官能化ポリオルガノシロキサン(POS)の製造方法であって、
1種以上の遊離基開始剤化合物を基とする触媒の存在下で周囲温度(23℃)?150℃の範囲内の温度において下記の式(II)の線状ランダム、序列又はブロックコポリマーに対して硫化水素を反応させることから成ることを特徴とする、前記製造方法に関する:
【化22】

[ここで、記号Rは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1?6個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基又はフェニル基を表わし、
記号Xは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1?15個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルコキシル基を表わし、
記号Yは同一であっても異なっていてもよく、それぞれエチレン系不飽和基を含み且つSi-C結合によって珪素原子に結合した鎖R’
{ここで、鎖R’は2?30個の炭素原子を有し且つ随意に1個以上の酸素化ヘテロ原子を有し、
R’のエチレン系不飽和基は
・次式:
【化23】

(ここで、記号R^(1)、R^(2)及びR^(3)は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は1?3個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基を表わす)
のタイプの鎖末端として存在するもの
又は
・次式:
【化24】

(ここで、記号R^(4)及びR^(5)は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は1?3個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基を表わす)
のタイプの中間位置に存在するもの(この中間位置のものは、5?12員の1個以上の環から成る鎖R’の環状又は多環状部分上にあることもできる)
である}
を表わし、
記号Zは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ結合したSH基を含有し且つSi-C結合によって珪素原子に結合した鎖R”
{ここで、鎖R”は、前記の鎖Rからそのエチレン系不飽和基の二重結合によって互いに結合した炭素原子の一方又は他方上にそれぞれ水素原子又はSH基を付加させることによって得られたものであり、
SH基は
・次式:
【化25】

(ここで、記号R^(1)、R^(2)及びR^(3)は前記の通りである)
のタイプの鎖末端として存在するもの
又は
・次式:
【化26】

(ここで、記号R^(4)及びR^(5)は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ前記の通りである)
のタイプの中間位置に存在するもの(この中間位置のものは、5?12員の1個以上の環から成る鎖の環状又は多環状部分上にあることもできる)
である}
を表わし、
記号Wは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ連鎖-R”-(S)_(i)-R”-Si≡
(ここで、iは1以上の整数であり、1又は2であるのが好ましく、
右の記号Si≡は別のポリオルガノシロキサン鎖又は同じポリオルガノシロキサン鎖に属する珪素原子を表わす)
を表わし、
記号m、n、p及びqはそれぞれ整数又は分数であり、
m+n+p+qは2?300の範囲内であり、10?100の範囲内であるのが好ましく、10?70の範囲内であるのがより一層好ましく、
mは1?150の範囲内であり、1?50の範囲内であるのが好ましく、1?40の範囲内であるのがより一層好ましく、
n+p+qは1?150の範囲内であり、1?50の範囲内であるのが好ましく、1?30の範囲内であるのがより一層好ましく、
nは0?85の範囲内であり、0?30の範囲内であるのが好ましく、0?20の範囲内であるのがより一層好ましく、
pは1?100の範囲内であり、1?40の範囲内であるのが好ましく、1?25の範囲内であるのがより一層好ましく、
qは0?25の範囲内であり、0?5の範囲内であるのが好ましく、0?3の範囲内であるのがより一層好ましく、
記号A及びBは末端基を表わし、
Aは次式:
【化27】

の単独の基(i)、(2i)若しくは(3i)又は基(i)と基(2i)及び(若しくは)(3i)及び(若しくは)(4i)との混合物であり、
Bは次式:
【化28】

の単独の基(5i)、(6i)若しくは(7i)又は基(5i)と基(6i)及び(若しくは)(7i)及び(若しくは)(8i)との混合物であり、
ここで、記号R及びXは前記の通りである];
【化29】

(ここで、記号A、B、R、X及びYは式(I)について前記した通りであり、
記号a及びbはそれぞれ整数又は分数であり、次のように定義することができる:
aは式(I)について前記したmと同じ定義を満たし、
bはn+p+qであり、n、p及びq並びにそれらの合計は式(I)について前記した定義を満たすものであり、
a+bは式(I)について前記したm+n+p+qと同じ定義を満たす)。
【0007】
式(I)及び式(II)の用語「線状コポリマー」とは、鎖中にRXSiO_(2/2)、RYSiO_(2/2)、RZSiO_(2/2)及びRWSiO_(2/2)単位並びに例えば式RSiO_(3/2)(T)及び(又は)SiO_(4/2)(Q)のような末端基A及びBを構成する単位以外の単位をせいぜい3%しか含有しないPOSを意味するものとする。この%値は珪素原子100個当たりのT及び(又は)Q単位の数を表わす。
【0008】
式(I)及び式(II)中の記号Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル又はn-ブチル基を表わすのが好ましく、基Rの少なくとも80モル%がメチルであるのがより一層好ましい。
【0009】
式(I)及び式(II)中の記号Xは、1?6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルコキシル基を表わすのが好ましく、メトキシル、エトキシル及び(イソ)プロポキシル基を用いるのがより一層好ましい。
【0010】
式(I)及び式(II)中の記号A及びBは、それぞれ単独の基(i)、(2i)若しくは(3i)又は基(i)と基(2i)及び(若しくは)(3i)及び(若しくは)(4i)とから成る混合物並びに単独の基(5i)、(6i)若しくは(7i)又は基(5i)と基(6i)及び(若しくは)(7i)及び(若しくは)(8i)との混合物を表わす(ここで、記号R及びXは前記の好ましいタイプのものに相当する)のが好ましい。
【0011】
式(I)及び式(II)中の記号A及びBは、それぞれ基(i)と基(2i)及び(若しくは)(3i)及び(若しくは)(4i)とから成る混合物並びに基(5i)と基(6i)及び(若しくは)(7i)及び(若しくは)(8i)との混合物を表わす(ここで、記号R及びXは前記の好ましいタイプのもの又はより一層好ましいタイプのものに相当する)のがより一層好ましい。
【0012】
式(I)及び式(II)中の記号Yは、以下のもの:
【化30】

【化31】

{ここで、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はメチル基を表わし、
R^(6)は二価基-(CHR^(8))_(j)-
(ここで、R^(8)は水素原子又はメチル基であり、
jは1?6の範囲の整数であり、
各CHR^(8)単位は同一であっても異なっていてもよい)
を表わし、
R^(7)は水素原子又はメチル基を表わす}
から選択されるのが好ましい。
【0013】
記号Yとしては、次のもの:
【化32】

から選択されるものを用いるのがより一層好ましい。
【0014】
式(I)のPOS中の例えばより一層好ましく用いられる記号Yから誘導される記号Zは、次のもの:
【化33】

から選択されるということがわかるだろう。
【0015】
式(I)及び式(II)のそれぞれのPOSコポリマーのすべての末端基A及びBは、式(i)?(8i)の基を広い範囲内で変化しうるモル組成で有する。
【0016】
このモル組成は、
・全末端基の0?100モル%が式(i)及び(又は)(5i)の基によって提供される(R)_(3)Si単位から成り、
・全末端基の0?100モル%が式(2i)及び(又は)(6i)の基によって提供される(R)_(2)XSi単位から成り、
・全末端基の0?100モル%が式(3i)及び(又は)(7i)の基によって提供されるR(X)_(2)Si単位から成り、且つ
・全末端基の0?20モル%が式(4i)及び(又は)(8i)の基によって提供される(X)_(3)Si単位から成り、
・各場合における基の合計が100モル%である
のが典型的であり、これが好ましい具体例である。
【0017】
記号A及びBがそれぞれ基(i)と基(2i)及び(若しくは)(3i)及び(若しくは)(4i)とから成る混合物並びに基(5i)と基(6i)及び(若しくは)(7i)及び(若しくは)(8i)との混合物を表わす場合、この好ましいモル組成は、次の形を取ることができる:
・全末端基の20?100モル%未満(例えば20?80モル%)が式(i)及び(又は)(5i)の基によって提供される(R)_(3)Si単位から成り、
・全末端基の0?80モル%が式(2i)及び(又は)(6i)の基によって提供される(R)_(2)XSi単位から成り、
・全末端基の0?80モル%が式(3i)及び(又は)(7i)の基によって提供されるR(X)_(2)Si単位から成り、且つ
・全末端基の0?20モル%が式(4i)及び(又は)(8i)の基によって提供される(X)_(3)Si単位から成り、
・各場合における基の合計が100モル%である。
【0018】
このモル組成は、
・全末端基の20?80モル%が式(i)及び(又は)(5i)の基によって提供される(R)_(3)Si単位から成り、
・全末端基の10?40モル%が式(2i)及び(又は)(6i)の基によって提供される(R)_(2)XSi単位から成り、
・全末端基の10?40モル%が式(3i)及び(又は)(7i)の基によって提供されるR(X)_(2)Si単位から成り、且つ
・全末端基の0?10モル%が式(4i)及び(又は)(8i)の基によって提供される(X)_(3)Si単位から成り、
・各場合における基の合計が100モル%である
のがより典型的であり、これがより一層好ましい具体例である。
【0019】
式(II)の出発POSとしては、記号A、B、R、X及びY並びに末端基のモル組成が同時に前記の好ましい定義を有し、a+bが10?100の範囲内であり、aが1?50の範囲の数であり且つbが1?50の範囲の数であるものを用いるのが好ましい。
【0020】
式(II)の出発POSとしては、記号A、B、R、X及びY並びに末端基のモル組成が同時に前記のより一層好ましい定義を有し、a+bが10?70の範囲内であり、aが1?40の範囲の数であり且つbが1?30の範囲の数であるものを用いるのがより一層好ましい。
【0021】
式(II)のPOSは、国際公開第WO96/16125号パンフレットに記載された方法を用いて得ることができる物質である。必要ならばこの文献を参照されたい。この方法は、
・水素官能基を有するポリ(ヒドロゲノオルガノ)シロキサンとアルコキシル官能基X源である少なくとも1種のアルコールXH(このアルコールは、反応成分として及び反応溶媒として用いられる)とを、好適な触媒の存在下で、最初に利用できる画分の≡SiH基を用いた脱水素縮合メカニズムに従って、反応させ、
・こうして脱水素縮合によって得られたPOSを、不飽和官能基Y源である少なくとも2個のエチレン系不飽和基を含有する少なくとも1種の化合物に、残りの≡SiH基を用いて実施されるヒドロシリル化メカニズムに従って、付加させることから本質的に成り、適用される操作方法は、バッチ式態様で実施するのが有利である。
【0022】
式(II)の出発POSは、本出願人によって1996年8月6日に出願されたフランス国特許出願第96/10086号明細書(フランス国特許第2752239号明細書又は国際公開第WO98/05700号パンフレット)に記載された(半)連続式の工業的方法を用いて得ることもできる物質である。必要ならばこれらの文献を参照されたい。
【0023】
この方法に従えば、
1.脱水素縮合反応器Aに、少なくとも鎖中にRHSiO_(2/2)単位(ここで、記号Rは前記の通りである)を有するポリ(ヒドロゲノオルガノ)シロキサンから成る前駆体POS(以下、「SiH含有POS」と言う)、アルコキシル官能基X源である、反応成分として及び反応溶媒としての働きをする式XHのアルコール並びに好適な白金を基とする触媒を連続的に供給し、大気圧又はそれより高い圧力で、反応混合物の還流温度において、最初に利用できる画分の≡SiHを用いたメカニズムに従って脱水素縮合反応を実施し、
2.生成したガスを連続的に排出して回収し、このガスが含有する水素を取り除き、アルコールXHを凝縮によって再循環し、
3.脱水素縮合によって得られたPOS(以下、「SiX及びSiH含有POS」と言う)を即座にヒドロシリル化反応器Bに移し、残りの≡SiH基を用いて実施されるヒドロシリル化メカニズムに従って、不飽和官能基Y源である少なくとも2個のエチレン系不飽和基を含有する少なくとも1種の化合物に付加させて、最後にSiX官能基及びSiY官能基を含有する式(II)のPOSを回収する。
【0024】
より特定的には、この(半)連続式方法は、以下に及び添付した図面に記載された装置を用いて実施される。
【0025】
図示した装置は、連続式脱水素縮合反応器A及びバッチ式ヒドロシリル化反応器Bを含む。
【0026】
反応器Aは、一般的な中空円筒形カラムの形の容器1から本質的に成る。このカラムは、少なくとも1つ(この場合には1つ)の下方反応チャンバー2と、迅速ガス排出及び回収手段を構成し且つ水素分離手段を含有する上方チャンバー3とに分けられている。
【0027】
下方チャンバー2には少なくとも1つ(この場合には1つ)のトレー40が設けられ、このトレー40は主要区画5の底部を形成し、これはSiH含有POSの脱水素縮合の少なくとも一部のための座としての働きをすることが意図される。この図示した具体例においては、Aの下方チャンバー2は多段タイプのものであり、主要区画5に対応するものに加えて、その下方に位置する少なくとも1つ、好ましくは1?3つ(この場合には3つ)の別の段を含む。
【0028】
それぞれの下方段は、少なくとも1つ(この場合には1つ)のトレー41、42、43がその底部を形成し、この底部とすぐ上の段の底部とが区画6、7及び8(それぞれトレー41、42、43について)を画定する。
【0029】
これらのトレー40?43は実際、区画5?8の範囲を定める横断仕切であり、トレー43はさらにカラム1の底部と共に底部区画9を画定する。この底部区画9は、SiX及びSiH含有POSを含有する液状反応混合物を採集するための容器として用いられ、少なくとも1つの輸送管10によって反応器Bに連結される。
【0030】
それぞれのトレー40、41、42、43は、反応液体の液位(液面高さ)を調節することを可能にする少なくとも1つ(この場合には1つ)のオーバーフロー装置(13、13’)を含む。参照番号13はトレー40(主要区画5)のオーバーフロー装置を表わす。参照番号13’はトレー41、42、43(下方区画6、7及び8)のオーバーフロー装置を表わす。
【0031】
主要区画5には、反応成分供給管11及び12が通される。この主要区画5に備え付けられたオーバーフロー装置13が、区画5中の液状反応混合物についての所定の液位を決定する。このオーバーフロー装置13は、区画5を下方チャンバー2の下方の輸送管10がある位置と連絡させる。この例の場合、下方チャンバー2のこの下方の位置は、3つの下方区画6、7、8によって主要区画5から隔てられた底部区画9に相当する。さらに、主要区画5はその上方部分によって上方チャンバー3と連結される。
【0032】
主要区画5への液状反応混合物の供給は、供給管11及び12を介して連続的に実施することができる。これらの管は、SiH含有POS及び白金触媒との混合物(溶液)としてのアルコール反応成分HXを連続的に搬送する。これらの反応成分はトレー40上に流される。このトレー40を貫通する形で、円筒管にオリフィス(開口部)14を設けて成るオーバーフロー装置13が設けられる。前記オリフィスを通して過剰分の液状反応混合物を排出して下方区画6中に搬送することができる。このオーバーフロー管13は、反応器Aの容器1に対して軸方向に向きを定められ、区画5を上方チャンバー3と連絡させるために上方に伸長されているのが好ましい。このようにするために、管13は分離用仕切15を通って伸長される。仕切15の上の上方チャンバー3中に入った管13の上方部分には、開口部16が設けられる。この管13は、主要区画5中で生成したガスが上方チャンバー3中に迅速に排出されることを可能にする。
【0033】
この管13には、オリフィス16の代わりに少なくとも1つの逆流防止弁を随意に具備させることもできる。区画5から上方チャンバー3にガスを搬送するために、1つ又は2つ以上の管13を設けることができる。
【0034】
トレー41、42及び43に具備させるその他のオーバーフロー装置13’もまた円筒管から成るが、これら円筒管はそれらの軸が一直線に配置されないようにする。各管13’の底部41、42、43の上に突き出た部分の高さが、反応液体が下方の段に流入する反応液体オーバーフロー液位を決定する。従って、各下方区画6、7、8並びに底部区画9は、すぐ上の段のオーバーフロー13、13’から液状反応混合物を供給されることが予定される。最下方段8の底部はそのオーバーフロー13’によって反応器Aの底部区画9と連絡されて、SiX及びSiH含有POSが採集されるのを可能にする。各区画中における液状反応混合物の滞留時間は、所望ならば、各トレー40、41、42、43の取り出し液位を変えることによって調節することができる。
【0035】
各区画5、6、7、8の底部には、排液管17が連結される。これらの管17は弁(図中に記号によって示したが参照番号は付与されていない)を含む。
【0036】
上方チャンバー3は、これと下方チャンバー2とを仕切る仕切15と、反応器Aのカラム1の頂部とによって軸方向の範囲が定められる。この上方チャンバー3は、操作の間に下方チャンバー2中で生じるガスを迅速に排出して回収するための手段の一部を構成するということに留意されたい。このガスは、管13のオリフィス14、スロット及び開口部16を順次通過する。
【0037】
用いられる装置の1つの特徴に従えば、この上方チャンバー3は、脱水素縮合の間に生成するガスのその他の成分から水素を分離するための手段18を含む。実際的にはこれらのその他の成分とは、揮発性化合物の蒸気、特に用いたアルコールの蒸気である。従って、手段18は、上方チャンバー3中に渦巻状の形で示した少なくとも1つ(この場合には1つ)の凝縮器に図中に示した矢印fで示した方向に流される冷媒が供給されたものから成る。
【0038】
この図に、揮発性物質の蒸気から分離された水素を排出するための管19も示す。この管19は、カラム1の上部に連結される。さらに、この管19の上又は管19に連結された部分には、例えば出発SiH含有POSのSiH単位の置換度を調節することができるようにするためにこの置換度を連続的に測定するための手段を設けることもできる。かかる手段は、少なくとも1つの水素カウンターから本質的に成るのが好ましく、この水素カウンターはさらに演算装置に連結されているのが有利である。かかる手段(これは参照番号も与えられておらず図示されてもいない)は、置換度(転化度とも称される)を連続的に制御・調整するための装置に連結することができる。この制御装置は、例えば、各オーバーフロー13、13’の溢れ出し高さを変えることによって各段における供給速度及び滞留時間に影響を及ぼすことによって調整をもたらすことができるものである。
【0039】
凝縮器18によって作られた凝縮液は、上方チャンバー3の仕切15から成る底部において回収される。この凝縮液は、チャンバー3の底部から、貯蔵タンク及び(又は)この凝縮液(これは本質的にアルコールから成る)を脱水素縮合反応に再循環するための循環路に連結された管20によって、取り出すことができる。このような凝縮液を再循環する態様においては、回収されたアルコールが主要区画5に供給されるようにするために、取出し管20を主要区画5に連結させる。この態様は、ここに記載された方法を実施するための好ましい態様及びここに記載された装置の好ましい具体例に相当する。
【0040】
別の態様に従えば、底部(又は仕切)15は省略される。これらの条件下においては、回収されたアルコール凝縮液は主要区画5中のトレー40上に直接採集される。
【0041】
このような多段連続式反応器Aは、交換用の表面積を大きくすることができ、それによって、脱水素縮合を容易にし、生成する水素及び揮発性物質の蒸気を含有するガスの排出を容易にすることができる。多段にすれば、それに相応じてこの交換用の表面積が大きくなる。この表面積は、カラムの直径及び分離用トレー40?43の直径を変えることによっても大きくすることができる。
【0042】
かかる反応器Aは、水素の離脱のための自由表面積を最適化し、それによって許容できない泡立ちを防止することができる。これはまた、前記のような制御メカニズムを提供することによって、出発SiH含有POSのSiH単位のアルコキシル官能基Xによる置換の度合いを正確に制御する可能性をも提供する。
【0043】
凝縮によって揮発性物質(本質的にアルコール)の蒸気から水素を分離するための手段18は、ガス流量を制御して、凝縮液を回収し且つ再循環することを可能にし、反応熱を首尾よく取り除きながら同時に反応塊の温度をうまく制御するという二次的効果をも有する。
【0044】
最後に、この反応器は、アルコキシル官能基Xへの漸近的な転化度又は置換度に達したらすぐに得られたSiX及びSiH含有POSをヒドロシリル化によって中和する目的で反応器Bに移すことを可能にするという事実のために、安全性が最適化される。
【0045】
この例においては、反応器Bは、参照番号21で示されるバッチ式ヒドロシリル化反応器である。これは、例えばプロペラ式撹拌機から成る撹拌手段22を有するタンクである。この反応器21の底部には、生成した所望のPOS(II)の回収を可能にする管23が連結される。
【0046】
この反応器21は、その上方部に、ガス状流出物を回収するための手段24を含む。この手段24は、反応器21の内部と連通したカラムに、好ましくは水素をその他のガスから分離するために流出物を処理するための装置25を含ませて成る。その他のガスとは、揮発性の反応性化合物から成り、これは、易動性水素を有する化合物(アルコール)及び少なくとも2個のエチレン系不飽和基を含有するヒドロシリル化されるべき化合物(不飽和官能基Y源)であることができる。
【0047】
反応器Aの手段18と同様に、この装置25も揮発性物質の蒸気を凝縮させるための少なくとも1つ(この場合には1つ)の凝縮器から成る。この凝縮器は、例えば、渦巻状の形で図示した部分に冷媒を図中に示した流れ方向で通したものである。凝縮液は、凝縮器の底部25において回収されて、貯蔵及び(又は)再循環される。
【0048】
かくして、本発明に従う新規の方法は、H_(2)Sを式(II)の出発POSと接触させることから成る。
【0049】
実施上の観点から、この方法は、液体及びガスを触媒(これは随意に不均一触媒から成る)と接触させることができる標準的な密閉式反応器中で実施され、この方法は随意に加圧下で実施することもできる。圧力は臨界的なパラメーターではないが、少なくとも1×10^(5)Paの圧力下で実施するのが有利であり、5×10^(5)?20×10^(5)Paの範囲内の圧力下で実施するのが好ましく、7×10^(5)?14×10^(5)の圧力下において実施するのがより一層好ましい。
【0050】
H_(2)S供給条件は、式(II)のPOSのエチレン系不飽和基基に対してH_(2)Sがモル過剰(少なくとも5%過剰)になるように決定される。
【0051】
反応温度は、50℃?120℃の範囲内にするのが好ましい。
【0052】
用いられる触媒としては、遊離基開始剤、例えばアゾ-有機化合物、有機ペルオキシド及び有機ペルカーボネートのような遊離基開始剤が好適である。これらは、単独で又は例えばニッケル及び(若しくは)三価燐化合物のような助触媒と組み合わせて用いられる。その詳細については、特にフランス国特許第2048451明細書を参照されたい。
【0053】
アゾ-有機化合物及び有機ペルオキシドの類に属する少なくとも1種の遊離基開始剤化合物を触媒として用いるのが好ましい。アゾ-有機化合物の類に属する少なくとも1種の遊離基開始剤化合物、例えば2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2-(t-ブチルアゾ)-2,4-ジメチルペンタンニトリル、2-(t-ブチルアゾ)イソブチロニトリル、2-(t-ブチルアゾ)-2-メチルブタンニトリル又は1,1-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)を触媒として用いるのがより一層好ましい。特に用いられる触媒は、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(以下、AIBNと略記する)である。
【0054】
殆どの反応について、触媒の量は、式(II)の出発POSに対する触媒の重量%で表わして、0.1?10%の範囲内であり、0.5?4%の範囲内にするのが好ましい。
【0055】
H_(2)Sと式(II)の出発POSとの間の反応は、溶媒のない不均質媒体中で塊状で実施することもできるが、POS(II)及び触媒に対して共通の溶媒又は溶媒混合物を添加することによって均質媒体中で実施するのが好ましい。好ましい溶媒は、非プロトン系非極性溶媒タイプのもの、例えばクロルベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン及びデカンである。より一層好ましく用いられる溶媒は、トルエン及びキシレンである。
【0056】
反応時間は臨界的ではなく、例えば約70?90℃の温度については1時間?4時間の範囲にすることができる。
【0057】
本発明に従う方法は、任意の既知の操作方法に従って、バッチ式態様でも連続式態様でも実施することができる。1つの非常に好適な操作方法は、次のものである:最初に、反応器に溶媒及びPOS(II)を供給し、次いでこれにH_(2)S源を連続的に通して反応混合物をこのガスで飽和させ、次いで触媒溶液をこの反応器に注ぐ。別の非常に好適な操作方法は、次のものである:最初に反応器に溶媒を供給し、次いでこれにH_(2)S源を連続的に通して反応混合物をこのガスで飽和させ、次に触媒及びPOS(II)を基とする溶液をこの反応器に注ぐ。
【0058】
前記の方法によって得られる前記の式(I)においてその構造中の記号n及びqが同時に0を表わす多官能化POSは既知の物質であり、本出願人による国際公開第WO96/16125号パンフレットに与えられた情報を用いて製造することができる。その他の、前記の方法によって得られる前記の式(I)において
・記号nが0であり且つ記号qが0以外の数を表わす多官能化POS
又は
・記号nが0以外の数を表わし且つ記号qが0又は0以外の数を表わす多官能化POS
は、本出願人が知る限り新規の物質であり、これらが本発明の第二の主題を構成する。これらのPOSの中では、記号nが0以外の数を表わし且つ記号qが0又は0以外の数を表わすPOSが特に独創的である。
【0059】
別の主題に従えば、本発明は、特にシリコーン組成物中の粘着防止調整剤として、又は充填シリコーン組成物中に充填剤を使用するのを助成するため及び得られるシリコーン製品の補強を可能にするための白色充填剤(特に珪質充填剤)のコーティング剤として、前記の方法によって得られた前記の式(I)の少なくとも1種の(既知の及び(又は)新規の)多官能化POSを有効量で使用することに関する。式(I)のこれらの多官能化POSはまた、補強用充填剤として白色充填剤(特に珪質物質)を含有するゴム組成物中における白色充填剤-エラストマーのカップリング剤としても有利に用いることができ、これが本発明の使用の好ましい態様である。
【0060】
検討される用途はもちろん、既知であるか新規であるかに拘らず式(I)において記号n、q、A及び(特に)Bが本発明に従う方法の説明の序文に示した式(I)に関して与えたすべての定義を満たすすべての多官能化POSに関する。
【0061】
本明細書の残りの部分においては、補強用充填剤として白色充填剤(特に珪質物質)を含有するゴムタイプの天然又は合成エラストマーの組成物であってエラストマー製物品(エラストマーから作られた物品)の製造用に意図される前記組成物(以下、エラストマー製物品製造用組成物と言う)中において白色充填剤/エラストマーのカップリング剤として式(I)の少なくとも1種の多官能化POSを使用するから成る本発明のこの別の主題を、さらに詳細に説明する。
【0062】
本発明が特に有用なエラストマー製物品のタイプは、特に次の束縛を受けるものである:動的環境における高振動数応力の変動及び(若しくは)温度の変動;並びに(又は)高い静応力;並びに(又は)動的環境における高レベルの曲げ疲れ。かかる物品は、例えばコンベヤーベルト、出力伝達ベルト、ホース、伸縮継手、家庭電化製品用シール、エンジンの振動を吸収する働きをするための台(エラストマー内に骨組み又は圧油を伴うもの)、継手のある硬質金属部品の間に位置づけられるばね部品)、地面と接触する乗物のタイヤ等のトレッド(踏面、接地面)(以下、単に乗物トレッドと言う)、ケーブル、ケーブル被覆、靴底及びケーブルウェイのホイールである。
【0063】
本発明の分野は特に、
・製造された未加工(未硬化)の化合物を特に押出及びカレンダー加工操作において使用するのを非常に容易にするための、できる限り小さい粘度値によって示される流動学的性質;
・硬化用プラントの優れた生産性を達成するための、できるだけ短い硬化時間;並びに
・前記の用途の束縛に適合するための、充填剤によって付与される優れた補強特性、特に最適値の引張弾性率、引張破断強さ及び耐摩耗性:
を示すエラストマー組成物を提供することができる高性能用途のものである。
【0064】
かかる目的を達成するために、多くの解決策が提唱されており、それらは本質的に、補強用充填剤としての白色充填剤、特にシリカで変性されたエラストマーを用いるものに集中している。一般的に、充填剤によって付与される最適な補強特性を得るためには、充填剤をできる限り微細に分割され且つできる限り均一に分布された最終形態でエラストマーマトリックス中に存在させることが必要であるということが知られている。かかる条件を実現することができるのは、充填剤がエラストマーとの混合の際に非常に容易にマトリックス中に組み込まれることができ、且つ、充填剤が非常に容易に崩壊・解凝集することができ且つエラストマーマトリックス中に非常に容易に均一に分散することができる場合だけである。補強用白色充填剤のみ(特に補強用シリカのみ)を用いただけでは、組成物のある種の特性が低レベルのものとなり、その結果これらの組成物を用いた物品のある種の特性が低レベルのものとなってしまうので、不適切であることがわかっている。
【0065】
さらに、相互の親和性の理由で、白色充填剤粒子(特にシリカ粒子)はエラストマーマトリックス中で粒子同士が凝集してしまうという困った傾向を有する。これらの充填剤/充填剤の相互作用は、混合操作の間に作ることができる白色充填剤/エラストマーの結合の全部が実際に達成された場合に理論的に達成可能な補強特性よりもかなり低いレベルに補強特性を抑えてしまうという望ましくない結果をもたらす。
【0066】
さらに、白色充填剤を使用すると、充填剤/充填剤の相互作用のせいで未加工状態においてエラストマー組成物の粘度が高くなってしまう傾向があり、いずれにせよ加工がより一層困難になる傾向があり、加工・利用の困難性を引き起こす。最後に、架橋用システム(架橋剤系)が硫黄を基とするものである場合には、白色充填剤と架橋用システムとの間の相互作用が架橋速度及び収率に悪影響を及ぼす。
【0067】
充填剤の表面とエラストマーとの間の強い相互作用及びエラストマー鎖の間の真の網状構造を作ると同時にエラストマーマトリックス内の白色充填剤の分散を促進するためには、白色充填剤粒子と反応するカップリング剤を用いることが必要であることが、当業者に知られている。
【0068】
例えば、シリカとエラストマーマトリックスとの親和性を高めるために、これまでに、硫黄原子を1個含有する加水分解性シラン(即ち加水分解可能なシラン)、例えばγ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン若しくはγ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(米国特許第3350345号及びフランス国特許第2094859号の各明細書)及び(又は)硫黄原子を数個含有する加水分解性シラン、例えばビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル若しくは3-(トリエトキシシリル)プロピル]ポリスルフィド(ジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド若しくはヘキサスルフィド)(フランス国特許第2206330号明細書)を用いることが提唱されている。しかしながら、これらのカップリング用シランは、シリカを充填された加硫ゴムの場合に、「スコーチ」の安全性(早すぎる硬化は防止すべきである)と利用の容易性と補強能力とカップリング剤の活性対費用比との間のできる限り最良の折衷点をもたらすことができない。
【0069】
この折衷点の向上を試みて、最近になって、極性基(特にヒドロキシル基及び(若しくは)アルコキシル基)と随意としての例えば長鎖アルキル鎖、2-(3-シクロヘキセニル)エチル残基若しくは2-(4-メチル-3-シクロヘキセニル)プロピル残基のような有機基とで官能化されたポリオルガノシロキサンと、硫黄原子を1個含有するシラン及び硫黄原子を数個含有するシランの群から選択される少なくとも1種の加水分解性シラン{例えば前記のタイプ(ヨーロッパ特許第0731133号明細書、国際公開第WO96/29364号パンフレット、ヨーロッパ特許第0761748号明細書)のもの}とを基とする組合せ物をカップリング剤として用いることが提唱されている。しかしながら、このアプローチは、官能化ポリオルガノシロキサンとシランとがシリカの表面に対する反応について競合し、最適カップリング特性の再現性の低下をもたらすことがあるということがわかり、完全に満足できる結果を得ることができない。
【0070】
従来技術から見て、従って、補強用充填剤として珪質物質を含有するエラストマー組成物、より一般的には補強用白色充填剤を含有するエラストマー組成物中におけるシリコーン化合物を基とするカップリング剤の高性能用途に関して満たされていない要求が存在するようである。
【0071】
この目標は、白色充填剤を補強用充填剤として含有する天然又は合成エラストマーのエラストマー製物品製造用組成物中に前記の方法によって得られる前記の式(I)の少なくとも1種の多官能化POSを有効量で用いることによって達成される。
【0072】
式(I)の多官能化POSとしては、H_(2)Sを前記の好ましく用いられる式(II)のPOS(即ち、式(II)において記号Zが同一であっても異なっていてもよく、それぞれ第2級性状のSH基が結合された鎖R”を表わすPOS)と反応させることによって得られるものを選択するのが好ましい。
【0073】
用語「第2級性状のSH基」とは、タイプ(1)において基R^(2)及びR^(3)の少なくとも一方が水素原子以外のものである基、タイプ(2)の基、タイプ(3)の基及びタイプ(4)の基から選択されるSH基を意味するものとし、これらのタイプ(1)?(4)は、式(I)に関してそれらの好ましい意味において取り上げられた前記の定義を満たすものである。
【0074】
式(I)の多官能化POSとしては、H_(2)Sを前記のより一層好ましく用いられる式(II)のPOS(即ち、式(II)において記号Zが同一であっても異なっていてもよく、この場合には前記の定義を満たす序列(6)、(7)、(9)、(11)、(13)、(14)及び(15)に相当するものであるPOS)と反応させることによって得られるものを選択するのがより一層好ましい。
【0075】
このカップリング剤用途において特に好適な多官能化POSは、式(I)において
・Rがメチルであり、
・Xがメトキシル又はエトキシルであり、
・Yが
【化34】

又は
【化35】

であり、
・Zが
【化36】

又は
【化37】

であり、
・Wが
【化38】

又は
【化39】

(ここで、iは整数1又は2である)
であり、
・m+n+p+qが10?70の範囲内であり、
・mが1?40の範囲内であり、
・n+p+qが1?30の範囲内であり、
・nが0?20の範囲内であり、
・pが1?25の範囲内でり、
・qが0?3の範囲内であり、
・全末端基A及びBの20?80モル%がRがメチルである式(i)及び(又は)(5i)の基によって提供される(CH_(3))_(3)Si単位から成り、
・末端基の10?40モル%がRがメチルであり且つXがメトキシル又はエトキシルである式(2i)及び(又は)(6i)の基によって提供される(CH_(3))_(2)(OCH_(3))Si又は(CH_(3))_(2)(OC_(2)H_(5))Si単位から成り、
・末端基の10?40モル%が式(3i)及び(又は)(7i)の基によって提供されるCH_(3)(OCH_(3))_(2)Si又はCH_(3)(OC_(2)H_(5))Si単位から成り、且つ
・末端基の0?10モル%が式(4i)及び(又は)(8i)の基によって提供される(OCH_(3))_(3)Si又は(OC_(2)H_(5))_(3)Si単位から成り、
・各場合における基の合計が100モル%である
POSである。
【0076】
このカップリング剤用途の範囲内において、本発明はまた、式(I)の少なくとも1種の多官能化POSを有効量で使用することによって得られる、補強用白色充填剤を含有するエラストマーの組成物にも関する。
【0077】
より特定的には、これらの組成物は、
・エラストマー100重量部、
・エラストマー100重量部当たりに補強用白色充填剤10?100重量部、好ましくは20?80重量部
及び
・補強用白色充填剤100重量部当たりにPOS0.5?15重量部、好ましくは2?10重量部
を含有する。
【0078】
本明細書において用語「補強用白色充填剤」とは、天然又は合成ゴムタイプのエラストマーの組成物をカップリング剤以外の手段なしで単独で補強することができる白色充填剤を意味するものとする。
【0079】
補強用白色充填剤の物理的存在状態は重要ではなく、即ちこの充填剤は粉末、微小ビーズ、グラニュール又はボールの形にあることができる。
【0080】
この補強用白色充填剤は、シリカ、アルミナ又はこれら2種の混合物から成るのが好ましい。
この補強用白色充填剤は、単独のシリカ又はアルミナとの混合物としてのシリカから成るのがより一層好ましい。
【0081】
本発明において用いることができるシリカとしては、450m^(2)/g以下のBET比表面積を有する当業者に周知のすべての沈降シリカ又は熱分解法シリカが好適である。慣用の又は高分散性の沈降シリカが好ましい。
【0082】
用語「高分散性シリカ」とは、ポリマーマトリックス中で非常に容易に解凝集し且つ分散することができ、薄い切片に対して電子又は光学顕微鏡によって観察することができる任意のシリカを意味するものとする。高分散性シリカの非限定的な例としては、450m^(2)/g以下のCTAB比表面積を有するもの、特に米国特許第5403570号明細書並びに国際公開第WO95/09127号及び同第WO95/09128号パンフレットに記載されたものを挙げることができる。必要ならばこれら文献を参照されたい。
【0083】
より好ましいものとしては、
・100?240m^(2)/gの範囲、好ましくは100?180m^(2)/gの範囲のCTAB比表面積、
・100?250m^(2)/gの範囲、好ましくは100?190m^(2)/gの範囲のBET比表面積、
・300ミリリットル/100g未満、好ましくは200?295ミリリットル/100gの範囲のDOP油吸収性
及び
・1.0?1.6の範囲のBET比表面積/CTAB比表面積の比
を有するものが非常に好適である。
【0084】
もちろん、用語「シリカ」とは、様々なシリカのブレンドを意味することもできる。CTAB比表面積は、NF規格T-45007法(1987年11月)に従って測定される。BET比表面積は、「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Journal of the American Chemical Society)」、第80巻、第309頁(1938年)に記載されたブルナウアー-エメット-テーラー(BRUNAUER-EMMET-TELLER)法{NF規格T-45007(1987年11月)に対応}に従って測定される。DOP油吸収性は、フタル酸ジオクチルを用いてNF規格T-30-022(1953年3月)に従って測定される。
【0085】
補強用アルミナとしては、ヨーロッパ特許第0810258号明細書に記載されたような、
・30?400m^(2)/gの範囲、好ましくは80?250m^(2)/gの範囲のBET比表面積、
・せいぜい500nm、好ましくはせいぜい200nmの平均粒子寸法
及び
・高いAl-OH表面反応性官能基含有率
を有する高分散性アルミナを用いるのが有利である。
【0086】
同様の補強用アルミナの非限定的な例としては、バイコウスキ(Baikowski)社から入手できるアルミナA125、CR125、D65CRを特に挙げることができる。
【0087】
白色充填剤/エラストマーのカップリング剤用途の説明に関して前記した補強用白色充填剤に関する一般的定義、好ましい定義及びより一層好ましい定義は、前記したカップリング剤用途の実施にも適用されるということに留意されたい。
【0088】
本発明の第二の主題に従う組成物用に用いることができる好適なエラストマーには、次のものがある:
(1)4?22個の炭素原子を有する共役ジエンモノマー(例えば1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン及び2,4-ヘキサジエン)の重合によって得られたホモポリマー;
(2)2種以上前記共役ジエン同士の共重合又は1種以上の前記共役ジエンと次の群:
・8?20個の炭素原子を有する芳香族ビニルモノマー(例えばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン若しくはp-メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン及びビニルナフタレン);
・3?12個の炭素原子を有するビニルニトリルモノマー(例えばアクリロニトリル及びメタクリロニトリル);
及び
・アクリル酸若しくはメタクリル酸と1?12個の炭素原子を有するアルカノールとから誘導されたアクリルエステルモノマー(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル及びメタクリル酸イソブチル)
から選択される1種以上のエチレン系不飽和モノマーとの共重合によって得られたコポリマー;
(3)エチレンと3?6個の炭素原子を有するα-オレフィンとの共重合によって得られたコポリマー{例えばエチレンとプロピレンとから得られたエラストマー(EPRエラストマー)};
(4)エチレン及び3?6個の炭素原子を有するα-オレフィンと6?12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとの共重合によって得られた三元コポリマー{例えばエチレン及びプロピレンと前記のタイプの非共役ジエンモノマー(例えば特に1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン及びジシクロペンタジエン)とから得られたエラストマー(EPDMエラストマー)};
(5)天然ゴム;
(6)イソブテンとイソプレンとの共重合によって得られたコポリマー(ブチルゴム)及びこれらのコポリマーのハロゲン化(特に塩素化又は臭素化)体;
(7)前記の(1)?(6)の複数のエラストマー同士の混合物;
(8)クロルスルホン化ポリエチレン;
(9)弗素化炭化水素;
並びに
(10)エピクロルヒドリン-エチレンオキシド又はポリエピクロルヒドリンタイプのエラストマー。
【0089】
ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン-ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)(水素化された形又は水素化されていない形)、ポリ(スチレン-ブタジエン-イソプレン)、(エチレン-プロピレン-非共役ジエンモノマー)ターポリマー、天然ゴム及びブチルゴムから選択される1種以上のエラストマーを使用するのが好ましい。
【0090】
本発明に従う組成物は、エラストマー及びゴム組成物の分野において通常用いられるその他の補助用成分及び添加剤の全部又は一部をさらに含有する。
【0091】
かくして、以下に挙げるその他の添加剤及び成分の全部又は一部を用いることができる。
【0092】
硬化系に関しては、例えば次のものを挙げることができる:
・例えば有機ペルオキシド及び(又は)硫黄若しくは硫黄供与性化合物(例えばチウラム誘導体)から選択される加硫剤のような硬化剤;
・例えばグアニジン誘導体、チアゾール誘導体又はスルフェンアミド誘導体のような硫黄系加硫促進剤;
・例えば酸化亜鉛、ステアリン酸及びステアリン酸亜鉛のような硬化活性剤。
【0093】
その他の添加剤としては、例えば次のものを挙げることができる:
・カーボンブラックのような慣用の補強用充填剤(この場合には用いる補強用白色充填剤が補強用白色充填剤+カーボンブラックの組合せ物の重量の50%以上を占める);
・例えばクレー、ベントナイト、タルク、チョーク、カオリン、二酸化チタン又はこれらの種の混合物のような慣用の弱補強性又は非補強性白色充填剤;
・酸化防止剤;
・例えばN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンのようなオゾン劣化防止剤;
・加工助剤及び可塑剤。
【0094】
加工助剤に関して、本発明に従う組成物はさらに、式(I)の多官能化POSに対する補完として、例えばヒドロキシル化シリコーンオイル、ポリオール、加水分解性シラン又はコーティング用ポリオルガノシロキサンのような補強用白色充填剤コーティング剤を含有することができる。
【0095】
より正確には、かかる加工助剤を用いる場合、以下より成る群から選択されるものを用いるのが有利である:
(1)次式のα,ω-(ジヒドロキシ)ポリジオルガノシロキサンオイル:
【化40】

{ここで、rはこのオイルに25℃において5?1000mPa・sの範囲、好ましくは10?200mPa・sの範囲の動粘度を与えるのに充分な数であり、
有機基R^(9)は、工業製品における入手しやすさのために、メチル、エチル、プロピル及び(又は)フェニル基であり、これら基R^(9)の少なくとも80%はメチル基であるのが好ましい};
(2)次式のポリアルキレングリコール:
【化41】

(ここで、sは式(IV)の化合物に100?30000の範囲、好ましくは200?20000の範囲の数平均分子量を与えるのに充分な数であり、
基R^(10)は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1?4個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキレン基を表わす);
(3)次式の加水分解性シラン:
【化42】

{ここで、記号R^(11)はそれぞれC_(1)?C_(8)直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル若しくはブチル基)、C_(5)?C_(8)シクロアルキル基(例えばシクロヘキシル基)、C_(6)?C_(12)アリール基又はC_(6)?C_(12)のアリール部分とC_(1)?C_(4)のアルキル部分とを有するアルアルキル基(例えばフェニル、キシリル、ベンジル又はフェニルエチル基)を表わし、
記号Eは加水分解性基であり、それぞれC_(1)?C_(10)アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ若しくはオクチルオキシ基)、C_(6)?C_(12)アリールオキシ基(例えばフェニルオキシ基)、C_(1)?C_(13)アシルオキシ基(例えばアセトキシ基)又はC_(1)?C_(8)ケチミノキシ基(例えばON=C(CH_(3))(C_(2)H_(5))若しくはON=C(CH_(3))_(2)を表わす};
(4)式(II)の説明において前記した定義を満たす式(II)のPOS又は次式:
【化43】

{ここで、記号A、B、R、X、a及びbは、式(II)の説明において前記した定義を満たすものであり、
記号Y’は同一であっても異なっていてもよく、それぞれC_(7)?C_(30)直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基(例えばオクチル、ドデシル、ウンデシル又はトリデシル基)を表わす}
の類似のPOSのいずれかから成るコーティング用ポリオルガノシロキサン{式(VI)のコーティング用POSは、国際公開第WO96/16125号パンフレット及び本出願人によって1996年8月6日に出願されたフランス国特許出願第96/10086号明細書(フランス国特許第2752239号明細書若しくは国際公開第WO98/05700号パンフレット)に記載された方法に従って得ることができる物質である};
並びに
(5)前記の(1)?(4)の少なくとも2種の混合物。
【0096】
かかる加工助剤を用いる場合、これは補強用白色充填剤100部当たりに1?10重量部の量で用いられ、補強用充填剤100部当たりに2?8重量部の量で用いられるのが好ましい。
【0097】
補強用白色充填剤及び有効量のカップリング剤を含有するエラストマー組成物の製造方法は、慣用の1工程又は2工程操作方法で実施することができる。
【0098】
1工程法に従えば、硬化剤並びに随意としての促進剤及び(又は)活性剤以外のすべての必要な成分を標準的密閉式ミキサー、例えばバンバリータイプ又はブラベンダータイプのミキサー中に導入する。この第一の混合工程の結果物を外部ミキサー、一般的にマルチロールミキサーに取り出し、これに硬化剤並びに随意としての促進剤及び(又は)活性剤を添加する。
【0099】
ある種の物品を製造するためには両工程を密閉式ミキサー中で実施する2工程法を用いるのが有利な場合がある。第一の工程において硬化剤並びに随意としての促進剤及び(又は)活性剤以外のすべての必要な成分を導入する。続いての第二の工程の目的は本質的に、この混合物を追加の熱処理に付すことである。この第二の工程の結果物を外部ミキサーに取り出し、これに硬化剤並びに随意としての促進剤及び(又は)活性剤を添加する。
【0100】
直前に記載したエラストマー組成物は、前記の組成物から成る本体を有するエラストマー製物品を製造するのに役立つ。これらの組成物は、エンジン台、乗物トレッド部品、靴底、ケーブルウェイホイール、家庭電化製品用シール及びケーブル被覆より成る物品の製造に特に有用である。
【0101】
以下、実施例によって本発明を例示する。
【0102】
例1?3
本発明に従う方法を実施することによる式(I)の多官能化POSの製造例
(1)≡Si-OC_(2)H_(5)及び≡Si-(CH_(2))_(2)-シクロヘキセニル官能性単位を含有する式(II)のPOSの製造:
多官能性単位含有POSを製造するための(半)連続式工業的プロセスを採用する。
【0103】
(1.1)プロセスに用いた物質:
出発SiH含有POSは、オイル100g当たりに≡SiH単位約1584ミリ当量を含有するトリメチルシリル末端基含有ポリメチルヒドロゲノシロキサンオイルである。
アルコキシル官能基X源となる式XHのアルコールは、エタノールC_(2)H_(5)OHである。
触媒は、ジビニルテトラメチルジシロキサンがリガンド結合した白金金属10重量%を含有する白金錯体のジビニルテトラメチルジシロキサン中の溶液である(Karstedt触媒)。
官能基Y源となる不飽和有機化合物は、4-ビニル-1-シクロヘキセンである。
【0104】
(1.2)操作パラメーター:
【表1】

(*)この値は、式(II)のPOSの珪素のNMR分析によって決定される。これは、初期≡SiH単位100個当たりに約63個が≡Si-OC_(2)H_(5)単位に転化したことを意味する。
【0105】
(1.3)操作:
一方でSiH含有POSを、他方でエタノール+白金触媒を、それぞれ管11及び12から区画5中に導入する。供給速度は上に与えた通りである。
主要区画5中で脱水素縮合反応を行なう。水素及び揮発性物質(主にエタノール)を発生し、これらは管13から上方チャンバー3中に通される。揮発性物質は凝縮器18によって凝縮され、管20から採集され、次いで再循環されて主要区画5に送られる。凝縮可能な揮発性物質から分離された水素は、管19から逃がして回収する。
【0106】
所定の供給時間の後に、液状反応混合物は区画5中でそのオーバーフロー液位に達する。この液位は所定滞留時間に相当し、この場合には2分48秒であり、下方区画6に流入する。区画5の液体のオーバーフロー容量は470ミリリットルとし、その他の3つの区画(段)6、7、8についてのこの容量は630ミリリットルとする。液状反応混合物のカスケード式オーバーフローのシステムを下方区画7及び8においても続けて、最後に底部区画9において≡Si-OC_(2)H_(5)及び≡SiH単位含有POS(転化度約0.63)を採集する。この転化度(エトキシル化度)は、水素センサー及び演算装置を含み、連続的に転化度を測定し、それに応じて操作の間に流量を変えることによって転化度を制御することを可能にする制御装置によって、調整される。また、トレー40?43のオーバーフロー高さを調節することもできる。
【0107】
こうして得られた≡Si-OC_(2)H_(5)及び≡SiH単位含有POSは管10を介して連続的に反応器Bに移され、ヒドロシリル化に付されて無害(inoffensif)化され、≡Si-OC_(2)H_(5)及び≡Si-(CH_(2))_(2)-シクロヘキセニル単位を含有する式(II)のPOSに転化される。気化したエタノール及びビニルシクロヘキセンは、凝縮され、次いで回収され、随意に手段23を用いて再循環される。
式(II)のPOSは管22を用いて反応器を液抜きすることによって回収される。これは25℃において300mPa・sの粘度を有する透明なシリコーンオイルである。
【0108】
このオイルもまた珪素NMR分析に付した。これはシリコーンコポリマーの構造及び微細構造を測定するための有力な検査手段である。かくして、珪素(^(29)Si)NMRは次のものが存在することを検出することができた:
・線状鎖内に位置する次の式の側部単位:
・・(CH_(3))(OC_(2)H_(5))SiO_(2/2)(以下、T(OEt)と示す)
【化44】

(以下、Dと示す);
・鎖末端に位置する次の式の単位:
・・(CH_(3))_(3)SiO_(1/2)(以下、Mと示す)
・・(CH_(3))_(2)(OC_(2)H_(5))SiO_(1/2)(以下、D(OEt)と示す)
・・(CH_(3))(OC_(2)H_(5))_(2)SiO_(1/2)(以下、T(OEt)_(2)と示す);
並びに
・非常に少量の式CH_(3)SiO_(3/2)(以下、Tと示す)の単位。
【0109】
この^(29)Si-NMR分析は、各単位が次のように分布することを示した。
【表2】

(*)示した値は、珪素原子100個当たりの単位の数を表わす。
【0110】
タイプM、D(OEt)及びT(OEt)_(2)の末端基を考慮に入れ、^(29)Si-NMR分析から、このオイルが次の平均式:
【化45】

を有し、末端基A及びBが次のモル組成:
【表3】

を有することがわかった。
【0111】
(2)≡Si-OC_(2)H_(5)及び≡Si-(エチレン-シクロヘキシレン)-SH官能性単位を含有する式(I)のいくつかのPOSの製造:
撹拌システム及びH_(2)Sガス供給システムを備えた2リットルのステンレス鋼製反応器の中を乾燥窒素雰囲気下に保ち、その中に、乾燥トルエン(下記の表中のV1に示したg数)及び前記工程(1)の後に得られたシリコーンオイル(表中のM1に示したg数)を入れる。
【0112】
次に、こうして装填された反応器にH_(2)Sを吹き込む。この混合物を撹拌し、反応混合物を表中のP1に示したH_(2)S圧力(Pa)下でT1に示した温度(℃)に加熱する。次に、AIBN(表中のM2に示したg数)及び乾燥トルエン(V2に示したg数)を基とする触媒溶液をt1に示した時間(分)をかけて漸次注ぐ。溶液を注ぎ終えた後に、反応混合物を撹拌しながらT1に示した温度(℃)においてt2に示した時間(分)反応させる。
【0113】
時間t2の後に、窒素流を用いて装置をパージし、次いで回転式蒸発器中で約7×10^(2)Paの減圧下において約80?100℃に1時間30分間加熱することによって溶媒を蒸発させる。
【0114】
こうして、僅かに黄色のシリコーンオイル(M3に示したg数)が回収され、プロトン及び^(29)Si-NMRによって分析した。
次の表に、行なったそれぞれの製造プロセスの操作条件を与える。
【表4】

【0115】
例1?3の式(I)のPOSに対して行なった^(29)Si-NMR分析から、各単位の平均分布が次の通りであることがわかった。
【表5】

(*)ここで、Dは鎖中に存在する環式官能性単位(n、p、q)を表わす。
【0116】
タイプM、D(OEt)及びT(OEt)_(2)の末端基を考慮に入れ、^(29)Si-NMR分析から、例1?3のオイルが次の平均式:
【化46】

{ここで、n+p+qは10±2であり(パラメーターn、p及びqのモル分布は下に示した通りであることがわかった)、
R”は次式:
【化47】

(ここで、メチレンの自由原子価は珪素原子に結合する)
のものである}
を有し、全末端基A及びBが次の平均モル組成:
【表6】

を有することがわかった。
【0117】
プロトンNMR分析から、環式官能性単位について下記の表に与えた次のモル組成が測定された。
【表7】

【0118】
例4及び5
これらの例は、靴底用配合物の代表的なエラストマー組成物(例4)又は乗物トレッド部品用配合物の代表的なエラストマー組成物(例5)を高分散性沈降シリカを基とする白色充填剤によって補強したものの中における、例2において製造した式(I)の多官能化POS(以下、POS-2と略記する)の使用及び挙動を例示する。
【0119】
(1)組成物の構成:
ブラベンダータイプの密閉式ミキサー中で、重量部で表わした組成を下記の第I表に示した下記の組成物を製造した。
【0120】
【表8】

【0121】
脚注
(1)Safic-Alcan社より販売されているマレーシア原産天然ゴム
(2)Shell Chimie社より販売されているスチレン-ブタジエンコポリマー
(3)SMPC社より販売されている高い1,4-cis-付加生成物含有率を有するポリブタジエン
(4)Rhone-Poulenc Chimie社より販売されている平均最大寸法8mmのグラニュールの形のZeosil 165 GRシリカ(CTAB比表面積約160m^(2)/g、BET比表面積約170m^(2)/g、BET/CTAB比約1.06)
(5)及び(6)硬化活性剤
(7)La Ceresine社より商品名「CERELUX(登録商標)120」の下で販売されているワックスである加工助剤
(8)Norsolor社より販売されている石油を原料とする芳香族樹脂である可塑剤
(9)分子量4000のポリエチレングリコール(シリカ/ゴム界面剤)
(10)メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド(硬化促進剤)
(11)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(硬化促進剤)
(12)テトラメチルチウラムジスルフィド(硬化促進剤)
(13)N-t-ブチル-2-(ベンゾチアジル)スルフェンアミド(硬化促進剤)
(14)ジフェニルグアニジン(硬化促進剤)
(15)加硫剤
【0122】
(2)組成物の製造:
靴底用配合物の代表的な組成物は、次の態様の1工程法に従って製造する。
【0123】
ブラベンダータイプの密閉式ミキサー中に各種成分を以下の順序並びに時間及び温度において導入する。
【表9】

【0124】
温度が160℃に達した時(即ち約7分後)に、ミキサーを液抜きする。
得られた混合物を次いでカレンダー加工を行なう30℃に保ったマルチロールミキサー中に導入する。このミキサーには、MBTS、CBS、TMTD及び硫黄を導入する。均質化及び最後まで3回通過の後に、最終混合物を厚さ2.5?3mmのシートにカレンダー加工する。
【0125】
トレッド部品用配合物の代表的な組成物は、次の態様の2工程法に従って製造する。
【0126】
ブラベンダータイプの密閉式ミキサー中で以下に示した2工程を連続的に実施する。
【表10】

【0127】
次に、工程2から得られた混合物を前記のようにカレンダー加工するためにマルチロールミキサー中に導入する。このミキサーには、TBBS、DPG及び硫黄を導入する。
【0128】
(3)流動学的性質:
この測定は、未硬化状態の組成物に対して実施する。Monsanto 100 S流動計を用いて170℃において実施したMonsanto粘度試験に関する結果を下記の第II表に与える。
【0129】
この試験に従えば、170℃の温度に調節された試験室中に被検組成物をこの組成物が懸案の試験室を完全に満たすように入れ、試験室中に含まれた双円錐形の回転子の低振幅振動に対する組成物の抵抗トルクを測定する。時間の関数としてのトルクの変化の曲線から、以下を決定する:最小トルク(これは懸案の温度における組成物の粘度を反映する);最大トルク(これは硬化系の作用によって引き起こされる架橋の度合いを反映する);及び完全な硬化の90%に相当する硬化状態を得るのに必要な時間(T-90)(この時間を最適硬化とする)。
【0130】
【表11】

【0131】
(4)機械的性質:
この測定は、最適硬化された組成物(温度170℃、各組成物についての時間は第II表に示したT-90時間)に対して実施する。
測定された性質及び得られた結果を下記の第III表に与える。
【0132】
【表12】

【0133】
脚注
(1)引張試験は、NF規格T46-002の情報に従い、H2タイプの試験片を用いて実施した。10%、100%及び300%モジュラス並びに引張強さは、MPaで表わされる。
(2)補強指数は、300%モジュラス/100%モジュラスの比に相当する。
(3)この測定は、ASTM規格D-3240の情報に従って実施した。与えられた値は、15秒において測定した。
(4)この測定は、NF規格T46-002の情報に従い、方法2を用い、回転式試験片ホルダーを用いて実施した。測定値は、摩耗に対する物質の損失(mm^(3))である。値が低ければ低いほど摩耗抵抗が良好である。
【0134】
一般的に、POS-2を含有する組成物は、POS-2を含有しない同等の組成物と比較して、かなり高いモジュラス及びかなり改善された摩耗抵抗を有する。加硫物の硬度は変化しない。このモジュラスの増大及びこの摩耗抵抗の改善は疑う余地なく、式(I)の多官能化POS、特に≡Si-(第二級SH基含有鎖)官能性単位を含有するものが、シリカの表面をゴムに化学的に結合させるカップリング能力として高いものを有するということを示す。
【0135】
例6?9
本発明に従う方法を実施することによる式(I)の多官能化POSの製造例
(1)≡Si-OC_(2)H_(5)及び≡Si-(CH_(2))_(2)-シクロヘキセニル官能性単位を含有する式(II)のPOSの製造:
このプロセスはバッチ式操作で実施する。
出発SiH含有POSは、オイル100g当たりに≡SiH単位約1438ミリ当量を含有するトリメチルシリル末端基含有ポリメチルヒドロゲノシロキサンオイルである。
【0136】
脱水素縮合反応は、機械式撹拌システムを備えた3リットルの反応器中で実施する。反応器の中を乾燥窒素雰囲気下に保つ。
【0137】
この反応器にトルエン350gをKarstedt触媒0.08gと共に導入する。2つの注入ポンプによってエタノール155.9g及びポリメチルヒドロゲノシロキサンオイル400gを周囲温度(25℃)において5時間10分かけて導入する。混合物の温度は18.7℃から39.3℃に漸次変化する。
【0138】
こうして得られた反応混合物を回収し、次いでエタノール100g、4-ビニル-1-シクロヘキセン308.5g及びKarstedt触媒0.08gから成る予め74℃に加熱された混合物に4時間45分かけて注ぐ。注いでいる間に、温度が74℃から79℃に変化する。79℃において5時間加熱を維持し、その後にすべての≡SiH官能性単位が消費された。次にこの反応混合物を5.32×10^(2)Paの減圧下で70℃に5時間加熱することによって脱揮発成分する。こうして透明なシリコーンオイル760.3gが回収された。
【0139】
このオイルもまた珪素(^(29)Si)NMRによって分析し、かくして、次のものが存在することを検出することができた:
・線状鎖内に位置する次の式の側部単位:
・・(CH_(3))(OC_(2)H_(5))SiO_(2/2)(以下、T(OEt)と示す)
【化48】

(以下、Dと示す);
・鎖末端に位置する次の式の単位:
・・(CH_(3))_(3)SiO_(1/2)(以下、Mと示す)
・・(CH_(3))_(2)(OC_(2)H_(5))SiO_(1/2)(以下、D(OEt)と示す);
並びに
・非常に少量の式CH_(3)SiO_(3/2)(以下、Tと示す)の単位。
【0140】
この^(29)Si-NMR分析は、各単位が次のように分布することを示した。
【表13】

(*)示した値は、珪素原子100個当たりの単位の数を表わす。
【0141】
タイプM及びD(OEt)の末端基を考慮に入れ、^(29)Si-NMR分析から、このオイルが次の平均式:
【化49】

を有し、末端基A及びBが次のモル組成:
【表14】

を有することがわかった。
【0142】
(2)≡Si-OC_(2)H_(5)及び≡Si-(エチレン-シクロヘキシレン)-SH官能性単位を含有する式(I)のいくつかのPOSの製造:
例1?3の(2)に前記したように操作を実施する。
次の表に、行なったそれぞれの製造プロセスの操作条件を与える。
【0143】
【表15】

【0144】
例6?9の4つの式(I)のPOSを一緒にしてロットにした。以下においてはこれを「POS-(6?9)」と称する。^(29)Si-NMR分析から、このロット中の各単位の分布が次の通りであることがわかった。
【0145】
【表16】

(*)ここで、Dは鎖中に存在する環式官能性単位(n、p、q)を表わす。
【0146】
タイプM及びD(OEt)の末端基を考慮に入れ、^(29)Si-NMR分析から、POS-(6?9)ロットが次の平均式:
【化50】

{ここで、n+p+qは7±2であり(パラメーターn、p及びqのモル分布は下に示した通りであることがわかった)、
R”は次式:
【化51】

(ここで、メチレンの自由原子価は珪素原子に結合する)
のものである}
を有し、全末端基A及びBが次の平均モル組成:
【表17】

を有することがわかった。
【0147】
プロトンNMR分析から、環式官能性単位について下記の表に与えた次のモル組成が測定された。
【表18】

【0148】
例10?12
これらの例は、靴底用配合物の代表的なエラストマー組成物を白色充填剤で補強したものの中における、
・例6?9において製造されたPOS-(6?9)と称されるPOSの組合せ物に相当する式(I)の多官能化POS(例10)、
・POS-(6?9)と50mPa・sの粘度を有するα,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサンオイル(オイル48V50)から成る加工助剤との組合せ物(例11)、又は
・POS-(6?9)と≡Si-OC_(2)H_(5)及び≡Si-オクチル官能性単位を含有する式(VI)のコーティング用POSから成る加工助剤との組合せ物(例12)の使用及び挙動を例示する。
【0149】
(1)組成物の構成:
ブラベンダータイプの密閉式ミキサー中で、重量部で表わした組成を下記の第IV表に示した下記の組成物を製造した。
【0150】
【表19】

【0151】
脚注
(1)、(4)、(5)、(6)、(11)及び(15)については、第I表の脚注を参照されたい。
(16)分子中に平均して3.58個の(CH_(3))_(2)SiO_(2/2)シロキシル単位を含有する、50mPa・sの粘度を有するα,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサンオイル
(17)次の平均式:
【化52】

を有し且つ基A及びBが次のモル組成:
【表20】

を有するコーティング用POS。
【0152】
POS-12を製造するためには、4-ビニル-1-シクロヘキセンを1-オクテンに置き換えて、例1?3の(1)に示したように操作を実施する。
【0153】
(2)組成物の製造:
靴底用配合物の代表的な組成物は、次の態様の1工程法に従って製造する。
【0154】
ブラベンダータイプの密閉式ミキサー中に各種成分を以下の順序並びに時間及び温度において導入する。
【表21】

【0155】
得られた混合物を次いでカレンダー加工を行なう60℃に保ったマルチロールミキサー中に導入する。このミキサーには、CBS及び硫黄を導入する。均質化及び最後まで3回通過の後に、最終混合物を厚さ2.5?3mmのシートにカレンダー加工する。
【0156】
(3)流動学的性質:
例4及び5の(3)に記載したように170℃において実施されるMonsanto試験に従って、未硬化状態において混合物を評価する。試験時間の関数としてのトルクの変化の曲線から、以下を決定する:最小トルク、最大トルク(及びΔトルク)及びT-90時間、並びにスコーチ時間TS-2(これは懸案の温度(170℃)において最小トルクを2ポイント上昇させるのに必要な時間に相当し、この温度において硬化反応を開始させることなく未硬化混合物を使用することができる時間を反映する)。
得られた結果を下記の第V表に示す。
【0157】
【表22】

【0158】
(4)加硫物の機械的性質:
この測定は、最適硬化された組成物(温度170℃、各組成物についての時間は第V表に示したT-90時間)に対して実施する。
測定された性質及び得られた結果を下記の第VI表に与える。
【0159】
【表23】

【0160】
脚注
(1)、(3)及び(4):表IIIの脚注に与えた定義を参照されたい。
【0161】
式(I)の多官能化POSを特にヒドロキシル化シリコーンオイル又は式(VI)のコーティング用POSのような加工助剤と組み合わせて用いた場合に、次のことが観察された:
未硬化混合物(第V表)においては、粘度がさらに低下し、加硫物の性質(第VI表)においては、摩耗抵抗の改善を維持しながら、モジュラスがさらに改善される場合がある。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2008-08-28 
出願番号 特願2000-502094(P2000-502094)
審決分類 P 1 41・ 832- Y (C08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 辰己 雅夫天野 宏樹  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 一色 由美子
亀ヶ谷 明久
登録日 2003-06-06 
登録番号 特許第3437957号(P3437957)
発明の名称 チオール官能基を有するポリオルガノシロキサン(POS)の製造方法、この方法によって得ることができるPOS及びその特にゴム材料の分野における使用  
代理人 アクシス国際特許業務法人  
代理人 アクシス国際特許業務法人  

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