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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  G03F
審判 一部無効 特29条の2  G03F
管理番号 1184682
審判番号 無効2007-800207  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-09-27 
確定日 2008-08-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2886675号発明「フィルム露光装置およびフィルム露光方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2886675号の請求項1ないし4に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
出願(特願平2-330270号) 平成 2年11月30日
(特許法第41条に基づく優先日、平成2年3月30日)
設定登録 平成11年 2月12日
(特許第2886675号)
審判請求 請求人:田村 典子 平成19年 9月27日
(無効2007-800207号)
答弁書 平成19年12月13日
訂正請求書 平成19年12月13日
弁駁書 平成20年 1月24日
口頭審理 平成20年 5月27日
請求人口頭審理陳述要領書 平成20年 5月27日
被請求人口頭審理陳述要領書 平成20年 5月27日
請求人上申書(甲第10号証抄訳) 平成20年 6月13日
被請求人上申書 平成20年 6月16日
請求人上申書 平成20年 6月23日

第2 請求人の主張
請求人は、甲第1号証?甲第15号証を提示して、以下のように主張する。
1.特許法第29条の2(特許法第123条第1項第2号)
本件発明1ないし本件発明4は、甲第1号証の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、発明者及び出願人を異にするものである。

2.特許法第29条第2項(特許法第123条第1項第2号)
本件発明1ないし本件発明4は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 被請求人の主張
1.本件発明1ないし本件発明4は、甲第1号証の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一ではない。

2.本件発明1ないし本件発明4は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第4 訂正の適否
1.訂正の内容
平成19年12月13日付の訂正請求書による訂正請求は、本件特許発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。
(1)【請求項1】について、訂正前の
ア.「照射部」を、
「レジストが感度を有する露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換えるフィルタを内蔵し、位置合わせ時はフォトマスクにアライメント波長の光を照射し、露光時には露光波長の光を照射する照射部」と訂正する。

イ.「位置調節機構」を
「X,Y,θ方向の位置調節機構」と訂正する。

ウ.「露光時にはフィルムを真空吸着する機構を有するステージ」を追加訂正する。

(2)特許明細書の「3.発明の詳細な説明」中の〔課題を解決するための手段〕の記載の、上記【請求項1】についてした訂正に、対応した部分を訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(1)ア.、イ.の訂正は、請求項1の「照射部」、「位置調節機構」の構成をそれぞれ限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また、ウ.の訂正は、請求項1の「フィルム露光装置」の構成を限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

上記(2)の訂正は、特許請求の範囲の訂正に係る上記(1)の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の欄の記載との整合をとるものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。

そして、上記(1)、(2)の訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.請求項5ないし請求項7に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものかどうかについて
請求項5ないし請求項7に係る特許に対しては、特許無効審判の請求がされていないが、これらの請求項は、間接的に、訂正がされた請求項1を引用するもので、請求項1と同様の訂正がされていると見なせるので、独立特許要件について検討する。

訂正明細書の請求項5ないし請求項7に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項5ないし請求項7に記載された事項により特定されたとおりのものであって、請求人が提出した甲第1?15号証に記載された発明と同一であるとも、また、これらの記載された発明から又はこれらの記載された発明の組み合わせから容易に発明をすることができたと認めることはできない。
また、他に特許を受けることができない理由も見当たらない。
したがって、訂正明細書の請求項5ないし請求項7に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

4.むすび
したがって、平成19年12月13日付の訂正は、特許法第134条の2第1項但し書の規定、及び同条第5項の規定により準用する特許法前第126条第3,4項の規定、さらに、同法第134条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合するので当該訂正を認める。

第5 本件特許の請求項1ないし請求項4に係る発明
本件特許の請求項1ないし請求項7に係る発明は、上記訂正請求書により訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に記載されたとおりのものであるところ、無効審判請求の対象となっている請求項1ないし請求項4に係る発明は、次のとおりのもの(以下、これを「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)である。
「(1)帯状のフィルムの長さ方向に沿って並ぶ複数のコマに順次に回路パターンを露光していくフィルム露光装置であって、
レジストが感度を有する露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換えるフィルタを内蔵し、位置合わせ時はフォトマスクにアライメント波長の光を照射し、露光時には露光波長の光を照射する照射部と、
照射部からの光が照射される位置に配置されたフォトマスクと、
フォトマスクのX,Y,θ方向の位置調節機構と、
照射されたフォトマスクの像を投影する投影レンズと、
投影レンズによる像の投影位置に、フィルムを一コマずつステップ送りするフィルム送り機構と、
露光時にはフィルムを真空吸着する機構を有するステージとを具備し、
帯状のフィルムには、一コマの各々に対応して少なくとも二つ以上のフィルム側アライメント用マークが形成され、
フォトマスクには、フィルムに投影して転写すべき回路パターンとともに、前記フィルム側アライメント用マークのそれぞれに対応してフォトマスク側アライメント用マークが形成されていることを特徴とするフィルム露光装置。
(2)請求項1に記載のフィルム露光装置を使用したフィルム露光方法であって、
フィルム送り機構によりフィルムの一コマがステップ送りされてきた時に、その一コマに係るフィルム側アライメント用マークがフォトマスク側アライメント用マークの像の投影位置に達したか否かを検出部により検出し、
この検出部からの信号によって一コマを停止させ、
その後、露光を行うことを特徴とするフィルム露光方法。
(3)請求項1に記載のフィルム露光装置を使用したフィルム露光方法であって、
フィルム送り機構によりフィルムの一コマをステップ送りし、
このステップ送り後に停止した一コマに係るフィルム側アライメント用マークの位置に、フォトマスク側アライメント用マークの像が投影されるように、フォトマスク位置調節機構を駆動してフォトマスクの位置制御を行い、
その後、露光を行うことを特徴とするフィルム露光方法。
(4)請求項1に記載のフィルム露光装置において、
フィルム側アライメント用マークは、フィルムに形成された穴または透光部により構成されていることを特徴とするフィルム露光装置。」

第6 当審の判断
1.甲号各証に記載された事項
(1)甲第1号証;特願平2-12486号(特開平3-218091号)(平成2年1月24日出願)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、先願明細書という。)。
1-ア.【特許請求の範囲】
(2)表面にレジストが塗布され、間欠的に搬送されるフレキシブルテープ上にマスクに設けたパターンを投影して露光させるフレキシブルテープの製造設備において、
露光用のパターンと、前記フレキシブルテープ上の少なくとも1か所に設定したターゲットに対応した位置に設けられた検出用パターンとが形成され、前記フレキシブルテープ上にX,Y方向に移動及び水平方向に回転可能に配設されたマスクと、
該マスクと前記フレキシブルテープとの間に配設されたレンズと、
前記フレキシブルテープの上方に配設され、前記マスクの検出用パターンの映像及びフレキシブルテープのターゲットの反射光を受光する光学素子と、
該光学素子からの反射光を検出する検出器とを備えたことを特徴とするマスクの自動位置決め装置。(公報第1頁左下欄18行?右下欄16行)

1-イ.[産業上の利用分野]
本発明は、半導体素子を実装するフレキシブルテープの製造設備において、フレキシブルテープ上に導電パターンを投影して露光するマスクの自動位置決め方法及び装置に関するものである。(公報第1頁右下欄19行?第2頁左上欄2行)

1-ウ.第3図はフレキシブルテープの一例を説明するための平面図である。図において、(l)は長さ方向に等間隔に、実装する半導体素子(5) ,(5a)・・・(5n),・・・の表面積より大きい面積のデバイスホール(2),(2a)・・・(2n),・・・が設けられた、厚さ75?100μm程度の例えばポリイミドフィルムからなるフレキシブルテープである。・・・
6(審決注;6は丸付き数字)フレキシブルテープ(1)を間欠的に搬送し、デバイスホール(2)?(2n)の周りに導電パターン(3)を露光する。(公報第2頁右上欄1行?左下欄12行)

1-エ.[実施例]
第1図は本発明を説明するための位置決め装置の模式図、第2図はその作用説明図である。なお、第3図、第4図の従来技術と同じ部分には同じ符号を付し、説明を省略する。両図において、(6)はX,Y方向に移動及び水平方向に回転可能に配設されたマスクで、導電パターン(3)を露光するためのパターン(6l)が形成されていることは従来通りであるが、本発明においては、例えばフレキシブルテープ(1)のスプロケット穴(例えば(4x)で、以下基準スプロケット穴という)に対応した位置に、スプロケット穴(4x)と同じ大きさの検出用パターン(62)を設けたものである。
(8)はフレキシブルテープ(1)とレンズ(7)との間において、フレキシブルテープ(1)の基準スプロケット穴(4x)の上方に配置したプリズム、(9)はプリズム(8)の上方に配置されたカメラの如き検出器である。
次に本発明の作用を説明する。なお、本実施例においては、フレキシブルテープ(1)は矢印方向に間欠的に搬送されるものとする。いま、フレキシブルテープ(1)が露光のためレンズ(7)の下に停止すると、光源(図示せず)からレジストが反応しない波長の光をマスク(6)に照射する。これにより、マスク(6)に設けた露光用のパターン(61)及び検出用パターン(62)がレンズ(7)を介してフレキシブルテープ(1)上に投影される。このとき、フレキシブルテープ(1)から反射した検出用パターン(62)の映像及び基準スプロケット穴(4x)からの反射光は、プリズム(8)を経て検出器(9)に加えられるので、検出器(9)により基準スプロケット穴(4x)とマスク(6)の検出用パターン(62)とが一致しているかどうかを検出する。両者が一致しているときは、光源からレジストが反応する波長の光を照射して、フレキシブルテープ(1)上に導電パターン(3)を露光する。
若し、基準パターン(4x)と検出用パターン(62)とが一致していない場合は、例えば画像処理装置によりマスク(6)をX,Y方向に移動し、あるいは回転して両者が一致するように補正し、一致したときは上記と同様にフレキシブルテープ(1)上に導電パターンを露光する。そして、これらの動作はすべて制御器(図示せず)により自動的に行なわれる。(公報第3頁左下欄5行?第4頁左上欄9行)

1-オ.上記基準スプロケット穴(4x)と対角線上にあるスプロケット穴(第2図の(4y))に対応して第2の検出用パターンを設け、両検出用パターンを利用して補正を行なってもよい。(公報第4頁左上欄下から3行?右上欄2行)

上記記載事項、及び各図面から先願明細書には、
「長さ方向に等間隔に、デバイスホール(2)?(2n)が設けられたフレキシブルテープ(1)を間欠的に搬送し、デバイスホール(2)?(2n)の周りに導電パターン(3)を露光するフレキシブルテープの製造設備であって、
レジストが反応する波長の光と、検出器(9)により基準スプロケット穴(4x)、(4y)とマスク(6)の検出用パターン(62)とが一致しているかどうかを検出する、レジストが反応しない波長の光を照射する光源と、
光源から照射される位置に配置されたマスク(6)と、
基準パターン(4x)と検出用パターン(62)とが一致していない場合は、マスク(6)をX,Y方向に移動し、あるいは回転して両者が一致するように補正し、
該マスク(6)と前記フレキシブルテープ(1)との間に配設され、マスク(6)に設けた露光用のパターン(61)及び検出用パターン(62)をフレキシブルテープ(1)上に投影するレンズ(7)とを具備し、
フレキシブルテープ(1)には、導電パターン(3)を露光すべき位置ごとに基準スプロケット穴(4x)、(4y)が形成され、
マスク(6)には、露光用のパターン(61)及びフレキシブルテープ(1)の基準スプロケット穴(4x)、(4y)に対応して検出用パターン(62)が設けられているフレキシブルテープの製造設備。」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

(2)甲第2号証;特開平1-191151号公報(平成1年8月1日公開)
2-ア.[従来の技術]
一般にプリント基板と呼ばれているものには、コンピュータ、テレビ、ステレオ等で用いられるプリンティッドワイヤードボート(以下、PWBという)や、カメラ、電卓、VTR等で用いられるフレキシブルプリンティッドサーキィット(以下、FPCという)等が知られている。PWBは基板素材としてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、セラミック等を使用し厚さが0.8から3.2mm程度、FPCは基板素材としてポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等を使用し厚さが25から125μm程度である。
これらプリント基板の製作には、基板に液状レジスト、ドライフィルムレジスト等の薄いフォトレジスト層を設け、プリントすべきパターンが描かれたフォトマスクを通して該フォトレジストの感光波長で露光する工程を経て、所望のパターンを該フォトレジスト層に設ける。(公報第1頁右下欄2行?下から2行)

2-イ.第1図の露光装置において、まず露光処理を開始する前に使用する原画2を原画設定機構2aによって設定する。
次に、超高圧水銀灯11からの光を照明系l、原画2、投影レンズ3を介して露光面に配置されたワーク5に照射する。ワーク5に照射された光は散乱し、この散乱した光の一部は半透過性薄膜4に反射し顕微鏡6に入射し、この顕微鏡6によって露光像を直接モニタすることができる。モニタの結果、露光像のピントずれ、位置ずれがあれば照明系、ワークの位置、または原画の位置の調整を行う。モニタの結果、ピントずれ、位置ずれがなければ半透過性薄膜4を光路中から除去して露光を開始する。
尚、露光に支障のない位置であれば、半透過性薄膜4をそのままの位置で露光を開始しても良く、この場合は、原画2及びワーク5にアライメントマークを設ける等して、常時モニタすると好適である。(公報第3頁右上欄10行?左下欄8行)

(3)甲第3号証;特開平1-298362号公報(平成1年12月1日公開)
3-ア.〔産業上の利用分野〕
この発明は、露光装置特に感光性レジストを塗布した長尺のフィルムに配線パターンを投影して露光する露光装置におけるフィルムの位置決め方法及びその装置に関する。(公報第2頁左上欄3?8行)

3-イ.この露光装置は、左側に巻出リール3を支持する巻出軸3aとセパレータ巻取リール4を支持するセパレータ巻取軸4aを、右側に巻取リール5を支持する巻取軸5aとセパレータ巻出リール6を支持するセパレータ巻出軸6aをそれぞれ設け、ステッピングモータによりそれぞれ所定角度回動する巻出側及び巻取側のスプロケット7,8と共にフィルムの供給装置を構成している。
中央の上部には、図示しないランプ、インテグレー夕、コンデンサレンズ等からなる露光用光源部9と投影レンズ10とからなる露光装置を有している。
光源部9と投影レンズ10との間に挿入されるパターンマスク11は、第2図に示すように中央部に配線パターン11cを形成したガラス乾板からなり、フィルム1の基準パーフォレーションla、lb(第3図参照)と共役の位置に2個の基準マークlla、llbを形成し、それ自体図示しないマスク枠の所定の位置に固設され、露光装置の所定の位置に装着される。
また、中央の下部には第5図にその詳細を示すように、ステッピングモータ13により装置固定部に対して左右方向に移動し得るXテーブル14、ステッピングモータ15によりXテーブル14に対して紙面に直交する方向に移動し得るYテーブル16、ステッピングモータ17によりタイミングベルト18を介してYテーブル16に対して所定角度回動し得るθテーブル19をそれぞれ設けている。
そして、θテーブル19に第4図に示すようにアパーチャ20c及びアパーチャ面20dを有するアパーチャ枠20をアパーチャ20cの中心をθテ一ブル19の回転中心に合わせて固設し、Xテーブル14,Yテーブル16及びθテーブル19によりアパーチャ面駆動装置を構成すると共に、第6図に示すように、アパーチャ20cの長辺側の中部でフィルム1の基準パーフォレーションla、1bに対応する位置、すなわちパターンマスク11の基準マークlla、11bの投影像の位置を中心としてそれより広い範囲に切欠部20a、20bを設けている。(公報第3頁右下欄3行?第4頁右上欄3行)

3-ウ.この状態からスプロケットギヤ24を所定角度回動させるとフィルム1が摩擦ローラ23の抵抗により適当な張力を与えられ平面性を保持した状態で1駒分右方に送られた後、フィルム圧着装置25によりアパーチャ面20dに押圧されると共に、ループ1cの下端部が図に仮想線で示す上限位置に達し、ループ1dの下端部が下限位置に達する。(公報第4頁右下欄12?19行)

3-エ.ここで、このようなフィルム供給及び給送装置を備えた露光装置のフィルム位置決め方法の原理を第1図を参照して説明する。
アパーチャ枠20にフィルムを給送しない状態で、ミラー31a、31bを投影光路外に退避させて投影しようとするパターンマスク11を所定の位置に装着し、露光用光源部9からの紫外光源によりパターンマスク11をアパーチャ面に投影すると、基準マークlla、llbの像はアパーチャ切欠部20a、2Ob内に投影されるので、それぞれ基準マークlla、11bの像の重心の位置をアパーチャ面20dに合焦させた撮影装置33a、33bにより検出して記憶させる。
次いで、ミラー31a、31bを図示の位置に復帰させ、フィルム1をアパーチャ面20dに給送して所定の位置で停止させると、フィルム1の基準パーフォレーションla、lbはアパーチャ枠切欠部20a、2Ob内に位置する。
この状態で、光源32a、32bを点灯し、ミラー31a、31b(審決注;「32b」は、誤記である。)を介してフィルムに感光しない波長の光によりフィルムの基本パーフォレーション1a、1bを照明し、再び撮像装置33a、33bによってその重心の位置を検出して記憶させ、先に記憶させた基準マーク11a、llbの像の重心の位置とのずれ量を算出し、その算出結果に応じてθテーブル19,Xテーブル14,Yテーブル16をそれぞれ所要量移動させて基準パーフォレーションla、lbの重心の位置を基準マーク11a、11bの像の重心の位置に一致させた後、露光用光源9により配線パターン11cをフィルム1上に投影して露光する。(公報第5頁左上欄7行?右上欄下から4行)

上記記載事項3-ア.、3-ウ.、及び第3図から、長尺のフィルムには、配線パターンを投影して露光すべき複数の駒がフィルムの長さ方向に沿って複数並んでいる点が読み取れる。

第4図から、パターンマスク11は、露光用光源9からの光が照射される位置に配置されていることは明らかである。

上記記載事項3-イ.3-ウ.、及び第3図から、フィルムの供給装置は、投影レンズ10による像の投影位置に、長尺のフィルム1を一駒ずつステップ送りしていることは、明らかである。

したがって、甲第3号証には、
「長尺のフィルム1の長さ方向に沿って並ぶ複数の駒に順次に配線パターン11cを投影して露光する露光装置であって、
配線パターン11cをフィルム1上に投影して露光する露光用光源9と、
露光用光源9からの光が照射される位置に配置されたパターンマスク11と、
照射されたパターンマスク11の配線パターン11cの像を投影する投影レンズ10と、
投影レンズ10による像の投影位置に、長尺のフィルム1を一駒ずつステップ送りするフィルムの供給装置と、
長尺のフィルム1には、一駒の各々に対応して2つの基準パーフォレーションla、lbが形成され、
パターンマスク11には、長尺のフィルム1に投影して露光する配線パターン11cとともに、フィルム1の基準パーフォレーションla、lbと共役の位置に2個の基準マークlla、llbが形成されている、
露光装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

また、甲第3号証には、
「長尺のフィルム1の長さ方向に沿って並ぶ複数の駒に順次に配線パターン11cを投影して露光する露光装置であって、
配線パターン11cをフィルム1上に投影して露光する露光用光源9と、
露光用光源9からの光が照射される位置に配置されたパターンマスク11と、
照射されたパターンマスク11の配線パターン11cの像を投影する投影レンズ10と、
投影レンズ10による像の投影位置に、長尺のフィルム1を一駒ずつステップ送りするフィルムの供給装置と、
長尺のフィルム1には、一駒の各々に対応して2つの基準パーフォレーションla、lbが形成され、
パターンマスク11には、長尺のフィルム1に投影して露光する配線パターン11cとともに、フィルム1の基準パーフォレーションla、lbと共役の位置に2個の基準マークlla、llbが形成されている、
露光装置を使用したフィルム露光方法。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていることも明らかである。

(4)甲第4号証;特開昭60-223122号公報(昭和60年11月7日公開)
4-ア.ウエハ7にはマスク4のアライメントマークと組合うマークが設けられており、8はウエハ7を載置してアライメントのための移動とステップアンドリピート運動を行うステージである。9はアライメント用の光学系で、10はヘリウム・ネオンレーザの様なアライメント用光源、11はアライメントマークの位置ずれを検出する光電検出装置である。アライメント用光源10及びアライメント用光学系9により、マスク4上にアライメントマークとウエハ7上のアライメントマークが投影光学系5及び光学部材6を通して同時に観察又は計測され、その結果に基づいて、マスク4又はステージ8の移動により両者の位置合わせが行われる。(公報第3頁左上欄9行?右上欄2行)

(5)甲第5号証;特開昭57-164528号公報(昭和57年10月9日公開)
5-ア.第2図において、44はシャッターであり、このシャッター44はサーボモーター45によってコントロールを行いながら回転されるようになっている。また、シャッター44は、第3図に示すように、シャッター板44aの円周方向に沿って、露光用穴または露光用フィルター44bと、レジストの感光域以上の波長のみを通過するEラインフィルターなどのアライメント用フィルター44cとを、交互に等間隔で設けたものである。(公報第2頁左上欄12行?右上欄1行)

5-イ.シャッター板44はサーボモーター45で回転させ、同一の光源11からの光を露光用穴または露光用フィルター44bに通してウエハー19に焼付けを行い、またアライメント用フィルター44に通してウエハー19上に像を作るものである。したがって、アライメント専用の光源を削除して、アライメント時の光源と露光時の光源とを一致させたことにより、光学系の簡素化、アライメント光量の増加、およびゾーンアライメント時やチップごとのアライメント時にアライメント時間の短縮をはかることができる利点がある。(公報第2頁右上欄12行?左下欄3行)

(6)甲第6号証;特開平1-227431号公報(平成1年9月11日公開)
6-ア.すなわち、第7図において71は被露光対象物(審決注;「非露光対象物」は、誤記。)であるウェハ、その直上に位置される72は露光用の縮小投影レンズ、73は原版としてのレチクル、74は認識部としてのTVカメラ、75は露光光源と照明光源とを兼ねた水銀ランプである。上記縮小投影レンズ72とTVカメラ74との光路上には反射鏡76、中継レンズ77およびビームスプリッタ78がそれぞれ配置されており、当該ビームスプリッタ78によって透過された光はTVカメラ74に入射される構造となっている。一方、水銀ランプ75とビームスプリッタ78との間には水銀ランプ75からの波長中、E線(546nm)のみを通過させるバンドパスフィルタ80およびコンデンサレンズ81がそれぞれ配置されている。
以上のように、パターン検出のために照明光として、単色光であるE線が用いられており、露光時は露光光であるG線(436nm)が用いられる構造とされていた。(公報第2頁左上欄14行?右上欄12行)

(7)甲第7号証;特開昭62-279629号公報(昭和62年12月4日公開)
7-ア.〔産業上の利用分野〕
本発明は、基板(ウェハ)の厚さムラを測定し、マスクと基板間に一定ギャップを明けて露光するプロキシミテイ方式の露光装置に関する。(公報第1頁右下欄8?11行)

7-イ.基板1は、基板チャック2に真空吸着により固定されている。(公報第2頁右下欄下から3行?下から2行)

(8)甲第8号証;特開平1-250960号公報(平成1年10月5日公開)
8-ア.[産業上の利用分野]
本発明は例えば投影光学装置及びこの装置を用いて、例えばレチクルパターン等を鮮明に結像させる投影露光装置に関するものである。(公報第1頁左下欄下から2行?右下欄2行)

8-イ.また、第3図は第2図におけるフィルム保持台5の詳細を示す断面図であり、51はフィルム保持台5上のフィルム6を吸着する吸着面、81は真空吸着口、82は不図示の真空ポンプと真空吸着口81を連通ずる連通孔で、真空ポンプ(不図示)、連通孔82、真空吸着口81で真空吸着機構を構成しており、(公報第2頁右下欄10?16行)

(9)甲第9号証;特開平1-295261号公報(平成1年11月28日公開)
9-ア.〔産業上の利用分野〕
この発明は、被露光部材を順次所定距離づつ移動させて露光する特に帯状の被露光部材に好適な露光装置で所定のパターンを連続的に露光する露光装置に使用する露光装置の位置合わせ方法及び装置に関する。(公報第2頁左上欄下から3行?右上欄3行)

9-イ.次いで、ステップ2(審決注;公報上では、丸付き数字、以下、ステップのあとの数字も同様。)に移行して、イメージセンサ9bからの読取情報を読込み、イメージセンサ9bの何れかの画素で位置合わせマークMを検出したか否かを判定する。このとき、何れの画素でも位置合わせマークMを検出していないときには、位置合わせマークMを検出するまで待機し、位置合わせマークMを検出したときには、ステップ3に移行して、搬送機構7に駆動停止指令を出力して被露光部材6の搬送を停止させると共に、露光装置8のXYZステージ13の吸着チャック13aを吸着状態に制御して、被露光部材6をXYZステージ13上に吸着保持する。(公報第5頁右上欄下から2行?左下欄10行)

(10)甲第10号証;米国特許第4,109,158号明細書(昭和53(1978)年8月22日公開)
10-ア.この発明は一対の要素を整合された細密接触状態に位置決めする装置に関する。特に、この発明は紫外線露光のため、パターンマスタに隣接したレジストフィルムで覆われ、銅メッキされたフレキシブル(可撓性)なウェブをフォトセルで制御された正確な位置決めを行う位置決め装置に関する。(カラム1、8?13行)

10-イ.一般的なフレキシブルウェブ31の露光処理においては、フレキシブルウェブは真空吸引ドラム51と62の動作により第一の露光ステーション54に引出される。フレキシブルウェブ31のスロット36(図1)がパターンマスタ39の窓45(図2)に近接して通過するとき、フォトトランジスタよりなる光検知素子57の一つは、より低速でドラムが動作するように真空吸引ドラム51と62の動作を制御すべく、スロットと窓を通過した光を検出する。そのため、フレキシブルウェブ31のスロット36とパターンマスタ39の窓43(図2)とが概ね整合されたとき、真空グリップドラム51と62は停止する。もし、スロット36と窓43が正確に整合されない場合には、対応する光検知素子57は、ゆっくりとそして的確にフレキシブルウェブ31の領域を位置決めさせるべく真空グリップドラム51と62の制御を行うように反応し、その結果スロットと窓は正確に位置合わせ(整合)される。(カラム6、1?19行)

10-ウ.同時に、フレキシブルウェブ31のスロット38aと38b(図1)は、それぞれパターンマスタ39の窓44aと44b(図2)に概ね整合される。スロット38a及び38bと窓44a及び44bとが概ね整合された状態で、光検知素子57は、支持フレーム53の位置制御を行わせるような制御動作と、スロット38a及び38bと窓44a及び44bとが正確に位置合わせされるように制御する。この結果、フレキシブルウェブ31の位置決めされた領域とパターンマスタ39との正確な位置決めが実行される。パターンマスタ39のパターンを構成する個々の要素42が位置決めされ、個々の要素中のランド領域は、フレキシブルウェブ31の位置決めされた領域に形成された予め打ち抜きされた穴34に近接して、正確に位置決めされる。(カラム6、22?36行)

10-エ.パタ一ンマスタ39がフレキシブルウェブ31の位置決めされた領域と正確に整合された後、パターンマスタとフレキシブルウェブの領域は気密容器の中で密接して接するように移動され、そしてフォトレジスト材のフィルム35のパターンマスタ39の個々の要素42によって覆われていない部分を露光すべく紫外線ランプ61(図12と13)の光線により露光される。紫外線露光後、フレキシブルウェブ31の一コマごとの割り出し工程が継続し、そしてフレキシブルウェブの次に連続する一つの領域も同様に、位置決めと露光を行うためのステーション54に向かって移動される。(カラム6、37?48行)

(11)甲第11号証;特開昭62-211657号公報(昭和62年9月17日公開)
11-ア.「産業上の利用分野」
本発明は、プリント基板の焼付け方法に関するものであって、さらに詳言すれば、プリント基板の両面に対する焼付けを同時に行うと共に、両面に対するマスクフィルムの位置合せを自動的に達成できるようにしたものである。(公報第2頁左上欄1?6行)

11-イ.支持体24は、マスクフィルム22を保持し、かつその水平姿勢を維持したまま所定方向に変位させることができる。
ここでの所定方向とは、X方向がマスクフィルム22の水平一方向、Y方向がこのX方向に直交する水平方向、θ方向がマスクフィルム22の中心を軸とする回転方向であり、所定の信号指令を受けて変位する。
次に光学装置35は、複数組のテレビカメラ36により構成され、マスクフィルム22、或いはプリント基板14の一部に設けられた位置合せ用の基準マークを撮影するものである。
光学装置35による撮像信号は、制禦値設定装置42に送られ、ここでは、この撮像信号に従って前記した基準マーク同志のズレを算出すると共に、このズレを零とする前記のX方向、Y方向、θ回転方向への変位量を演算し、さらにこの演算した変位信号を出力する。
そして、この制禦値設定装置42の変位信号を受けて、前記した支持体24に装着された変位装置29を作動させ、支持体24をX方向、Y方向に移動させ、或いは、θ方向に回動させるのである。
上述した構成にあって、先ず、前記した上下一対のマスクフィルム22を近接させた姿勢で、光学装置35におけるそれぞれのテレビカメラ36を所定位置に配し、上下の各マスクフィルム22の一部に設けられた位置合せ用の基準マークを同時に撮影する(第2図a参照)。
複数の光学装置35は、それぞれ上下の各マスクフィルム22の各基準マークを撮影するが、マスクフィルム22の伸び変形等によって各基準マークの重なりにズレが生じているので、このズレを最小限に止めるように、光学装置35による撮像信号を制禦値設定装置42に送り、基準マーク同志のズレを算出し、このズレを零とする前記所定方向への変位量を演算し、この制禦値設定装置42の変位信号を受けて、支持体24を変位装置29を介して移動させ、或いは、回動させるのである。
このようにして、上下のマスクフィルム22を位置合せした後、両マスクフィルム22を離反させ、その間にプリント基板14を保持する基板支持枠15を、相互に平行水平姿勢を維持した状態で配置し(第2図b参照)、前記と同様に、光学装置35、制禦値設定装置42、変位装置29を介して一方のマスクフィルム22をプリント基板14に位置合せする(第2図c参照)。(公報第2頁右下欄1行?第3頁右上欄6行)

(12)甲第12号証;特開昭62-253175号公報(昭和62年11月4日公開)
12-ア.特許請求の範囲
(1)複数個の位置決めマークを有する基板の露光すべき面側に、対応する複数個の位置決めマークを有する原版を、両者の位置決めマークが位置合わせされた状態で配置し、原版を通して光を照射して基板を自動的に露光するための自動露光装置であって、
基板待機ステーションと露光ステーションとを有し、
前記基板の位置決めマークと前記原版の位置決めマークとは、各々の大きさが互いに異なっており、さらに
光が透過する構造とされるとともに前記基板を真空吸着して当該基板を垂直状態で保持し、かつ前記基板待機ステーションおよび前記露光ステーションの間を移動する吸着板と、
前記原版を前記露光ステーションにおいて垂直状態で保持する原版枠と、
前記基板の位置決めマークおよび前記原版の位置決めマークを、前記露光ステーションにおいて前記基板および前記原版が重なった状態で検出するための、位置検出用光源および光センサの組合わせからなる光検出機構と、
前記光センサによって検出された前記基板の位置決めマークの位置と前記原版の位置決めマークの位置とを比較する比較回路と、
前記比較回路により求められた前記両位置決めマーク間の位置ずれを修正するように前記原版枠を縦、横、回転方向に移動させるX、Y、θ方向駆動機構と、
前記露光ステーションにあるときの前記吸着板上に保持された前記基板と前記原版枠に保持された前記原版とを互いに近接させ、または離隔させるように、前記吸着板と前記原版枠とを相対的に移動させるZ方向移動機構と、
前記原版と前記基板とを近接させた状態で前記原版側から露光用の光を照射する露光用光源と、を備えた、自動露光装置。

(13)甲第13号証;特開昭59-95523号公報(昭和59年6月1日公開)
13-ア.受光素子(6)は、検出マーク(2)とマスク開口(5)の相対位置に伴って変化するランプ(4)の透過光量を受けて、光電変換された反転信号Aを発生する。この信号Aを、ピークホールド回路(7)を介して出力される信号A’に変換し、該信号AとA’を比較器(8)にて比較し、該信号Aがピーク値に達したとき(AがA’よりも小となったとき)、該比較器(8)より信号Bを発生せしめ、フィルム(1)の駆動系(図示せず)を停止する。(公報第3頁左上欄下から6行?右上欄3行)

(14)甲第14号証;特開昭57-200029号公報(昭和57年12月8日公開)
14-ア.第4図は、本発明の実施例である投影型露光装置を示している。
本発明による露光装置は、フォトレジストに感光する露光用の光とフォトレジストに感光しない位置合せ用の光とを切換えるフィルタ板40と被露光体より反射する位置合せ用の光を検出するイメージセンサ等の検出器30とを含み、露光用の光の焦点位置に前記位置合せ用の光の焦点を結ばせる色収差補正レンズが前記位置合せ用の光の光路に設けてある。また本発明の装置はさらに露光用、位置合せ用等の光を発する超高圧水銀灯36を有し前記水銀灯よりの光を光ファイバ35によりフィルタ板40に導く。さらに被露光体である半導体ウエーハ32を有しフォトマスク33上のパターンをウエーハ32上に投影する。(公報第3頁右上欄4行?末行)

14-イ.第5図において、このフィルタ板は軸54を中心としてステッピングモータで回転される。アパーチャ51及び53には前記水銀灯36より発した光のうちE線のみを透過するフィルタをつけ、アパーチャ52にはG線及びE線のみを透過するフィルタをつけておく。・・・フォトマスク33上に集光された光がG線及びE線の場合はフォトマスク33上の回路パターンを投影レンズ31を介し半導体ウエーハ32上に投影する。またフォトマスク33上に集光された光がE線のみの場合は、フォトマスク上の位置合せマークを色収差補正レンズ38を介しハーフミラー37を透過し投影レンズを介し半導体ウエーハ32上の位置合せターゲット上に投影する。
前記ハーフミラー37は前記半導体ウエーハ32上の位置合せターゲットと前記フォトマスク33上の位置合せマークを前記半導体ウエーハ32へ投影した際の投影像との重複パターンを反射し、前記拡大器39へ導く。イメージセンサ30では前記拡大器39で拡大した前記重複パターンを検出する。(公報第3頁左下欄下から3行?第4頁左上欄6行)

(15)甲第15証;後藤学、衛藤潤生「TBA露光装置」、電子材料7月号、第28巻第7号、株式会社工業調査会、1989年7月1日発行、第38頁?第42頁
15-ア.フィルムは、d(審決注;dは、丸付き文字。)の露光部で、スプロケットホールに位置決めピンが差し込まれ真空吸着される。吸着直後、積算光量制御による露光が行われる。(39頁左欄7?9行)

2.本件発明1が、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものかについて
(1)対比
先願発明と本件発明1とを対比する。
a.先願発明の「フレキシブルテープ(1)」、「導電パターン(3)」は、本件発明1の「帯状のフィルム」、「回路パターン」にそれぞれ相当し、先願発明の、フレキシブルテープの製造設備は、デバイスホール(2)?(2n)が設けられたフレキシブルテープ(1)を間欠的に搬送し、デバイスホール(2)?(2n)の周りに導電パターン(3)を露光するものであるので、フレキシブルテープ(1)のデバイスホール(2)?(2n)の周りで導電パターン(3)を露光すべき部分が、本件発明1の「長さ方向に沿って並ぶ複数のコマ」に相当し、それらを順次に露光していくものであることは明らかである。
したがって、先願発明の「長さ方向に等間隔に、デバイスホール(2)?(2n)が設けられたフレキシブルテープ(1)を間欠的に搬送し、デバイスホール(2)?(2n)の周りに導電パターン(3)を露光するフレキシブルテープの製造設備」は、本件発明1の「帯状のフィルムの長さ方向に沿って並ぶ複数のコマに順次に回路パターンを露光していくフィルム露光装置」に相当する。

b.先願発明の「レジストが反応する波長の光」、「マスク(6)」、「光源」は、本件発明1の「レジストが感度を有する露光波長の光」、「フォトマスク」、「照射部」にそれぞれ相当し、先願発明の、「レジストが反応しない波長の光」は、検出器(9)により基準スプロケット穴(4x)、(4y)とマスク(6)の検出用パターン(62)とが一致しているかどうかを検出するためのものであるので、本件発明1の「レジストが感度を有しないアライメント波長の光」に相当する。
したがって、先願発明の「レジストが反応する波長の光と、検出器(9)により基準スプロケット穴(4x)、(4y)とマスク(6)の検出用パターン(62)とが一致しているかどうかを検出する、レジストが反応しない波長の光を照射する光源」と、本件発明1の「レジストが感度を有する露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換えるフィルタを内蔵し、位置合わせ時はフォトマスクにアライメント波長の光を照射し、露光時には露光波長の光を照射する照射部」とは、「レジストが感度を有する露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換え、位置合わせ時はフォトマスクにアライメント波長の光を照射し、露光時には露光波長の光を照射する照射部」の点で一致する。

c.先願発明は、基準パターン(4x)、(4y)と検出用パターン(62)とが一致していない場合は、マスク(6)をX,Y方向に移動し、あるいは回転して両者が一致するように補正するのであるから、本件発明1の「フォトマスクのX,Y,θ方向の位置調節機構」に相当する機構を有していることは自明である。

d.先願発明の「マスク(6)に設けた露光用のパターン(61)及び検出用パターン(62)をフレキシブルテープ(1)上に投影するレンズ(7)」は、本件発明1の「照射されたフォトマスクの像を投影する投影レンズ」に相当する。

e.先願発明は、上記a.で述べたように、フレキシブルテープ(1)を間欠的に搬送し、デバイスホール(2)?(2n)の周りに導電パターン(3)を露光するものであるので、フレキシブルテープ(1)のデバイスホール(2)?(2n)の周りで導電パターン(3)を露光すべき部分が、本件発明1の「長さ方向に沿って並ぶ複数のコマ」に相当し、それらを順次に露光していくので、本件発明1の「投影レンズによる像の投影位置に、フィルムを一コマずつステップ送りするフィルム送り機構」を有していることは明らかである。

f.先願発明のフレキシブルテープ(1)に導電パターン(3)を露光すべき位置ごとに「基準スプロケット穴(4x)、(4y)」が形成されており、それらは、「検出器(9)により基準スプロケット穴(4x)、(4y)とマスク(6)の検出用パターン(62)とが一致しているかどうかを検出する」(上記記載事項エ.)ためのものであるので、本件発明1の「フィルム側アライメント用マーク」に相当する。
したがって、先願発明の「フレキシブルテープ(1)には、導電パターン(3)を露光すべき位置ごとに基準スプロケット穴(4x)、(4y)が形成され」は、本件発明1の「帯状のフィルムには、一コマの各々に対応して少なくとも二つ以上のフィルム側アライメント用マークが形成され」に相当する。

g.上記f.から、先願発明の「検出用パターン(62)」は、本件発明1の「フォトマスク側アライメント用マーク」に相当し、先願発明の「マスク(6)には、露光用のパターン(61)及びフレキシブルテープ(1)の基準スプロケット穴(4x)、(4y)に対応して検出用パターン(62)が設けられている」は、本件発明1の「フォトマスクには、フィルムに投影して転写すべき回路パターンとともに、前記フィルム側アライメント用マークのそれぞれに対応してフォトマスク側アライメント用マークが形成されている」に相当する。

したがって、先願発明と本件発明1とは、
「帯状のフィルムの長さ方向に沿って並ぶ複数のコマに順次に回路パターンを露光していくフィルム露光装置であって、
レジストが感度を有する露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換え、位置合わせ時はフォトマスクにアライメント波長の光を照射し、露光時には露光波長の光を照射する照射部と、
照射部からの光が照射される位置に配置されたフォトマスクと、
フォトマスクのX,Y,θ方向の位置調節機構と、
照射されたフォトマスクの像を投影する投影レンズと、
投影レンズによる像の投影位置に、フィルムを一コマずつステップ送りするフィルム送り機構と、
を具備し、
帯状のフィルムには、一コマの各々に対応して少なくとも二つ以上のフィルム側アライメント用マークが形成され、
フォトマスクには、フィルムに投影して転写すべき回路パターンとともに、前記フィルム側アライメント用マークのそれぞれに対応してフォトマスク側アライメント用マークが形成されていることを特徴とするフィルム露光装置。」である点で一致し、次の各点で相違する。

相違点1:
レジストが感度を有する露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換える手段として、本件発明1は、フィルタを照射部に内蔵しているのに対し、先願発明は、そのようなフィルタを有していない点。

相違点2:
本件発明1は、露光時にはフィルムを真空吸着する機構を有するステージを具備しているのに対し、先願発明は、そのようなステージを具備していない点。

(2)判断
相違点1について
本件発明1と同様な、マスクと被露光物とを位置合わせする露光装置において、露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換えるフィルタを有する点は、上記甲第5号証、及び甲第14号証に記載されるように周知の技術事項であると認められ、パターン検出のために照明光であるE線のみを透過させるフィルタも甲第6号証に記載されるように周知の技術事項であると認められる。
しかし、先願明細書には、上記相違点1に係る構成を具体的に想起させる記載は一切なく、相違点1に係る構成が設計上の微差ということもできないので、相違点1に係る構成は、実質的な相違点である。

相違点2について
本件発明1と同様な、マスクと被露光物とを位置合わせする露光装置において、被露光物を真空吸着する機構は、上記甲第7?9号証、及び甲第15号証に記載されるように周知の技術事項であると認められ、それらには、構造的に被露光物を吸着する台が必須であり、それをステージということができる。したがって、上記相違点2に係る構成は、周知の技術事項であると認められる。
しかし、先願明細書には、上記相違点2に係る構成を具体的に想起させる記載は一切なく、相違点2に係る構成が設計上の微差ということもできないので、相違点2に係る構成は、実質的な相違点である。

したがって、本件発明1は、先願発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものではない。

3.本件発明2?4が、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものかについて
本件発明2、3は、いずれも、請求項1に記載のフィルム露光装置を使用したフィルム露光方法に関する発明であり、上記「2.(2)」で、示した判断と同様の理由で、先願発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものではない。

本件発明4は、請求項1に記載のフィルム露光装置において、フィルム側アライメント用マークの構成を限定した発明であり、上記「2.(2)」で、示した判断と同様の理由で、先願発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものではない。

4.本件発明1が、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものかについて
(1)対比
a.本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「長尺のフィルム1」は、本件発明1の「帯状のフィルム」に相当し、以下、同様に「駒」は「コマ」に、「配線パターン」は「回路パターン」に、「露光装置」は「フィルム露光装置」に、「パターンマスク11」は「フォトマスク」に、「照射されたパターンマスク11の配線パターン11cの像を投影する投影レンズ10」は「照射されたフォトマスクの像を投影する投影レンズ」に、「投影レンズ10による像の投影位置に、長尺のフィルム1を一駒ずつステップ送りするフィルムの供給装置」は「投影レンズによる像の投影位置に、フィルムを一コマずつステップ送りするフィルム送り機構」に、それぞれ相当する。

b.引用発明の「配線パターン11cをフィルム1上に投影して露光する露光用光源9」と、本件発明1の「レジストが感度を有する露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換えるフィルタを内蔵し、位置合わせ時はフォトマスクにアライメント波長の光を照射し、露光時には露光波長の光を照射する照射部」とは、「照射部」である点で、一致する。

c.引用発明の「2つの基準パーフォレーションla、lb」は、本件発明1の「少なくとも二つ以上のフィルム側アライメント用マーク」に相当するので、引用発明の「長尺のフィルム1には、一駒の各々に対応して2つの基準パーフォレーションla、lbが形成され」は、本件発明1の「帯状のフィルムには、一コマの各々に対応して少なくとも二つ以上のフィルム側アライメント用マークが形成され」に相当する。

d.引用発明の「基準マークlla、llb」は、本件発明1の「フォトマスク側アライメント用マーク」に相当するので、引用発明の「パターンマスク11には、長尺のフィルム1に投影して露光する配線パターン11cとともに、フィルム1の基準パーフォレーションla、lbと共役の位置に2個の基準マークlla、llbが形成されている」は、本件発明1の「フォトマスクには、フィルムに投影して転写すべき回路パターンとともに、前記フィルム側アライメント用マークのそれぞれに対応してフォトマスク側アライメント用マークが形成されている」に相当する。

したがって、引用発明と本件発明1とは、
「帯状のフィルムの長さ方向に沿って並ぶ複数のコマに順次に回路パターンを露光していくフィルム露光装置であって、
照射部と、
照射部からの光が照射される位置に配置されたフォトマスクと、
照射されたフォトマスクの像を投影する投影レンズと、
投影レンズによる像の投影位置に、フィルムを一コマずつステップ送りするフィルム送り機構と、
を具備し、
帯状のフィルムには、一コマの各々に対応して少なくとも二つ以上のフィルム側アライメント用マークが形成され、
フォトマスクには、フィルムに投影して転写すべき回路パターンとともに、前記フィルム側アライメント用マークのそれぞれに対応してフォトマスク側アライメント用マークが形成されているフィルム露光装置。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

相違点1:
照射部に関し、本件発明1は、「レジストが感度を有する露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換えるフィルタを内蔵し、位置合わせ時はフォトマスクにアライメント波長の光を照射し、露光時には露光波長の光を照射する」のに対し、引用発明では、そのような限定がない点。

相違点2:
本件発明1は、「フォトマスクのX,Y,θ方向の位置調節機構」を具備しているのに対し、引用発明では、そのような構成を具備していない点。

相違点3:
本件発明1は、「露光時にはフィルムを真空吸着する機構を有するステージ」を具備しているのに対し、引用発明では、そのような構成を具備していない点。

(2)判断
相違点1について
本件発明1と同様な、マスクと被露光物とを位置合わせする露光装置において、露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換えるフィルタを有する点は、上記甲第5号証、及び甲第14号証に記載されるように周知の技術事項であると認められる。
したがって、引用発明に周知の技術事項を適用し、上記相違点1に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易である。

これに対し、被請求人は、甲第5号証、甲第14号証のものは、光学的原理が誤ったものと主張している。しかし、被請求人が指摘する両甲号証の図面は、両号証に記載された発明の理解をし易くするためのものであり、細部に到るまで光学的原理に基づき、正確に記載されている必要はない。両甲号証の上記摘記事項から、当業者であれば、上記周知の技術事項が記載されていると理解し得ることは、明らかである。

相違点2について
本件発明1と同様な、マスクと被露光物とを位置合わせする露光装置において、フォトマスクのX,Y,θ方向の位置調節機構を具備した点は、上記甲第11号証、及び甲第12号証に記載されるように周知の技術事項であると認められる。また、X,Y,θ方向の限定はないものの、マスクの位置調節をすることは、甲第2号証、甲第4号証にも記載されている。
したがって、引用発明に周知の技術事項を適用し、上記相違点2に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易である。

これに対し、被請求人は、甲第11号証、甲第12号証のものは、本件発明のようにフィルム状のワークの露光を対象としたものではないと主張している。しかし、マスクとフィルム状の被露光物とを位置合わせする露光装置において、正確な位置合わせが必要なことは、引用発明に示されているので、その具体的手段として、両甲号証に記載された周知の技術事項を適用することは、当業者にとって容易である。

また、被請求人は、甲第3号証に記載のものは、光源部9から常に露光波長の光が照射されているため、本件発明のように、一コマごとにフォトマスク側マークの投影像がフィルム側マークに重なるように位置合わせをすることができない、と主張している。しかし、マスクと被露光物とを位置合わせする露光装置において、露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換えるフィルタを有する点は、上記「相違点1について」で述べたように周知の技術事項であり、それを引用発明に適用することは当業者にとって容易である。そして、その際に、マスクと被露光物との相対的位置合わせをするのに、甲第11号証、甲第12号証に記載された周知の技術事項を適用して、マスク位置を調整することも、当業者にとって何ら格別の創意工夫を要することでもない。

相違点3について
被露光物を真空吸着する機構を有するステージは、甲第7?9号証、及び甲第15号証に記載されるように周知の技術事項であると認められる。
したがって、引用発明に周知の技術事項を適用し、上記相違点3に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易である。

そして、本件発明1の効果は、引用発明及び甲号各証に記載の周知の技術事項から予測できる範囲内のものであり、格別のものとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明に、甲号各証に記載の周知の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.本件発明2が、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものかについて
(1)本件発明2
本件発明2は、「請求項1に記載のフィルム露光装置を使用したフィルム露光方法であって、
フィルム送り機構によりフィルムの一コマがステップ送りされてきた時に、その一コマに係るフィルム側アライメント用マークがフォトマスク側アライメント用マークの像の投影位置に達したか否かを検出部により検出し、
この検出部からの信号によって一コマを停止させ、
その後、露光を行うことを特徴とするフィルム露光方法。」に関するものである。

ここで、請求項1に記載のフィルム露光装置については、上記「4.本件発明1が、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものかについて」で既に検討済みであるので、以下では、その余の部分について検討する。

(2)対比
引用発明2の「投影レンズ10による像の投影位置に、長尺のフィルム1を一駒ずつステップ送りするフィルムの供給装置」におけるフィルム位置決め方法は、上記記載事項3-エ.に示されるように、「フィルム1をアパーチャ面20dに給送して所定の位置で停止させると、フィルム1の基準パーフォレーションla、lbはアパーチャ枠切欠部20a、20b内に位置する。この状態で、光源32a、32bを点灯し、ミラー31a、31b(審決注;「32b」は、誤記である。)を介してフィルムに感光しない波長の光によりフィルムの基本パーフォレーションia、1bを照明し、再び撮像装置33a、33bによってその重心の位置を検出して記憶させ、先に記憶させた基準マーク11a、llbの像の重心の位置とのずれ量を算出し、その算出結果に応じてθテーブル19、Xテーブル14,Yテーブル16をそれぞれ所要量移動させて基準パーフォレーションla、lbの重心の位置を基準マーク11a、11bの像の重心の位置に一致させた後、露光用光源9により配線パターン11cをフィルム1上に投影して露光する」ものである。

本件発明2は、一コマがステップ送りされてきた時に、その一コマに係るフィルム側アライメント用マークがフォトマスク側アライメント用マークの像の投影位置に達したか否かを検出部により検出し、この検出部からの信号によって一コマを停止させるものであるのに対し、
引用発明2は、所定の位置で停止させてから、フィルムの基本パーフォレーション1a、1bを照明し、再び撮像装置33a、33bによってその重心の位置を検出して記憶させ、先に記憶させたパターンマスク11の基準マーク11a、llbの像の重心の位置とのずれ量を算出し、その算出結果に応じてθテーブル19、Xテーブル14,Yテーブル16をそれぞれ所要量移動させて基準パーフォレーションla、lbの重心の位置を基準マーク11a、11bの像の重心の位置に一致させる点で相違する。(以下、相違点4という。)

(3)判断
相違点4について
フィルム状のものを移動して、所定の位置に位置決めするのに、フィルム状のものに設けた開口が、基準となるマスクの開口に達したか否かを検出部により検出し、検出部からの信号によって停止させることは、甲第10号証、甲第13号証に記載されるように周知の技術事項であると認められる。両甲号証に記載されたものは、基準となるマスクの開口位置が、像の投影位置であるとの限定はないが、両甲号証に記載されたものも、本件発明2の実施例と同様両開口を透過したアライメント用の光の強さにより開口の一致を検出するものであるので、引用発明2に適用した場合に、そのような限定を付すことは、当業者にとって何ら格別のことではない。
そして、本件発明1は引用発明、及び周知の技術事項から容易であるので、引用発明2に周知の技術事項を適用し、上記相違点4に係る本件発明2の構成を得ることは、当業者にとって容易である。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明2は、甲第3号証に記載された発明に、甲号各証に記載の周知の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.本件発明3が、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものかについて
(1)本件発明3
本件発明3は、「請求項1に記載のフィルム露光装置を使用したフィルム露光方法であって、
フィルム送り機構によりフィルムの一コマをステップ送りし、
このステップ送り後に停止した一コマに係るフィルム側アライメント用マークの位置に、フォトマスク側アライメント用マークの像が投影されるように、フォトマスク位置調節機構を駆動してフォトマスクの位置制御を行い、
その後、露光を行うことを特徴とするフィルム露光方法。」に関するものである。

ここで、請求項1に記載のフィルム露光装置については、上記「4.本件発明1が、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものかについて」で既に検討済みであるので、以下では、その余の部分について検討する。

(2)対比
本件発明3は、このステップ送り後に停止した一コマに係るフィルム側アライメント用マークの位置に、フォトマスク側アライメント用マークの像が投影されるように、フォトマスク位置調節機構を駆動してフォトマスクの位置制御を行うものであるのに対し、
引用発明2は、上記記載事項3-エ.に示されるように、「フィルム1をアパーチャ面20dに給送して所定の位置で停止させると、フィルム1の基準パーフォレーションla、lbの位置と、先に記憶させたパターンマスク11の基準マーク11a、llbの像の重心の位置とのずれ量を算出し、その算出結果に応じてθテーブル19、Xテーブル14,Yテーブル16をそれぞれ所要量移動させて基準パーフォレーションla、lbの重心の位置を基準マーク11a、11bの像の重心の位置に一致させるものであるので、両者は、以下の点(以下、相違点5という。)で相違する。

相違点5;本件発明3は、フィルム側アライメント用マークの位置に、フォトマスク側アライメント用マークの像が投影されるように、フォトマスク位置調節機構を駆動してフォトマスクの位置制御を行うのに対し、引用発明2は、フィルム1を移動している点。

(3)判断
相違点5について
フォトマスク位置調節機構を駆動してフォトマスクの位置制御を行う点は、甲第2号証、甲第10号証に記載されるように、周知の技術事項であると認められる。甲第2号証に記載されたものは、フォトマスク側アライメント用マークの像が投影されるようになっていると認められる。
そして、本件発明1は引用発明、及び周知の技術事項から容易であるので、引用発明2に周知の技術事項を適用し、上記相違点5に係る本件発明3の構成を得ることは、当業者にとって容易である。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明3は、甲第3号証に記載された発明に、甲号各証に記載の周知の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.本件発明4が、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものかについて
(1)本件発明4
本件発明4は、「請求項1に記載のフィルム露光装置において、
フィルム側アライメント用マークは、フィルムに形成された穴または透光部により構成されていることを特徴とするフィルム露光装置。」に関するものである。

ここで、請求項1に記載のフィルム露光装置については、上記「4.本件発明1が、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものかについて」で既に検討済みであるので、以下では、その余の部分について検討する。

(2)対比・判断・まとめ
引用発明の「基準パーフォレーションla、lb」は、本件発明1の「少なくとも二つ以上のフィルム側アライメント用マーク」に相当し(上記「4.本件発明1が、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものかについて(1)対比」参照。)、それらは、「穴」であることは明らかである。

したがって、本件発明4は、上記「4.本件発明1が、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものかについて(2)判断」で述べたことと同様の理由により、甲第3号証に記載された発明に、甲号各証に記載の周知の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1から4についての特許は、甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第4?15号証に記載された周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とする。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
フィルム露光装置およびフィルム露光方法
(57)【特許請求の範囲】
(1)帯状のフィルムの長さ方向に沿って並ぶ複数のコマに順次に回路パターンを露光していくフィルム露光装置であって、
レジストが感度を有する露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換えるフィルタを内蔵し、位置合わせ時はフォトマスクにアライメント波長の光を照射し、露光時には露光波長の光を照射する照射部と、
照射部からの光が照射される位置に配置されたフォトマスクと、
フォトマスクのX,Y,θ方向の位置調節機構と、
照射されたフォトマスクの像を投影する投影レンズと、
投影レンズによる像の投影位置に、フィルムを一コマずつステップ送りするフィルム送り機構と、
露光時にはフィルムを真空吸着する機構を有するステージとを具備し、
帯状のフィルムには、一コマの各々に対応して少なくとも二つ以上のフィルム側アライメント用マークが形成され、
フォトマスクには、フィルムに投影して転写すべき回路パターンとともに、前記フィルム側アライメント用マークのそれぞれに対応してフォトマスク側アライメント用マークが形成されていることを特徴とするフィルム露光装置。
(2)請求項1に記載のフィルム露光装置を使用したフィルム露光方法であって、
フィルム送り機構によりフィルムの一コマがステップ送りされてきた時に、その一コマに係るフィルム側アライメント用マークがフォトマスク側アライメント用マークの像の投影位置に達したか否かを検出部により検出し、
この検出部からの信号によって一コマを停止させ、
その後、露光を行うことを特徴とするフィルム露光方法。
(3)請求項1に記載のフィルム露光装置を使用したフィルム露光方法であって、
フィルム送り機構によりフィルムの一コマをステップ送りし、
このステップ送り後に停止した一コマに係るフィルム側アライメント用マークの位置に、フォトマスク側アライメント用マークの像が投影されるように、フォトマスク位置調節機構を駆動してフォトマスクの位置制御を行い、
その後、露光を行うことを特徴とするフィルム露光方法。
(4)請求項1に記載のフィルム露光装置において、
フィルム側アライメント用マークは、フィルムに形成された穴または透光部により構成されていることを特徴とするフィルム露光装置。
(5)請求項4に記載のフィルム露光装置において、
投影レンズによる像の投影位置に投影されたフォトマスク側アライメント用マークの一次投影像を再度投影する光学系と、この光学系による二次投影像を受ける検出器とを具備してなることを特徴とするフィルム露光装置。
(6)請求項5に記載のフィルム露光装置を使用したフィルム露光方法であって、
フィルム送り機構によりフィルムの一コマをステップ送りし、
このステップ送り後、フォトマスク位置調節機構を駆動することにより、停止した一コマに係るフィルム側アライメント用マークを含む領域に、フォトマスク側アライメント用マークの一次投影像を走査させるとともに、
当該フィルム側アライメント用マークを透過した光を検出器により受光させ、当該検出器よりの出力信号の立ち上がりカーブと立ち下がりカーブにおける互いに等しい出力レベルの位置をそれぞれ記憶し、
記憶されたそれぞれの位置に基づいて、フォトマスク側アライメント用マークの像をフィルム側アライメント用マークと一致させるようフォトマスク位置調節機構を駆動して、フォトマスクの位置制御を行い、
その後、露光を行うことを特徴とするフィルム露光方法。
(7)請求項5に記載のフィルム露光装置において、
フォトマスク側アライメント用マークの一次投影像を、
検出器が設けられた位置とは異なる位置に分割して投影する第2の光学系と、この第2の光学系による二次投影像を受けるイメージセンサーと、当該イメージセンサーを介して接続されたモニター機構とを具備してなることを特徴とするフィルム露光装置。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、例えばTAB(Tape Automated Bonding)方式の電子部品の実装に使用されるフィルム回路基板の製作に好適なフィルム露光装置およびフィルム露光方法に関する。
〔従来の技術〕
物体の表面に微細加工を施す技術として、フォトリソグラフィの技術が知られている。この技術は、半導体集積回路のほか、最近ではTAB方式の電子部品の実装に使用されるフィルム回路基板の製作にも応用されている。
しかして、転写される回路パターンの位置ずれが生ずると回路基板用の場合には実装ミスとなるため、搬送されるフィルムの正しい位置にフォトマスクのパターンの像が露光されるよう位置合わせが必要とされる。この位置合わせの精度は、例えば±10μm以内であることが要求されている。
この位置合わせは、従来、次のようにして行われていた。すなわち、まず露光処理の前において、アライメント用マークが設けられた露光見本をステージに配置し、ランプからの光をアライメント用マークが設けられたフォトマスクを通して露光してフォトマスク側アライメント用マークの像を投影し、半透過性薄膜を介して、露光見本上のアライメント用マークと結像したフォトマスク側アライメント用マークの像の両方を顕微鏡によって観察する。
フォトマスク側アライメント用マークの像と露光見本上のアライメント用マークとが一致するように、フォトマスクの位置調節機構を操作してフォトマスクを光軸に直角な方向に移動させて、位置合わせを行う。
このようにして位置合わせされたフォトマスクを物体(面)とした場合の投影レンズの像面の位置に、フィルムの一コマを正しく位置させるため、送りローラによるフィルム送りの距離を予め設定するとともに像面の位置の手前にスプロケットローラを配置して送り方向の精度を向上させている。さらに、予め設定された距離のフィルム送りの後に停止したフィルムの一コマに対して位置決めピンを有するステージが上昇し、位置決めピンがフィルムの一コマの部分のパーフォレーションに下側から嵌合して像面に対する光軸に直角な平面内での位置合わせが行われる。光軸方向での像面に対する位置合わせは、ステージが下方から押し上げたフィルムの一コマを抑える抑え板により行われる。
このように従来の位置合わせは、露光装置の操業を始める前に、露光見本によってフォトマスクを正しい位置に配置しておき、送りローラのステップ送りの送り距離と、送り方向の精度と、ステージの位置決めピンのパーフォレーションへの嵌合や抑え板とにより、露光しようとするフィルムの一コマをフォトマスクに対して正しいとされる位置に配置するに過ぎないものである。すなわち、露光中はフィルムに対して何のフィードバック制御もなされていない。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、このようなスプロケットローラや位置決めピン等による機械的な位置合わせには、精度上限界があり、例えば±10μm程度以下の位置合わせは、もはやこの方式では行い得ない。
この原因は、例えば帯状に長いフィルムは完全な直線でなく僅かながら蛇行している場合がある等による。この場合には、スプロケットローラでフィルムを強制的に真っ直ぐに搬送するようにしても、ステージ上で許容限度以上にずれて搬送されることがある。
また、フィルムのパーフォレーションにステージに設けた位置決めピンを強制的に嵌入させて位置決めしているが、上記のように許容限度以上にずれて搬送されると、パーフォレーションが傷んで広がってしまい、位置決めピンによる位置決めの精度がさらに低下してしまう。
また、基板に用いられるフィルムの厚さは、コストダウン等の理由から薄くなる傾向にあり、例えば30μm以下の厚さになると、もはや位置決めピンによる方式は、パーフォレーションの損傷の問題が大きく、採用し得ない。
本発明の目的は、位置決めピンのパーフォレーションへの嵌入を不要にしつつ、正しい位置での像の投影を可能にし、パターンの露光転写位置の精度のさらに高いフィルム露光装置およびフィルム露光方法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するため、本発明のフィルム露光装置は、帯状のフィルムの長さ方向に沿って並ぶ複数のコマに順次に回路パターンを露光していくフィルム露光装置であって、レジストが感度を有する露光波長の光と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換えるフィルタを内蔵し、位置合わせ時はフォトマスクにアライメント波長の光を照射し、露光時には露光波長の光を照射する照射部と、照射部からの光が照射される位置に配置されたフォトマスクと、フォトマスクのX,Y,θ方向の位置調節機構と、照射されたフォトマスクの像を投影する投影レンズと、投影レンズによる像の投影位置に、フィルムを一コマずつステップ送りするフィルム送り機構と、露光時にはフィルムを真空吸着する機構を有するステージとを具備し、帯状のフィルムには、一コマの各々に対応して少なくとも二つ以上のフィルム側アライメント用マークが形成され、フォトマスクには、フィルムに投影して転写すべき回路パターンとともに、前記フィルム側アライメント用マークのそれぞれに対応してフォトマスク側アライメント用マークが形成されていることを特徴とする。
本発明のフィルム露光装置において、フィルム側アライメント用マークは、フィルムに形成された穴または透光部により構成されていることが好ましい。
また、投影レンズによる像の投影位置に投影されたフォトマスク側アライメント用マークの一次投影像を再度投影する光学系と、この光学系による二次投影像を受ける検出器とを具備してなることが好ましい。
更に、フォトマスク側アライメント用マークの一次投影像を、検出器が設けられた位置とは異なる位置に分割して投影する第2の光学系と、この第2の光学系による二次投影像を受けるイメージセンサーと、当該イメージセンサーを介して接続されたモニター機構とを具備してなることが好ましい。
本発明のフィルム露光方法は、上記のフィルム露光装置を使用したフィルム露光方法であって、フィルム送り機構によりフィルムの一コマがステップ送りされてきた時に、その一コマに係るフィルム側アライメント用マークがフォトマスク側アライメント用マークの像の投影位置に達したか否かを検出部により検出し、この検出部からの信号によって一コマを停止させ、その後、露光を行うことを特徴とする。
本発明の他のフィルム露光方法は、上記のフィルム露光装置を使用したフィルム露光方法であって、フィルム送り機構によりフィルムの一コマをステップ送りし、このステップ送り後に停止した一コマに係るフィルム側アライメント用マークの位置に、フォトマスク側アライメント用マークの像が投影されるように、フォトマスク位置調節機構を駆動してフォトマスクの位置制御を行い、その後、露光を行うことを特徴とする。
本発明のフィルム露光方法において、フィルム送り機構によりフィルムの一コマをステップ送りし、このステップ送り後、フォトマスク位置調節機構を駆動することにより、停止した一コマに係るフィルム側アライメント用マークを含む領域に、フォトマスク側アライメント用マークの一次投影像を走査させるとともに、当該フィルム側アライメント用マークを透過した光を検出器により受光させ、当該検出器よりの出力信号の立ち上がりカーブと立ち下がりカーブにおける互いに等しい出力レベルの位置をそれぞれ記憶し、記憶されたそれぞれの位置に基づいて、フォトマスク側アライメント用マークの像をフィルム側アライメント用マークと一致させるようフォトマスク位置調節機構を駆動して、フォトマスクの位置制御を行い、その後、露光を行うことが好ましい。
〔作用〕
フォトマスク側アライメント用マークの投影像の位置を、フィルム側アライメント用マークに一致させれば、フォトマスクとフィルムの一コマの位置が合う。
フォトマスク側アライメント用マークの投影像の位置がフィルム側アライメント用マークに一致したことを検出してからフィルムの一コマを停止させるようにすれば、停止位置の精度が高くなる。
ステップ送り後に停止した一コマのフィルム側アライメント用マークの位置に、フォトマスク側アライメント用マークが一致するようにフォトマスクの位置を調節すれば、位置ずれして搬送された場合でも、それに追従してフォトマスクの位置が変更されるので、投影される像の位置精度が高くなる。
フィルム露光装置がフォトマスク側アライメント用マークの一次投影像を再度投影する光学系と、この光学系による二次投影像を受ける検出器とを具備していれば、フィルム側アライメント用マークを透過した光が確実に検出器により受光されるので、検出器が適正な出力信号を発生し、これにより適正な位置制御が可能になる。
また、このフィルム露光装置を用い、検出器よりの出力信号の立ち上がりカーブと立ち下がりカーブにおける互いに等しい出力レベルの位置をそれぞれ記憶し、記憶されたそれぞれの位置に基づいて、フォトマスクの位置制御を行えば、フォトマスク側アライメント用マークの像とフィルム側アライメント用マークとの重なり面積がほぼ一定となる位置にフォトマスクを停止させることができるので、より確実な位置制御が可能になる。
イメージセンサーと、モニター機構とを具備してなる露光装置を用い、投影されたフォトマスク側アライメント用マークの像をモニターする場合には、正しい位置制御がなされているか否かを目視により確認することができる。
〔実施例〕
第1図は本発明の一実施例に係るフィルム露光装置の説明図である。この装置は、帯状のフィルムFの長さ方向に沿って順次にフォトマスクMの回路パターンを露光していくものである。
10は照射部であり、超高圧水銀灯等のようにレジストが感度を有する光を効率的に放射するランプ11を内蔵している。
また、照射部10は、レジストが感度を有する露光波長の光(第4図中の実線)と、レジストが感度を有しないアライメント波長の光を切り換えるフィルタを内蔵しており、このフィルタを切り換えることにより位置合わせ時にはフォトマスクMにアライメント波長の光が照射され、露光時には露光波長の光が照射される。このフィルタとしては、例えばレジストが感度を有する500nm以下の光をカットするシャープカットフィルタが使用され、露光時にはこのシャープカットフィルタを光路から退避させる。
Mはフォトマスクであり、照射部10からの光が照射される位置に配置されている。このフォトマスクMには、第2図に示すように、フィルムFに投影して転写すべき回路パターンMPとともに、後述するフィルム側アライメント用マーク(以下「フィルム側マーク」という。)FMのそれぞれに対応してフォトマスク側アライメント用マーク(以下「フォトマスク側マーク」という。)MMが形成されている。フォトマスク側マークMMは方形状の不透明部分に十文字の透明部分を設けて構成している。MAは粗調整用マークである。
帯状のフィルムFには、第3図に示すように、一コマF10の各々に対応して二つのフィルム側マークFMが形成されている。この例ではフィルム側マークFMは丸型の穴により構成されている。
MM′はフォトマスク側マークの像であり、このフォトマスク側マークの像MM′は、後述するフォトマスクMの移動動作により、フィルム側マークFMを含む領域、すなわち、投影レンズによる像の投影位置であるフィルムFの上面および穴よりなるフィルム側マークFMの仮想面FK上を走査される。
本実施例では、フィルム側マークFMおよびフォトマスク側マークMMは、フィルムFの幅方向に二つ設けられているが、これに限られず、フィルムの長さ方向や斜め方向に二つ設けてもよい。また、三つ、四つとさらに多く設けてもよい。
M10はフォトマスクの位置調節機構であり、フォトマスクホルダーM11とサーボモータM12を備えている。後述のシステムコントローラ50からの信号によってサーボモータM12が駆動されるとフォトマスクホルダーM11が移動してフォトマスクMが追従制御される。このフォトマスクホルダーM11は、光軸に直角な平面内で互いに直角な二つの方向(X方向,Y方向)におけるフォトマスクMの位置を調節することが可能であり、また光軸を中心としてフォトマスクMを回転させる調節(θの調節)が可能である。従って、フォトマスクホルダーM11を駆動するサーボモータM12は、X,Y,θそれぞれの駆動が可能なように、実際には三つ設けられている。
20は投影レンズであり、照射されたフォトマスクMの像を投影するものである。この投影レンズ20は、例えば露光線幅5μm程度の解像度を有するものである。
30はステージであり、第4図にも示すように、上面が基準面であり、フィルムFのステップ送り時にはエアを吹き出し、露光時にはフィルムを真空吸着する真空吸着孔31が設けられている。32は真空ポンプ、34はバルブである。この例では、真空吸着孔31は、フィルムFのステップ送りの際にフィルムFをエアで浮上させる逆風孔を兼用しており、33はコンプレッサ、35はバルブである。36,37はフィルムFのステップ送りの際にフィルムFの前部および後部を浮上させるものである。バルブ34,35は後述のシステムコントローラ50からの信号によって制御される。
40は検出部であり、この検出部40は、第4図に示すように、対物レンズ41と、集光レンズ42と、検出器43とを有するユニットタイプのものである。この例において検出部40はステージ30に埋め込まれ、対物レンズ41がフィルム側マークFMとしての穴を臨む位置に配置されている。検出器43は、高感度の光電変換素子よりなる変換器、例えば光電管またはフォトダイオード等からなる。また、検出器43としてイメージセンサーを用いることもできる。44は増幅器である。
50はCPUを含むシステムコントローラである。
60はフィルム送り機構であり、投影レンズ20による像の投影位置に、フィルムFの一コマF10をステップ送りするものである。送りローラ61はモータ62によって駆動される。モータ62はシステムコントローラ50からの信号により駆動開始され、後述するようにシステムコントローラ50からの信号により減速された後、検出部40からの信号を受けたシステムコントローラ50からの信号により停止する。63は押えローラ、64はスプロケットローラ、65は押えローラ、66,67は補助ローラ、68は巻き出しリール、69は巻き取りリールである。
なお、粗調整用マークMAは、後述のフォトマスクMの位置制御を行う際の位置制御可能範囲内に、予めフォトマスクMを配置しておくものである。
次に、第1図のフィルム露光装置を使用した本発明のフィルム露光方法の実施例を説明する。
フィルム送り機構60によりフィルムFの一コマF10がステップ送りされてきた時に、この一コマF10に係るフィルム側マークFMが、フォトマスク側マークMMの像の位置に達したか否かを、検出部40により検出する。
まず、システムコントローラ50からモータ62に駆動開始信号が送られ、モータ62が第5図の一定速度v_(1)で回転してフィルムFを送って時刻が第5図のt_(1)になった時、システムコントローラ50からの信号によりモータ62の速度が第5図のv_(2)に減速される。このt_(1)の時刻は、フィルムの一コマF10の長さ等に応じて予め設定される。
このv_(2)に減速された状態で、検出部40からの信号を処理したシステムコントローラ50からの停止信号を受けて、モータ62は回転を停止する。この時刻が第5図のt_(2)である。
システムコントローラ50による停止信号の発生は以下のようにして行われる。第3図に示すように、フィルムの一コマF10が送られてきて、一コマF10に対応して設けられたフィルム側マークFMが、フォトマスク側マークMMの像の投影位置に達すると、穴であるフィルム側マークFMが透過したアライメント波長の光(第4図中の点線)により、検出部40は信号を発生する。この信号の強さの経時的変化を第6図に示す。
第4図に示すように、検出部40はフィルムFの幅方向に二つ設けられており、システムコントローラ50には第6図に示すような形の信号が二つ送られることになるが、フィルムFの送り方向は通常幅方向に完全な直角ではないので、二つの検出部40からの信号は、時間的にわずかにずれて送られる。
そこで、この実施例では、遅れて入力された検出部40からの信号の立ち下がり時(第6図のT_(3))に停止信号を発生させるよう、システムコントローラ50に信号処理を行わせ、これによりモータ62を完全に停止させる(第6図のt_(2))。
なお、システムコントローラ50からの停止信号によりモータ62が完全に停止する時刻は、遅れて入力された検出部40からの信号の立ち下がり時(第6図のT_(3))に限定されるものではなく、補正値を予め設定しておくことにより、遅い方の立ち上がり、速い方の立ち下がりおよび速い方の立ち上がりのいずれの時でもよい。
このように速度を減速させてから、検出部40からの信号によって停止させると、停止位置の精度が非常に高くなる。
システムコントローラ50からの停止信号により、フィルムの一コマF10が停止すると、システムコントローラ50からバルブ34,35に信号が送られ、コンプレッサ33を閉にするとともに真空ポンプ32を開にする。これにより、一コマF10はステージ30に真空吸着される。
この状態で、さらに投影位置精度の高い露光を行うため、フォトマスクMの位置制御を行う。すなわち、一コマF10のフィルム側マークFMのそれぞれの位置に、対応するフォトマスク側マークMMの像が投影されるようにフォトマスク位置調節機構M10を駆動して、フォトマスクMの位置をX方向およびY方向に移動させならびに光軸を中心に回転させながら追従制御してフォトマスクMの位置合わせを行う。
詳しく説明すると、フォトマスクMの位置を送り方向に沿ったX方向に走査させると、検出部40において発生する電気信号は、第6図に示すように、フォトマスク側マークMMの投影像がフィルム側マークFMに重なり始める立ち上がり部分T_(1)と、両者の重なり面積がほぼ一定となる平坦部分T_(2)と、フォトマスク側マークMMの投影位置がフィルム側マークFMから外れ始める立ち下がり部分T_(3)とからなるパルス状の波形となる。
そこで、X方向においてフォトマスクMを最終的に停止させるべき位置は、マークの重なり面積が最大である平坦部分T_(2)の例えば中央に対応する時刻t_(3)のときの位置に設定するのがよい。従って、システムコントローラ50には、走査した際のフォトマスクMの位置の情報とその時の検出部40からの信号の値が記憶され、これらを処理してフォトマスクMのX方向における最適位置を決定してサーボモータM12に駆動信号を送る。
以上と同様にして、Y方向についてもフォトマスクMを走査して検出部40に信号を発生させ、システムコントローラ50の信号処理によってY方向におけるフォトマスクMの最適位置を決定してY方向のサーボモータM12に駆動信号を送る。
なお、上記のX方向、Y方向の位置調節は、いずれか一方の検出部40を使って行う。X方向、Y方向の位置調節が終了した後は、他方の検出部40からの信号を受けながら、フォトマスクMを光軸を中心として回転させて走査する。この際の他方の検出部40からの信号も第6図と同様の形になるので、フォトマスクMの回転角の情報とその際の検出部40からの信号の値により、回転方向(θ方向)でのフォトマスクMの最適位置を決定し、θ方向のサーボモータM12に駆動信号を送る。このようにしてフォトマスクMのX,Y,θの位置調節が行われる。
以上のようにしてフォトマスクMの位置合わせが終了した後、前述のシャープカットフィルタを退避させ、露光波長の光が照射部10から出射されるようにして、投影位置に保持された一コマF10にフォトマスクMの回路パターンMPを露光する。
次に、第1図のフィルム露光装置を使用した本発明のフィルム露光方法の他の実施例を説明する。
この実施例は、既述の実施例の方法と略同様であるが、この例においては、遅れて入力された検出部40からの信号の立ち上がり時(第6図のT_(1))の際に、停止信号を発生させるよう、システムコントローラ50に信号処理を行わせる。
そして、ステップ送り後におけるフォトマスクMの位置制御は次のようにして行われる。
フォトマスク位置調節機構M10を駆動して、フィルム側マークFMを含む領域に、フォトマスク側マークMMの一次投影像を走査させるとともに、フィルム側マークFMを透過した光を検出器43により受光させ、検出器43よりの出力信号の立ち上がりカーブと立ち下がりカーブにおける互いに等しい出力レベルの位置、例えば第9図のT_(2)における出力値の1/10の出力が検出された時の位置t_(4)およびt_(5)をそれぞれ記憶し、記憶されたそれぞれの位置に基づいて、例えば、t_(4)とt_(5)との中間点t_(6)に停止するようフォトマスク位置調節機構M10を駆動させる。
このような方法によれば、フォトマスク側マークMMの像とフィルム側マークFMとの重なり面積がほぼ一定となる位置にフォトマスクMを停止させることができるので、より確実な位置制御が可能になる。
次に、本発明のフィルム露光装置の他の実施例について説明する。
このフィルム露光装置は、第7図に示すように、フォトマスク側マークMMの一次投影像を、検出器43が設けられた位置とは異なる位置に分割して投影する例えばハーフミラー46よりなる第2の光学系と、この第2の光学系による二次投影像を受けるイメージセンサー71と、イメージセンサー71を介して接続されたモニター機構72とを具備してなるものである。
このような、フィルム露光装置を使用することにより、イメージセンサ71によって、投影されたフォトマスク側マークMMの像をモニターすることができ、操作者は正しい位置制御がなされているか否かを目視により確認することができる。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明のフィルム露光装置においては、下記のように、種々変更を加えることが可能である。
(1)フィルム側マークFMは、穴に限定されるものではなく、穴に透光性のフィルム等を貼付したものであってもよい。このような構成によれば、検出部40へゴミが進入することにより問題が発生しない。
(2)第8図に示すように、遮光シャッタ15を露光光路中に介挿させて遮光すると共に、楕円集光鏡16に設けられた採光穴17から例えば光ファイバー18によってランプ11よりの光をフォトマスク側マークMMに照射することにより位置合わせを行い、露光時にはこの遮光シャッタ15を露光光路から退避させる方法によれば、シャープカットフィルタを使用することなく露光波長の光をそのまま位置合わせ用の光として用いることができる。
また、本発明のフィルム露光方法においても、下記のように、種々変更を加えることが可能である。
(1)既述の実施例は、検出部40からの信号によりフィルムの一コマF10を停止させた後、フォトマスクMの位置制御を行うものであるが、これに限られず、例えば、予め定められた送り距離を検出部からの信号によらないで送るようにしてモータ62を停止させた後、フォトマスクMの位置制御を行ってもよい。また、検出部40からの信号によりフィルムの一コマF10を停止させる動作のみで、フォトマスク側マークMMの像の投影位置が最適位置になるならば、各コマごとにおけるフォトマスクMの位置制御は不要であり、例えばフィルムの停止動作を10回程度の複数回行った後、フォトマスクMの位置制御を1回行うようにしてもよい。
(2)フォトマスクMの位置制御を行う場合において、フィルム側マークFMが既知の半径を有する真円形等である場合には、検出信号の立ち上がり状態を予測することが可能であるので、当該真円の半径等を予めシステムコントローラ50に記憶させることにより、検出信号の立ち上がり時を検知するのみで位置制御することができる。また、フィルム側マークFMの大きさがフォトマスク側マークMMの大きさに比べて極めて小さい場合には、検出信号は第10図のようなピーク状の形となるため、立ち上がり位置および立ち下がりを考慮することなく、このピークに対応する位置に従って位置制御すればよい。
〔発明の効果〕
本発明のフィルム露光装置によれば、フォトマスクには少なくとも二つ以上のフォトマスク側マークが形成され、フィルムの一コマには、上記フォトマスク側マークのそれぞれに対応するフィルム側マークが形成されているので、両者のマークを一致させることにより、精度の高い露光を行うことができる。
特に、フォトマスク側アライメント用マークの一次投影像を再度投影する光学系と、この光学系による二次撮影像を受ける検出器とを具備しているものであれば、より適正な位置制御を行うことができる。
本発明のフィルム露光方法によれば、フォトマスク側マークとフィルム側マークとが一致したことを検出してからフィルムの一コマを停止させるので、程度の高い露光を行うことができる。
本発明の他のフィルム露光方法によれば、位置ずれして搬送された場合でも、それに追従してフォトマスクの位置が変更されるので、投影される像の位置精度が高くなり、さらに精度の高い露光を行うことができる。
特に、検出器よりの出力信号の立ち上がりカーブと立ち下がりカーブにおける互いに等しい出力レベルの位置をそれぞれ記憶し、記憶されたそれぞれの位置に基づいて、フォトマスクの位置制御を行えば、より確実な位置制御が可能になる。
また、イメージセンサーと、モニター機構とを具備してなるフィルム露光装置を用い、投影されたフォトマスク側アライメント用マークの像をモニターする場合には、正しい位置制御がなされているか否かを目視により確認することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例のフィルム露光装置の説明図、第2図はフォトマスク側アライメント用マークの説明図、第3図はフィルム側アライメント用マークの説明図、第4図は第1図に示した装置の要部をフィルムの送り方向から見た説明図、第5図はモータの速度曲線図、第6図、第9図および第10図は検出信号の波形図、第7図は検出部の一例を示す説明図、第8図は照射部よりの光をフォトマスク側アライメント用マークに照射する一例を示す説明図である。
F……フィルム、M……フォトマスク
10……照射部、11……ランプ
15……遮光シャッタ、16……楕円集光鏡
17……採光穴、18……光ファイバー
MP……回路パターン
FM……フィルム側アライメント用マーク
MM……フォトマスク側アライメント用マーク
M10……フォトマスクの位置調節機構
M11……フォトマスクホルダー
M12……サーボモータ、20……投影レンズ
30……ステージ、31……真空吸着孔
32……真空ポンプ、33……コンプレッサ
34,35……バルブ、36,37……昇降ローラ
40……検出部、41……対物レンズ
42……集光レンズ、43……検出器
44……増幅器、46……ハーフミラー
50……システムコントローラ
60……フィルム送り機構、61……送りローラ
62……モータ、63,65……押えローラ
64……スプロケットローラ
66,67……補助ローラ、68……巻き出しリール
69……巻き取りリール、71……イメージセンサー
72……モニター機構
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-06-30 
結審通知日 2008-07-04 
審決日 2008-07-15 
出願番号 特願平2-330270
審決分類 P 1 123・ 16- ZA (G03F)
P 1 123・ 121- ZA (G03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤田 年彦大熊 靖夫  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 江塚 政弘
安田 明央
登録日 1999-02-12 
登録番号 特許第2886675号(P2886675)
発明の名称 フィルム露光装置およびフィルム露光方法  
代理人 長澤 俊一郎  
代理人 長澤 俊一郎  
代理人 田村 榮一  

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