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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03D |
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管理番号 | 1184691 |
審判番号 | 不服2006-20654 |
総通号数 | 107 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-15 |
確定日 | 2008-09-16 |
事件の表示 | 特願2005- 66466「ロータンクのレバー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-201046〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願発明 本願は、平成11年8月25日に出願した特願平11-239023号の一部を平成17年3月10日に新たな特許出願としたものであって、平成18年8月14日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成18年9月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年10月13日に手続補正がなされたものである。 そして、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、平成18年10月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである。そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりのものであると認める(以下、「本願発明」という。)。 (本願発明) 「便器に洗浄水を供給するロータンクと、 該ロータンクの外側に取付けられる手回レバーと、該手回レバーの回転操作による回転若しくは内蔵するモータの回転をスピンドルに伝達する動力伝達機構を内蔵して前記ロータンクの内部に取り付けられるスピンドル電動装置とを備えたレバー装置と、 局部洗浄装置と、 該局部洗浄装置を操作する局部洗浄装置操作用リモコンと、 を備えた便器洗浄装置において、 前記スピンドル電動装置からロータンク外に延出する接続用コードを前記局部洗浄装置の背部に電気的に接続するとともに、 前記手回レバーを電気的に回動させる便器洗浄スイッチを前記局部洗浄装置操作用リモコンに設けてなり、 前記ロータンクの上部を塞ぐタンク蓋の背面の中央部に空気吸込口が設けられ、 前記ロータンクにおける前記背面に隣接する側壁に前記レバー装置を固定し、 前記接続用コードを前記ロータンクの側壁に固定したレバー装置から前記ロータンク内の背面側に設けたコードフックを経由して前記空気吸込口を通してロータンクの内から外に延出させ、 前記局部洗浄装置操作用リモコンの操作により前記ロータンク内のスピンドル電動装置を作動させて、便器の洗浄を行なうことを特徴とする便器洗浄装置。」 2.刊行物に記載された発明 これに対して、原査定において拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開昭60-233239号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「2、特許請求の範囲 水洗便器のシスターン内にあって前記シスターン内貯水を放出するための弁を開放駆動する弁開放手段と、前記弁開放手段を駆動する電磁駆動手段と、前記シスターン内にあって前記電磁駆動手段を密閉収納し、かつ前記密閉内部雰囲気を前記シスターン外気と連通させる連通路を有する収納手段とを有する便器水洗装置。」(第1頁左下欄第4?11行) (イ)「第1図において1は便器、2は便器1内を水洗するための水を貯えるシスターン、3は便座、4は蓋、5は便座3の後部にあって便座3、蓋4を回動自在に支持し、かつ制御装置6を収納するケース、7は主に電磁駆動手段からなる便器水洗装置、8は制御装置6と便器水洗装置7とを結合する電線、・・・である。」(第2頁左上欄第5?17行) (ウ)「第2図は本装置の便器への設置状態を示すものであり、シスターン2の内壁へ貫通口を介して設置されるベース13と密閉蓋14とで収納手段を構成し、15は手動レバーである。なお、第1図と同一部材には同一番号を付している。」(第2頁左下欄第16?20行) (エ)「第3図は断面図、第4図は解りやすくするために密閉蓋がない状態で示した正面図であり、レバー10と鎖11と回転軸16とで弁開放手段を構成している。回転軸16はアーム17を有している。また、ACモータ18、その軸19に結合された位置決めカム20、偏心カム21、位置決めカム20の回転でオン・オフする第1のマイクロスイッチ22とで電磁駆動手段を構成している。偏心カム21にはアーム17が乗っており、偏心カム21が1回転するとアーム17は角度αだけ移動する。このとき、回転軸16の先端に結合されたレバー10が上下し、弁12を開放する。」(第2頁右下欄第1?12行) (オ)「第5図は本発明の便器水洗装置を付勢する制御回路の最も簡単な一例を示すものであり、34はAC電源、35はケース5側に設けられ、便座3に座った状態でいつでも操作できる水洗スイッチである。」(第3頁左上欄9?13行) (カ)「上記構成において、水洗スイッチ35をオンすると、ACモータが回転を始める。そのとき位置決めカムも回転して即座に第1のマイクロスイッチ22もオンするので、水洗スイッチ35のオンをやめてもACモータの電源は第1のマイクロスイッチを介して供給され、回り続ける。このとき偏心カムも同時に回るので、アーム17によって回転軸16が角度αだけ回転し、レバー10、鎖11を持ち上げて弁12を開放し、シスターン2内の貯水は便器1内に放出されて水洗が行われる。」(第3頁左上欄第14行?右上欄第3行) (キ)「停電時には、手動レバー15を従来の手動のものと同様に回転操作すると、移動回転軸25、回転軸16を介してレバー10、鎖11、弁12が持ち上がり、水洗を行うことができる。」(第3頁右上欄第17?20行) (ク)第2図及び第3図には、便器1に隣接するシスターン2を有し、シスターン2の正面壁には手動レバー15を含む便器水洗装置を設け、電線8を、電磁駆動手段を収納する収納手段からシスターン2内の背面上部側を経由してシスターン2外に延出し、便座の後部にある制御装置6を収納するケース5の背部に電気的に接続するものが記載されている。 そして、上記記載事項(ア)?(キ)並びに図面に記載された内容(ク)を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されていると認められる。 (刊行物1記載発明) 「便器に洗浄水を供給するシスターン2と、 該シスターン2の外側に取付けられる手動レバー15と、該手動レバー15の回転操作による回転若しくは内蔵するACモータ18の回転を回転軸16に伝達する、電磁駆動手段の「偏心カム21」及び「アーム17」を内蔵して前記シスターン2の内部に取り付けられる、収納手段に収納された電磁駆動手段とを備えた便器水洗装置と、 を備えた便器洗浄装置において、 前記収納手段に収納された電磁駆動手段からシスターン2外に延出する電線8を、便座の後部にある制御装置6を収納するケース5の背部に電気的に接続するとともに、 水洗スイッチ35を制御装置6のケース5側に設けてなり、 前記シスターン2における背面に対向する正面壁に便器水洗装置を固定し、 前記電線8を前記シスターン2に固定した便器水洗装置から前記シスターン2内の背面上部側を経由してシスターン2の内から外に延出させ、 前記水洗スイッチ35の操作により前記シスターン2内の収納手段に収納された電磁駆動手段を作動させて、便器の洗浄を行なう便器洗浄装置。」 また、原査定において拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、実願平3-40267号(実開平4-126987号)のCD-ROM(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「この考案は便器に設けた人体局部洗浄装置,便器洗浄装置等を操作する操作部ユニットが壁面に設けられて成るトイレルームに関する。」(【0001】) 「12はタイル壁面であって、ここには上記局部洗浄装置及び便器洗浄装置の操作部ユニット14が設けられている。」(【0016】) 「操作部ユニット14は、図3に示しているように前面パネル16を有するボックス状のもので、その大きさがタイル壁面12を構成する各タイル18と同じ大きさとされ、そのタイル18の一枚に置き代わる形で壁面12に設けられている。」(【0017】) 「前面パネル16には、局部洗浄装置の操作スイッチ20及び便器洗浄装置の操作スイッチ22が設けられており、それらの操作によって局部洗浄装置及び便器洗浄装置がそれぞれ作動するようになっている。」(【0018】) 上記記載及び図面に記載された内容を総合すると、刊行物2には、局部洗浄装置と該局部洗浄装置を操作する操作部ユニット14(本願発明の「局部洗浄装置操作用リモコン」に相当)を有する便器洗浄装置であって、便器洗浄装置の操作スイッチ22(本願発明の「便器洗浄スイッチ」に相当)を操作部ユニット14の前面パネル16に設けているものが記載されている。 また、原査定において拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平7-11682号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「・・・・・・水洗レバー17は、電磁アクチュエータ機構16には間隙を保って嵌合し、可動軸部16aの他端には係合されている。この構成により、水洗レバー17は、手操作により電磁アクチュエータ機構16の可動軸部16aを連動させて旋回し、軸部材14を回動させて排水弁開閉手段Aを駆動することができる。・・・・・・」(【0017】) 「ところで、上記自動モードでは、電磁アクチュエータ機構16を駆動すると、同時に水洗レバー17が旋回するが、・・・・・・」(【0023】) 上記記載及び図面に記載された内容を総合すると、刊行物3には、水洗レバー17(本願発明の「手回レバー」に相当)を電気的に回動させるものが記載されている。 3.本願発明と刊行物1記載発明の対比 本願発明と刊行物1記載発明とを対比すると、刊行物1記載発明の「シスターン2」は、その作用から「タンク」であることが明らかであり、さらに「便器1に隣接」しているのだから、本願発明の「ロータンク」に相当するものといえる。 また、刊行物1記載発明の「手動レバー15」、「ACモータ18」、「回転軸16」、「電線8」、「水洗スイッチ35」は、それぞれ本願発明の「手回レバー」、「モータ」、「スピンドル」、「接続用コード」、「便器洗浄スイッチ」に相当する。 また、刊行物1記載発明の電磁駆動手段の「偏心カム21」及び「アーム17」は、ACモータ18の回転を回転軸16に伝えているといえるから、本願発明の「動力伝達機構」に相当する。 そして、刊行物1記載発明の「収納手段に収納された電磁駆動手段」は、本願発明の「スピンドル電動装置」に相当するものといえ、刊行物1記載発明の弁開放手段、電磁駆動手段及び収納手段からなる「便器水洗装置」は手動レバー15を含むものであり、本願発明の「レバー装置」に相当するものといえる。 してみると、本願発明と刊行物1記載発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「便器に洗浄水を供給するロータンクと、 該ロータンクの外側に取付けられる手回レバーと、該手回レバーの回転操作による回転若しくは内蔵するモータの回転をスピンドルに伝達する動力伝達機構を内蔵して前記ロータンクの内部に取り付けられるスピンドル電動装置とを備えたレバー装置と、 を備えた便器洗浄装置において、 前記スピンドル電動装置からロータンク外に延出する接続用コードを、便座の背部に電気的に接続するとともに、 便器洗浄スイッチを設けてなり、 前記ロータンクにおける壁に便器水洗装置を固定し、 前記接続用コードをロータンクに固定したレバー装置から前記ロータンク内の背面側を経由してロータンクの内から外に延出させ、 前記便器洗浄スイッチの操作により前記ロータンク内のスピンドル電動装置を作動させて、便器の洗浄を行なう便器洗浄装置。」 (相違点1) 本願発明は、局部洗浄装置と該局部洗浄装置を操作する局部洗浄装置操作用リモコンを有し、接続用コードを局部洗浄装置の背部に電気的に接続し、便器洗浄スイッチを局部洗浄装置操作用リモコンに設けているのに対し、刊行物1記載発明は局部洗浄装置に関する構成を有しておらず、接続用コードは便座の後部にある制御装置6を収納するケース5の背部に接続し、便器洗浄スイッチを制御装置6のケース5側に設けている点。 (相違点2) 本願発明は、手回レバーを電気的に回動させるのに対し、刊行物1記載発明は、そのような構成を有していない点。 (相違点3) 本願発明は、ロータンクの上部を塞ぐタンク蓋の背面の中央部に空気吸込口を設け、接続用コードを空気吸込口を通してロータンクの内から外に延出させているのに対し、刊行物1記載発明は、接続用コードをロータンク内の背面上部側を経由してロータンクの内から外に延出させているが、ロータンクの背面上部に接続用コードを延出する空気吸入口が設けられているかどうか不明である点。 (相違点4) 本願発明は、ロータンクにおける背面に隣接する側壁にレバー装置を設けているのに対し、刊行物1記載発明は、ロータンクにおける背面に対向する正面壁にレバー装置を設けている点。 (相違点5) 本願発明は、接続用コードをロータンク内の背面側に設けたコードフックを経由してロータンクの内から外に延出させているのに対し、刊行物1記載発明は、コードフックを用いていない点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) 刊行物2には、局部洗浄装置と該局部洗浄装置を操作する局部洗浄装置操作用リモコンを有する便器洗浄装置であって、便器洗浄スイッチを局部洗浄装置操作用リモコンに設けているものが記載されている。刊行物1記載発明において、便座の後部に局部洗浄装置を設けるとともに、該局部洗浄装置を操作し便器洗浄スイッチを有する局部洗浄装置操作用リモコンを設け、接続用コードを該局部洗浄装置の背部に電気的に接続することは、刊行物2に記載された発明に基づいて適宜なし得るものに過ぎず格別の困難性はない。 (相違点2について) 刊行物3には、手回レバーを電気的に回動させるものが記載されている。刊行物1記載発明において、手回レバーを電気的に回動させることは必要に応じて適宜なし得るものであり、格別の顕著性はない。 (相違点3について) ロータンクにおいて、ロータンクの上部を塞ぐタンク蓋の背面の中央部に開口を設けることは従来周知である(原査定で例示した、特開昭61-72144号公報(第1図、第2図参照)の他、意匠登録第986840号公報(背面図参照)、意匠登録第730528号公報(背面図及びA-A断面図参照)等参照)。このことをふまえれば、刊行物1記載発明において、接続用コードをロータンク内の背面上部側を経由してロータンクの内から外に延出させるに際し、ロータンクの上部を塞ぐタンク蓋の背面の中央部に設けられている開口から接続用コードを取り出そうとすることは、当業者が容易に想到し得ることといわざるを得ない。そして、このような従来周知の開口が、空気吸込口として機能していることは、当業者にとって自明のことにすぎない。 なお、本願の明細書の段落【0040】には、「なお、手洗鉢(タンク蓋)9に設けた空気吸込口9aは、ロータンク内の水が排出される際、空気を吸い込み、タンク内が負圧になるのを防止する為にロータンクには必ず設けられるものである。本発明では、この空気吸込口9aをロータンク14の背面とすることで、接続用コードを目立たなくしている。」と記載されていることからすれば、ロータンクのタンク蓋の背面に設けられた空気吸込口はロータンクにおいて必要不可欠のものであり、請求人も認めていることである。 (相違点4について) ロータンクにおける背面に隣接する側壁にレバー装置を設けることは従来周知である(必要であれば、実願平3-109619号(実開平5-49880号)のCD-ROM、特開平10-338956号公報等参照)。刊行物1記載発明において、ロータンクにおける背面に隣接する側壁にレバー装置を設けることは、必要に応じて適宜なし得るものであり、格別の顕著性はない。 (相違点5について) コードやホースなどをタンク等の内側に配線するに際して、タンク等に着実に固定するとともに、他の機器との干渉を避けるために、フック等を用いて固定することは、従来周知である(必要であれば、実願昭57-1570号(実開昭58-106480号)のマイクロフィルム、特開平11-158980号公報等参照)。刊行物1記載発明において、ロータンク内の背面側にコードフックを設け、接続用コードをロータンクの内から外に延出させることは、必要に応じて適宜採用し得るものであり、格別の顕著性はない。 そして、本願発明が奏する作用・効果を検討してみても、刊行物1記載発明、刊行物2に記載された発明、刊行物3に記載された発明及び周知技術から、当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとみることはできない。 5.むすび したがって、本願発明は、刊行物1記載発明、刊行物2に記載された発明、刊行物3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-07-18 |
結審通知日 | 2008-07-22 |
審決日 | 2008-08-04 |
出願番号 | 特願2005-66466(P2005-66466) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E03D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鷲崎 亮、横井 巨人 |
特許庁審判長 |
石川 好文 |
特許庁審判官 |
山口 由木 宮崎 恭 |
発明の名称 | ロータンクのレバー装置 |
代理人 | 日向寺 雅彦 |