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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1184700
審判番号 不服2003-2316  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-13 
確定日 2008-09-18 
事件の表示 平成 9年特許願第 28438号「現像方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月11日出願公開、特開平10-213970〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年1月28日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年2月13日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「(1)感光体上の静電潜像と同一極性に帯電した現像剤を担持する現像ロールを感光体に接触させて配置し、(2)感光体と現像ロールとの接触部における回転方向を同方向とし、(3)現像ロールの周速が感光体の周速の1.5倍以上となるように感光体と現像ロールを回転させ、(4)感光体の露光領域を現像すると同時に感光体の非露光領域に付着している残留現像剤を現像ロール側に吸引除去してクリーニングする現像方法において、現像剤として、
(1)少なくとも結着樹脂と着色剤とを含む着色重合体粒子からなるトナー粒子であって、体積平均粒径(dv)が3?10μmの範囲内で、前記体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)が1.0?1.5の範囲内で、かつ、粒子の最長径(dl)と最短径(ds)との比(dl/ds)が1.0?1.3の範囲内である実質的に球形のトナー粒子100重量部に対して、
(2)平均粒径が0.1?3μmかつ下記流動化剤の平均粒径に対して10?100倍の範囲内にあり、有機微粒子及び疎水化処理した無機微粒子から選ばれる研磨剤0.1?5重量部、及び
(3)平均粒径が8?20nmで、疎水化処理した金属酸化物微粒子からなる流動化剤0.1?5重量部を含有する混合物からなる非磁性一成分現像剤を使用することを特徴とする現像方法。」

2.引用文献
(1)引用文献1に記載された事項
当審からの拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平5-188637号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。)

(1-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 感光体ドラム上の潜像電荷と同一の極性に帯電した現像剤層
を担持する現像ロールを感光体ドラムに対向させて配置し、感光体ドラムの潜像領域を現像化すると同時に感光体ドラムの非潜像領域に付着している残留現像剤を現像ロール側に吸引除去してクリーニングする現像方法において用いられる非磁性一成分現像剤であって、該非磁性一成分現像剤が結着樹脂と着色剤を含み、
(a)体積平均粒径(dv)が5?15μmの範囲で、
(b)体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dn)の比(dv/dn)が1.00?1.40の範囲であり、
(c)粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を粒子の実質投影面積(Sr)で割った値(Sc/Sr)が1.00?1.30の範囲、かつ
(d)BET法による比表面積(A)(m^(2)/g)、個数平均粒径(dn)(μm)および真比重(D)の積(A×dn×D)が5?10の範囲の実質的に球形で、さらに、
(e)帯電量(Q)(μc/g)と比表面積(A)の比(Q/A)が80?150の範囲にあることを特徴とする非磁性一成分現像剤。
【請求項2】 ビニル系単量体と着色剤を含む均一混合液を懸濁重合法によ
り重合させて得たものである請求項1記載の非磁性一成分現像剤。」

(1-2)「【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、現像と同時にクリーニングを行う現像方法において、画像濃度とクリーニング性を共に満足させることができる改良された非磁性一成分現像剤を提供することにある。本発明者らは、現像と同時にクリーニングを行う現像方法において、画像濃度とクリーニング性を共に満足させるためには、従来の非磁性一成分現像剤では不充分であることを見出した。そして、鋭意研究した結果、特定の物性を有する実質的に球形の粒子からなる非磁性一成分現像剤が転写性に優れ、現像と同時に感光体ドラム上に残留したトナーを効果的にクリーニングしてゴースト像の無い良好な画像を与えることを見出した。
【0011】この改良された非磁性一成分現像剤を使用すると、転写効率が高くなり、前記各表面電位Vo、VeおよびVq、現像ロール上に形成されるトナー層厚、および感光体ドラムと現像ロールの回転比について、それぞれの適正条件幅を従来よりも広くとることができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。」

(1-3)「【0012】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれば、感光体ドラム上の潜像電荷と同一の極性に帯電した現像剤層を担持する現像ロールを感光体ドラムに対向させて配置し、感光体ドラムの潜像領域を現像化すると同時に感光体ドラムの非潜像領域に付着している残留現像剤を現像ロール側に吸引除去してクリーニングする現像方法において用いられる非磁性一成分現像剤であって、該非磁性一成分現像剤が結着樹脂と着色剤を含み、
(a)体積平均粒径(dv)が5?15μmの範囲で、(b)体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dn)の比(dv/dn)が1.00?1.40の範囲であり、(c)粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を粒子の実質投影面積(Sr)で割った値(Sc/Sr)が1.00?1.30の範囲、かつ(d)BET法による比表面積(A)(m^(2)/g)、個数平均粒径(dn)(μm)および真比重(D)の積(A×dn×D)が5?10の範囲の実質的に球形で、さらに、(e)帯電量(Q)(μc/g)と比表面積(A)の比(Q/A)が80?150の範囲にあることを特徴とする非磁性一成分現像剤が提供される。」

(1-4)「【0016】一方、本発明者らは、体積平均粒径(dv)が5?15μmの範囲で、体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dn)の比(dv/dn)が1.00?1.40の範囲であり、粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を粒子の実質投影面積(Sr)で割った値(Sc/Sr)が1.00?1.30の範囲、かつBET法による比表面積(A)(m^(2)/g)、個数平均粒径(dn)(μm)および真比重(D)の積(A×dn×D)が5?10の範囲の実質的に球形で、さらに、帯電量(Q)(μc/g)と比表面積(A)の比(Q/A)が80?150の範囲にある非磁性一成分トナーを前記現像・クリーニング方法における現像剤として用いた場合、転写効率が90?99%と向上することを見出した。
【0017】前記の形状係数(Sc/Sr)および積(A×dn×D)の条件を満足しない粒子をトナーとして用いると、転写効率が低く、画像濃度が不充分で、地肌汚れや画像ムラ、ゴースト像が発生する。体積平均粒径(dv)が5μm未満または15μmを越える非磁性トナーでは、現像ロール上のトナー層の均一化が得られないか、あるいは転写効率が悪くなり、十分な画像濃度が得られない。
【0018】体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dn)の比(dv/dn)が1.40を越えるような粒径分布が広いものでは、長期連続現像時にトナー補給が極めて不安定となってしまう。dv/dnは、好ましくは1.00?1.25である。帯電量(Q)(μc/g)と比表面積(A)の比(Q/A)が80未満または150を越えるトナーを使用した場合には、十分な画像濃度が得られなかったり、地肌汚れの多い画像となってしまう。(Q/A)は、好ましくは90?140である。
【0019】したがって、このトナーを用いると、画像濃度とクリーニング性を共に満足させるための前記各表面電位Vo、VeおよびVq、現像ロール上に形成されるトナー層厚、および感光体ドラムと現像ロールの回転比の適正条件幅を広くとることができる。
【0020】本発明の非磁性一成分トナーは、ビニル系単量体と着色剤を含む均一混合液を懸濁重合法により重合させて得ることができる。具体的な懸濁重合法としては、例えば、ビニル系単量体、着色剤、ラジカル重合開始剤、所望により各種添加剤などを含む混合物をボールミル等で均一に分散させて均一混合液を調製し、次いでこの均一混合液を高剪断撹拌により水中に微
細化分散させた水分散液として、通常30?200℃の温度で懸濁重合する方法が挙げられる。」

(1-5)「【0025】また、本発明の非磁性トナーには、帯電性、導電性、流動性、あるいは感光体または定着ロールへの付着性を制御するための添加剤を含有もしくは外添させることができる。このような添加剤としては、例えば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、各種ワックス、シリコーンオイル等の離型剤、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、炭酸カルシウム等の無機微粉末等が挙げられる。」

(1-6)「【0026】
【実施例】以下に実施例および比較例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、以下の例において、部および%は特に断りのない限り重量基準である。
【0027】[実施例1]スチレン90部、ステアリルメタクリレート10部、低分子量ポリプロピレン4部、カーボンブラック(商品名ブラックパール130)7部、クロム系染料(商品名ボントロンS-34)0.5部、および2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2部をボールミル分散して均一混合液を得た。
【0028】次に、上記混合液をリン酸カルシウム3部を微細に分散した純水350部中に添加し、水分散液を得た。この水分散液を、pH9以上の条件下でローターステーター型ホモミキサーにより高剪断撹拌を行なって、上記混合液を水中に微細化して分散させた。この水分散液を撹拌翼の付いた反応器に入れて、65℃で4時間、撹拌下に重合を行った。
【0029】このようにして得られた重合体を含む分散液を酸洗浄、水洗浄を充分に行った後、分離、乾燥してトナー材料を得た。上記トナー材料100部に、流動化剤として疎水性シリカ0.3部を外添し、非磁性一成分トナーを得た。得られた非磁性一成分トナーは、表1に示す特性を有する実質的に球形の粒子であった。
【0030】[実施例2]スチレン80部、2-エチルヘキシルアクリレート20部、低分子量ポリプロピレン4部、カーボンブラック(商品名プリンテックス150T)7部、クロム系染料(商品名ボントロンS-34)0.5部、および2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2部をボールミル分散して均一混合液を得た。
【0031】次に、上記混合液をリン酸カルシウム3部を微細に分散した純水350部中に添加し、水分散液を得た。この水分散液を、pH9以上の条件下でローターステーター型ホモミキサーにより高剪断撹拌を行い、上記混合液を水中に微細化して分散させた。この水分散液を撹拌翼の付いた反応器に入れ、65℃で4時間、撹拌下に重合を行った。
【0032】このようにして得られた重合体を含む分散液を酸洗浄、水洗浄を充分に行った後、分離、乾燥してトナー材料を得た。上記トナー材料100部に、流動化剤として疎水性シリカ0.3部を外添し、非磁性一成分トナーを得た。得られた非磁性一成分トナーは、表1に示す特性を有する実質的に球形の粒子であった。
【0033】[実施例3]リン酸カルシウム4.5部を微細に分散した純水400部を使用する以外は、実施例1と同様な方法で非磁性一成分トナーを得た。得られた非磁性一成分トナーは、表1に示す特性を有する実質的に球形の粒子であった。」

(1-7)「【0040】<非磁性一成分トナーの画像評価>
上記実施例1?3および比較例1?3で得た非磁性一成分トナーは、基本的には図2の構成を有する装置であって、感光体ドラム(1)として有機系感光体を用い、現像ロール(8)には金属芯の導電性支持体の外周面にゴム系のトナー担持層を設けたものを用い、トナー層厚規制部材(9)としてウレタン系のゴムを使用した接触現像方式の現像機を有する装置によって画像評価を実施した。画像評価の結果は表1に示した。
【0041】
【表1】



(1-8)「【0044】表1に示した結果から明らかなように、実施例1?3のトナーは、転写紙への転写性に優れるため、感光体ドラム上に残留したトナーを回収するための電位差|Vo-Ve|が比較例1?3の転写性の悪いトナーに比べ小さく、現像ロールに印加する現像バイアス電圧の広い範囲にわたってゴースト像のない、画像濃度の高い画像が得られた。また、2万枚にわたる複写の間、画像は地肌汚れ、ちり、ムラおよびゴースト像のない鮮明なものであった。」

(1-9)引用文献1の【図2】は、以下に示すものである。


【表1】等の記載により、引用文献1に実施例として記載されているトナー粒子は実質的に球形であるといえること、及び、【図2】においてトナー層厚規制部材9が現像ロール8の上部にあることからみて、感光体ドラム1と現像ロール8との接触部における回転方向は同方向であるといえることを考慮して、上記摘記事項を総合して勘案すると、引用文献1には、図面とともに以下の発明が実質的に記載されている。

「感光体ドラム上の静電潜像と同一極性に帯電した現像剤を担持する現像ロールを感光体ドラムに接触させて配置し、感光体ドラムと現像ロールとの接触部における回転方向を同方向とし、現像ロールと感光体ドラムの回転比の適正条件幅を広くして感光体ドラムと現像ロールを回転させ、感光体ドラムの露光領域を現像すると同時に感光体ドラムの非露光領域に付着している残留現像剤を現像ロール側に吸引除去してクリーニングする現像方法において、現像剤として、
少なくとも結着樹脂と着色剤とを含む着色重合体粒子からなるトナー粒子であって、体積平均粒径(dv)が5?15μmの範囲内で、前記体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)が1.0?1.4の範囲内で、且つ、粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を粒子の実質投影面積(Sr)で割った値(Sc/Sr)が1.00?1.30の範囲である実質的に球形のトナー粒子100重量部に対して、
流動化剤として疎水性シリカ0.3重量部を含有する混合物からなる非磁性一成分現像剤を使用する現像方法。」

(2)引用文献2に記載された事項
当審からの拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-114214号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。)

(2-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)スチレン系樹脂からなる結着樹脂と着色剤とを含み、
球形化度が0.8以上、かつ、帯電極性が負帯電である着色微粒子、(B)一次粒子の平均粒径が30?100nmの範囲内にある疎水化処理されたシリカ微粒子、及び(C)縮重合体からなるトリアジン系樹脂微粒子を混合してなることを特徴とする非磁性一成分現像剤。
【請求項2】 (A)着色微粒子100重量部に対して、(B)シリカ微粒
子0.1?2.0重量部、及び(C)トリアジン系樹脂微粒子0.01?5.0重量部を混合してなる請求項1記載の非磁性一成分現像剤。
【請求項3】 (C)トリアジン系樹脂微粒子が、平均粒径0.1?3μmの範囲内にある球形の微粒子である請求項1記載の非磁性一成分現像剤。
【請求項4】 (C)トリアジン系樹脂微粒子が、ベンゾグアナミン・ホル
ムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、及びメラミン・ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるものである請求項1記載の非磁性一成分現像剤。
【請求項5】 現像剤の層厚を規制するための現像ブレードを現像ロール表
面に圧接するよう配置して、現像ロール表面に現像剤を均一に塗布し、該現像ロールを感光体に接触させ、あるいは非接触に対向させることにより、該感光体上に形成された静電潜像を現像剤により現像する方法において使用される現像剤である請求項1記載の非磁性一成分現像剤。
【請求項6】 現像ブレードが、金属製である請求項5記載の非磁性一成分現像剤。」

(2-2)「【0008】(1)現像ロール、現像ブレード、感光体などに対する現像剤の付着現象がある。従来の二成分現像剤では、トナーの他に多量の鉄粉やガラスビーズ等のキャリヤーが混合されているため、現像ロールや現像ブレード、感光体上に一時的なトナーの付着があっても、キャリヤーによって研磨されるため問題とはならなかった。しかしながら、従来の非磁性一成分現像剤は、長期間使用した場合、現像ロールや現像ブレード、感光体上に現像剤が付着して、現像剤のフィルムが形成されることが多かった。このような現像剤のフィルムが形成されると、帯電させるべき現像剤と現像ロールまたは現像ブレードとが充分に接触できなくなり、現像剤の帯電不足が起き、感光体かぶりが発生する。また、現像剤が感光体に付着すると、黒い汚れとなって画像に現れ、画質の低下が問題となる。
【0009】さらに、従来のゴム製の現像ブレードは、長期間使用していると、ゴムの劣化やゴム中に含まれるオリゴマー等の低分子量物や可塑剤のブリードが原因と考えられるカブリやカスレが発生して、現像器の寿命を著しく縮めており、改善の要求が強かった。
【0010】この点に関して、本発明者らが種々検討したところ、現像ブレードを金属製のものにすることにより改善されることが判明した。しかしながら、非磁性一成分現像方式で金属製の現像ブレードを使用すると、現像ロールへの押圧が部分的に大きくなり易く、しかも、磨耗しにくいので、現像ブレードへの現像剤の付着が起き易くなることが判明した。また、着色微粒子が球形であると、印字特性には好ましいが、金属製現像ブレードへの現像剤の付着がさらに起き易くなることも判明した。」

(2-3)「【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、充分な流動性と帯電性を有し、画像濃度が高く、カブリの少なく、転写性の高い、非磁性一成分現像剤を提供することにある。また、本発明の目的は、接触現像あるいは非接触現像方式において、長期間使用した場合においても、現像ロールや現像ブレード、感光体などに現像剤の付着によるフィルムの形成がなく、画質の低下のない非磁性一成分現像剤を提供することにある。
【0018】より具体的に、本発明の目的は、金属製現像ブレードを使用した場合であっても、充分な流動性と帯電性を有し、現像剤の付着によるフィルムの形成がなく、画質の低下のない非磁性一成分現像剤を提供することにある。 本発明の他の目的は、長期間使用した場合においても、現像剤中の流動化剤であるシリカ微粒子の現像ロールや現像ブレードへの付着によるカブリの発生がなく、画質の安定した非磁性一成分現像剤を提供することにある。」

(2-4)「【0025】感光体1は、予めチャージャー線9で帯電させ、そこに光信号や光画像10を照射して、静電潜像を形成させ、次いで、該感光体1に現像ロール2上の現像剤を接触させて、上記静電潜像を現像する。次に、転写チャージャー線11を用いて、現像された感光体上の現像剤(現像剤からなる可視化像)を紙等の支持部材13に転写する。支持部材13を定着ロール12に通すことによって、該支持部材13に転写された現像剤を加熱溶融させて定着させる。転写後、感光体上に残留している現像剤は、ブレード法、ウエブ法、ロール法等で除去される。除去された現像剤は、廃棄するか、あるいは回収して再使用しても良い。図1には、感光体上の未転写現像剤がクリーニングブレード7でかきとられ、スクリュー8により現像剤容器5に戻され、リサイクル使用される態様が示されている。このような接触現像方式においては、感光体表面にトナーのフィルムができ易いため、本発明の現像剤に含有させる有機微粒子の研磨剤としての効果が発揮され易い。」

(2-5)「【0026】(非磁性一成分現像剤)本発明の非磁性一成分現像剤は、(A)スチレン系樹脂からなる結着樹脂と着色剤とを含み、球形化度が0.8以上、かつ、帯電極性が負帯電である着色微粒子、(B)一次粒子の平均粒径が30?100nmの範囲内にある疎水化処理されたシリカ微粒子、及び(C)縮重合体からなるトリアジン系樹脂微粒子を混合してなるものである。各成分の混合割合は、通常、着色微粒子100重量部に対して、シリカ微粒子0.1?2.0重量部、及びトリアジン系樹脂微粒子0.01?5.0重量部である。」

(2-6)「【0032】上述の重合法、造粒法、粉砕法等の方法により製造した着色微粒子は、必要に応じて、機械的あるいは熱的処理により球形化することが好ましい。球形化度が高い着色微粒子を得るためには、前記各種方法の中でも重合法によるのが好ましい。本発明においては、使用する着色微粒子の平均粒径(体積平均粒径)は、2?20μmが好ましく、6?12μmがさらに好ましい。
【0033】着色微粒子の形状を球形にすることによって、現像剤の流動性が高くなり、また、感光体上の静電潜像を現像した現像剤像を紙等の支持部材に静電的に転写する際の転写率が高くなる。着色微粒子の球形化の程度は、後述する測定法によって測定した球形化度が0.8以上であることが必要であり、好ましくは0.9以上である。球形化度が低すぎると、現像剤の流動性や支持部材への転写率が低下する。」

(2-7)「【0037】トリアジン系樹脂微粒子
本発明では、縮重合体からなるトリアジン系樹脂微粒子(有機微粒子)を使用する。トリアジン系樹脂微粒子を構成する重合体の分子量は、特に限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲で任意の分子量を有する重合体を用いることができる。縮重合体からなるトリアジン系樹脂微粒子としては、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、及びメラミン・ホルムアルデヒド縮合物が好ましい。
【0038】トリアジン系樹脂微粒子は、その形状が球形であることが、現像剤の流動性の低下が少ないため好ましい。トリアジン系樹脂微粒子の平均粒径は、一般に、着色微粒子の平均粒径よりも小さいものが用いられ、0.1?3μmの範囲内にあることが好ましい。該平均粒径が小さすぎると研磨効果の発揮が困難であり、逆に、大きすぎると流動性が低下し、画質が低下し易くなる。トリアジン系樹脂微粒子の平均粒径(a)と着色微粒子の平均粒径(b)との比(a:b)は、1:200?1:2の範囲内であることが好ましい。この比が1:200未満では研磨効果が不充分となり易く、また,1/2を越えると現像剤としての流動性が不充分になり易い。
【0039】トリアジン系樹脂微粒子の使用割合は、着色微粒子100重量部に対し、通常、0.01?5.0重量部、好ましくは0.1?1.0重量部である。この使用割合が少なすぎると研磨効果が不足し、逆に、多すぎると流動性が低下し、画質が低下する。本発明の非磁性一成分現像剤は、着色微粒子、シリカ微粒子及びトリアジン系樹脂微粒子などの各成分をヘンシェルミキサー等で混合することにより調製することができる。」

(2-8)「【0041】本発明における物性の評価は、次の方法で行った。
<球形化度>着色微粒子の電子顕微鏡写真を数枚撮影し、該微粒子1個の全容が明らかになるところを選んで、微粒子の直径の中から、一番長い径(長径)と一番短い径(短径)を選んで測定し、短径を長径で割った値を算出する。微粒子100個について、同じ操作を行ない、これらの平均値を球形化度とする。」

(2-9)「【0048(3)評価
市販のレーザービームプリンターの現像部を開けて、ゴム製の現像ブレードに代えて、図1に示すような金属製の現像ブレード3(ステンレス製、厚さ0.1mm)を取り付け、上記により得た現像剤を入れて評価したところ、2万枚の印字をしても初期の印字品質を保ち、良好な結果を得た。」

(2-10)「【0052】[比較例3]実施例1の現像剤の製造において、シリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理した1次粒子径が14nmのシリカ微粒子に変更した以外は全て実施例1と同様にして現像剤を製造した。実施例1と同様に評価したところ、連続印字により感光体カブリが大きく増加し、使用に耐えるものではなかった。」

上記(2-7)にトリアジン系樹脂微粒子(有機微粒子)を研磨剤として用いることが記載されていることを考慮して上記摘記事項を総合勘案すると、引用文献2には図面とともに、以下の事項(A)が実質的に記載されている。

(A)「金属製現像ブレードを有し、帯電した現像剤を担持する現像ロールを感光体に接触させて配置し、感光体と現像ロールを回転させて現像を行う現像方法において、現像剤として、
結着樹脂と着色剤とを含む着色重合体粒子からなるトナー粒子であって、体積平均粒径が2?20μmの範囲内で、粒子の最短径と最長径との比(最短径/最長径)が0.8以上である実質的に球形のトナー粒子100重量部に対して、
平均粒径が0.1?3μmである縮重合体からなる研磨剤としてのトリアジン系樹脂微粒子(有機微粒子)を0.01?5重量部、及び平均粒径が30?100nmで、疎水化処理したシリカ微粒子からなる流動化剤0.1?2重量部を含有する混合物からなる非磁性一成分現像剤を使用する現像方法。」
なお、引用文献2に記載のトナー粒子は、粒子の最長径と最短径との比(最長径/最短径)が1.0?1.25の範囲内となり、本願発明で規定している1.0?1.30の範囲内のものであることは明らかである。
また、上記(2-4)、(2-10)等を参照すると、引用文献2には、以下の事項(B)、(C)も記載されている。

(B)「非磁性一成分現像剤を用いる接触現像方法において、現像剤に有機微粒子の研磨剤を含有させることにより感光体表面のトナーのフィルムを研磨して除去する現像方法。」

(C)「金属製現像ブレードを有し、非磁性一成分現像剤を用いる現像方法において、シリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理した1次粒子径が14nmのシリカ微粒子を用いると連続印字により感光体ガブリが大きく増加し、使用に耐えられないこと。」

3.本願発明(前者)と引用文献1に記載された発明(後者)の対比
後者の「感光体ドラム」は前者の「感光体」に相当するから、両者は、

「感光体上の静電潜像と同一極性に帯電した現像剤を担持する現像ロールを感光体に接触させて配置し、感光体と現像ロールとの接触部における回転方向を同方向とし、感光体の露光領域を現像すると同時に感光体の非露光領域に付着している残留現像剤を現像ロール側に吸引除去してクリーニングする現像方法において、現像剤として、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含む着色重合体粒子からなる実質的に球形のトナー粒子と流動化剤等を含有する混合物からなる非磁性一成分現像剤を使用する現像方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(3-1)相違点1
前者は、現像ロールの周速が感光体の周速の1.5倍以上となるように感光体と現像ロールを回転させるのに対して、後者は現像ロールと感光体ドラムの回転比の適正条件幅を広くして感光体ドラムと現像ロールを回転させるものの、現像ロールと感光体の具体的な周速比の範囲は不明である点。

(3-2)相違点2
トナー粒子の具体的構成について、前者は、「体積平均粒径(dv)が3?10μmの範囲内で、前記体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)が1.0?1.5の範囲内で、かつ、粒子の最長径(dl)と最短径(ds)との比(dl/ds)が1.0?1.3の範囲内である」としているのに対し、後者は、「体積平均粒径(dv)が5?15μmの範囲内で、前記体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)が1.0?1.4の範囲内で、且つ、粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を粒子の実質投影面積(Sr)で割った値(Sc/Sr)が1.00?1.30の範囲である」としている点。

(3-3)相違点3
トナー粒子に含有させる研磨剤及び流動化剤について、前者は、「平均粒径が0.1?3μmかつ下記流動化剤の平均粒径に対して10?100倍の範囲内にあり、有機微粒子及び疎水化処理した無機微粒子から選ばれる研磨剤0.1?5重量部」とし、トナー粒子100重量部に対して「平均粒径が8?20nmで、疎水化処理した金属酸化物微粒子からなる流動化剤0.1?5重量部を含有する」とているのに対して、後者は、研磨剤の具体的構成について明記されておらず、また、トナー粒子100重量部に対して「流動化剤として疎水性シリカを0.3重量部を含有する」ものの、疎水性シリカの平均粒径について明記していない点。

4.相違点についての判断
(4-1)相違点1について
「感光体上の静電潜像と同一極性に帯電した現像剤を担持する現像ロールを感光体に接触させて配置し、感光体と現像ロールとの接触部における回転方向を同方向とし、感光体の露光領域を現像すると同時に感光体の非露光領域に付着している残留現像剤を現像ロール側に吸引除去してクリーニングする現像方法」において、現像ロールの周速が感光体の周速の1.5倍以上となるように感光体と現像ロールを回転させることは、例えば、特開平3-7972号公報(公報1頁右下欄8行)、特開平4-69688号公報(公報7頁左下欄19?20行)、特開平5-257344号公報(段落【0024】)、特開平5-273850号公報(段落【0024】)、特開平8-137263号公報(段落【0013】等)、特開平8-328292号公報(段落【0082】)に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項である。
してみると、引用文献1に記載された発明において、相違点1に係る構成を規定することは、何ら格別のことではない。

(4-2)相違点2について
(a)トナー粒子の体積平均粒径についての検討
トナー粒子の体積平均粒径については、本願発明と引用文献1に記載された発明は、5?10μmの範囲で一致しており、しかも、引用文献1に記載されている実施例3におけるトナーの体積平均流径は6.5μmである。
一方、本願明細書の【表1】、【表2】に記載されている実施例及び比較例におけるトナーの体積平均粒径はすべて6.5μmであって、本願発明においてトナー粒子の体積平均粒径を「3?10μmの範囲内」としたことの根拠について本願明細書には何ら記載されていない。
そうすると、トナー粒子の体積平均粒径の範囲において、本願発明と引用例に記載された発明は実質的に相違しない。

(b)トナー粒子の「体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)」についての検討
本願発明の規定は、引用文献1に記載された発明におけるトナー粒子の体積平均粒径と個数平均粒径の比の範囲における上限値を1.4から1.5に拡張したものにすぎず、この点においても本願発明と引用例に記載された発明は実質的に相違しない。

(c)トナー粒子の形状の規定についての検討
本願発明で用いている「粒子の最長径(dl)と最短径(ds)との比(dl/ds)」は、引用文献2に記載されている「粒子の最短径と最長径との比(最短径/最長径)」の逆数であって、どちらもトナー粒子の球形度の尺度として用いられている。
一方、引用文献1に記載された発明における「粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を粒子の実質投影面積(Sr)で割った値(Sc/Sr)」もトナー粒子の球形度の尺度であって、この数値に100をかけたものは、形状係数SF1として当業者に周知である(例えば、審査時に引用された特開平8-305074号公報の段落【0053】参照)。
そして、トナー粒子の断面形状が正確な楕円形である場合には、本願発明で用いている尺度の値と引用文献1で用いている尺度の値は完全に一致することは明らかである。
要するに、本願発明や引用文献2で採用しているトナー粒子の球形度の尺度はともに、引用文献1で採用しているトナー粒子の球形度の尺度がトナー粒子の断面積を計測しているのに代えて粒子の最短径を計測するようにしたものであって、トナー粒子の断面形状がほぼ楕円形である場合には本願発明で採用している尺度の数値と引用文献1で採用している尺度の数値はほぼ一致するのである。
そうすると、本願発明で規定しているトナー粒子の形状の範囲と引用文献1に記載された発明で規定しているトナー粒子の形状の範囲は、それぞれの尺度においてともに1.0?1.3であって、実質的に球形のトナー粒子を対象としているのであるから、これらの数値はほぼ一致するものである。
してみると、この点においても、本願発明と引用例に記載された発明は実質的に相違しない。

(d)相違点2についての検討結果のまとめ
以上の検討から明らかなように、相違点2は実質的な相違点ではない。

(4-3)相違点3について
(a)技術課題の周知性について
「感光体上の静電潜像と同一極性に帯電した現像剤を担持する現像ロールを感光体に接触させて配置し、感光体と現像ロールとの接触部における回転方向を同方向とし、感光体の露光領域を現像すると同時に感光体の非露光領域に付着している残留現像剤を現像ロール側に吸引除去してクリーニングする現像方法」を採用する場合に、感光体表面にフィルミングが発生しやすいので、フィルミングの発生を防止しなければならないという技術課題が存在することは、上記特開平8-328292号公報の段落【0004】、【0005】、特開平8-305074号公報の段落【0009】の他に、特開平5-61383号公報(段落【0019】)、特開平8-137206号公報(段落【0009】)、特開平8-137355号公報(段落【0004】ないし【0007】)に記載されているように、本願出願前に周知の事項であり、引用文献1に記載された発明に係る現像と同時にクリーニングを行う現像方法を採用する際に、感光体表面にフィルミングが発生しやすく、フィルミングの発生を防止するための対策が必要とされることは、当業者にとって容易に予測できる事項にすぎない。

(b)引用文献2に記載された事項
その一方で、上記したように、引用文献2には、
(B)「非磁性一成分現像剤を用いる接触現像方法において、現像剤に有機微粒子の研磨剤を含有させることにより感光体表面のトナーのフィルムを研磨して除去する現像方法。」
が記載されており、それに加えて、以下の事項が実質的に記載されている。

(A)「金属製現像ブレードを有し、帯電した現像剤を担持する現像ロールを感光体に接触させて配置し、感光体と現像ロールを回転させて現像を行う現像方法において、現像剤として、結着樹脂と着色剤とを含む着色重合体粒子からなるトナー粒子であって、体積平均粒径が2?20μmの範囲内で、粒子の最短径と最長径との比(最短径/最長径)が0.8以上である実質的に球形のトナー粒子100重量部に対して、
平均粒径が0.1?3μmである縮重合体からなる研磨剤としてのトリアジン樹脂(有機微粒子)を0.01?5重量部、及び平均粒径が30?100nmで、疎水化処理したシリカ微粒子からなる流動化剤0.1?2重量部を含有する混合物からなる非磁性一成分現像剤を使用する現像方法。」
そして、引用文献2において、体積平均粒径が14nm程度の小径のシリカ微粒子を用いないのは、上記「2.(2)」の(C)で指摘したように、「金属製現像ブレードを有し、非磁性一成分現像剤を用いる現像方法において、シリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理した1次粒子径が14nmのシリカ微粒子を用いると連続印字により感光体ガブリが大きく増加し、使用に耐えられない」ことが判明したためである。

(c)本願明細書に記載されている事項
本願明細書の段落【0034】に、流動化剤について以下の記載がある。
「【0034】
(流動化剤)
本発明では、トナー粒子の流動性と摩擦帯電性を改善し、転写性を向上させるために、流動化剤を配合する。流動化剤は、前記研磨剤と共にトナー粒子の研磨作用をも有しており、それによって、感光体上へのトナーフィルムの形成を抑制し、転写性を高めることができる。
本発明で使用する流動化剤としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物の微粒子、あるいはこれらの金属酸化物微粒子の表面を疎水化処理したものを挙げることができる。特に、疎水化処理剤により疎水化処理した無機微粒子は、耐湿性が向上し、高湿雰囲気下でも安定した流動化作用を得ることができる。これらの中でも、特に、コロイダルシリカ(気相法で製造されるシリカ微粒子)が好ましく用いられる。コロイダルシリカとしては、オクチルシランやヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイルなどの疎水化剤により表面を疎水化処理したものが好ましい。」
珪素は、通常は非金属とされるのであるが、上記記載、実施例1ないし実施例4の記載、及び、請求人の平成18年2月13日付けの意見書の6頁31?35行の記載を参照すると、本願発明における流動化剤である「疎水化処理した金属酸化物微粒子」は流動化剤としての疎水性シリカ微粒子を含むことは明らかである。

(d)検討
上記(a)で指摘したように、引用文献1に記載された発明に係る現像と同時にクリーニングを行う現像方法を採用するにあたって、感光体表面のトナーのフィルミングの発生を防止する必要性があることは当業者にとって容易に予測できる事項である。
また、上記(b)で指摘したように、引用文献2には、金属製ブレードと非磁性一成分現像剤を用いて接触現像を行うものにおいて、トナー微粒子100重量部に対して、平均粒径が0.1?3μmの範囲内にある有機微粒子である研磨剤を0.01?5重量部、平均粒径が30?100nmで、疎水化処理したシリカ微粒子からなる流動化剤0.1?2重量部を含有する混合物とすることにより、感光体表面のトナーのフィルミングの発生を防止すること、及び、体積平均粒径が14nmの疎水化処理したシリカ微粒子は使用できないことが記載されている。
ところで、トナー粒子に対して、流動化剤として体積平均粒径が8?20μmの範囲に含まれる疎水性シリカ微粒子等の金属酸化物微粒子を含有させることは、例えば、特開昭61-188546号公報(公報1頁右下欄2?5行)、特開昭62-182775号公報(公報9頁第2表、12頁第5表)に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項にすぎない。
そして、上記「2.(1-7)」に、現像ブレードとしてウレタン系のゴムからなるブレードを使用することが明記されているのであるから、引用文献1に記載された発明において、平均粒径が14nm程度の小径のシリカ微粒子を用いることに対する阻害要因は見当たらない。
してみると、引用文献2に記載された事項(A)及び(B)から導かれる事項を引用文献1に記載された発明に適用するに際して、「平均粒径が30?100nmで、疎水化処理したシリカ微粒子からなる流動化剤」に代えて、「平均粒径が8?20nmで、疎水化処理したシリカ微粒子からなる流動化剤」を用いることは当業者が適宜行う事項である。
なお、本願発明は、研磨剤の平均粒径が流動化剤の平均粒径の「10?100倍の範囲内」であることも規定しているが、流動化剤の最大値である20nmを100倍したものは2μmであって、研磨剤の最大値とされている3μmよりも小さく、この規定は矛盾する事項を含むものであり、また、格別の技術的意義を有するものでもない。
したがって、引用文献1に記載された発明において、トナー粒子100重量部に対して、引用文献2に記載されている有機微粒子から選ばれる研磨剤、及び、平均粒径が8?20nmで疎水化処理した金属酸化物からなる、流動化剤として周知の疎水性シリカ微粒子等をそれぞれ所定重量部含有させることにより、相違点3に係る構成を有するものとすることは当業者が適宜行うことである。

(4-4)まとめ
以上のとおり、引用文献1に記載された発明において、相違点1に係る構成及び相違点2に係る構成としたことは何ら格別のことではなく、また、相違点3に係る構成を有するものとすることは、引用文献1に記載された発明に係る現像と同時にクリーニングを行う現像方法における周知の技術課題、及び、引用文献2に記載された事項を参酌することにより当業者が適宜行うことである。
また、引用文献1に記載された発明に、相違点1に係る構成ないし相違点3に係る構成を組み合わせたことにより、当業者が予期せざる格別の効果が奏せられるものでもない。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-16 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-04 
出願番号 特願平9-28438
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢沢 清純北川 清伸  
特許庁審判長 山下 喜代治
特許庁審判官 小宮山 文男
赤木 啓二
発明の名称 現像方法  
代理人 西川 繁明  

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