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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1184708
審判番号 不服2004-26230  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-24 
確定日 2008-09-18 
事件の表示 特願2001-112340「稼働分析装置および稼働分析方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月12日出願公開、特開2002-111298〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成13年4月11日(優先権主張、平成12年7月27日)に出願されたもので、平成16年9月1日付け拒絶理由通知書が送付され、願書に添付した明細書又は図面についての同年11月8日付け手続補正書が提出されたものの、同年11月26日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として、平成17年1月24日付けで補正された平成16年12月24日付け審判請求書により、請求されたもので、上記明細書又は図面についての平成17年1月24日付け手続補正書が提出されている。

2.原査定
原査定の拒絶理由の1つは、以下のとおりのものと認める。

「この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1;特開平11-32677号公報
2;特開平10-284900号公報」

「特開平11-32677号公報」を、以下、「引用刊行物」という。

3.当審の判断

3-1.平成17年1月24日付け手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)について
本件補正は、以下に詳述するように、平成18年改正前の特許法第17条の2第3項又は第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3-1-1.本件補正の内容
本件補正は、以下の補正事項aを有するものと認める。

補正事項a;特許請求の範囲の記載につき、以下(cl)を(CL)と補正する。

(cl);「【請求項1】 被生産物に加工または組み立てを行う生産設備が連結した生産ラインの稼働状況を分析する稼働分析装置であって、
前記生産ラインを保有する生産工場とインターネットを始めとする通信手段で接続し、前記生産工場内の生産ラインから前記通信手段を介して稼働率を含む設備情報を収集し、前記収集した設備情報を分析した結果、稼働状況を低下させる要因があると判明した場合、前記要因を解消するためのサービスを前記生産ラインへ前記通信手段を介してフィードバックする稼働分析装置。
【請求項2】 部品を供給する部品供給装置と、前記部品供給装置から部品を保持し回路基板に実装する部品保持手段と、を備えた部品実装機を含んで連結した部品実装ラインの稼働状況を分析する稼働分析装置であって、
前記部品実装ラインを保有する実装工場とインターネットを始めとする通信手段で接続し、前記実装工場内の部品実装ラインから前記通信手段を介して稼働率を含む設備情報を収集し、前記収集した設備情報を分析した結果、稼働状況を低下させる要因があると判明した場合、前記要因を解消するためのサービスを前記実装工場内の部品実装ラインへ前記通信手段を介してフィードバックする稼働分析装置。
【請求項3】 請求項1または2の稼働分析装置を用いた稼働分析方法。」

(CL)「【請求項1】 部品を供給する部品供給装置と、前記部品供給装置から部品を保持し回路基板に実装する部品保持手段と、を備えた部品実装機を含んで連結した部品実装ラインの稼働状況を分析する稼働分析装置であって、
前記部品実装ラインを保有する実装工場とインターネットを始めとする通信手段で接続し、前記実装工場内の部品実装ラインから前記通信手段を介して稼働率を含む設備情報を収集し、目標に達してなければ、前記収集した設備情報を要因分析し、その結果、特定の実装機が稼働状況を低下させる要因があると判明した場合、前記要因を解消するため、前記部品の実装順序や前記部品供給装置の配置の最適化を行い、前記実装工場内の部品実装ラインへ前記通信手段を介してフィードバックする稼働分析装置。
【請求項2】請求項1の稼働分析装置を用いた稼働分析方法。」

ここ「3-1」では、本件補正前の請求項2を旧【請求項2】といい、本件補正後の請求項1を新【請求項1】という。

3-1-2.本件補正の適否
補正事項aは「第36条第5項に規定する請求項の削除」(以下、単に、「請求項の削除」という。)、「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」(以下、「限定的減縮」という。)、「誤記の訂正」又は「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(以下、単に、「明りようでない記載の釈明」という。)のいずれかを目的にしている、とする根拠は見当たらないし、また、本件出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「本件当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

(1)補正事項aの目的について

1)補正事項aは、旧【請求項2】を新【請求項1】とする補正であって、旧【請求項2】に記載されていた「前記実装工場内の部品実装ラインから前記通信手段を介して稼働率を含む設備情報を収集し、前記収集した設備情報を分析した結果、稼働状況を低下させる要因があると判明した場合、前記要因を解消するためのサービスを前記実装工場内の部品実装ラインへ前記通信手段を介してフィードバックする」を「前記実装工場内の部品実装ラインから前記通信手段を介して稼働率を含む設備情報を収集し、目標に達してなければ、前記収集した設備情報を要因分析し、その結果、特定の実装機が稼働状況を低下させる要因があると判明した場合、前記要因を解消するため、前記部品の実装順序や前記部品供給装置の配置の最適化を行い、前記実装工場内の部品実装ラインへ前記通信手段を介してフィードバックする」との記載に補正するものと認められる。
そこで、検討すると、この補正は、「請求項の削除」、「限定的減縮」、「誤記の訂正」又は「明りようでない記載の釈明」のいずれかを目的にしているとはいえない。

2)請求人は、平成17年1月24日付けで補正された平成16年12月24日付け審判請求書(以下、「本件請求書」という。)において、これに対する主張をしていないが、以下に、補足する。

2-1)新【請求項1】には、「目標に達してなければ、前記収集した設備情報を要因分析し、」との記載が認められ、この記載は、或る目標に達していない場合には要因分析を行うことを記載するものであるが、その目標の内容が明りょうでなければ、要因分析を行う場合に相当するのかが不明であって、上記記載は、発明特定事項の記載としては、不明りようである。

2-2)旧【請求項2】には、「前記実装工場内の部品実装ラインから前記通信手段を介して稼働率を含む設備情報を収集し、前記収集した設備情報を分析した結果、」と記載され、同項においては、「通信手段を介して設備情報を収集し、この収集した設備情報を分析する」との事項を、発明特定事項としていたものと認められる。
その一方で、新【請求項1】には、「前記実装工場内の部品実装ラインから前記通信手段を介して稼働率を含む設備情報を収集し、目標に達してなければ、前記収集した設備情報を要因分析し、」と記載され、同項においては、要するに、「通信手段を介して設備情報を収集し、或る目標に達してなければ、この収集した設備情報を分析する」との事項を、発明特定事項にしているということができる。
そこで、新【請求項1】の上記事項を検討すると、該事項は、通信手段を介して設備情報を収集はするものの、或る目標に達していれば、この収集した設備情報を分析しないことを含むもので、旧【請求項2】の上記事項を、実質的に、拡張している。

2-3)旧【請求項2】には、生産ラインへフィードバックする対象が、稼働状況を低下させる要因を解消するためのサービスである旨、記載されていたと認められる。
その一方で、新【請求項1】には、生産ラインへフィードバックすることは記載されているものの、そのフィードバックする対象については記載が無く、旧【請求項2】の記載に比して、少なくとも、フィードバックする対象について不明りようになっている。

2-4)以上のとおり、補正事項aは、請求項の記載を不明りようなものとし、また、請求項に記載の事項の一部を拡張するもので、「請求項の削除」、「限定的減縮」、「請求項の削除」又は「誤記の訂正」を目的にしているとはいえない。

(2)補正事項aの新規事項について

1)新【請求項1】の記載は、先に「(1)」で述べたように、不明りようではあるが、念のために、同項に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、本件当初明細書等に記載があったかについて検討する。

2)補正発明は、稼働分析装置についての発明であって、「目標に達してなければ、前記収集した設備情報を要因分析し、その結果、特定の実装機が稼働状況を低下させる要因があると判明した場合、前記要因を解消するため、前記部品の実装順序や前記部品供給装置の配置の最適化を行い、前記実装工場内の部品実装ラインへ前記通信手段を介してフィードバックする」と記載した事項(以下、「本件事項」という。)を有するものであるが、本件事項を有する稼働分析装置についての発明は、本件当初明細書等に記載があったとはいえない。

3)請求人は、これに対し、本件請求書において、要するに、本件当初明細書等の段落【0066】に記載があったと主張するが、理由はない。以下に、詳述する。

3-1)段落【0066】の記載は、以下のとおりのものと認める。

「図1において、100は、個々の部品実装機105?111が連結された部品実装ラインで、接続ユニット103a?103f、113a、113bを経て各部品実装機105?111の回路基板1枚に実装する時間である実装タクト、標準実装タクト(部品1点当たりを標準で実装可能なタクトである標準タクトで回路基板1枚分の実装を行うとした場合の実装タクト)より伸びた余分なタクトであるタクトロス等のタクト情報、および稼働率、停止時間、品種切替え時間等の設備情報を管理装置101に収集する。図2において、図1に示す部品実装ライン100a?100cを有する部品実装機納入先の各工場A?Cの管理装置101a?101cと、実装機供給メーカが有する稼働分析装置1とをインターネット3で接続している。管理装置101a?101cからインターネット3を介して各工場の部品実装ライン100の個々の部品実装機の実装タクト等のタクト情報および稼働率等の設備情報が稼働分析装置1に収集され、これらのタクト情報および設備情報は稼働分析し易いデータ構造に変換され設備稼働情報データベース2(以後、設備稼働情報DBと呼ぶ)に蓄積される。稼働分析装置1では、実装タクトや稼働率が目標に達しているかを監視し、目標に達してなければ要因分析を行う。例えば、要因が特定の部品実装機のタクトロスにあれば、そのタクトロスをおさえる実装順序の最適化や部品供給装置5の配置の最適化を行い、(審決注;下線は、当審において付与した。)最適化を行ったNCデータをインターネット3を介して該当する工場の管理装置101へフィードバックする。管理装置101は、フィードバックされた最適化後NCデータを該当の部品実装機へ該当する接続ユニットを介して転送する。また、要因が、特定の部品実装機の実装タクトが部品実装ライン100の中で遅くなっていることにある場合は、稼働分析装置1では、該当部品実装ライン100の各部品実装機への部品の再振り分けを行い、タクトバランスが取れた各部品実装機のNCデータに生成し直してNCデータを該当する工場の管理装置101へフィードバックする。」

3-2)この記載によれば、実装順序、これが部品の実装順序かどうかの検討は、ひとまず、置くとしても、該実装順序や部品供給装置の配置の最適化を行うのは、実装タクトや稼働率なるものが目標に達してない場合で、しかも、目標に達してない要因を分析した結果、要因が特定の部品実装機のタクトロスなるものにあると判断された場合であって、このことが、段落【0066】に記載されていたということができる。
しかしながら、「目標」が、実装タクトや稼働率なるものであるか否かを問わず、更に、「特定の実装機が稼働状況を低下させる要因」が、特定の部品実装機のタクトロスなるものであるか否かを問わない、本件事項については、同段落に記載があったということはできない。
したがって、請求人の主張に、理由はない。

3-1-3.まとめ
補正事項aを有する本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第3項、又は第4項の規定に違反するものである。

3-2.原査定の拒絶理由について

3-2-1.本件の発明
本件補正は、先に「3-1」で述べたように却下すべきものであり、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件補正前の、願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の請求項1に記載の事項により特定されるものであって、同項の記載は、以下のとおりのものと認める。

「被生産物に加工または組み立てを行う生産設備が連結した生産ラインの稼働状況を分析する稼働分析装置であって、
前記生産ラインを保有する生産工場とインターネットを始めとする通信手段で接続し、前記生産工場内の生産ラインから前記通信手段を介して稼働率を含む設備情報を収集し、前記収集した設備情報を分析した結果、稼働状況を低下させる要因があると判明した場合、前記要因を解消するためのサービスを前記生産ラインへ前記通信手段を介してフィードバックする稼働分析装置。」

3-2-2.引用刊行物の記載
引用刊行物には、以下の記載が認められる。

A;「【請求項6】 コンピュータを用いた製茶工場の製茶管理手段と、製茶工場外部の製茶管理手段と、製茶工場の製茶管理手段と製茶工場外部の製茶管理手段とを通信回線を用いて相互に製茶情報を伝達する通信手段と、からなることを特徴とする通信による製茶管理装置。」
B;「【0009】
【実施例】実施例1として、図1のA工場の製茶プラントを参照して説明する。茶生葉は、集荷トラック21で製茶工場へ運び込まれ(茶生葉集荷工程)、茶生葉コンテナ23(茶生葉貯蔵工程)、蒸機24(蒸熱工程)、粗揉機25(粗揉工程)、揉捻機26(揉捻工程)、中揉機27(中揉工程)、精揉機28(精揉工程)、乾燥機29(乾燥工程)、合組機30(合組工程)、袋詰機31(袋詰工程)へ、順次、搬送装置42,43,44で搬送され、製茶され、出荷トラック32で出荷される(各工程の製茶機は、1台づつとは限らない)。茶生葉コンテナ23には、投入装置、ファン運転、取出装置等の複数の制御盤33が備えられており、蒸機24?袋詰機31の各製茶機にもそれぞれ個々の制御盤34?41が備えられている。」及び【図1】
C;「【0018】図4のように、製茶機メーカー11の製茶管理手段が各製茶工場12,13,14の製茶管理手段と電話回線2で接続できるようにしておけば、製茶機メーカー11はそれぞれの製茶工場12,13,14と様々な情報のやりとりが、必要な時に出来る。製茶を行う時、製茶工場12,13,14が製茶メーカー11の製茶管理手段に、茶生葉貯蔵工程の茶生葉コンテナ23における送風機の運転設定値、搬送装置42の搬送スピード(茶生葉貯蔵情報)、茶葉下揉み工程の蒸機24における蒸気量・蒸熱時間・茶生葉供給量、粗揉機25または中揉機27における主軸回転数・風量・熱風温度・運転時間、揉捻機26における分銅位置・運転時間、搬送装置43の搬送スピード(茶葉下揉み情報)、茶葉仕上げ工程の精揉機28における分銅位置・運転時間、乾燥機29における風量・熱風温度・運転時間、合組機30における茶葉重量、搬送装置44の搬送スピード(茶葉仕上げ情報)等の参考設定値を取得する。一方、製茶メーカー11が製茶工場12,13,14の前記項目の設定値、前記項目と各機械における茶葉の水分値の現在値、稼働状況を取得して監視する。」
D;「また、製茶工場12,13,14でトラブルがあった場合、製茶メーカー11がトラブルの状況を取得し、製茶工場12,13,14の制御プログラムを送信し、書き換え、トラブルを解決することも可能である。トラブル発生を防ぐために、メーカーから直接メンテナンスをすることもできる。そのほか、さまざまな製茶情報を相互に取得することができる。
【0019】」

3-2-3.引用刊行物の発明
引用刊行物には、記載Aによれば、「コンピュータを用いた製茶工場の製茶管理手段と、製茶工場外部の製茶管理手段と、製茶工場の製茶管理手段と製茶工場外部の製茶管理手段とを通信回線を用いて相互に製茶情報を伝達する通信手段と、からなる通信による製茶管理装置」の発明が記載されていると認められる。
そして、この発明の製茶情報とは、記載Cによれば、茶生葉貯蔵工程における茶生葉貯蔵情報、茶葉下揉み工程における茶葉下揉み情報、及び茶葉仕上げ工程における茶葉仕上げ情報(以下、これらの情報を合わせて「本件製茶情報」という。)であることが窺える。更に、これら工程に関する設備が連結して製茶ラインを構成していることは、記載Bの記載から、また、本件製茶情報は、該製茶ラインの設備に関する情報であることも、記載Cの記載から、明らかである。
また、この発明の通信手段は、製茶工場の製茶管理手段と製茶工場外部の製茶管理手段とを通信回線を用いて相互に本件製茶情報を伝達することから、製茶工場外部の該製茶管理手段は、該通信手段を介して本件製茶情報、具体的には、記載Cの「一方、製茶メーカー11が製茶工場12,13,14の前記項目の設定値、前記項目と各機械における茶葉の水分値の現在値、稼働状況を取得して監視する。」の記載を参酌すれば、茶生葉コンテナ23における送風機等の運転設定値やその現在値、更には、稼働状況を収集しているといえる。
更に、この発明は、製茶工場外部の製茶管理手段に注目した発明としても把握できることは明らかである。
以上のことから、引用刊行物には、概ね、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

「茶生葉貯蔵工程、茶葉下揉み工程及び茶葉仕上げ工程に関する設備が連結した製茶ラインを保有する製茶工場と通信手段で接続し、前記製茶工場の製茶ラインから前記通信手段を介して、茶生葉コンテナにおける送風機等の運転設定値やその現在値、更には、稼働状況が例示される本件製茶情報、を収集する製茶工場外部の製茶管理手段」

3-2-4.対比判断

1)本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「製茶ライン」、「製茶工場」及び「本件製茶情報」は、本件発明の「生産ライン」、「生産工場」及び「設備情報」に相当しているということができる。
また、引用発明の「製茶工場外部の製茶管理手段」は、設備情報を収集する装置という点で、本件発明の「稼働分析装置」に相当しているということができる。
してみると、本件発明は、引用発明とは、
「被生産物に加工または組み立てを行う生産設備が連結した生産ラインを保有する生産工場とインターネットを始めとする通信手段で接続し、前記生産工場内の生産ラインから前記通信手段を介して設備情報を収集する装置」である点で一致し、
以下の点において相違していると認められる。

相違点A;設備情報につき、本件発明は、「稼働率を含む」点。
相違点B;設備情報を収集する装置につき、本件発明は、「被生産物に加工または組み立てを行う生産設備が連結した生産ラインの稼働状況を分析する稼働分析装置であって、収集した設備情報を分析した結果、稼働状況を低下させる要因があると判明した場合、前記要因を解消するためのサービスを前記生産ラインへ通信手段を介してフィードバックする」点。

2)相違点Aについて検討する。
引用発明において、その製茶工場外部の製茶管理手段が収集する本件製茶情報は、茶生葉コンテナにおける送風機等の稼働状況が例示されるもので、稼働状況の情報として稼働率は、本件出願の優先権主張日前、周知のものであるから、上記本件製茶情報として稼働率を採用し、これを含むものとすることは、容易に為し得るものである。
また、本件発明は、収集した設備情報を分析した結果、稼働状況を低下させる要因があると判明した場合、前記要因を解消するためのサービスを生産ラインへ通信手段を介してフィードバックするものであるが、収集した設備情報のうち、稼働率を分析することを、必ずしも、発明特定事項とするものではないから、上記設備情報を稼働率を含むものとしたことにも、格別な効果があるとはいえない。
よって、相違点Aは容易に想到し得るものである。

3)相違点Bについて検討する。
引用刊行物の記載Dには、引用発明の製茶工場外部に相当することが明らかな製茶機メーカー11が、製茶工場12,13,14でのトラブル発生を防ぐために、直接、メンテナンスをすることできることが記載されている。
そして、トラブル発生を防ぐためには、収集した本件製茶情報を事前に分析して、トラブル発生の要因があれば、これを見つけ出しておこうとすることは技術的に通常のことである。
また、メンテナンスとは、機械・建物などの維持、管理又は保守のことで、トラブル発生の要因があると判明した場合、該要因を解消することが、メンテナンスといえるものである。
更に、同じく記載Dには、トラブルがあった場合に、製茶機メーカー11がトラブルの状況を取得し、製茶工場12,13,14へ制御プログラムを送信し、書き換え、トラブルを解決することも可能であることが記載されていることを加味すると、直接、メンテナンスをするとの上記記載から、該メンテナンスの内容を通信手段を介して製茶工場12,13,14へ、具体的には、その製茶ラインへ送信することは、容易に想到し得る事項といえる。
してみると、引用発明において、収集した本件製茶情報を分析し、その結果、トラブル発生の要因があると判明した場合、製茶工場外部の製茶管理手段が該要因を解消するためのメンテナンスの内容を製茶ラインへ通信手段を介して送信するよう構成することは、容易に為し得るものである。また、分析や判断機能を装置に組み込むことは、本件の優先権主張日前の常套手段であるから、上述した、本件製茶情報の分析やトラブル発生の要因があるかの判断といった機能を機械に、すなわち、本件製茶情報を収集する製茶工場外部の製茶管理手段に持たせることは容易に為し得るものである。
以上のことをまとめると、製茶工場外部の製茶管理手段を、収集した本件製茶情報を分析した結果、トラブル発生の要因があると判明した場合、前記要因を解消するためのメンテナンスの内容を製茶ラインへ通信手段を介して送信するよう構築することは、容易に為し得るもので、結果的に、製茶ラインの本件製茶情報を分析する装置とすることは容易に為し得るものといえる。
そして、上述したトラブル発生は、稼働状況を低下させるもので、その要因とは、稼働状況を低下させる要因ともいえ、更に、該要因を解消するためのメンテナンスの内容とは、該要因を解消するためのサービスといえ、メンテナンスの内容を製茶ラインへ送信するということは、サービスを生産ラインへフィードバックすることといえ、結局、引用発明において、相違点Bは、容易に為し得るものである。

3-2-5.まとめ
本件発明は、引用発明に基いて、本件の優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、原査定の拒絶理由は、妥当である。

4.結び
原査定は、妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-03 
結審通知日 2008-07-08 
審決日 2008-07-28 
出願番号 特願2001-112340(P2001-112340)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 56- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 坂本 薫昭
吉水 純子
発明の名称 稼働分析装置および稼働分析方法  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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