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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1184731
審判番号 不服2006-7688  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-21 
確定日 2008-09-18 
事件の表示 特願2002- 23049「スクリーン印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月 5日出願公開、特開2003-220687〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

特許出願 平成14年 1月31日
拒絶理由通知 平成17年 7月 6日
意見書及び手続補正書(明細書)提出 平成17年 8月31日
拒絶査定 平成18年 3月16日
審判請求 平成18年 4月21日
手続補正書(明細書)提出 平成18年 5月 9日
手続補正書(理由補充書)提出 平成18年 5月 9日

第2 平成18年5月9日付け明細書についての手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年5月9日付け明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正における特許請求の範囲についての補正は、
補正前(平成17年8月31日付け手続補正書参照)に
「【請求項1】パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、マスクプレート上にペーストを供給して保持ブロックにスキージプレートを装着して成るスキージを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、前記スキージのスキージング方向側に前記基板の印刷幅寸法に応じた間隔で前記スキージと一体に配設され前記マスクプレート上のペーストが前記印刷幅の外側へはみ出すのを防止する堰き止め部材としての樹脂プレートを備え、この樹脂プレートの上部にはコ字形状の固定部材が結合されており、この固定部材に設けられた嵌合部は前記保持ブロックの長手方向に水平に設けられた溝部にスライド自在に嵌合し、樹脂プレートをスライドさせて任意の位置に固定することを特徴とするスクリーン印刷装置。」
とあったものを、
「【請求項1】パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、マスクプレート上にペーストを供給して保持ブロックにスキージプレートを装着して成るスキージを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、前記スキージのスキージング方向側に前記基板の印刷幅寸法に応じた間隔で前記スキージと一体に配設され前記マスクプレート上のペーストが前記印刷幅の外側へはみ出すのを防止する堰き止め部材としての樹脂プレートを備え、この樹脂プレートの上部にはスキージの上部と樹脂プレートの上部を一体的に抱き込む断面コ字形状の固定部材が結合されており、この固定部材に設けられた嵌合部は前記保持ブロックの長手方向に水平に設けられた溝部にスライド自在に嵌合し、樹脂プレートをスライドさせて任意の位置に移動させた状態で前記スキージに対して固定することを特徴とするスクリーン印刷装置。」
と補正するものである。

つまり、本件補正は、特許請求の範囲についての以下の補正事項を含む。
〈補正1〉補正前の請求項1における「コ字形状の固定部材」を補正後の請求項1において「スキージの上部と樹脂プレートの上部を一体的に抱き込む断面コ字形状の固定部材」とする補正。
〈補正2〉補正前の請求項1における「樹脂プレートをスライドさせて任意の位置に固定する」を補正後の請求項1において「樹脂プレートをスライドさせて任意の位置に移動させた状態で前記スキージに対して固定する」とする補正。

2.本件補正の適否
〈補正1〉について
補正1は、補正前の請求項1における「固定部材」に係る「コ字形状」について「スキージの上部と樹脂プレートの上部を一体的に抱き込む断面」と限定するものであり、補正前の請求項1に記載された発明の特定事項を限定するものである。
よって補正1は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。
〈補正2〉について
補正2は、補正前の請求項1における「樹脂プレートをスライドさせて任意の位置」に「固定する」点を「樹脂プレートをスライドさせて任意の位置」に「移動させた状態で前記スキージに対して固定する」と限定するものであり、補正前の請求項1に記載された発明の特定事項を限定するものである。
よって補正2は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。

すると、補正1乃至補正2を含む本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしているといえる。

3.独立特許要件について
以上のとおり、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしており、同条第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含んでいるので、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かについて検討する。

(3-1)本願補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された次のとおりのものと認める。
「パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、マスクプレート上にペーストを供給して保持ブロックにスキージプレートを装着して成るスキージを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、前記スキージのスキージング方向側に前記基板の印刷幅寸法に応じた間隔で前記スキージと一体に配設され前記マスクプレート上のペーストが前記印刷幅の外側へはみ出すのを防止する堰き止め部材としての樹脂プレートを備え、この樹脂プレートの上部にはスキージの上部と樹脂プレートの上部を一体的に抱き込む断面コ字形状の固定部材が結合されており、この固定部材に設けられた嵌合部は前記保持ブロックの長手方向に水平に設けられた溝部にスライド自在に嵌合し、樹脂プレートをスライドさせて任意の位置に移動させた状態で前記スキージに対して固定することを特徴とするスクリーン印刷装置。」

(3-2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実願平4-79192号(実開平6-42168号)のCD-ROM(以下、「引用例1」という。)には、以下の〈ア〉乃至〈イ〉の記載が図示とともにある。
〈ア〉「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】スクリーン板上の塗布剤をスキージを介してプリント基板に塗布するスクリーン印刷機に於いて、前記スキージの両側部にその走行による前記塗布剤の外方へのはみ出しを防止するはみ出し防止部材と、該はみ出し防止部材の相互の間隔を調整可能とする調整部材とを設けたことを特徴とするスクリーン印刷機。」
〈イ〉「【0007】
【実施例】
以下、本考案の一実施例を図面に基づき説明する。
【0008】
(1)はスクリーン印刷機で、図示しない上流側装置から図示しない載置台上に搬送されてくるプリント基板(2)の上面にチップ状電子部品が装着されるように所望のパターンに塗布剤としてのクリーム半田(26)が塗布される。
【0009】
(3)はスクリーンで、所望の回路パターンに穿設されたスクリーン板(4)と、該板(4)を囲むスクリーン枠(5)とから構成される。
【0010】
(6)は前記スクリーン(3)のスクリーン板(4)を基板(2)に押圧しながら移動して、該スクリーン板(4)上に供給されたクリーム半田(26)を基板(2)上に塗布するスキージホルダ(7)に保持された往印刷スキージである。該スキージ(6)は図示しない上下動機構により前記スクリーン板(4)上に下降されると共に図示しない移動機構により該スクリーン板(4)上を水平移動される。
【0011】
(8)(8)は前記スキージ(6)の長手方向上部に形成されたレール(9)上を摺動可能で所定位置にボルト(10)(10)止めされてクリーム半田(26)の外方へのはみ出しを防止するはみ出し防止板で、該ボルト(10)(10)がしまる方向に回転されることによりスキージホルダ(7)の被係合部(20)とその係合部(21)(21)とが当接し合って係合される。また、該はみ出し防止板(8)(8)の走行方向端部内側面には一部切除された段差部(11)(11)が形成されている。
【0012】
(12)は同じくスキージホルダ(13)に保持された複印刷スキージである。該スキージ(12)は図示しない上下動機構により前記スクリーン板(4)上に下降されると共に図示しない移動機構により該スクリーン板(4)上を水平移動される。
【0013】
(14)(14)は前記スキージ(12)の長手方向上部に形成されたレール(15)上を摺動可能で所定位置にボルト(16)(16)止めされてクリーム半田(26)の外方へのはみ出しを防止するはみ出し防止板で、該ボルト(16)(16)がしまる方向に回転されることによりスキージホルダ(13)の被係合部(22)とその係合部(23)(23)とが当接し合って係合される。また、該はみ出し防止板(14)(14)の走行方向端部内側面には前記段差部(11)(11)に概ね合致する段差部(17)(17)が夫々形成され、互いに重合する部分を有している。
【0014】
以下、動作について説明する。
【0015】
先ず、載置台は供給コンベアの搬送レベルより下方にあり、該コンベアにより上流側装置から搬送されてきた基板(2)が載置台上方に位置されると、コンベアは停止される。
【0016】
次に、載置台は図示しないシリンダにより搬送レベルより上昇され、該台上に基板(2)が載置される。
【0017】
そして、上下動機構により往印刷スキージ(9)が下降されて、移動機構により図1の右方向に移動することによりスクリーン板(7)上に供給されたクリーム半田(26)を該板(7)の穿設された開口を介して基板(2)上に塗布する。このとき、往印刷スキージ(6)の走行に伴うクリーム半田の外方へのはみ出しは、はみ出し防止板(8)(8)により防止されるから、クリーム半田(26)のスクリーン(3)への補給の頻度は減少する。そして、往印刷動作が終了すると往印刷スキージ(6)が上昇され、シリンダにより搬送レベルより下方に該載置台が下降され、排出コンベアにより基板(2)が排出される。
【0018】
次の基板(2)の印刷動作については、搬送動作等は前述と同様であるから省略する。前述の如く基板(2)が載置台上に載置され、所定位置に上昇されたら、今度は上下動機構により複印刷スキージ(12)が下降され、図1の左方向に走行し印刷を行うものである。このときも複印刷スキージ(12)の走行に伴うクリーム半田(26)の外方へのはみ出しは、はみ出し防止板(14)(14)により防止される。
【0019】
以下、同様にして印刷動作が続けられる。
【0020】
また、前記基板(2)とサイズの異なる基板(2)(例えば、小さい基板)を扱う場合には、前記はみ出し防止板(8)(8)、(14)(14)を往印刷スキージ(6)、複印刷スキージ(12)に固定しているボルト(10)(10)、(16)(16)を緩め、図2及び図3に示すようにレール(9)、(15)上を摺動させて基板サイズ(スクリーン板(4)の印刷パターン)に対応した位置に移動させ、再びボルト(10)、(16)止めする。そして、前述したようにして印刷動作が行われる。」

図1並びに摘記事項〈ア〉及び摘記事項〈イ〉【0010】及び【0012】の記載より、
「スクリーン板(4)をプリント基板(2)に当接させ、スクリーン板(4)上にクリーム半田(26)を供給して、
スキージホルダ(7)に往印刷スキージ(6)を装着して成るスキージを前記スクリーン板(4)上に下降され、移動機構により該スクリーン板(4)上を水平移動させ、
同じくスキージホルダ(13)に複印刷スキージ(12)を装着して成るスキージを前記スクリーン板(4)上に下降され、移動機構により該スクリーン板(4)上を水平移動させるさせることにより、前記プリント基板に前記クリーム半田(26)を印刷するスクリーン印刷装置」が把握できる。

図2及び図3並びに摘記事項〈ア〉及び摘記事項〈イ〉【0020】「基板(2)とサイズの異なる基板(2)(例えば、小さい基板)を扱う場合・・・図2及び図3に示すようにレール(9)、(15)上を摺動させて基板サイズ(スクリーン板(4)の印刷パターン)に対応した位置に移動させ、再びボルト(10)、(16)止めする。・・」の記載より、
「往印刷スキージ(6)及び複印刷スキージ(12)のスキージング方向側にプリント基板の印刷幅寸法に応じた間隔で前記往印刷スキージ(6)及び複印刷スキージ(12)と一体に配設されスクリーン板上のクリーム半田が前記印刷幅の外側へはみ出すのを防止するはみ出し防止部材(8)(8)及びはみ出し防止部材(14)(14)を備えたスクリーン印刷機」が把握できる。

図1並びに摘記事項〈ア〉及び摘記事項〈イ〉【0011】の記載より、
「はみ出し防止部材(8)(8)の上部には、スキージホルダ(7)に往印刷スキージ(6)を装着して成るスキージの上部とはみ出し防止部材(8)(8)の上部を一体的に固定するボルト(10)(10)が結合されており、該ボルト(10)(10)がしまる方向に回転されることによりスキージホルダ(7)の被係合部(20)とその係合部(21)(21)とが当接し合って係合される。」ことが把握できる。

図1並びに摘記事項〈ア〉及び摘記事項〈イ〉【0013】の記載より、「はみ出し防止部材(14)(14)の上部には、スキージホルダ(13)に複印刷スキージ(12)を装着して成るスキージの上部とはみ出し防止部材(14)(14)の上部を一体的に固定するボルト(16)(16)が結合されており、該ボルト(16)(16)がしまる方向に回転されることによりスキージホルダ(13)の被係合部(22)とその係合部(23)(23)とが当接し合って係合される。」ことが把握できる。

図1乃至図3並びに摘記事項〈ア〉及び摘記事項〈イ〉【0020】「基板(2)とサイズの異なる基板(2)(例えば、小さい基板)を扱う場合・・・図2及び図3に示すようにレール(9)、(15)上を摺動させて基板サイズ(スクリーン板(4)の印刷パターン)に対応した位置に移動させ、再びボルト(10)、(16)止めする。・・」の記載より、
「はみ出し防止部材(8)(8)をスライドさせて任意の位置に移動させた状態で、スキージホルダ(7)に往印刷スキージ(6)を装着して成るスキージに対してはみ出し防止部材(8)(8)を固定すること及び
はみ出し防止部材(14)(14)をスライドさせて任意の位置に移動させた状態で、スキージホルダ(13)に複印刷スキージ(12)を装着して成るスキージに対してはみ出し防止部材(14)(14)を固定する」ことが、それぞれ把握できる。

以上より、上記摘記事項〈ア〉乃至〈イ〉を含む引用例1には、次のような発明が記載されていると認めることができる。
「スクリーン板(4)をプリント基板(2)に当接させ、スクリーン板(4)上にクリーム半田(26)を供給して、
スキージホルダ(7)(13)に往印刷スキージ(6)、複印刷スキージ(12)を装着して成るスキージを該スクリーン板(4)上を水平移動させることにより、前記プリント基板に前記クリーム半田(26)を印刷するスクリーン印刷装置であって、
往印刷スキージ(6)及び複印刷スキージ(12)のスキージング方向側にプリント基板の印刷幅寸法に応じた間隔で前記往印刷スキージ(6)及び複印刷スキージ(12)と一体に配設されスクリーン板上のクリーム半田が前記印刷幅の外側へはみ出すのを防止するはみ出し防止部材(8)(8)及びはみ出し防止部材(14)(14)を備え、
はみ出し防止部材(8)(8)の上部には、スキージホルダ(7)に往印刷スキージ(6)を装着して成るスキージ上部とはみ出し防止部材(8)(8)の上部を固定するボルト(10)(10)が結合されており、該ボルト(10)(10)がしまる方向に回転されることによりスキージホルダ(7)の被係合部(20)とその係合部(21)(21)とが当接し合って係合され、
はみ出し防止部材(14)(14)の上部には、スキージホルダ(13)に複印刷スキージ(12)を装着して成るスキージ上部とはみ出し防止部材(14)(14)の上部を固定するボルト(16)(16)が結合されており、該ボルト(16)(16)がしまる方向に回転されることによりスキージホルダ(13)の被係合部(22)とその係合部(23)(23)とが当接し合って係合され、
はみ出し防止部材(8)(8)をスライドさせて任意の位置に移動させた状態でスキージホルダ(7)に往印刷スキージ(6)を装着して成るスキージに対してはみ出し防止部材(8)(8)を固定し、
はみ出し防止部材(14)(14)をスライドさせて任意の位置に移動させた状態でスキージホルダ(13)に複印刷スキージ(12)を装着して成るスキージに対してはみ出し防止部材(14)(14)を固定するスクリーン印刷装置」(以下、「引用発明」という。)

(3-3)対比
a.引用発明の「スクリーン板(4)」、「プリント基板(2)」及び「スクリーン印刷機」は、本願補正発明の「マスクプレート」、「基板」及び「スクリーン印刷装置」に相当する。
b.引用発明の「クリーム半田(26)」は、本願明細書段落【0011】「ペーストであるクリーム半田」の記載を参照するに、本願補正発明の「ペースト」に相当することは明らかである。
c.引用発明の「スキージホルダ(7)(13)」は、本願補正発明の「保持ブロック」に相当する。
d.引用発明の「往印刷スキージ(6)」及び「複印刷スキージ(12)」は、本願補正発明の「スキージプレート」に相当する。
e.引用発明の「スキージホルダ(7)に往印刷スキージ(6)を装着して成るスキージ」及び「スキージホルダ(13)に複印刷スキージ(12)を装着して成るスキージ」は、本願補正発明の「保持ブロックにスキージプレートを装着して成るスキージ」に相当する。
f.引用発明の「はみ出し防止部材(8)(8)」及び「はみ出し防止部材(14)(14)」は、本願補正発明の「堰き止め部材」に相当する。
g.引用発明は、はみ出し防止部材の上部には、スキージホルダにスキージを装着して成るスキージの上部とはみ出し防止部材の上部を一体的に固定するボルトが結合されており、引用発明と本願補正発明とは、堰き止め部材の上部には、スキージの上部と堰き止め部材の上部を一体的に固定する固定部材が結合されている点で一致する。
してみれば、本願補正発明と引用発明とは、
「マスクプレートを基板に当接させ、マスクプレート上にペーストを供給して保持ブロックにスキージプレートを装着して成るスキージを該マスクプレート上を水平移動させることにより、基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、前記スキージのスキージング方向側に前記基板の印刷幅寸法に応じた間隔で前記スキージと一体に配設され前記マスクプレート上のペーストが前記印刷幅の外側へはみ出すのを防止する堰き止め部材を備え、この堰き止め部材の上部には、スキージの上部と堰き止め部材の上部を一体的に固定する固定部材が結合されており、堰き止め部材をスライドさせて任意の位置に移動させた状態で前記スキージに対して固定するスクリーン印刷装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点1〉本願補正発明では「パターン孔が設けられたマスクプレート」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。
〈相違点2〉本願補正発明では「パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。
〈相違点3〉本願補正発明では「スキージを摺動させる」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。
〈相違点4〉本願補正発明では「堰き止め部材としての樹脂プレート」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。
〈相違点5〉本願補正発明では「この樹脂プレートの上部にはスキージの上部と樹脂プレートの上部を一体的に抱き込む断面コ字形状の固定部材が結合されており、この固定部材に設けられた嵌合部は前記保持ブロックの長手方向に水平に設けられた溝部にスライド自在に嵌合し」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

(3-4)判断
〈相違点1及び相違点2〉について
スクリーン印刷装置において、「パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、マスクプレート上にペーストを供給」すること及び「パターン孔を介して基板にペーストを印刷する」ことは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-9662号公報(以下、「引用例2」という。」、特に、図3乃至図5、段落【0003】乃至【0004】及び原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-16326号公報(以下、「引用例3」という。」、特に、図1、段落【0011】に記載の如く、周知の技術事項である。
してみれば、引用発明において、上記周知の技術事項より、「パターン孔が設けられたマスクプレート」を用いるとともに、「パターン孔を介して基板にペーストを印刷する」ようになすことは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。
したがって、相違点1乃至相違点2に係る本願補正発明の特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

〈相違点3〉について
スクリーン印刷装置において、スキージを摺動させて用いることは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-293947号公報(以下、「引用例4」という。」、特に、段落【0004】「スクリーンマスク上をスキージが摺動する」に記載の如く、周知の技術事項である。
してみれば、引用発明において、上記周知の技術事項より、「スキージを摺動させる」構成となすことは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。
したがって、相違点3に係る本願補正発明の特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

〈相違点4〉について
印刷装置又は印刷工程に係る部材として「樹脂プレート」を選択し用いることは、例えば、特開昭61-81692号公報、特に、特許請求の範囲に記載の如く、周知の技術事項である。
してみれば、引用発明において、上記周知の部材より、堰き止め部材として樹脂プレートを選択し用いることは、当業者が適宜になし得る設計事項である。
したがって、相違点4に係る本願補正発明の特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

〈相違点5〉について
引用発明には、「はみ出し防止部材の上部には、スキージの上部とはみ出し防止部材の上部を一体的に固定するボルトが結合されており、該ボルトがしまる方向に回転されることによりスキージホルダの被係合部とその係合部とが当接し合って係合される。」構成が記載されている。
ところで、二つの部材を結合する際に、別体の固定部材を用いて当該ニつの部材を結合することと互いに結合される部材の一部に結合のための構成を設けて結合することとは、いずれも当業者が普通に行う結合手段に過ぎず、いずれの結合手段を採用するかは、当業者が発明の実施に際して適宜選択すべき設計事項に過ぎない。
また、前記結合手段に使用する部材の具体的形状及び配置は、当業者が発明の実施に際して適宜設計すべき事項であって、本願補正発明に規定する部材形状及び配置とすることにより、格別な効果が得られるものとも認められない。
してみれば、引用発明において、樹脂プレートの上部にはスキージの上部と樹脂プレートの上部を一体的に抱き込む断面コ字形状の固定部材が結合されており、この固定部材に設けられた嵌合部は前記保持ブロックの長手方向に水平に設けられた溝部にスライド自在に嵌合する構成となすことは、当業者が適宜になし得る設計事項である。
したがって、相違点5に係る本願補正発明の特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

なお、請求人は、請求の理由(平成18年5月9日付けの手続補正書による)において、「本願発明によれば、(0016)の後段?(0017)に記載しているように、基板の幅に対応して樹脂プレートの位置を自由に調整してスキージに対して固定することにより、マスクプレート上面においてペーストが必要範囲以外へ付着して堆積することを防止することができ、これらのペーストを除去するためのクリーニングなどの保守作業を必要としないという作用効果が得られるものである。」と主張している。
この点に関し、発明の詳細な説明の欄には、「【0016】
樹脂プレート16の上部にはコ字形状の固定部材17が結合されており、固定部材17の端部に設けられた嵌合部17aは、保持ブロック14aの長手方向に水平に設けられた溝部14cにスライド自在に嵌合している。嵌合部17aを溝部14cに沿ってスライドさせることにより、固定部材17に結合された樹脂プレート16はスキージプレート14bに沿って水平方向に移動する。そしてスキージプレート14bを任意の位置に移動させた状態で、固定部材17に設けられた止めねじ18を締め付けることにより、樹脂プレート16はスキージ14に対して固定される。
【0017】
すなわち、図4(a)に示すように、幅広の基板10を対象とする場合には、樹脂プレート16を基板10の幅に対応する位置までスライドさせ、樹脂プレート16を保持ブロック14aに固定する。また幅狭の基板10を対象とする場合には、図4(b)に示すように、樹脂プレート16を同様に基板10の幅寸法に応じた位置に移動させ、同様に樹脂プレート16を保持ブロック14aに固定する。なお、樹脂プレート16の位置は、印刷幅の外側であれば基板端部よりも幾分外側に位置させてもよくまた幾分内側に位置させても良い。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、スキージのスキージング方向側の面に基板の印刷幅寸法に応じた間隔で配設されマスクプレート上のペーストが印刷幅の外側へのはみ出しを堰き止める堰き止め部材を備えたので、マスクプレート上面においてペーストが必要範囲以外へ付着して堆積することを防止することができ、これらのペーストを除去するためのクリーニングなどの保守作業を必要としない。」(段落【0016】乃至【0017】及び【0020】)と記載されており、前記段落【0016】乃至【0017】の記載を参照すれば、基板の幅に対応して樹脂プレートの位置を自由に調整してスキージに対して固定することにより、前記段落【0020】【発明の効果】欄に記載の「マスクプレート上面においてペーストが必要範囲以外へ付着して堆積することを防止することができ、これらのペーストを除去するためのクリーニングなどの保守作業を必要としない。」とする請求人主張の主旨はひとまず理解できる。
しかしながら、引用例1の段落【0022】「また、はみ出した塗布液をスクリーン板上にかき集める機構がいらない。」の記載を参照すれば、請求人の上記主張する本願補正発明の効果は、引用発明の効果と同等のものであって、格別なものとは認められず、当業者が容易に予測し得る程度のものである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

〈まとめ〉
このように、相違点1乃至相違点5に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が想到容易な事項であり、これらの発明特定事項を採用したことによる本願補正発明の効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3-5)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。

4.本件補正についてのむすび
前記「第2 3.」に記載のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
平成18年5月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年8月31日付けで補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、マスクプレート上にペーストを供給して保持ブロックにスキージプレートを装着して成るスキージを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、前記スキージのスキージング方向側に前記基板の印刷幅寸法に応じた間隔で前記スキージと一体に配設され前記マスクプレート上のペーストが前記印刷幅の外側へはみ出すのを防止する堰き止め部材としての樹脂プレートを備え、この樹脂プレートの上部にはコ字形状の固定部材が結合されており、この固定部材に設けられた嵌合部は前記保持ブロックの長手方向に水平に設けられた溝部にスライド自在に嵌合し、樹脂プレートをスライドさせて任意の位置に固定することを特徴とするスクリーン印刷装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1は、前記「第2 3.(3-2)」に記載のとおりである。

3.対比・判断
前記「第2 2.」に記載のとおり、本願補正発明は、本願発明の「コ字形状」について限定するものであり、また、本願発明の「樹脂プレートをスライドさせて任意の位置に固定する」点について限定するものであるから、本願発明は、それらの発明特定事項を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加するものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3.(3-4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-09 
結審通知日 2008-07-15 
審決日 2008-07-28 
出願番号 特願2002-23049(P2002-23049)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (B41F)
P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 菅藤 政明
菅野 芳男
発明の名称 スクリーン印刷装置  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  

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